第六話 「リボルバー開発」
本来ビエノー村は今より人がいないホント小さな村だった。
しかし前線後退で砦に多くの兵を置くことになってその補給線の維持のために商人以下の人が行き来して栄えたらしい。今は帝国と停戦状態で兵士が他の戦場に移動したために兵はいないが人が多いまま。
その帝国との国境近くのガルマン砦に爺様は居る。ここから馬を走らせ一日ぐらいの距離だ。
その為、あまり帰れないから、鍛錬の相手はサリサが担当する事になった。
帝国への威嚇のために砦に滞在するから一年という長期期間な訳だ。
オレは万が一にと、村にいる様に言われた。
でも一度だけ砦に行った事がある。
砦と言っても、丸太を何本も地面に突き刺して壁にした感じの防壁に、やぐらのような監視所だけの簡単な作り。小屋かロッジのような指令所に寝泊まりして一年間過ごす。
窮屈そうだが、当の本人は満足しているらしい。なんでも、戦場が一番自分に合っているとか。
まあ人間、「住めば都」なんだろうがな。
オレが猫耳少女のミーナを助けて20日。
一日の基本行動は午前中に剣術の鍛錬、そして午後はミーナと一緒にフィールドワーク。
で、その後に彼女への魔術の練習になっている。
リーダー各のレオルがいなくなったからイジメも無くなるかと思ったが以外にも、めげずに突っかかって来た。イジメたちは兄貴らしい奴らを引き連れて来たこともあった。
しかしあっさり俺に撃退された。
勿論ケガもさせずあしらってやった。ッたく懲りない奴らだよね~。
ま、オレが領主の孫だからか、その親は何も言って来ないのはラッキーたが。
その後も、三回ぐらい襲撃されたがその後は無くなった。
互いに話かけることもない。諦めたみたいだ。
こうして一応、この一件は解決した。
次にミーナについてだが、三日で火の玉を出すことができた。コントロールも上々だ。
でもどうしてか水の玉が出せなかったんだよな~。その事実を差し引けば一日でマスターしたか。
(どうしてかわかるか?)
(多分適正かな)
なるほど、やっぱりそうか。
大抵猫は水が嫌いだからな、それなら仕方ない。
これで、無詠唱は誰でもできるみたいだ。人間バージョンはまだ分からんけど。
ミーナの魔力の総量は、最初は基本的な魔術の三~四回でギリギリだったが、ここ数日で上がってきた。
今は六回は軽くできる。
ちなみにレンヤにも無詠唱を教えたことがあるが、使用できなっかった。
彼女は「無詠唱など出来ないのでは?」と聞かれたが、オレはさりげなく受け流して事を収めた。
理由は恐らく小さい頃から詠唱で魔術を使い読けているため、そうしている内に身体が詠唱に慣れてしまったのだろう。
その為、いざ無詠唱でやろうとしてもどうすればいいのか身体自体が分からない。
加工でも、金属加工に馴れていたのに、いきなりデスクワークの部署に回されたような感じに身体が思うようにいかない、そんな所かな。
誰も無詠唱で、できるなんて思っていない為子供の頃から教える事なんてできない。だから無詠唱は発達しなかったんだと思う。自分が出来なきゃ教えられないからな。
結局、憶測の領だから現時点では判断しかねない。
そして、現在、村近くの林――――――――。
ホントは着ちゃいけない場所。森よりは危険ではないが度々魔物が確認されているからだ。
でも比較的村側だから問題ない。
それに俺は鍛錬でサリサに気配の察知の仕方を教えてもらっていた。
今の所は魔物の気配は無いので、心配は無い。
スキル「索敵」を得た、なんちって。
ちなみにサリサとレンヤは護衛として村の安全を確保するため近くの森に魔物退治をしている。
――――――――ん?なんだ、あれ。
山盛りの不審なモノを発見した。
そうして近付いてみると、それは壊れた鎧や家具だった。
「なに、これ?ゴミの山?」
「ここは村で要らなくなった道具を捨てる場所。少し前は兵士たちが使えなくなった鎧を捨てて行ったんだけど、そのままゴミ置き場になったの」
つまり要らない物ですか。良く見ると鉄でできたも物もある。
ここなら〝銃声″で村が騒ぎになることもないし、資材が大量に在る、よし!
