麗しの果実を求めて…
ブックマークが増えました。
ありがとうございます。
ご飯がおいしいです。
『そいつは、人を襲う。だからダメなんだ』
「え、ロッポ。お前、人を襲ったことあるのか?」
ロッポは横にブンブンと首を振る。
「襲ったことがないそうですよ」
『だから、何言ってるかわからねぇんだよ』
「んむぅ。……そうか」
地面に簡単な絵を描いて示す。
ロッポを示す小山のようなイノシシが、人を襲ってないよと、バッテン印を入れる。
でも、どうもバッテン印が通じないようだったので、首を振った。
『襲ったことないって?』
サリバンさんは、疑うようにつぶやいた。
「あ」
あの蛇の頭が頭に浮かんだ。
地面に蛇の絵を描いて、サリバンさんに示した。
『こいつじゃなくて別のヤツだというのか?』
うなづいて肯定した。
これは、死体があるところまで連れていければいいかな?
ウィドの実まで行こうとするなら必然的に前を通ることになるんだけどね。
地面の蛇の頭を指さし、死体があっただろう方向を指さした。
『え、こいつがいるところまで連れていくってことか?』
肯定する。
シルバを指さし、地面の蛇の頭に槍をはやした。
『えええ、こいつそんなに強いのか?こいつが仕留めたということか?!』
たぶん強いんでしょうね。
サリバンさんの3倍くらいはHPありますよ。
もっとも、戦闘レベルはわからないけど。
『んむ…』
ここでこうしていても仕方ないので、ロッポに声をかけて先に行かせる。
「ロッポ、昨日のところまで戻ろう。悪いけど先に行ってくれないかな」
ロッポが歩き始め、自分、シルバと続いた。
振り返ると、ちょっと離れてからサリバンさんが続いてきているのを確認した。
何度かのカーブを過ぎると、昨日森から出てきたところまで戻ってきた。
『おい、こんなところに道なんてなかったぞ』
シルバを指さして、草を刈るしぐさをする。
『こいつが開いたってことかい。いろいろ器用なもんなんだな』
シルバは、表情を変えずに右手を心臓の上に重ねてトントンと叩いた。
誇りに思う、ということなのか、単なる自慢なのか…。
そこから山のほうに入っていく。
崖は、自分以外は簡単に上っていった。
やはりサリバンさんの狩人としてのレベルは高いようだ。
そして、あの広場へと戻ってきた。
そこには、石鎌が突き刺さっていた蛇の頭が鎮座していた。
『こいつは…』
サリバンさんが、絶句していた。
蛇の頭は、ほかの獣に食われることなくそこに残っていた。
息を吹き返すことがなくてよかった。
なんか、黙っていたら復活しそうな感じだよね。
サリバンさんが言うには、こんな生き物は見たことがないらしい。
そして、このあたりはなぜか生き物がほとんどいなかったらしく、狩りにならないので、だれも立ち入らなかったこと。
たまに大イノシシを見かけるので、てっきり森の主だと思い込んだことを話してくれた。
そうか、もともといないのか。
だから、食い散らかされずに済んだってことか。
それはそれで解決しない謎があるんだけどね。
あの鳥みたいの、サリバンさん知っているのかな。
『ところで、こいつはなにもんなんだ?』
首をかしげる。
いや、ヤトガミって名前はわかるけど、存在自体が何者かってことだよね。
『まあ、いいや。なんか得物になりそうなもの、あるかな』
サリバンさんはそういうと、牙や皮の部分などを剥いでいった。
『なんか形になったら、選ばせるからな。一応決まりで。半分は村で分けるから。すまんな』
いえいえ、それで村に受け入れてもらえるなら、ありがたいっすよ。
『それで、ウィドの実はどこにあるんだ』
獣道を指さした。
「ロッポ、お腹すいたろ。食べてきていいぞ。明日くらいには戻るから」
ロッポがうなづくと、藪の中へと入っていった。
『お、いいのか』
肯定すると、歩き始めた。
自分、シルバ、サリバンさんの順に並ぶことになった。
少し歩いていると、後ろからサリバンさんが話しかけてきた。
『すまなかったな、疑って。あんなにおとなしいもんだとは思わなかったんでな』
後ろを向き、首を振った。
また二人と1体は黙々と歩き始めた。
数時間後。
『セ、セーキ、どこまで歩くんだ』
あと半日ですよ、サリバンさん。