第三十八話 「猫だらけの里に向けて」
俺たちは深い森を進んでいる。
またか、と思うだろうがこの方が目撃者に出会うことが少ないので、この方がいい。それにこの先の集落みたいな小さな里を越えて少し進むと森の木々との別れになる。
そこからゴツゴツした岩と砂ばかりの砂漠越え。
世界最大の砂漠、ビルゴ砂漠に入る手前の町には帝国の国境警備を目的とした砦がある。
この旅で最初のチェックポイントだ。
普通なら国境警備に飛竜が常に飛び交っているが、そこは森と砂漠との温度差で砂嵐が頻繁な場所。飛竜はほとんど使えない、辺境ということもあって兵力も少なく、国外脱出はここしかない。
この国境の砦をどう抜けるかは、小まめに情報を仕入れながら考える事にしよう。
まずはこの深い森を方向を間違えずに進なまければならない。
未だ世界地図が完全に埋まっていないこの時代。この大陸を埋めた地図と言えども、こういった人の手が行き届かない深い森はまだまだ多い。マナの濃度も普通とは違っていて濃いめ。
だが濃いと言っても、防御を展開する程では無いかった。魔物がマナを取り込んでいるせいか、強さは格段に上がっていたが普通に生活できる。
ビー!ビー!ビー!
腕時計みたいな装置から電子音が鳴る。
これはレへスティールで性能を向上させ、魔物だけでなくIFF(敵味方識別装置)も搭載して高性能化を実現した「索敵君子機」と「親機」。この装置は探査電波を飛ばして相手側の返信を受信する装置だ。親機が電波を飛ばし腕時計型の子機が返しの電波を発射する。
レーダー波に当たった対象に子機の電波を確認しない、または親機に登録されていない子機だった場合は、親機のレーダー画面に不明として、位置が表示され警戒域に近づくとアラームが鳴る仕掛けだ。
その子機からアラームが鳴っているが、俺は気にせず車を走らせる。
「何か来ます!」
「ケシャッーーシャッシャーっ!!オレのナは――――グギャッ!」
「前に出たら危ないだろ、それと気色悪いから潰れてろ」
俺は目の前に飛び出したカマキリみたいな魔物を重力魔術で地ベタに貼り付け、そのまま走行した。
「レド様、さっきの魔物も喋りませんでした?」
「ああ。あいつ“も”言っていたな」
「何か大事な事言いたそうでしたけど・・・?」
「気にするな」
さっきのカマキリみたいに人の言葉を話した魔物に二度も出くわした。
トレントに休憩で立ち寄った泉から出たリザードマンとか。
まあ、それもレンヤに木炭にされたり、上手に焼けました的に美味しく頂いたがな。
マナの影響なのかは知らないが、こんな魔物を放っておくのは危険かも・・・。
今までは遠吠えや奇声を上げる数が多いただの烏合の衆。なのに言葉を話したらコミュニケーションを取るようになり「戦術」を取り入れられてめんどくさくなる。
現にゴブリンやウルフは鳴き声や奇声を発し、独自のコミュニケーション能力で仲間とのやり取りを行って狩りをする。恐竜ヴェロキラプトルと同じ。
ただでさえ全世界人口と魔物では数が違いすぎるのに、戦争なんかして数を減らしていく一方。そのうち魔物に怯える生活を繰り返してしまうんじゃないかと心配だ。壁作って引きこもるしかなくなる。
今の所「言葉を話す魔物」を出会い頭に片っ端から片付てはいるが、どこまで効果があるやら。
・・・・・。
「ゲーロゲロゲロ。こんなところにニンゲンが。こんやはハラいっぱいに食えそうだな」
今度はカエルか。パターンがバラバラ、やはり偶発的な事態なのか。
休憩に開けた場所に停車したのだが、またしゃべる魔物が出てきた。
・・・・・・ふむ。誰もいないし、またデータ取りに戦ってみるか。
「マリー」
「はい」
「機体で、敵を撃破して。一撃で終わらせちゃダメね」
「かしこまりました。」
自分より大きな魔物の前に立った。
ホントに強くなったな。自分より大きな魔物なのに。初めて会った時は海賊にナイフ突き付けられて泣いていた子なのにさ。
・・・・・って、そうなりゃ誰でも泣きわめくか。
「ゲロ?こんなガキにヤらせるきか・・・・?」
「機体展開!」
「ゲロロ!?」
