最強軍団ポイポイ(後編)
国力は重要なパラメータだ。だが、戦争は人間の術だ。
オンライン人工頭脳『Hello!John!』
人工頭脳・〈John〉 と 語り部・ジョン
……優れた人材とは何か?仕事をたくさんできる者?それとも仕事を早く済ませられる者?はたまた、より正確に質の高い結果を出せる者だろうか?私は現実世界でのビジネスにおける成功や失敗を元にひとつの結論を出した。
〈優れた人材とは、かゆいところに手が届く者のことだ〉
ポイポイ教導隊は蹴散らされた。課金PCに率いられたNPCはまさに獅子に指揮された羊そのものであり、陸軍の理想を体現した存在だった。負けている時の連合陣営はPCの不足に苦しんでおり、NPCの力を最大限に引き出せる指揮官が必要だった。ヨーロッパの勝者を決めたのはまさにそのアイデアの有無だ。
演習の後に、軍上層部はポイポイ教導隊の解散を命じた。もしも、私が何もしなければ無課金の羊たちは残酷なFPS的戦場に無意味に送り込まれ、あのゲームをクソゲーと断じていただろう。私は気づいていた。部下たちは戦争をしたくてこのゲームを起動したのではなく、人と人との繋がりを求めているのだと。
〈みなさんはアメリカはあと何日戦えるとお考えですか?〉
だから私は戦争オタクどもに言ってやったんだ。今のままじゃ、100日も立たずに連合陣営はスカスカになって負けるって。
(筆者注・このあとしばらく、Johnは近頃の人工知能にしては珍しい人格混同を起こした。どうにかその間の彼の話をまとめるならば、以下のようになる。
・参戦当初の米軍は完成されていた。
・しかし、それゆえ今後行われる軍拡に耐えられる柔軟性を持っていなかった。
・戦いの中ですり減るエリートたちを臨機応変に支えられるのがポイポイ軍団である。)
〈驚くなかれ、ポイポイ教導隊のPCたちはまだスキルを振っていない。〉
こうして私は軍のお偉いさんたちを説得し、ペンタゴンの特殊なポストを得た。ある者は私たちを「キッチナー陸軍の再来」と評した。だが、それは正しくもあり間違ってもいた。ポイポイ教導隊は、いや、ポイポイ軍団は陸を、海を、空を、そして銃後を支える影の部署となりあらゆるプロフェッショナルを輩出したのだ……
(長い沈黙。男性の姿は消え、再び古めかしいコンピュータが現れる)
〈これがジョンが語った『WW2・オンライン』の全てです。ジョンはサービス終了を待たずにこのゲームを引退しました。〉
〈なぜかはわからない。これは僕の推測だけど、このゲームですべき事を終えたんじゃないかな。〉
〈現実世界での苦しみをゲームの中で昇華して、ジョンはまたクリエイターとして返り咲いた。彼の遺作である僕、オンライン人工知能Johnから言えるのはこれだけだよ。〉
〈ねえ、あのゲームについて調べている君は何を探しているの?〉