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ギルドスタッフ 二日目終了

 リリアの意外な活躍を聞いた後も、依頼掲示板を覗きに来る客はいるものの、受付に来るのはヒーと会話をしたいだけの親父や、俺を冷やかす者ばかりで、業務としての受付は無いまま夕方を迎えた。

「もう我慢できん! トイレでも掃除してくるわ!」 

 ジャンナへ手伝いに行こうかとも思ったが、今日は俺が手伝うほどでもないようなので、ここは新人らしくトイレ掃除をする決断をした。

「そうですか。真面目ですね?」

 真面目な人って、自分では分からないみたいだ。

「ヒーには勝てないよ」

「そうですか?」

 また首を傾げた。本当に自覚は無いようだ。

「そうだよ」

「そう言ってもらえると嬉しいです。それではお願いします」

 凄いねこの子。とにかく、何とかして暇を潰さなければ、全く仕事をしている気にならない! かかってこい便所!



 激しいバトルの末、トイレ掃除が終わり戻ると、今度はヒーが女性用トイレの掃除に向かい、俺は初めて一人で受付カウンターに座った。

 客は来ないとは知りながらも、もし今来たらどうしようなどと思いながら緊張した。ヒー達はいつもこんな感じなのかと知り、意外と気が抜けない事に、受付業務の凄さを学んだ。

「お客様は来ましたか?」

 戻ってきたヒーを見て、俺は胸を撫で下ろすと同時に、頼もしさを感じた。

「いや誰も来てない。いや~初めて一人で座ってみたけど、ヒーって凄いんだな?」

「どういう意味ですか?」

「緊張したわ。客来ないでくれって思ったもん」

「慣れるまではそうですね。しかしそう思うのは、お客様に対して失礼がないかと思う気持ちがあるからです。リーパーには適正があるようですね」

 俺は良い先輩を持った。リリアならこうは言ってくれない。

「そうか? 普通の人は緊張すると思うぞ?」

「仕事に対して、軽い気持ちで向かう者の方が多いのが現実です。ですから、リリアはリーパーには少し厳しく接するのでしょう」

 それは昔からだ。

「それは元からだと思うぞ。まぁでも、俺を育てようと思う気持ちとでも思っておくよ」

「私がもっと厳しく教えられれば、リリアも苦労はしないのでしょうが……」

 おっと、あまり変なことを言えば、度を越すような指導を受けそうだ。

「それは困るわ。だって俺はリリアに言われるより、ヒーに言われる方が嫌だもん」

「そうですか? それは私には役職が無いからですか?」

 そんなに? というほどヒーは悲しそうな顔をした。

「ちっ、違うよ! ヒーに言われるとグサッとくるからだよ」

「リリアとは何が違うのですか?」

 急に真面目な顔になるヒーが怖い。

「あいつの場合は半分冗談だからな。というか慣れてるからかな」

「言葉とは難しいものですね。私も冗談の一つでも言えれば良いのですが……」

 リリアがあれだけちゃらんぽらんのところがある分、ヒーには余分に真面目さが与えられている。

「ヒーはそのままでいいよ。リリアが二人もいたら疲れちまうから」

「そうすれば、ギルドもさらに活気づくのではないのですか?」

「かもしれないけど……たぶん騒がしさの方が増すと思うぞ?」

「……そうかもしれませんね」

 ヒーは想像出来たのか、楽しそうな表情を見せた。

 そのあとも最後まで受付業務をこなし、リリアが戻ると今日の賃金を貰い帰宅となった。

 すっかり日が落ち、肌寒さを感じながら夜空の星空を見上げると、不思議な充実感に満たされ、一日が終わった。


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