黒きモノとの邂逅
すみません、難産でした。
何度も書き換えては、2度ほど消えて。
こころもち短めです。
そうは思っても、体が動かない。
恐怖に身がすくんで、という物言いも温いほどに。
絶対的な強者。
見られるだけで己の存在が掻き消えてしまうほどの。
昨夜までと違って、その存在を量ろうとしたために、その存在の大きさに圧倒されてしまっている。
…ずるり、ずるり…
何か重いものを引きずっているような音が徐々に近くなって響き渡る。
その音は、首を真綿で絞められているのを想像させる。
地面をうかがい見るが、真っ暗闇で何も見えない。
この5日間ほど、夜空を確認してきたが、月と呼べそうなものはなかった。
なので、星明りが頼りとなるのだが、うっそうと茂った木々の下まで照らすだけの力はなかった。
視界が通らない以上、通り過ぎるまでやり過ごすしかない。
…ずるり…
この樹の下あたりで音が止む。
まさか、気づかれた?!
いやいや、違う、違う、だめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめ。
来ちゃだめだ。
来ないでくれ!
来るな!
ずぶり
聞いたことがないような音が響き渡る。
体を確認する。
どうやら、自分の体に異常はない。
あれは、何の音だ?
そして、あの圧迫感は徐々に消えつつある。
下を見ようとするが、それでもどうしてものぞき込むことができない。
明かりが差し込むまで、待つしかなかった。
胸のあたりに、ツッチーがいたことをようやく認識できるようになった。
空が白みかけてきたとき、ようやく下を見ることができた。
これは、どういうことだ。
そこに石人形が立っていた。
そばにはでかい蛇の頭があり、その頭には、昨日手渡していた鎌が刺さっていた。
そして石人形が鎌を指してから両腕を突き出しては引いていた。
「新しい鎌がほしいのかな?」
石人形がコクコクうなづく。
「わかったよ、いま作るよ」
樹から降りると新しい鎌を作ってあげた。
受け取ると昨日切り開いた藪に向かっていった。
切り開いた状態をのぞくと、100mほどは見通せるようになっていた。
で、起きたことを整理しようか。
この大きな蛇の頭はなんだろうか?
おそらくこの首が通った後が、この獣道だったんだろう。
ただひたすらグルグル回っていたに違いない。
そこを石人形と鉢合わせになって、刺された…ということかな?
それにしても見事に刺さっているものだな。
ながめると、口の先からしっぽの先まで2mほどしかない。
暗闇の中だともっと長かった気がしたんだけどなぁ。
気のせいかなぁ。
「なあ、ツッチー。助かったんだね、自分ら」
ツッチーがこちらを見上げていた。
結果として何事もなかった、ということに安堵した。
「そうだ、参考までにみてみよう」
ヤトガミ【死】
HP0/MP5700
適正 闇 氷/雷
STR 980
DEX 450
INT 120
LUK 88
ATK 820
DEF 714
MPR 510
「え?真面目にやりあっていたら、確実に即死ねるね」
そう思うと身震いをした。
それにしても、石人形はどうしてあの暗闇の中でも動けたんだろうか。
暗闇は苦にしないタイプなのかな?
ガサゴソ
振りかえると、大イノシシがいた。
一難去ってまた一難?