「ミーナ今日からここで魔術の練習をしよう」
「え?なんで」
「ちょっとした魔道具を作るためだからだよ」
オレは前から計画していた“銃”の開発することにした。
今まで材料入手の目途が立たなかったから後回しにしてきたが、やっと着手できる。
理由はこの世界のどこかに魔術を無効、また吸収する魔物やドラゴンがいて、そいつらが襲ってくる可能性があるからだ。
剣でそういった魔物を倒した実例がある。剣が効くなら銃だって効くはずだ。
本来なら銃の製造に、製錬(炉を用いて鉱石を融解し、目的の金属を得る方法)から加工だけでもかなり時間と労力、それ専用の機械も必要になる。
だが、この世界には錬金術がある。
しかもオレは能力で対象物内のマナを操れるので錬成陣なしに物の形を思いのままにできる。金属加工の職に就いていたこともあるし、オタク時代は近代兵器が好きでそれ系の本を何度か読んだこともある。
知識と技術があれば可能なはずだ。
そこでまずは、ハンドガン(S&W M686)を作ろうと思う。
西部劇映画などに登場しそうなリボルバーだ。
なぜオートマチック(連射が可能でトリガーを引くと空薬莢が出てくる拳銃)ではなくリボルバーなのか説明しよう。
一、オートマチックだと内部構造が複雑で初めて作るには難しい。
二、部品数が少なく作成しやすい上に、手入れもしやすい。
三、オートマでは敵わない命中精度と耐久性がある。
50mで120mm前後に集弾する抜群の命中精度を持っている。
汎用のオートマチックがいくら進化してもこの命中精度は実現できない。前世でもスポーツ射撃の世界では、まだまだ現役のハンドガンだ。
そしてまず、山盛りの鎧の中から適当な物を選んで銃を直接錬成してみた。
「・・・・・・・・・ダメだ。シリンダーは動かないし、ハンマーも、くっついている。とても使用できる状態じゃないな」
「すごーい、今の私にもできるのニャ?」
ミーナが興味津々で近寄ってきた。
(あ・・・・完全にミーナの事、忘れてた・・・・)
(ひどいね)
「ごめん。これは出来ないんだ」
「えぇ~」
「代わりに火の魔術の【フレイムランス】を教えるよから、練習してみたら?」
「うん♪」
尻尾をパタパタさせて返事をした。
あぁもう!可愛いな。お持ち帰りしてぇー!
(落ち着いて)
「おほん!じゃあ、まずはマナを集めなきゃいけないんだけど【ウインド】。この小さな竜巻に小石を入れるけど、それがマナと思ってね」
「うん」
「・・・・・こんな感じで、石は渦の中心に向かうよね。それが集まればマナの球ができる。それにさっきの感覚に加えて火が更にもっと熱くなったようにして槍をイメージする・・・・・・・・まあ見てな」
説明しているとミーナが首をかしげて頭から煙が出そうな勢いで悩んでいた。
言うより見て習わせる。百聞は一見に、が有効だな。
俺は右手を槍を握るみたいに構えて発動した。
「【フレイムランス】っ!!大きさはこれくらい。それで、渦のイメージをして作った球をこの形にしたいって手の中にイメージして、槍を投げる感じに相手に投げるんだ。もっとも相手がいないから実際に投げられないけど」
「うん・・・・やってみる!」
これでよし。
では、俺は銃の作成を再開するか。
う~ん・・・・・・・・。
部品が多くて、動きが複雑だからイメージが追いつかなかったのか?
ならば今度は部品を一つ一つ錬成してから、組み立てる様に錬成すれば成功するかも。
ただの木で木造の棚とか錬成できるから、いける!
そしてまたゴミの中から鎧を取り出す。
撃鉄、シリンダー、トリガーなど一つ一つ思い出して形にした。
・・・・・。
・・・・・・・・・。
ふう。こんなもんか。
大体の部品が全部できた、銃身にはちゃんとライフリング(銃身内に施された螺旋状の溝)もしてある。これが無いと弾丸が安定せず変な方向に曲がってしまうからな。
そして、それらを組み立てる様に部品を組み立て錬成した。
今度はちゃんとシリンダーは動くしハンマーも問題なく作動する。
空撃ちをするたびカチカチと鳴る撃鉄、それに合わせて回るシリンダーを見ていると、とても気分が高揚する。
成功だぜ!
(こんな物を作ってどうするんだい?)
(まあ、見てな完成したら凄いからよ!)
(そ、そう?)
