四家
夏休み進行です。
いえ、ごめんなさい。
ユニークが500人を超えました。
ありがとうございます。
サリバンさんが真剣な目をして話しかけてきた。
『前に四家が面倒くさいという話しはしたな』
うなづき、肯定した。
『四家とも魔法の伝承家だ。サマー、ウィンストン、ノル、エイシャー。サマーとノルは火、ウィンストンが水、エイシャーが風だ』
うん?
『そう、土がいない』
おお、そうですか、気が付きませんでした。
それで、どうなるんですかね?
『土魔法ってのは、畑を作ったり森を開いたりと、こういった開拓をしている田舎ではかなり使い出のある魔法なんだ。だから、お前さんが土魔法の使い手だと知られたなら、それこそ取り合いが始まり、取れないと思ったらつぶしにかかるだろう』
え?つぶしに…ですか。
自分の顔がゆがむのが、わかった。
『加えていうなら、サマーとノルが同じ火魔法なためか、非常に仲が悪い。ことあるごとにいさかいは起こすわ、魔法を打ち合うわ、山火事になったこともあった。そのときは、ウィンストンが相当苦労して火を消したけどな。そこでまたサマーとノルがなすりあいをするって切りがなくなる』
うげ。
元祖と本家の争いより激しいんですね。
『サマーとエイシャーは開拓地辺りの魔物を討伐する役目を負っていて、張り合っている。仲良くやれば大きな力を持つことになるんだが、サマーの当代が小物でな、なかなか仲良くやろうとはしない』
どこの世界でも小心者はいるんですね。
『ウィンストンはうちの開拓の要だ。水場の少ないこの地方で、潤沢に水が使えるのはウィンストンのおかげだ』
ウィンストンと手を組むのが一番発展できそうですよね。
『それだけに気位がすっかり高くなってな。その地位が揺らぐなら、何をするかわからない』
え?もしかして、一番やばげなのが、ウィンストンなんですか?
『おまえさんは、話せないのと同じだ。そんなことに巻き込まれて何があるかわからない。だから、村長のところに逃げ込むんだ。いいな』
身の危険があるということですね。
のんびりと見張り小屋暮らしというわけには、いかないということですね。
それか、土魔法を皆で使いまわせるようにしたいってことですかね?
『まあ、ウィドの収穫を終えたら、また考えようか。そういえば、明日どこまで行くかわからんが、夕方には帰りたいんだがな』
ギリギリかなぁ。
急いで歩けば帰れるかもしれませんね。
『先に寝てくれ。火番するから』
ん?とおもって、シルバを指さす。
『ん?やってもらえるのか』
肯定する。
「シルバ、お願いがある。この火が消えないように、焚き木を足していってくれないか」
右手を心臓に重ねる。あれ?心臓ってあるのかな?
「やってもらえるようですよ」
『いまのはできるってことか?』
肯定する。
『そうか、頼むよ』
そうして、眠りにつく準備をした。
『それじゃ、眠るぞ』
はい、おやすみなさい。
辺りに生えていた草をまとめて、クッション代わりにして眠る。
少し考える。
四家か。
自分がどこの家についたとしても、村の中はアンバランスが出るということか。
開拓というなら水の魔法なら相性がよさげな気がするけど、どうも仲良くやれそうにないらしい。
風と組んでも効果的な活用法が思い浮かばない。
村長の下で身を守るのが、一番いいってことだろうか。
そういや、会社っていろんな意味で守ってくれていたんだっけ。
クライアントが乗り込んできたときも、坂上さんが守ってくれていたっけ。
そもそも、発注が無理無理で工程が取れなくって、現地確認なんかできなくて、基本設計組むのが精いっぱいで。
そういったことわかってって発注しているんじゃないですかと突き詰めたら、結局向こうの担当がサボっていたツケをこっちのせいにしてたんだよな。
あの担当、なんていったっけ?
そのあと坂上さんから、夜通し付き合ってもらって飲みあるいたんたんだっけ。
そのまま出社したら、杉沢さんにあきれられたんだっけ、酒臭いって。
そんなことを思い出しつつ、眠りについた。
『おい、起きろ』
目を覚ますと、まだ薄暗い中でサリバンさんが支度していた。
『今日こそウィドを手にするぞ』
サリバンさん、どんだけウィド好きなんだか。
それはそうと、まずは腹ごしらえですよ。
シルバは、ずっと火番をしていてくれたようだ。
「シルバ、ありがとう」
右手を心臓の上に重ねた。
どうやら、シルバはこのポーズがお気に入りらしい。
そういえば、ツッチーは元気にしているかな。
辺りに生えていた食べられそうな草を採って、また石鍋で煮込んだ。
そうそう、新しいのを見つけた。
プーム草
HP5/MP10
適正 水/火
食用。全部食べられる。
根はニンジンのような味がしたが、紫色をしていた。
久々の根野菜だったが、意外においしかった。
サリバンさんと分け合って食べると、出発した。
そこから、2、3時間も歩くと、ウィドの樹が見えた。
「サリバンさん、あれがウィドの樹ですよ」
そこそこ大きめの樹を指さし、「ウィド、ウィド」と話しかけた。
『おお、あれがウィド!』
駆けだすと危ないですよ、草が深いですから。
あ、転んだ。
「だ、大丈夫ですか?」
『いててて』
ん?
『これがウィドの樹か。実は…どこだ?』
実がない。
サリバンさんが不思議そうな顔をしてこちらを振り返る。
え、自分が全部取ったわけじゃないですよ。