「行きます。はあぁぁぁーー!!」
「ゲロ~~~~っ!?」
機体背面のスラスターで一気に間合いを詰めてカエルの腹に強烈な一撃を与えた。
背部ユニットから伸びたマニピュレーターは格闘戦にも使える指先がとんがったネイルクロー式。武器全てを失った時に格闘戦でも勝率を上げる為だ。力もこんな感じであんな大きなカエルをぶっ飛ばせる程のパワーを持ってる。後ろの木を構わず「バキバキ」と倒してぶっ飛んでいく程に。
これ程のパワーを可能にしたのは、魔導モーターとピストン。
そしてこの機体駆動に使っている「靭帯」のおかげだ。
【特殊合金靭帯】――――オリハルコンとミスリルとの合成金属とヒヒイロカネに特殊な加工を施した二つをワイヤー状にし、それを束ねて伸縮させて人の筋肉のような働きを可能にした部品。
皆さんは形状記憶合金を知っているだろうか?
一応説明しよう。
合金とは違った種類の金属を組み合わせて性質を変えた合成金属。そして形状記憶とは、形状を変形させても元の形状に戻る性質のこと。「熱」や「電気」の刺激に反応する。
つまり、この靭帯は「マナ」に反応して靭帯を伸縮させ、人間の筋肉の役割を成してくれる形状記憶合金、それをワイヤーにして束ねたものだ。
オリハルコンはマナを与えると硬化するが、ミスリルを合成して使う事で折り曲げてもマナを与えると戻ることが実証されている。それと同時にマナを蓄積する性質がある為、一定に達したらマナを排出するように術式を組んで蓄積するマナを調節する。
そうすることで硬化のしすぎて金属疲労を起こしにくくし、適度な強度を保ちつつ駆動系とコンデンサの役割を担うことが可能になった。
ミスリルを合成させるのは金属疲労のダメージを軽減する役割もある。
その他、マニピュレーターや肩、脚部装甲など各所に配置された結晶装甲は靭帯に溜まったマナを排出するラジエーターだけでなく、追加武装を使用する時のエネルギーラインとしても使える。
ヒヒイロカネは神経として命令を伝え、モーターやピストンを意のままに操る事ができ、人や獣人、魔物以上の力を発揮する。それ以外にも魔力を増幅させ通常より強力な魔術も発動できる。
人造オリハルコンでも製造可能だが蓄積量がオリジナルより低い。
・・・・とは言うもののさすがに「グー」で殴っただけでは倒せなかった。マニピュレーターの方で殴ったから威力はあった筈だが。それなりのレベルって事か。
「ゲッロ~なぜ、こんなチカラが、こんなに小さなニンゲンに」
「レド様、マシンガンの使用許可を!」
「許可しよう。ゴム弾で」
「ハっ!」
ゴム弾は弾頭が硬質のゴムで作成されている弾丸。
対人制圧の非殺傷兵器一つで、至近距離から発射すればプロボクサーのパンチ並みの打撃を与えられる。当たり所によっては死傷することもあり得る為、近年ではスポンジや軟性ゴムが使用されている。
「イダダダっ!ケロ~~~ずるいぞ、そんな技をつかうなんて」
やはり殺傷能力が低いゴム弾じゃ倒せないか。
魔物だから硬質のゴム弾頭を使っているが、エアーガンのBB弾が当たった程度のダメージにしかならないのかな・・・?記録しておこう・・・「魔物には効果は今一つ」と(メモメモ)・・・・。
「(パタン)さて、マリー【ロッカー】から【マナブレード】を出して終わりにして」
「はい」
【マギアロッカー】―――機体の腰に付いている装備収納および格納機能。
機体の腰には大小複数の箱状の装備がついている。側面を軽く押すだけでスライドして口が開く仕組み。両横の二つの大きいのはアーマー専用の武器、前の4つと後ろの2つの小さいのは弾薬などの物資が収納可能になっている。魔石を使っているので制限があるので数で賄っている。
そして彼女が装着している機体のマニピュレーターが真横の大きい方に手を入れた。
大きいので簡単に腕が入り、ポケットに手をいれるかのように「刃の無い剣」を取り出し、構えた。
「ゲロ本気でいくケローーーっ!!」
おお~、さすがカエル。思ったより高く跳ぶじゃん。
「このハラで押しつぶしてやるっゲローー!!」
ズシャっ!!
