第八話「贈り物」
アサルトライフル------実用的な全自動射撃能力を持つ自動小銃の総称である。自動小銃とは、発射時の反動・ガス圧等を利用した機構により弾薬の装填・排きょうが自動的に行われる銃だ。
引き金を引くごとに一発ずつの発射となるセミオート射撃のみが可能な半自動小銃と、引き金を引き続ける間は連続して発射されるフルオート射撃が可能な全自動小銃に分けられる。
ちなみに全自動小銃は広義の機関銃であるが、個人装備である自動小銃と、制圧射撃用の機関銃は区別される。
【ゴブリン襲撃事件】の際にリボルバーだけでは弾数、連射、リロード速度が不足だった。
引き金を引くたび指が痛くなったし、文字通り痛感した。
魔術の使用で結果は良かったが、もし数体だけ生き残っていて襲ってきたら俺は生きてはいなかっただろうし、ミーナたちも守れなかった。
今思うと本当に幸運なことなのだと思った。
(今考えると背筋が震えるな)
(それでも、リボルバーって言うのは凄い性能だね。一発で倒しちゃうんだもん)
だが、大群で襲って来た時の場合の事を考えると、新兵器開発は必須だ。
そこで、アサルトライフル【HK416(エッチケー・フォーシックスティーン)】を作ろうと思った。
HK416は2005年ドイツが開発したガス・ピストン式の弱点を克服した世界最高のアサルトライフルだ。
ガス・ピストン式またガス圧作動方式と言うが、弾薬の発砲時に発生する燃焼ガスの圧力を利用し遊底を後退させ次弾を装填する自動装填式銃器の作動方式の一形態である。
そのガス・ピストン式の銃は、発射時の熱で銃身が歪み命中精度が落ちる特有の現象が発生する。さらにその熱が影響し砂漠などの環境下で銃の動作不良を起こす事がある。
しかし、このHK416はこの問題を銃身の強化によって軽減させ、命中精度の低下を防いでいる。
ガス・ピストン式化には二つの動作があるが、この銃に採用されているショートストロークピストン式だけ説明しよう。
ボルトキャリアとは独立したピストンのみが短距離を後退し、ボルトグループ(ボルトキャリア、遊底)が、後退時に生じた慣性のみで後退する方式。
その動作から“玉突き式”とも呼ばれる。
この玉突き式で、機関部内に高温で汚れた発射ガスが一切入らず、保守性、耐塵性が向上。銃身は冷間鍛造技術の採用によって長寿命化され、20,000発以上発射しても銃口初速が衰えず、命中精度が維持できるとされている。
さらにテスト時に泥水に漬けた直後でも正常に作動した結果も出している。
前世では最高のアサルトライフルと言ってもいいだろう。
これの完全再現は不可能だろうが、最低限の機能は可能だ。
だが問題はまた弾薬だ。
ライフルの弾薬はハンドガンと、見た目も中身も全然違う。
中身の発射薬はライフルの方が、ハンドガンより燃焼速度が遅い。
燃える速度が遅いと薬莢や銃身のなかの密閉空間で圧力が高まり、速度・エネルギーも高い弾丸を発射する。弾丸もハンドガンの弾芯より細長く、薬莢もワイン瓶の様な形のボトルネックというものになる。
「(自分の命がかかってるし、がんばらなくてはな。構造は本で読んで覚えているからある程度はダイジブ、ダイジブ)」
銃身ではオリハルコンを使用することで解決できるだろう。
母さんがくれた本に書いてあったのだが、オリハルコンはマナを吸収して硬化する性質がある。魔法陣を刻めば、蓄積したマナで簡単な魔術も使用可能。
相手の魔術を吸収し、それを攻撃にも転用できるので、鎧に使用される。
多分だが、このゴミ置き場にも少しならあるだろう・・・・・・恐らく、微量に。
◇
五か月後。
試行錯誤と実験で失敗を繰り返してやっと、やっと完成した。
見た目は、M4カービンのカスタムに見えるが、中身は全くの別物。
銃身には少量だがオリハルコンとミスリルを使用して、軽いうえに強度が確保できた。
でも、白銀色だと目立つので本来の色の黒にしたら黒光りした。
まさに、おニューの武器て感じ。
弾薬も雷管魔石と射薬魔石を何度も試射して5.56mmNATO弾(魔石仕様)とマガジンも再現できた。
思わぬことに火薬じゃなくて魔石を使っているからか、汚れが全くない。
オリハルコンがマナを吸収していたのだ。
だが、マナの吸収が多すく硬化しすぎて衝撃に耐えられなくなる。その為、鎧に使われる魔法陣でそのマナを排出するようにした。
無論、そのマナを再構築して弾にする事も考えている。
だが、今の俺の頭ではそこまでの力は無い。どうやって、薬莢をまた再現するか、またそのマナで自動、しかも高速で魔石をどうやって生成するのかなどの難題が立ちふさがるのだ。
だが、今は、素直に喜べる。前世で作ったどの作品以上に。
そしてアサルトライフルHK416を完成した事で、もうかなりの達成感。
これには涙が出るほど喜んだ。
泥まみれになりながらもゴミの山から少しのオリハルコンを探り集めて、何日も爆発失敗を繰り返したんだからな。
ダンッ!
