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22.デミキャット(3/4)

 というわけで、一旦レオナ達と合流することにする。

 ギルドハウスの大ホールに戻るとすぐに二人が駆けつけてきた。


「カイさん、どうでしたか?」

「三十分もすれば普通に喋れるようになるってさ。それと、俺達からも話を聞きたいらしいから、後でまた来てくれって」

「はぁ、よかったです」


 エステルは大きな胸を撫で下ろす。さっき出会ったばかりの相手をこんなに心配できるなんて本当に優しい子だ。


「依頼は満額支払いだったわ。はいこれ、取り分の三百ソリド。それにしても依頼主の村長、あんな化け物がいるって知ってたんじゃないでしょうね」

「隠して何の得があるんだ? 依頼のランクを落として費用を安くしようとしたところで、普通はアレと遭ったら即撤収だろうから意味ないだろ」

「……それもそうね」


 俺達がわざわざアイツと戦ったのは、たまたま誰かが捕まっていたからだ。そうでなければ、さっさと撤収して「依頼の内容を越えたヤバい怪物がいる」と村やギルドに報告して終了だ。

 俺一人なら、近所の村の手伝いという名目で退治に協力したかもしれないが、無関係なレオナやエステルは巻き込めない。


「でもおかげで助けるのが間に合ったんですから、これでよかったんですよ」


 ネコミミ少女が助かったと聞いて、エステルはさっきから自分のことのように喜んでいる。


 しばらく三人で話して時間を潰していると、受付カウンターの方から俺達を呼ぶ声が聞こえた。


「ん、もうお呼びみたいね」


 今度は三人で受付の奥に向かう。通されたのは祭壇の間ではなく医務室っただ。ココとかいうネコミミ少女はベッドの上で身を起こしていて、その横の椅子にパティが腰を下ろしている。


「ほら、あの子達があなたを助けてくれたのよ」


 ココは猫っぽい目で俺達をまじまじと眺めたかと思うと、ぺこりと小さく頭を下げた。


「手間を取らせてすまにゃい。お陰で助かったよ」

「もう名前は知られてるみたいだけど、一応自己紹介しておいたら?」

「んー、そうだにゃ。あたしはココ・ロックサンド。見ての通りデミキャットの冒険者だ。こっちだとけっこう珍しいみたいだけどにゃ」


 女の子っぽくない喋り方と「にゃ」なんて発声が混ざっているのが妙に印象的な口調だ。

 「にゃ」という言葉を置いとけば、グレーがかった髪をショートカットにして、動きやすそうな服を着たココの格好は、ボーイッシュというかマニッシュというか、とにかくそんな印象だった。


「俺はカイ・アデルで、そっちの二人はレオナとエステル。三人で依頼の仕事をしてたときにココを見つけたんだ」


 勢いで三人分の自己紹介をしてしまったが、二人とも俺の言葉に便乗する形でお辞儀をしたり頷いたりしていた。


「さて。ギルドとしては、依頼遂行中の予想外の事態について調査しておかないといけないの。だから、お互いに何があったのか教えてちょうだい。まずはカイ君達からお願いね」


 パティに頼まれたとおり、これまでの出来事を最初から説明する。


 依頼を受けてブルック村へ行き、季節外れのトリクイソウの駆除をしたこと。根本に死体が落ちていないなど奇妙な点があったこと。異様に大きなトリクイソウに捕まっていたココを助け出したこと。


 ブルック村の村長に書いてもらった達成証明書にも同じことが描いてあるので、パティも俺の話を疑ったりはしないはずだ。


「なるほどねぇ。それじゃあ、ココの話も聞かせて?」

「もちろんいいけど、一つ誤解を解いておかにゃいと」


 ココは不機嫌な顔になり、ややこしい喋り方で抗議した。


「あたしは魔物でもにゃい雑草に負けたりしてにゃいからね。あたしが戦ったのはもっと強い人間だし、そいつにだってちゃんと勝ったんだ」

「人間? 誰かあそこにいたのか?」

「そう。(はにゃ)せば(にゃが)くにゃるんだけど……」


 今度はココが自分の事情を話し始める。


 ココは冒険者ギルドで「強奪された商品を取り返して欲しい」という商人の依頼を受け、他の冒険者達と一緒に盗賊のアジトに攻め込んだそうだ。

 依頼は首尾よく達成。追手を撒くために分散してギルドへ戻ることになり、ココはブルック村近辺の森を通過するルートを選んだらしい。


 そこにいたのは、ローブに身を包んで顔まで隠した不審すぎる男だった。

 何をしていたのかまでは分からなかったらしいが、薬瓶に入った液体を森の植物に振り掛けているように見えたそうだ。


 ローブの男は「見られたからには生かしておけん」とお決まりの台詞を言って襲いかかってきた。

 ココも応戦したのだが、直前の戦いの疲労もあって形勢不利になったので、やむを得ず盗品の《バーサーク・ビースト》を使ってようやく撃退したらしい。


 後は俺達も知っての通り。《バーサーク・ビースト》の反動で気を失って、目が覚めたときには俺達に助けられていたわけだ。


「しかしまぁ、コストをオーバーしてたら回復しにゃくなるのは流石に予想外だったにゃ」

「ローブの男ってどんな奴だったの?」


 そう尋ねたのはレオナだった。


「魔道士というか研究者というか……いや、むしろ錬金術師かにゃ。四大属性のスペルだけじゃにゃくて薬品とかも使ってたから」

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