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18.初パーティ結成(2/3)

 小休止を終えた俺達は、さっそく小麦畑の横の森に向かうことにした。この村の小麦畑は森林を切り開いて作られたそうで、森と完全に隣接してしまっている。


 麦畑と言っても、この時期は種を撒いたばかりなので何も生えていない。小麦は種のまま冬を越して、春に芽を出して、夏になったら収穫できるようになる穀物だ。トリクイソウもこれと同じサイクルで生きている。


「……あの、トリクイソウってどんな植物なんですか?」

「あれ、知らないの?」

「すみません。(シティ)エルフなもので」


 エルフというと森に住む民というイメージだが、シティエルフは植物に詳しくないらしい。ひょっとして体力がないのもシティエルフだからなのか。


「トリクイソウは動物を襲って栄養にする植物だよ」

「ひえっ! た、食べちゃうんですか?」

「食べるんじゃなくて、肥料にするんだ。触手みたいなツルでネズミとかリスとか小鳥を締め上げて、衰弱死したら地面に落とす。後は死体が自然に分解されて土に帰って栄養になるのを待つっていう仕組みだな」

「うわぁ……」


 エステルがドン引きするのも無理はない。実際、カイ(おれ)にとっては少し珍しい植物にすぎないが、(おれ)の知識だとモンスターじみた怪奇生物だ。


 見た目はツル植物だが、葉っぱが殆どなくて茎がとにかく太い。他の木々に巻き付いて成長し、枝に絡みつき、その木に止まろうとした鳥を捕まえてしまう。まるで寄生植物のようだが、巻き付かれた木も肥料の恩恵を受けられるので、どちらかと言えば共生に近い。


「人間も襲われちゃうんですか?」

「ツルに触ったら反応されるけど、大人の力なら簡単に振り解けるよ」


 Eランク冒険者には命の危険がない依頼が割り振られる。人喰い植物の討伐は高ランクの冒険者の仕事だ。依頼掲示板だと確かCランクかBランクの掲示板に張り出されていたと思う。


「ただし、死体を他の動物に食べられなくするのと、さっさと衰弱死させるために毒を分泌してるから、掴まれた部分は後でよく洗った方がいいけどな」


 そんな会話を交わしながら森の奥へ踏み込んでいく。

 エステルを不安にさせないために黙っていたが、子供や老人だとトリクイソウのツタを振り解けないことがある。森に入った子供が帰ってこない事件のうち、十件に一件はトリクイソウに捕まったせいだと言われるくらいだ。


 ブルック村の村長が冒険者を雇ってまで駆除を急いだ理由は、村の子供が犠牲になるのを恐れたからだ。木の実集めのお使いに行った子供がトリクイソウに捕まるのは珍しいことじゃない。特に木登りが上手な子ほど危ないとされている。


「森に入って五分か十分の距離……もうそろそろじゃない?」

「そうだな。ちょっと探してみるか」


 村長から聞いた辺りに到着したので、三人で手分けをしてトリクイソウを探すことにする。

 《ワイルドカード》を《探索》スキルに切り替える。満月草の群生地を探したときと同じ要領で探せばすぐに見つかるはずだ。そして案の定、五分と掛からずトリクイソウの群れに行き当たった。


「おーい、こっちだ」


 レオナとエステルを呼び寄せて、トリクイソウの駆除を開始する。


「トリクイソウは普通の木に巻き付いて成長してるから、根本の辺りを切り落せば簡単に処理できる。斧があればいいんだけど、剣でも充分だ」

「あの、私そういう武器は持ってなくって……」

「二本あるから片方貸すよ。レオナは?」

「私は平気。コレがあるから」


 レオナの手元に白い金属製の槍が現れる。槍の長さは二メートル前後。森の中で振り回すには不便そうだが、動かない植物の幹を切断する分には何の問題もないだろう。


「なるほどね。それじゃ、さっさと片付けますか」


 トリクイソウの駆除は大して難しい作業ではない。

 大人の腕くらいの太さのツタを叩き切る力があれば充分で、他に必要なのは木に巻き付いたツタを見逃さない注意深さと、集中力を維持する根気強さだけだ。


 俺とエステルは双剣を一本ずつ分け合い、レオナは自前の槍を使ってトリクイソウの茎を断ち切っていく。

 順調に作業を進めながら、俺は妙な違和感を感じていた。


「おかしいな……死体も骨も殆ど転がってない」

「私も気付いた。やっぱり変だよね」


 俺が呟いた疑問にレオナも同意する。

 トリクイソウは捕まえた小動物の死体を根本に落とし、自然分解で養分に変える植物だ。当然、根本には分解中の死体や分解後の骨が転がっている。だが、この辺りにはそれらの痕跡があまり見られなかった。


「獲物を捕まえられてないとか?」

「だったらこんなに育ってないだろ。どう考えても不自然だ」


 駆除作業を続けながらそんなことを話していると、少し離れたところからエステルの声が飛んできた!


「た、大変です! 早く来てください!」


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