聖杖物語(セインステッキストーリーズ)黒の剣編+(プラス)Act5
美姫と真姫の前に少女が一人、遠い目をして佇んでいた。
その少女は、2人が”守りし者”だと知っていた。何故なら・・・・
こちらをずっと見ている少女に美姫が、近付いて、
「あ、あのー。」
美姫が尋ねると、
「・・・はい?」少女が答えた。
美姫が続けて、
「その、何か見ましたか?あたし達の事?」
少女は、答える事が出来ずにいた。美姫は、空かさず、
「見ましたね。あたし達が鎧を脱ぐのを。」美姫の瞳が鋭く光る。
だが目の前の少女は、瞳に涙を湛えて美姫をしっかり見つめて、
「・・・見ました。白銀色の鎧を脱ぐのを。・・・獅騎導士・・さん、ですよね。」
少女は、美姫にはっきりとそう答えた。そして、
「・・知ってるんです。・・いえ。あなた達のお蔭で、もう一人の方が持っておられる”水晶の光”のお蔭で今、思い出せたのです。」
美姫は不思議そうな顔をして、少女を見つめている。
ーそう、知っているなら良いけど・・-
見つめた瞳に、威嚇の為の光を宿し、
「・・・他言は、無用で・・お願いしますね。でないと、記憶を消さなくてはならなくなりますから。」
美姫の警告にも、気後れもせず、少女は薄っすらと笑みを浮べて、
「はい。」とだけ答える。
美姫は、少女を睨んで威圧をしてから、真姫の元へ歩き出した。その後で、少女が美姫に尋ねる。
「あ、あの。お名前は?」
美姫は振り向きもせず、ぶっきらぼうに返事した。
「神童美姫。あっちのが、真姫。姉妹なんだ。・・アンタは?」
美姫は、何気なく訊いてしまう。その少女は、何故か涙を流して答えた。
少し息を吸い込んで、少女はすっと顔を上げて元気良く言った。
「これからも頑張ってね。守りし者さん、あたしは・・・あたしは、美琴。冴騎美琴!」
そう答えた少女は、美姫に微笑んだ。
「どうやら関係者みたいね、真姫。」
少し肩を竦めて、美姫が言うと真姫も、
「その様ですわね。」
と、聖導器をポケットに戻しつつ言う。
「ほら、美姫お姉ちゃん急がないと。おじさん、また怒るよ。」
「あっ、そうだった。今日はJMBに行くって言ってたっけ。」
「走ろう!美姫お姉ちゃん。」
「OK!」
2人がJMBへ走る。西都街の中心に程近い大きなビル。病院からは、少し走らねばならない距離。
2人の姉妹は先程までの仲とは、とても思えない位仲が良かった。2人はビルに駆け込んで行った。
「で、こんなに遅くなった・・・と?」
「ご、ごめんなさいっ!」
二人揃って謝る。
メガネをついっと持ち上げた青年が言う。
「それじゃあ、2人ともおやつは無し。だな!」
「えーっ!そんなぁー。」
二人が揃って、ぶーっとむくれる。
「それで?その女の人って?」
「んーっ、関係者だと思うんだけど。最後に”守りし者”って、言ってましたし。」真姫が言う。
「不思議な感じのお姉さんだった。何故か、あたしを見て泣いてたし。・・それにね、思い出したって。」
美姫が、手を顎に当てて思い出す様な仕草で言う。
「思い出したって?その人がか?」
メガネの奥から鋭い瞳で美姫を見つめ訊き返す。
「うん。そう。」美姫が、見据えられているのに気付きいいよどむ。
「んーっと、なにか遠い所を見ている様な、澄んだ瞳をしていたんだ。」
青年は声色を変えて訊く。
「その人・・その女の人の名、聞いたかい?美姫ちゃん。」
強い言葉で訊かれて、
「うん。確かね・・・たしか、サエキ。そう、サエキ、ミコトって言ってた。」
<ガチャッンッ!>
青年は突然立ち上がり、椅子がひっくり返った。
「どっ、どうしたの?獅道おじさん?」
美姫と真姫は、後退りビックリして訊く。
青年、獅道はメガネを外しながら言った。
「ああ、ちょっとね。」
その瞳には、涙が浮かんでいた。
ついに美琴は、光を浴びれた。光を手に戻す事が出来た。
その時、アタシはあたしと出会っていた。
次回あたしは、帰れた・・・。
次回も読んでくれなきゃ駄目よーん!