「えほっ!!ええい、なんで地面が草なのにこんなに土煙が出る!」
などと突っ込んでいる間に勝負はついていた。
カエルは全く動く気配が無い。それもその筈、カエルのぼったぼたの腹が見事に両断されている。
【マナブレード】――――剣の刃の部分を丸々無くして刀身が矢印のような形の剣。
レーザー加工技術の応用で、刃となっている部分がマナの粒子をビームレベルまで加速して切り裂くように作られている剣。
普通の剣は使ったら刃こぼれして、磨かなければ切れ味を維持できない。その欠点を克服したのがこの剣だ。切れ味は当然、通常の剣とは比較にならない。人の手でも扱える大剣くらいの大きさだけど、これを制御するには生身ではとても魔力がもたないので機体専用として使う。
「さて、終わったけどもう少しここで休もうか、マリーは血を洗い落としてから検査しようか」
「はい」
「あそうだ。ルナ。このカエル食べれない?どうせなら焼いて食っちまったほうがフレイアの腹の足しになるかもだし」
「これ・・・・食べれるの?」
「食えるよ、身体を動かす筋“肉”があるんだから。一応鶏肉と同じだと思う。さっきのトカゲも美味しそうに食べてたでしょ」
「・・・・・やってみます」
ルナが調理をしている間に俺はマリーの身体検査をする。別にハダカにする必要はなく、機体のデータから身体への負担を見るのだ。
機体が完成したとはいえ、実戦での長期使用などによる機体への負荷、また人体の影響についてまだ分かっていない。経過の身体検査も必須。こうした地味の積み重ねで現代科学は出来上がっているのだ。
最初は失敗して痛い思いをしたんだからね。各部の魔法陣やスラスターなど多岐にわたる出力制御に加えて、情報の多さで脳に大きな負荷を与えてしまった。三次元立体機動で高速移動すると目を回しやすく身体的な不調も起こす。
俺が実際に体験したのだから間違いない。
試験中、突然頭が「クラっ」として落下した。その時のキズと鼻血を出した程度で幸い脳に異常は無かったのだが、1日ずっとめまいと頭痛が酷かった。
なので、オタク知識から機体に特化した戦闘用コンピューターを作ることにした。基本的な動きは人体の動きを機体にフィードバックして、その他の制御は機体が判断する。姿勢制御、機体の状況、靭帯のマナの調整などをだ。
まずヘッドギアで機体とパイロットを魔力で同調させる。ヘッドギア内部のヒヒイロカネでパイロットと機体に魔力的な繋がりを持った状態をつくり、命令は背部ユニットのコンピューターに入り、機体が動かすのに必要なマナを調整し動かす仕組みだ。機体の動力は高純度の魔石を圧縮した動力核から得るマナ。動かすときは身体強化で動かす。
機体のコンピューターは3つの部品から成り立っている。
COU―――パイロットのヘッドギアからの命令を受けて「制御、演算」を行う部品。PCの「CPU」。
補助記憶宝珠―――設定した操作パターンのデータ、機体の操作記録や映像データなどが記憶されている水晶体。「ハードディスク」。
記憶部品―――一時的に記憶する水晶と特殊な金属に術式を施し、操作設定などを行う部品。「メモリ」。
この3つの部品全てがマザーボードのようになっていて、パイロットの命令を機体が理解し実行する。
まず、記憶に必要な「宝珠」の説明をしよう。これは水晶に「記憶のマナ」の粒子がに込められていて魔法陣でその記憶を再現する記憶媒体。術式や魔法陣も記憶可能。
量子力学上、意識も物質として考えられるので記憶も粒子として考えることも可能である。
記憶転移を知っているだろうか。
心臓などの臓器移植をした後に、嫌いな食べ物が好きになったり、一度も来たことがない場所なのになぜか見覚えがあるなどがそうだ。臓器提供者の臓器に宿る記憶の一部が移植者に受け継がれたようなこと。
