聖杖物語(セインステッキストーリーズ)黒の剣編+(プラス)Act2
中等部の制服を着て元気一杯で目的地まで走るその姿は、まるで豹の様に俊敏で、
肩まで伸ばした髪をカチューシャで止め、制服と髪を風に靡かせ美姫は、闇の魔獣鬼と魔獣界で闘う。
「美姫お姉ちゃん!」
美姫は、ビクリと体を強張らせ、
「ま、真姫。どうしてここに・・・」
「お姉ちゃんこそ、一人でナニしてたのかなあ。」
真姫が、うすら笑いを浮べながら近付く。美姫の顔が引きつった。
「い、いや。これは魔獣鬼の反応があってだな。」
真姫は尚も近付きながら、目を鋭く美姫を見据えて言う。
「お父様、お母様が何と仰られておられたか、覚えていますよね。お・ね・え・ちゃん。」
ピクウッ。美姫が凍りついた。
「あ、あの、その。」美姫がうろたえ、口篭もる。
「おねえちゃん、決して一人で魔獣界へ行ってはいけないって、言われたよね。ね、お姉ちゃん。」
真姫の薄ら笑いが、笑いになっていない。美姫がさらに焦り出す。
「ごっごめんなさい。許して、プリーズゥ。」
真姫が、にやりと笑う。
「ひっ!いいっ!!おっ、お願い許してぇ。」美姫が必死に許しを請うが、
「だぁめ。お仕置きが必要な様ですわね。美姫お姉ちゃん。」
慌てて逃げようとする美姫に、真姫の呪文が届くと。
「ひっぎいぃっ!」
美姫の頭に付けてあるカチューシャが縮まり、頭を締め付ける。
「や、やめて!許してぇ。真姫っ、真姫様ーっ!」
「駄目です。美姫お姉ちゃんは、いっつも一人で突っ走るからいけないのです。」
さらに、真姫が呪文を唱える。
「ぴきゃあっ!」
美姫が、悲鳴を上げてのた打ち回る。
「どうです?美姫お姉ちゃん、少しは懲りましたか?」
のた打ち回る美姫を見下しながら、真姫は少し得意そうに言った。
「解った、解ったから。もう許して!」
「本当に?」
「ほんとっ、本当だからぁ!」
「そう、では許してあげましょう。」真姫が呪文を解く。
「はあ、はあはあ。死ぬかと思った。」美姫が、肩で息をしながら、
「くそっ!このカチューシャがなけりゃ・・・。」と、言ったのを真姫が、
「なけりゃ?なに?」
美姫が、吼える。
「なけりゃあ、真姫になんて負けないんだから。」
真姫の目が、またすうっと細くなり、
「負けない?美姫お姉ちゃん。まだ、解っていないようですね。」
必死に、美姫が。
「呪文無しで勝負しましょ。ここなら、全力でやっても誰にも迷惑かかんないし。」
「ふふふっ、美姫お姉ちゃん。後で泣いても知りませんよ。」
「だっ、誰が泣くかっ!」
「いいでしょう。本当のお仕置きってやつを、与えてあげますわ。」
「くっ!いくぞ!」
美姫と、真姫が飛び退り、同時に右手を天に掲げて。
「聖召還!」を、大声で叫ぶ。
2人の身体が光に包まれ、剣が現れる。美姫は美豹に、真姫は白銀色に輝く剣士、獅真へとなる。2人が同時に咆哮を上げ、身構える。
美姫が、
「いくよ!」と言うが早いか、剣を繰り出す。
「ふふっ!甘いですわ。」真姫が、あっさりと剣で弾く。
「ちっ!」舌打ちをして、美姫が後に飛び退く。
「私の新しい剣、<道真>には敵いませんですわよ。」
真姫が、剣を振り払い勝ち誇る。
「くうっ、なんで真姫にだけ、水晶が選ばれたのよ。不公平だわ。」
勝ち誇った様に真姫が、
「選ばれたのが美姫お姉ちゃんだったら、地球が滅ぶからですわ。私が選ばれたのは当然の事!ですから。ほーっほっほっほ。」
「ううっ、厭味な奴!」
2人が馬鹿なやり取りをしている間に、しだいに闇が薄れ始めていた。結界が弱まり、魔獣界と現世が溶け込んでいく。そして・・・。
<しゅううううーっ>
二人の周りが光に包まれて、美姫が。
「今日は、これ位で許してやるわ。」
額から汗を流しつつ、美姫は鎧を解除する為剣を下げる。真姫も同時に振り下げ元の姿に戻る。
そこは元の世界、現実の世界。林の木陰で、女の人が倒れている。
「ちょうど良かった、ここ病院の裏庭だから。誰か呼んで来よう。」
美姫がそう言って視線をめぐらせると、
「やばっ、女の人が見てる。」
真姫も慌てて、
「どうしましょう。私達の姿、見られたかも・・。」
美姫は少し考えて、
「ちょっと、話してくる。ここで待ってて。」と、こちらをずっと見ている女の人に近付いていった。
美姫と真姫は、一人の少女と出合った。
その少女は病院に入院している人みたいだった。
その少女の瞳は、暗い闇に沈んでいた・・・。
次回、暗い闇の中で・・・
次回も読んでくれなきゃ駄目よーん!