「くッ!――――」
そして、今も完成した嬉しさを噛みしめて試射をしている。
引き金を引いて発砲し、エジェクション・ポートから空薬莢が出て宙を舞う。
リボルバーに比べて威力、反動、火薬燃焼音がどれもケタ違いに向上していた。
今度は身体強化を今までより強めてフル・オートマチックに切り替えて連射しする。
ズタッタッタッタッタッ――――――――!
全弾撃ち終え身体強化を解いた。
強化を解いても身体にジーンとしたしびれが残る。
この感覚はたまらない。
初めは、バラバラに弾がよからぬ方向に飛んでいったが、銃身の太さや弾丸の射薬魔石の密度を変えたら、大体良くなった。これなら実戦でも問題なく戦える。
さらに、この銃はオプション装備が取り付け可能なので、スコープや追加マガジンなども付けられる。
今度作っておこう。
そして、マガジン内の弾丸全弾撃ち尽く、ストックに用意したマガジンを装填した。
「ふう・・・・」
「あの~ししょ~」
「ん?」
「ししょーは魔術学園に入らないのですか~?」
「どう、だろうね・・・・・入らない、かな。特に必要なさそうだから」
次弾の装填し終えるとゼミルが聞いてきた。
イディアールのレルムッドに魔術学園がある。
確か有名な冒険者や軍人とか、優秀な卒業生が出ている世界一の名門校となっているんだっけ。中立国にあるから帝国や連合の出身者も数多く在籍してるとか。
名門校に入れば将来も安泰だと考えている生徒がほとんどらしいが、学園に入るためには金がかかる。
その為、貴族か金に余裕のある人物ぐらいしか行かない場所となっているって聞いたけど。
でも、ゼミルの場合は成績が優秀なら学園側が負担してくれる制度があるみたいらしいから、多分そっちを目指しているんだろうな。
学園で知りたいこともないから、今まで気にしたことも無かった。
「ゼミルは行きたいの?」
「前は考えていましたけど、ししょーに習っていれば十分かな~と」
「嬉しいことだけど、ぼくだって知らない事を学べるかもよ」
(現にまだ九歳だしね)
(そうだよ!自覚してるよ!)
「自分のやりたいことをすればいいと思う」
「そですねぇ~~」
そして俺は時計を確認した。
剣の鍛錬に間に合う様にと爺様から懐中時計をもらっていた。
この世界でも、一日の時間は24時間。前世と変わらない。
3時近いから、そろそろ休憩する頃だな。
「みんなー、少し休憩しますよー」
「「ハーイ」」
なんか、遠足に来た先生と生徒みたいな感じだな。そんなことを思いながら自分が自作した水筒を口に含んだ。
中身はハーブティーに近いお茶。
この村ではこのような茶葉の栽培もしているので、メイドに頼んで用意して貰っていた。
ああ、なんか緑茶が飲みたくなってくるな。
すると、ミーナが顔を赤めながら俺に話しかけて来た。
「あの・・・・レド・・・・・あのね・・・」
「ん?」
「私を・・・セイドレイにしてください!」
「ブフォーーー!!」(おやおや)
「ゴホッ!・・・ミッ、ミーナ・・・・ゲフン!・・・自分が何を・・・・ゴフッン!!言ったのか理解しているのか!?」
どこでそんな言葉を!?
「うん。ドレイならいつも一緒にいて、セイドレイはその中でも特別に可愛がってもらえる人のことって野菜売りのおじさんが言ってたもん」
サリサとレンヤを変な目で見ていたあのオヤジだな、子供に何を教えてんだ。
(ふふ・・・・・中々面白い事を言う子だね)
(少ししかあってないし、本当の意味を理解していないだけだろ!)
「それにヘーレンも言ってたもん。私、レドとずっと一緒にいたい」
「へーれーんー!ミーナに何てこと教えてんの!!」
二人は後ろに後退しているヘーレンに詰め寄っていた。
いやーしっかし、驚いた。
その年で性奴隷に興味を持つとは。おかげでダイナミックに吹き出してしまった。
余計な知識を植え付けたヘーレンは、シャーリア達に任せてることにして、しかし何で性奴隷なのだ?恋人や夫婦でもいいのではないか?