この世界では「記憶のマナ」として考えて、その粒子をコピーし水晶に閉じ込めていつでも見られるようになったモノだ。
魔石だと魔術を使う時に「記憶のマナ」を使ってしまうので水晶にして使用しないようにする。
そしてCOUは、まあ、難しい事はしょるので、大事な部分だけを説明しよう。
COUがパソコンのCPUにあたり、「ルーン文字」がプログラム言語として機能してアルゴリズム、問題を解くための手順が定式化した表現で算法とも言われる。
それをこの世界に実現させた。プログラムが術式で、ソフトが魔方陣となる。
大事なのはソフトに決まったコマンドを設定する事。姿勢制御などの戦術駆動情報、(高度、速度、エネルギーゲインなど)武器をコンテナから出すなどを設定する。それが機能し、それぞれの魔法陣が機体の情報をパイロットに分かりやすく情報を送る。
例えば姿勢制御とかで、戦術駆動情報の水平値を司る魔方陣が機体が斜めになっている事を感知し、そして機体がリアルタイムでパイロットに伝える。
もし機体にあらかじめ一定の数値に達したら機体が自動で姿勢を正すように設定することで、自動姿勢制御になる。
そして、情報を読み込む「OS」的な魔方陣が。
【RE―XAM】―――「ルーン文字」をプログラム言語として読み込んで実行させる魔方陣。複数のソフトを統括し、機体操作を容易にさせる。制御演算術式も組まれている。
ルーン文字を読み込んでそれを実行させるのがこの魔方陣だ。
ソフトとして常時機能し、全ての術式を統括している。
ヘッドギアに付いているバイザーのヘッドマウントディスプレイには高度計や速度計、敵味方の情報を表示されている。モードを切り替えれば機体のアイボールセンサー(目)で機体視点から動かすこともできるき、パイロットはさながら「FPSゲーム」のように操作ができる。戦術駆動の戦闘技能で一定の操作パターンで技を繰り出す技や魔術も使用可能である。
そうこうしているうちに、カエルがいい感じで焼きあがった。
スパイスの香ばしい匂いがしてきた。
「ルナ~どう?」
「毒はなさそうです。臭みはありますが、香辛料でじっくり焼き上げれば気にならないと思います」
「そっか、なら食べてみよ。ルドルフさんはデータ取れた?」
「ああ。エネルギー効率を制御する術式を考えている。さらに使用時間が増えるようにできる筈だ」
「期待しています」
あれからミリー、ミリアリアさんが目を覚ました。人としての精神があり、状態も安定しているので今後の経過観察しながら、こうしてルドルフさんの助手として働かせてる。以前と同じ仕事だから適材適所。
二人はいい仕事をしてくれる。
新たな術式を発案しようと頑張っている。武器自体にも制御魔方陣を組み込む案を出してきた。
以前の彼の研究と一致するところが多々あるので興味津々だった。
限定的だが前世の世界の資料も読ませている。
彼にちょいと説明したが「魔石と脳の関係性」は彼には衝撃的だったようだ。
魔石に魔法陣を組み込んだだけでコンピュータと同じ効果を持つの事は予想はしていた。
どうして火の魔石はちゃんと火が出るのか、頭で考えた事を魔石がどうしてその通りに実行するのか。
つまり魔石に魔法陣を組み込むことで一種のコンピューター端末になっている。魔方陣で制御され、魔力でコントロールする。思ったことを実行するのはコンピューター端末や脳には近いものがある。
だから魔石と魔力で機体を動かす事が可能だと思った。
まあ、普通の魔石では機体のように複雑な魔法陣を記録や発動することはできないが、COUや記憶宝珠に使われている特殊な金属板「アダマンタイト」がなければ機体は完成はしなかった。
アダマンタイトは複数の魔法陣を同時に発現させることができる。記憶はできないが、宝珠と一緒の部品にすれば「一時的記憶装置」になり、補助記憶宝珠で記録する。