ハルーツは銃なんて知らないんだろう。魔術を使わず、こんな小さい鉄の塊で人を簡単に殺せるなんて絶対思わない。
こうして鎧のそのままの銀色の銃身に木製のグリップの試作第1号の完成だ。
銃自体はいいはず、次は〝弾″だ。
これが一番厄介。
弾丸の構造は、薬莢に発射薬や銃用雷管を詰めたもで、その薬莢に鉛で栓をしたも。発砲時、雷管を発火させ発射薬を燃やし、薬莢の内圧を上げ、鉛の弾丸を打ち出す様になっている。
発射薬の大砲や火縄銃で使用していた黒色火薬を指していたが、現代では無煙火薬のことを意味している。火薬と言っても一つではない、しかも弾丸に使うなら他の問題も発生する。
燃焼速度や雷管の発火するための火薬の量など、考えだしたらきりがない。
だから一から作るしかない。
M686の弾は.357マグナム弾だ。
この弾薬は多くの人々によって優れた護身用の弾薬とみなされている。ホローポイント弾(鉛が剥き出しの弾丸)は、拳銃弾におけるストッピングパワー(銃弾が生物に命中した際、その目標となった生物をどれほど行動不能に至らしめるかの指数的概念)の究極の基準として高く評価され、きわめて信頼できる一撃必殺の弾丸だ。
ドラゴンを倒すまでにはいかないだろうが試作なんだし、ある程度の魔物なら十分だろう。
「できたニャ!見てニャ見てニャ、レド!!」
っと、また忘れてた。
ミーナは嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねている。
見ると手には炎の槍を出していた。
こんな短期間で出来るとは、しかもまだ余裕がありそうだな。
だが、手に持ってるのは危ない。
「少し落ち着こうね。じゃあ、その感覚を忘れないうちに・・・っ!ミーナ!」
「え・・・・・どうしたの・・・・・あ!」
「(気付いた?)」
俺は小さい声で確認した。ミーナは黙って(コクッ)と頷いた。
どうやら魔物がいる種類は判らんが、気配を感じたので身をかがめた。
今日はここまでにしておこう。収穫は十分だ。
実戦経験のない二人が戦っても敵うとは思っていない。ここは逃げるに限る。
道中「探知」で敵の位置を把握しながら村に戻り、何事もなく村に戻った。
ミーナと途中で別れて村長の家に帰り、部屋のベットに横たわって考えた。
魔術は一旦中止して、今日から銃の開発を始めよう。
錬金術も魔力を使うから底上げ、と考えればいいし、教えれば自分にはプラスになるかもしれない。
そして、自分で制作したM686を見つめていた。
自分で作った物に愛着を持つのは当然の感覚だ。
「レド様ー。食事に致しますよー」
メイドたちが食事の用意をしていたのでサリサがそれを確認し呼びに来た。
俺は「は~い」と返答し食堂に向かった。
◇
・・・・・・・二週間後。
この二週間は、弾丸の開発に取った。
この世界に大砲はあるが火薬は子供である俺には触らせてもくれない。
例えもらえても使えそうでもない代物。
魔術が主流のこの世界では大砲などの物理兵器は進歩していない。
持ち運び不便な大砲より、応用性が高くて弾も火薬も必要としない魔術の方が発展していくんだ。
身近のモノで代用できないかと試行錯誤の末、代用する品を見つけた。
魔石だ。
魔石は衝撃を与えるとそれぞれに爆発する性質がある。
無属性はマナを大量に含んだ衝撃波なみの爆発。火属性は火を交えて、風属性は猛烈な風みたいに、水は鉄砲水並にと。
まず雷管を属性のない魔石で代用し、火薬の代わりに火属性の魔石で燃焼させる方法を考えた。
爆発を誘発させることで、圧力を逃がさず鉛を打ち出せる。
風の魔石でも案はあったが、燃焼による火の質量が加算される火属性の方が確実なのだ。
まずは金属の薬莢の中に火の魔石を入れて、その薬莢のお尻の部分に発火用に錬成した属性のない魔石をつける。そして弾芯(鉛)で栓をして完成。
鉛はゴミ場の中から見つけた鉛のハンマーや武器から取った。
この発火用の魔石に撃鉄が当たり発火させ、火の魔石で燃焼し薬莢内で弾芯を打ち出すほどの圧力をつくり、鉛を発射させる。
理論上は完璧。後は試してみないとわからない。
そして今日、ゴミ広場の近くで試射した。
目標は目の前の木。
引き金を引いて発砲する。
バゴンッ!「うわッ!!」
発砲ではなくリボルバーが内部から爆発した。
だが、念のためゴミの山からオレのサイズに合った鎧を作って着ていたので吹っ飛ばされる程度で済んだ。
爆発物を扱うには当然の処置だ。
職業柄、安全第一が身についていたので、おかげで助かった。
「だッ大丈夫かニャ!?」
暴音を聞いて、近くで魔術の練習をしていたミーナが駆け寄ってきた。