「なんで、性奴隷なの?恋人でも夫婦でもいいんじゃないの?」
するとミーナは顔を曇らせて俯いたが、すぐに顔を上げて話し始めた。
「だってレドは貴族の人で、私には相応しくないから、でもレドの側にいられれば幸せだから――――」
ああ、そういうことか、成程な。
貴族同士の事情で嫁を決めなきゃいけないから、そこを気にしたんだな。
貴族と平民の結婚なんて、子供の童話レベルだもんな。
だから彼女は自分の立場を考えて、でも一緒にいたいから性奴隷という結論に至った訳、か。
爺様はそんな政略結婚的なものは・・・・・・・多分しないと思うけど。
他の貴族に付け込まれる可能性が無い訳じゃないからな。
「ミーナ。確かにぼくは貴族だ。だけど好きになったらその人と同じ立場で一緒に居ても大丈夫だと思うよ。それに奴隷として女の子を扱うつもりはないから」
「・・・・・じゃあ、私たちの事は?」
事を終えて、戻ってきたシャーリアが聞いてきた。
後ろにはゼミルに治療されているヘーレンが見える。お仕置きが済んだようだ。
やっぱりフラグだったか、自分の勘違いかと思った。
つり橋効果は偉大だな~~。いま、マジでそう思える。
だが、みんなから誰かを選ぶなんてできない。
何せ前世の俺はかわいい幼馴染も居なければ年頃の女の子と手を繋いだことすらないんだから。それなら、モテモテ男になる夢を見たい時はある。
前なら他の成金のモテ男は爆殺してやろうと思うがな。
でも確か前のテレビで前世のヨーロッパの皇帝はハーレム状態で民衆に人気があったらしいけど、そうでない皇帝は暴君とまで言われ最後に暗殺された事例があるらしいからな。
よろしい。なら、ハーレムを作ってやろうじゃないの。戦争ばっかりの世界で生きて行かねばならんのだ。ハーレムくらいつくらなきゃこの世界で、何を楽しみに生きていけってんだ。
俺はマジックバックから鉄の塊を取り出し、4つの指輪を錬成した。
この世界でも求婚の際には指輪を贈る。
そして一人一人の指に錬成した指輪をはめた。ただの鉄の輪っかだけど。
「みんなには内緒ですよ。他の貴族たちがこれを口実に何か言って来る可能性もあるので大人になってから、身に着ける様にしてくださいね」
「「はい!」」
「よし!ではこの戦争で生き残るための特訓を始めましょうか」
そしてそれぞれの課題をこなした。
ミーナは攻撃魔術の訓練と魔力の底上げ。シャーリアは錬金術で銃のメンテナンスと弾の生成の仕方。ヘーレンは魔力のコントロールと銃を使った戦闘訓練。ゼミルは治癒の合間に自分の身くらい守れるだけの攻撃魔術の練習。
4人との訓練・練習は面白おかしく、楽しい日々だった。
◇
--------村を出る日------------------
聖暦534年。村に来て一年ぐらい経ったので、テルミナスに戻らなくてはいけない。
帰る前日には爺様が村に帰ってきたのだが、ゴブリン襲撃事件の内容を詳しく聞くと爺様はすぐに俺を抱きしめてきた。「心配したぞぉーーー!!」とか「良くやったなぁーーー!!」とか言って。
だが強すぎで肉質高い腕の中で失神しかけた。
メイドたちの静止がなかったら、マジでヤバかった。
予定では今日の午前中に村を出るので昨日から出発の準備をしていた。
その中で昨日ミーナたちに別れの挨拶をするために村の畑の小さな丘に向かった。ミーナを助けたあの丘だ。
そこで、みんなにそれぞれ俺が自作したプレゼントを渡す予定だからだ。
俺が居ない間、何かあるのか分からないご時世だ。備えをしておいて損は無い。
「みんなに教える事はもうあまり有りません。でもその力に慢心しないで無理せず鍛錬してね」
「「はい」」
「じゃあ、みんなにこれをあげます。護身用くらいにはなるでしょう。まずミーナ」
「ありがとう!綺麗・・・・」
まずミーナには高純度の魔石に魔術の増幅魔法陣を刻んだピアス。
ミーナは火や風の中級クラスを簡単に発動できる。しかも結構な回数で発動できるまで成長していたので、それをさらに増幅させるタリスマンを作った。
火と風が得意のようなのでそれに特化し威力と回数を向上させるようになっている。
ピアスにしたのはそれぞれ左右の耳に常時身に着けていられるからだ。かなりの純度だし結構使える。
後は自分自身で技を編み出す事を目標にさせた。
「次はシャーリアね」
「ありがとうございます。大事に使いますね」
シャーリアにはXDM、ハンドガンを与えた。
アサルトライフルよりこっちの方が使いやすいと思ったから作った。
XDMはグリップ廻りをスリムなデザインになっていて、女性でも使いやすいハンドガンだ。