起動している間は複数の魔法陣を同時に発動させ、センサーや戦術駆動の情報をパイロットに送り続けることができる。
これで機体の頭脳であるCOUは成り立っている。
この機構を取り入れたことで目を回すこともなくなった。色々やっていく予定だが、機体の使用は人前では絶対に使用しない方が良いだろう。戦争をしている中で相手に自軍の戦力全てを見せるのはよろしくないから。
二人にも今後、俺の代わりの作業もこなしてくれるかも知れない。
俺もこうして、楽ができるのだ。
「♪~♪♪~~。あ~~~~やっぱ癒される~~~」
俺は座って、足にルナをちょこんと乗せ尻尾をモフらしてもらている。
レンヤだと乗っけられないので尻尾をソファーみたいにしてもらっている。
やっぱ獣のシッポをフワモッフは飽きないな~。下手な羽毛布団なんかよりぬくもりがあって温かくて快適♪
「・・・・・・?」
「!!・・・・・・」
フレイアが見つめてる・・・?
ああ、俺の足に乗っけているルナがうらやましいのか。可愛い奴め。
・・・・数時間後。
「到着ですね」
森が深くなってきて、車での移動が困難で歩きに変えた。
木々を避けながら、さらに古びて横倒しになった大木の上を歩いて、やっと人里に到着した。距離にして一キロくらい。
長い訳ではなかったのに足場と上下移動で結構疲れた。
「やっと村ね。まともなものが食べられそう」
「自分のお給金で収まればいいね」
「え・・・?」
フレイアに。いや、他のメイドたちにも給料を払う制度を取り入れた。
ルドルフさんたちが入ったこともあるが、主の目的はフレイアに金銭感覚を与える為だ。
今までは俺が全額支払っていたが、フレイルにいる時は自分で金を管理して支払うなんてことを知らずに育った。だからお金を自ら管理する事で自分がどれだけ使ったか、そうしないと次のをどうするかの認識が生まれる訳だ。
欲しいものは自分で好きにできるが限度があればそれを貯めて使う、という基本を彼女が身に付けるのが目的。箱入り娘で、あんなお姫様生活では庶民の基本中の基本が身に着く筈がない。
それ以外の理由としては、彼女達だって女の子。つまり好きなモノの一つ二つだってある訳で、それぐらい自由にした方が窮屈な思いやストレスが溜まる事が無いだろうと、思う所もあった。
「・・・・・・(チラ)」
「僕を見ても増えたりしないから。お金は月に、って決めたでしょ」
「ぶ~~。あたしの意見は無視したじゃん」
「一日であんな額じゃ破産どころの話じゃないでしょ!そうなればご飯の話どころじゃなくなるけど、それでいい?」
「う~・・・・」
悩むがいい。
そんなことより、ホントに人里って感じだ。
まず魔物の侵入を、時間稼ぎぐらいにしか役に立たなそうな柵で里を囲み、入り口に二人の見張り。木製の小屋とも言えそうな小さな家が数十件。裏には畑があって、緑色の葉っぱを付けた植物が均等に並んでいる。収穫した後なのか、葉っぱそのものを食べるのかは定かでは無い。
ちなみに所々に木の棒が刺さっていて、小さな袋がぶら下がっているが、中には魔物避けの薬が入っている。
害獣対策だ。ビエノー村でもあった。
それにしてもネコが多いな・・・道端から屋根に至るまでネコが大量だ。
まあ、いいや。さて、宿を探して休もうかな。
やっと普通に、平和的にゆっくり過ごせそうだから。
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商人[カマト視点]。
俺はカマト。この商会の下っ端商人だ。
商会と言っても、安く仕入れた粗悪品を高く売りつけたり、金を貸して法外以上に返させたりと、大見得きって言えた事はしちゃあいない。
返さない奴には強引だった時も、奴隷になってでも返させる時もある。
今回だってこの里に金を貸した奴の所に来た。