そして心配そうに見つめた。
「大丈夫、大丈夫。鎧を着ていたおかげで何ともないよ」
「そ・・・そう良かったニャ」
(ふう。良かった)
ハルーツも心配していた。
あれだけの爆発なら指が吹っ飛んでもおかしくない。
手の鉄製のグローブもボロボロだ。
もし、そのままでやっていた時の事を思うと背筋に震えが走った。
だが、ここであきらめる訳にはいかない。
自分の命に係わるかもしれないから。
もし、魔術が効かない魔物が現れてあの時銃を作っていればよかったと後悔したくない。
気を取り直し、自分自身に治癒魔術で回復させ目標の木を確認した。
木には弾痕が刻まれていた。鉛弾は発射して当たったようだ。
爆発の原因は燃焼時に必要な空間が確保できなかったためだろう。
本来なら発射薬が発火した時、このスペースが緩衝となり、圧力が一気に上昇するのを防いで弾丸の速度を一定にする。
本来の薬莢は専門家によって(適切な種類の発射薬を適切な量)だけ入れてある。
なのに素人的判断でその量を決めたら爆発するに決まっている。
銃自体の強度や雷管用の魔石にも問題があった可能性もある。
とわ言え、銃自体には欠陥はなさそうだ。
後はもう一度銃を作って、弾をどうにかすればいいわけだ。
何度も溜めそう。周りのマナから生成できるから材料費はタダなのだから。
◇
・・・・・・・・・・更に20日後。
何度も雷管魔石と射薬魔石との密度、大きさを調整を繰り返して、フレームをミスリルに変えて。
ついに完成した。
どうして、ミスリルを使ったのかは、鉄より固く軽いからだ。
白銀の金属で安価に手に入りやすいく、帝国やイディアールなど、下級兵士の鎧や盾に使われている。武器屋でも安価に購入できる素材だ。
銃の強度をどう上げるか考えながらゴミ場をあさると、ミスリルの鎧を発見したのが幸運だった。
これを使用し銃を軽くしつつ強度の向上に成功した。
そして、魔石は何度も錬成して分かった事がある。
それは火属性の魔石の場合、マナの密度次第で燃焼速度が変わる事。
例えば、同じ形の二つの小さい火属性の魔石を用意し実験すると、密度の高い魔石は燃焼速度は遅いが、持続時間が長い。低い方は燃焼速度が速く、持続時間が短い。とゆう特徴があった。
その為、燃焼速度の速い密度の低い方を使う。
拳銃は銃身が短いので弾丸が加速する時間と距離が短いのだ。
それらを踏まえて実際やってみると、ビンゴ!成功した。
初めて上手くいった時は柄にもなく飛び上がるほど嬉しかった。
苦労して研究していた科学者が成功したときこんな気持ちなんだと実感した。
今日も自分の銃の腕を上げるなどで、試射を行っている。
腰に巻いたガンベルトからM686を取り出しマグナム弾をシリンダーに込める。
ちなみにガンベルトもゴミの山の皮を集めて錬成したもの。
そして、白銀色の銃身に木製のグリップで出来た銃をいつもの場所で撃っている。
ダンッ!ダンッ!ダンッ!
「ふぅ!ちょっときついな・・・・・・」
一発撃つ度、撃鉄を上げて発砲を繰り返す。
強化魔術で身体の力を上げて発砲しているが、爺様やサリサの鍛錬で鍛え上げられていてもかなり反動が強い。的には当たるが、撃った時の反動は自分の歯に響くような感じがする程のものだった。
鉄に比べて軽くはなっているが、今の俺にはちょいと堪えるな。
指も痛くなってくるし、体を鍛え上げていくしかないか?
いや、やっぱりオートマチックをつくるか・・・・・・。
だめだ、結局反動が問題になる――――。
「ねー、それ毎回、凄くうるさい!」
「あ・・・・・ごめん。でも必要な事をしているから、やめられないんだ。
この音もどうしようもないし・・・ごめんね」
「ええ~~~」
六発、全弾撃ち尽くし次弾を装填していると、自前の耳を押さえながらミーナが話掛けて来た。
射撃の腕は上げなきゃだし、試射をして悪いところを改善しなくてはいけないし、発砲音がするのも仕方ない。
だが、ある程度試したし、命中精度も悪くない。
弾を錬成してミーナの魔術の特訓の相手をすることにした。
機嫌がよくなったのか、ミーナは嬉しそうな顔をした。
「後、必要なのは実戦かな。いつか、サリサかレンヤに頼んで魔物の討伐に連れて行ってくれるように頼んでみるか」
今まで本格的な実践をしたことがない。平和が一番だが、経験しておかないと。
いざ実戦でビビッて動かなくなるかもしれない。
嫌な時に実戦になったら大変なので経験しておいた方がいいと思った。
あれ?これフラグ・・・・・・?
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