宴の輪の外で
最近文章を書くときには音楽を流しているんです。
ちらりとテレビで見た話ですが、勉強するときにはアップテンポの音楽だ有効だとか。
子供のころ、親には聞きながら勉強するなと言われてましたけど、むしろ聞いたほうがいいんじゃないって思ったんですが、よくよく考えたらラジオに集中しちゃって、勉強してなかったなぁと。
親は子のことよく見ているものだと、思い出しました。
春分日の祭りは続いていた。
もっとも、一日いっぱい続くらしいことは聞いていた。
みんな満足に食べ終えた、お昼をすぎたあたりから、誰かが持ちだした楽器-といっても打楽器が多い、でもってダンスが始められていた。
踊れはしない自分といえば、なるべく遠くからその様子を見守っていた。
なんかね、こう複雑な規則性のある踊りって、なぜか覚えられないんだよね。
高校の頃の文化祭の終わりでフォークダンスとかやったけど、足踏んだり踏まれたり、いい思い出がない。
みんなが歌や踊りに気を取られている様子を見ながら、少し頭の中を整理しようかと思った。
とりあえず、居場所はできた。
土魔法だけ使っていれば、何とかなるだろう。
でもって、まずはこの能力を把握しないとね。
使ってみないとわからないものが多いよね。
アイテムボックスっとあるけど、使い方がいまだにわからない。
ゲームだったら不親切この上ない。
あとそれから、ツッチーやシルバ、ロッポのこと、何がってことじゃないけど、なんかを何とかしたい。
なんかってのが、よくわからないんだけどね。
いつも一緒にいてくれるから、なにか恩返しみたいなことをしたい気持ちがあるんだけど、形にならないというか。
だけどさっき、ココナちゃんに「さみしい?」と聞かれたときに、いまさらながら独りぼっちだと思い知らされた。
頭が勝手に思い出さないようにしていたのかと思うと、脳みそって便利にできているなと。
そんなことを考えていたところに、肩をたたかれた。
振り返ると、ユーリだった。
『どうした、一緒に踊らないのか?』
「オドリ、シラナイ」
『そうか、よそから来たんだったな。となり、いいか?』
うなづいて、肯定した。
『実はね、セーキがこの村に来てうれしかったんだ』
と、照れくさそうに話し始めた。
え?いきなり…なに?ちょっと引き気味の顔をしていると。
『見渡すとわからないか?同じような年の男はあまりいないだろ』
いちおう、村の総出だから、だいたいの人たちが集まっている。
うん、少ないというか、ほとんどいないね。サリバンさんたちみたいな上の年代が多いな、だいたい子持ちだし、ほかはその子供らが多い。
『だから、こう気軽に話ができる相手がいないんだよね。サマーには2つ下のがいるけど、家の仲もあまりよくないし。』
ベニートといわれていた男を思い出していた。
『それと、村にも何人かいるけど、家があるせいか気軽にってわけにならなくてさ』
なるほど。ん。
「アメイリアハ?」
『アメリアかい?年は近いけど、女だし、嫁入り先もきまっているからね。あまり近づかない』
狭い社会だからね、変な噂が立つと困るってことかな。
『だから、こうやって気軽に話すことができるというのは、とてもうれしいのさ』
直球かよ、なんか照れるな。
『ところで、守り手にくる気はないかい?』
首をひねって考えてみる。
回ってもいいけど、畑が先なのかな?
「ハタケ、サキニヤルコト」
『ああ、そうだったね。村長の下で働くんだったね。それじゃ無理か』
「スマナイ」
『いや、そんなことはない。あ、そうだ…ん…』
ユーリがなにか言いにくそうにしているが、こっちを見た。
『村長のエリンは公正な人だから、まさかってことはないだろうけど。少し覚えていてほしいことがある』
なんだろう。
『エリンはもともとウィンストンの家のものなんだ。いろいろないきさつがあって家を出たんだけど、神のいたずらなのか同じ村に暮らすことになった』
おお?なんだ?なんか?混乱するぞ。
打楽器ぽいものを鳴らしている村長をじっと見るが、VR表示に家の名前がでてない。
この表示は、家を捨てたからってことかな?
『村長が兄で、アメリゴが弟なんだ。仲があまり良くないことは確かだから、ウィンストンに肩入れすることはないと思うけど、反発しあいすぎていさかいが起きることはあるかもしれない』
襟を正しすぎて、きつく当たるってことか。
『セーキは村長にとって強力な道具になるわけだから、いさかいに巻き込まれるかもしれない』
それは、なんとなく想像できた。
『そのときは僕を頼ってもらってもいい。サリバンも頼りになるが、家を持たないから』
「アリガトウ。ナイコト、ネガウ」
『そうだね。ああ、まだ回るところがあるから、また』
そういうと、手を挙げながら去っていった。
それにしても、村長がウィンストンの人だったとは。
サリバンさんは、知っているんだよね、きっと。
まあ、あまり気にしすぎても仕方がないか。
でも、さっきの村長とウィンストンのやり取りを聞いていたら、なんとなくわかった気がするな。
ただの兄弟仲の悪さってことではない気はするんだけど。
ああ、ロッポ。
サリバンさんを見つけ、ロッポに料理を持っていくことをそれとなく伝えた。
ツッチーとシルバには悪いけど、ね。
そうだ、家によってツッチーも連れ出そう。
機嫌が直っていればいいけど。
小屋に戻ると、ツッチーが見当たらなかった。
あれ?どこかに出かけた?
出かけるところもなさげだけど。
頭をひねりながら水場で水を飲んでいると、山のほうから枝をしょったツッチーがワキュワキュ帰ってきたのを見つけた。
「ツッチー…」
声をかけるが、こちらを無視するかのようにかまどの脇に枝を置いていくと、また山のほうへと歩きだしていた。
「ツッチー、どうしたんだい?」
声をかけても、反応がない。
まだ、なにか怒っているんだろうか。
こういう時の対処法って、よくわからないんだよね。
森の中に入っていく姿を見送る。
仕方ない、ツッチーは置いていこうか。
エイシャーの裏手にある門へと向かう。
「ロッポ!」
裏手の門のところにつくと大声で呼んだ。
少しすると藪ががさごそとしはじめて、ロッポが顔を出す。
「料理を少し持ってきたよ。たべるかい?」
持ってきた料理をクンクンと嗅ぐと、食べだした。
頭を撫でてあげていると、シルバが道の奥のほうを警戒するように前に出た。
「どうした?シルバ」
シルバが前を警戒しながら、後ろ手で制した。
なにか、いるのかな?
ロッポも食べるのをやめ、道の奥を警戒しだした。
道の奥から顔を出したのは、ロッポより一回り大きい何かだった。
そういえば、ツッチーのこと、みなさん知りたいですか?
いろいろ謎の行動をしているわけなんですが、あまりばらしにかかるというのも、それはそれでつまらないと思うとこでもありますが。