この里は言い伝えだの祟りだの言って猫を祭り上げている里で、ボスは猫クサいから嫌いだと言っていた。なのに戦闘ギルドの一団を連れてボス自らも来た。
ボスは「金を返させる」時が一番好きだった。金を巻き上げる喜びと、達成感、そして他者を戒めて楽しむことが同時に味わえるからだと言ってた。
もし返さないと、後ろの連中が手を出す。
こいつらはボスの「お抱えギルド」の連中。個人、ギルド同士などそのギルドに投資すれば優先的に依頼や頼みを聞いてくれる奴らだ。裏ギルドなどの暗殺にも関わっている。
見た目だけでも関わりたくないと避けるような格好だ。
まあ、俺にとってはどうでもよかった。
実際こんなところにも来たくはなかった。本当はこんな事願い下げだ、関係の無い人が傷つくとこなんて見たくない。ボスの部下たちが相手を殴ってる時はいつも外に逃げてる。
だけど俺には金が必要だ。親父は帰ってこねぇし、母親は他の男の所に行っちまって、残った俺と弟〝たち〟にはどうしても養っていく大金が必要だった。あのバカ親父はいろんな女に手を付けて子供を作ってやがる。おかげで俺の弟たちは両手で数える以上いる。
一番年上の俺が世話をするしかない。だが戦闘はまるっきりダメ、喧嘩一つしたことない。いつも怖いものから逃げていた。例え輸送ギルドに入ってもでも弟たちがいるから長期家を空けておくわけにはいかない。当然売るものもない。
だからこの仕事しか無かった。もうあきらめるしかない。
ガタンっ!
「ああん・・・?なんか踏んだか?」
「・・・猫ですね」
「ちっ・・・、汚ねぇなぁ。だから獣クサ過ぎて嫌なんだ、ったくよぉ」
「あ、アンタ達・・・まさかその猫を・・・!」
「あ?テメェの猫か?」
「そうではない。悪い事は言わんから・・・早く里を出た方が良い」
よく見ると里の人間のほとんどが集まって来た。
両手を合わせて祈ってる人もいる。
ボスは葉巻を吸いながら話しかけてきたじいさんに詰め寄る。
「あ゛ぁ?今出たら夜になっちまうだろうが!それにこの里での用事が済んじゃいねぇんだよ!」
「この里で猫を殺してはいかんのじゃ!おぬしも知っておろう」
「テメェ喧嘩売って」
「ボス、抑えて。それより何処か埋葬できるところ知りませんか?」
「おい、カマト余計なことすんじゃねぇ!」
「もう夜ですし、今日は泊まりでしょ。ボスたちは先に宿に行っててください。俺はこの猫を弔ってきますから」
迷信自体は信じないが、このまま里の人たちの反感をかっていたらいつまでたっても帰ることができない。なら、少しでも詫びる気持ちを見せて、弔えば反感も和らぐと思う。
それに、かわいそうに思ってた。
俺も昔、猫を飼っていたのが死んだから、その気持ちを強く思い出しちまった。
とりあえず埋めて木の棒でも立てておくか・・・・・・・ごめんな。
両手を合わせて静かに謝って宿に戻った。
「さて、時間もかけていられねえし宿に行くか」
「・・・・・・」
・・・・・・。
(ハッ!)
「・・・・え?・・・どこだ、ここ」
「ボー」としていて肌寒さで気がついた。そしてなぜか森に居た。
俺は宿に向かったはずだったのに。里からどれくらい離れたんだ・・・・・・?
まだ開けているから、そんなに遠くに来てはいないはずだが・・・・・。
「ようこそカマト。ご足労であった」
「・・・え?・・・だ、誰だ!?」
周りをよく見ると木に小さな光りが。
「猫が言葉をしゃべってる?・・・・そうか・・・これは夢だな」
「現実逃避は良くないな。お前たちは我が一族同胞を手に掛けた。それにより我らの報復を受けてもらう」
「なっ!?」
まさか、迷信がホントに・・・。
「じゃあ、なんで俺は殺さないんだ?」
「本来であればその者共に始末したが、異を唱える者がいた故、貴様は此処に呼ばれたのだ。マオ、弁解を許す」
「はい」
「!?」
な、いつの間に!?しかも猫が人間になりやがった!?
