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ギルドスタッフ!

 緑の色が増し、草の匂いが風に乗り、作物の育ち始めた五月下旬。

 青空には白い雲が大きく育つほど気温が上がり、夏が来るまでの、少しの間だけの心地の良い季節がやってきた。

 蝉はまだ鳴いていないが、今日はかなり暖かい。ギルドはまだ冷房設備を稼動させるには早く、窓を開けることが多くなった。

 いつものようにリリアと受付に座り、開けっ放しの正面扉を見つめるが、いつものように退屈な時間が流れていた。

「なぁ? そろそろ俺にも営業行かせてくれよ?」

「貴方が営業に行って、何ができるんですか?」

 最近シェオールでは、冒険者ギルドの建設に伴い、新たな観光客を集めようと町の活性化に乗り出した。そのためハンターギルドでもアルカナやミズガルドへ営業に行き、ハンターを集ったり、ジャンナの宣伝ビラを投函したりと、町の活性に一役買う事にした。

「ポスティングなら、一日五百件くらい入れてやるよ」

「一日千件は入れられないと、行かせるわけには行きません」

「鬼だな!」

「飛び込み二十件するなら、考えなくはないですよ?」

「それは悪魔だな!」

 俺はまだ一度しか営業に行ったことが無い。その時はジョニーと一緒にアルカナへ行き、街頭でチラシを配ったり、ポスターを貼ってくれる店に飛び込んだりと、かなり大変だったが、こうして受付でボーっとしているより全然良かった。

「じゃあ、今日は解体屋に行かしてくれよ?」

「仕方ないですね。今ヒーと受付を変わってもらいます。そうすれば貴方も退屈はしないでしょう?」

「あっ! ズルッ! お前も退屈なんだろ!」

「私はこれから事確に向かうだけです! これも立派な仕事です! 貴方では二度手間になりかねませんからね」

 事実確認は意外と面倒臭くて、まだ俺には書類を完璧に仕上げることはできない。

「くそ~」

 リリアはマスタールームへ行き、交代でヒーが受付に入った。

「調子はどうですか?」

「今日は全然人来ない。マリアもライセンス取ったんだから、毎日来いって話だよ」

「今日はミサキと買い物らしいですよ」

「ほんと仲いいなあいつら」

「ええ」

 ヒーはあれから随分社交的になり、今まで自分から話しかけることは無かった相手にも、積極的に会話をするようになった。

 恋をすると女は変わるというけれど、ヒーを見て、それはあながち間違いではないと思った。 

 表情も随分変わるようになり、見習いの俺と一緒に仕事をするときは、とくに明るい表情を見せるようになった。

 恋の進展は全くと言っていいほど無いが、最近では恥ずかしがりながらも自分から手を握ることを催促するようにもなり、とてもいい傾向であるのは確かだが、俺としてはまだ〝妹〟としての話だ。

 クレアの方は完全回復したようで、前以上に頑張ってクエストに参加している。その際、ゴンザレスとサイモンが強制的に参加させられ、クレアは二人のランクを上げようと厳しい指南をしているようで、二人は逞しく育てられている。

 ライセンスを一括取得したマリアも、ミサキとよくハントに出かけ、そこそこの成果を上げている。

 ミサキも、今回の活躍で剥奪された冒険者ライセンスを再取得でき苦労が報われ、教育者としても優秀なようで、問題を起こすこともなく、両Aランク取得者としてシェオールに貢献してくれている。ただ、たまにクレアと一緒にゴンザレス達をしごくときは、容赦は無いようだ。

 シェオールのギルドには、山亀を撃退した噂を聞きつけたハンターがやって来ることが多くなり、それなりに売り上げを伸ばしている。だが、戦慄の乙女とブロークンギアの二人のAランクハンターの存在を知ると、すぐにいなくなってしまう。ある意味でよい宣伝にもなっている。

 俺の体の方は完治したが、腰だけはマイが言っていたとおり、悪化した。

 全力疾走はほぼ無理で、背筋に掛けられる力も、六十パーセントを超えるともうやばい。そのうえ最近では膝まで痛くなる。ハンターとしての現役復帰は無理そうで、ギルドスタッフとして頑張っていくしかない。

 それと、これは秘密の話だが、山亀が目覚めた理由は、どうやらミサキが放った魔法のせいらしい。

 たまたまクレアたちがハント中にドラゴンに襲われ、たまたま逃げる途中にミサキと出会い、それをミサキの魔法で撃退すると、たまたまその魔法がヒットした山が山亀で、それが原因でたまたま目覚めて、その進路がたまたまシェオール方向だったらしい。

 話を聞く限りでは、どこまでが偶然で、どこまでが真実かは分からないが、それを正直に話し、罰を受けると言ったミサキに、今後シェオールのために貢献する事を条件に、リリアは許したらしい。

 このことは書類上には一切載らず、一部の関係者しか知らない噂で、俺も噂として受け止めた。

 この先、この間のようなドラマチックな事は起きないで欲しいが、その時は、仕事として頑張っていこうと思う。

 ギルドマスターのニル、サブマスターのリリア、先輩スタッフのヒー、ジャンナのシェフ、アントノフとジョニー、ホール係のフィリア。ハンターのクレアやミサキ、ゴンザレスにサイモン、ポーターのキールや、自警団のレイトン、ほかにもたくさんいるが、人との繋がりを大切にし、それをさらに広げながら、俺はここ、ハンター協会シェオールギルドで働いていく。

 最後になるが、アイアースの言葉を真似て、俺なりに格言を残したいと思う。

〝仕事に意味を求めるな! 仕事とは金を稼ぐ以外の意味はない! 求めるのなら、何故自分がその仕事をしているのか、その理由を求めろ! その理由を自分の為と言えたとき……それは人それぞれだと思う……〟やっぱり格言は無しにしようと思う。


 シェオールギルドは、本日も営業中。 


    

「リーパー。貴方も三ヶ月過ぎると、新人研修でアルカナギルドへ行かなくてはいけませんけど、大丈夫ですか?」

「そんなのあんの?」

「えぇ。ヒーは寂しがりますが、五日ほどで終わるので安心して下さい」

「今このギルドで頑張って行こうって思ってたのに?」

「はい。これも仕事です!」

 と、いうわけです。仕事はやっぱりつらい!


 ご愛読ありがとう御座いました。

 アドバイスや気になる点がありましたら、お教え頂けると幸いです。今後の作品向上のため、辛口のアドバイスお待ちしています。


 続編のギルドスタッフ! 2も投稿済みです。

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