弾丸は16発入りマガジン5つと、弾400発を木箱に入れて渡した。
当然メンテナンスも教えてある。
「次はヘーレン。使い古しだけど、君専用に改造してあるから」
「ありがとう!」
ヘーレンには俺が最初に作ったリボルバー。
短刀を使った近接戦闘でも戦えそうなので、銃身の下に小さい刃を着けた銃に改造してやった。
これなら短刀を出す手間も省ける。
リボルバー用の弾丸も木箱に240発積めておいた。
近接戦と遠距離攻撃が可能なポジションに就いてくれるだろう。
後は、最後まで油断しないことだな。
「最後にゼミル。君のは古典的だけど、純度は多分かなりのものだから」
「ありがとうございますね~」
最後にゼミルに頭にソフトボール並みの大きさの魔石を付けたロッド。
彼女は戦闘系の魔術よりサポートしたり、相手の油断を誘う催眠系の魔術が得意みたいなのでロッドの方がいいと思った。
傷ついたりしたら治癒しても良いが自分の限界を超えない範囲で頑張るように言った。
全員にプレゼントを渡して、とても喜んでくれた。
一生大事にすると言っていたが、銃はともかくピアスやロッドは消耗品扱いなんだがな。
「やっぱり一緒に行っちゃいけないの?」
「医院長先生には恩があるでしょ?それを無下にしてはいけない。だから、魔術学校で会うことを約束するよ」
最初はみんな一緒に付いて行きたいと言った。
しかし、俺は断った。
孤児院が無くなって、新しい家を作るための資産をあつめなくてはいけないからだ。
医院長先生の往診だけでは工事開始だけでも補える額では無い。爺様がいくらか出すらしいけど、それ以外に、他の子の食事代だってバカにできない。成長期の子も居るし。
医院長の恩返しにと思わないと、今後の子供たちが可哀想だ。
だから新しい家が出来るまでは村長の家に寝泊まりして、露店のバイトなどで生活資金は自分で何とかするように言い聞かせた。
しかし、それでも納得しないから、魔術学園で会うことを約束してようやく納得させた。
貴族になるにはに一度、王都に行く必要がある。
その王都がレルムッド。つまり魔術学園がある。
約束の内容は学園に入っていれば俺が迎えにいくというものだ。
学園出身なら、バルケット家のメンツも守れるし、爺様も文句はないはずだ。
彼女たちと合流すると、一緒に暮らすにはこの方法しかなかった。
確か俺が15歳の誕生日を過ぎるまではテルミナスで過ごすと言っていた。
その頃はみんないい年になっている。美人に成長しててくれよ。
「よーし、がんばるよー」
「調子に乗って痛い目に合わないようにね」
「あんまり怪我すると治癒してあげませんよ?」
「う~~」
皆でひとくくり笑ったところでミーナが顔を付けて来た。
「ミーナ・・・・・?」
「レドのニオイを忘れたくないから・・・・・」
ミーナは俺に抱き付いてゴロゴロしながら俺のニオイを堪能していた。
間違ってはいけない。
ネコはニオイよりも目で獲物を狩る動物だ。
そう考えると彼女はニオイフェチなのだろう。でも俺は拒絶しないで、彼女の頭を優しく撫でてやった。
6,7年は会えないからな。嬉しそうな顔をして微笑ましい。
そして俺は別れの挨拶を済ませ、爺様たちがいる村の入り口に向かった。
みんなは俺が見えなくなるまで手を振っているのが見えていた。
村の入り口の爺様たちと合流し馬車はテルミナスへの帰路についた。
(・・・・・また、あの山道を通るんだよな・・・)
(そういえば、解毒魔術は使うなって言われたからね)
ハァ・・・・・また、酔いに苦しめられるんだな。
◇
・・・・・・・数分後。
村を出発して森を抜け、山道に差し掛かった辺り。予測の通り酔っていた。
うぅ~。どうしても慣れないもんだな。
やっぱり馬車は嫌いだ。馬の尻の後ろだからクサいし最悪。
「大丈夫ですか。魔術で治しましょうか?」
「・・・・・・いえ、大丈夫。耐えますよ」
後ろから爺様が目が光っていたから何も言えない。
猛禽類の目だったから、滅茶苦茶怖かった。狩られるとこだった。
でも今回も盗賊の奇襲や魔物の襲撃もなくスムーズに街に戻ることができた。
盗賊が結構多いって聞いていたんだけどな。爺様の影響なのか?
ま、何事も無くて良かったけど。
村では友達の他にハンドガンやアサルトライフルまで出来たし、俺にとっては有意義な一年だったな。
問題は今後の材料をどう調達するかだな。まだ制作したい物があるんだけど、仕方ないか。
街を歩いていればその内に思いつくだろう。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




