ドゥーン再び
話しを聞くとゲンローというのは、フンバルの実の息子で、家業の手伝いをしながら請負人もやっていたんだそうだ。
どこかの街でいい斡旋があったとかでこの街を離れた切り帰ってこなかったのが、3年前のことだ。
「そうか、生きていたか」
フンバルが一言もらしてからは、黙ったままになってしまった。
いつも怒るか渋い顔ばかりだったのに、やけに情けない顔になっていた。
長い沈黙に耐えきれず、話しかけた。
「その商隊で働くか死ぬのどっちしかないって、言ってました」
「そうか、たぶん闇商売だろうな。そうか、それじゃ戻ってこれないな」
闇商売は、金を稼ぐためなら何でもやるという。
ゲンローはそういった仕事をする連中にだまされたか、捕まったのか、どちらかなのかもしれない。
「ユーリ、しばらくここから出るな。闇商売のやつらがこの街に入るかもしれないからな」
「あ、はい。わかりました」
こうしてドゥーンに足止めされることとなった。
「まあ、せっかくだから、金物磨きしろよ。色は付けてやるよ」
そして、20日ほど過ぎ、散々手伝わされたころ、一人の男が訪ねてきた。
ドゥーンの斡旋組合の名はホッスという裏方の人だった。
「フンバルさんにお願いがあってきました」
「なにかな」
「息子さんにゲンローという人、いましたよね」
「ああ、確かにいたよ。いまじゃどこ行ったのかわからんけどね」
「3日前にイコンに向かう街道で、武装した商隊同士のいさかいがありまして、そのとき死んだ護衛の中にゲンローと呼ばれていたものがいました。前々からいたうちの人間に顔を見せたら、間違いないということです。それで、斡旋組合まで来ていただければと思うんですが」
「そうかね。一応は見てみようか」
捕まっていた商隊に見つかってはいけないと、一緒に連れて行ってくれなかったが、しっかりと金物磨きを言い渡されてしまった。
夜が近くなったころ、フンバルが大きな荷物を持って帰ってきた。
「ユーリ、すまねぇが、ひとりにしておいてくれないか」
「はい、わかりました。寝床にいます」
「そうしてくれ」
その夜、作業場からは嗚咽だけが響き渡っていた。
振り上げたこぶしの下ろし先が見つからず、結局こんな話になってしまいました。
すこし時間がかかってしまい、すみません。