「(大丈夫、わたしは味方です)」
「え?」
「彼は馬車に同乗していました。しかしその後の行いから彼には十分に釈明の余地はあると判断します」
「結論は既に決定している。我らの糧にその命を持って償いとする。が、彼の行動も思うところはある。『長』との再度審議を認めよう」
なんの話をしてるんだ?
「だが、その少年の処遇は我々でも判断、しかねる・・・・・」
?他に誰かいるのか?
「Zzz・・・・ZZz・・・・」
・・・・・・・・・・・。
ええ~~!!?この状況で寝れるとか、一瞬思考が停止したぞ。
と、とにかく起こさないと。空気から察してヤバイことなのは確実に分かる。
木の上の猫たちもなんか威嚇しまくってるし、あの噂が本当なら殺されるかもしれない。
「おい、起きろ!!」
「~~~な˝~~~」
「おいコラ!ネコみたいな声出してんな!!」
「う~~~・・・ん?ここは、ドコ?」
「たぶん里の近くの森らしい、とにかく逃げた方が良い」
「逃げられると思うのか。ここは我らの領域、無駄にあがき苦しむなら逃げるがいい。数秒だけ待っても良いぞ?」
クソっ!!こんなところで死ねるか!弟たちが居るのに!
「は、はは、ははは。そうだよな、こうなると思ってたんだ。海に落とされるわ、奴隷にされそうにはなるわ、それが運命だとか言われるし、魔力の使い過ぎで死にかける、行く先々でもロクな事がない。何も起こらない筈がないと、心の中ではそう感じていたんだ。・・・なぁーークソぉ!!」
「なに言ってんだ?」
「でも、そんなこんながあっても、結果的にここに居て、頼れる仲間(彼女)たちが居る訳ですけどね」
「グガァァァーーー!!」「ゴ主人様ァァーーー!!」
「な!?なんだ!!」
「私の従者たちは凶暴ですよ?」
従者?
空気が振動するほど咆哮か絶叫が聞こえたんだが・・・・・。
なんで、この状況で落ち着いていられるんだ?それとも理解していないのか?
――――っ!うわ!!
「な!?え、エンシェントドラゴン!?それに、妖狐まで!」
「グルルル―――!!」
なんだ?なんだ?
爆風みたいな風で吹き飛ばされたかと思えば、バケモンが出たじゃねェか。
「さて、このままで逃がしてくれると嬉しいのですが・・・?」
「ど、同族を手にかけられ、黙って見過ごすと思うのか?」
「では、戦いますか?妖狐の炎、ドラゴンの火力を合わせると、ここら辺一体は死体すら残らず焼け野原になりますが?」
「グルルゥゥーーー!!」
「・・・・・・」
バケモノと対峙している。これなら逃げられるか・・・・・・・・?
無理だな。
ここは奴らの庭だ、押してるとはいえ猫どもに完全に包囲されてる。こっちはドラゴンがいるとは言え、相手は小さくて小回りが利く。他のも変身できるかもしれないから、数も圧倒的にあっちが多い。
どっちが勝つかわからないぞ。ここは、あのガキんちょにがんばってもらわないとダメか。
「お待ちくだされ」
「ん・・・?」
今度は杖をついた毛むくじゃらが出てきた。
小さな猫の獣人みたいなのに支えられながらこっちに来る。
「その貫禄がありそうな物言い。あなたが長とお見受けします」
「その通り、こちらの非を認めますじゃ。どうか矛を収めていただけませんかのぅ?」
「長!血迷われたか!!」
「どうしてそういったご提案を?あなた以外は納得がいってないようですが?」
「我らの村は昔、妖狐の長、マキビ殿に世話になっておりますじゃ。恩義のある方々に牙を向けるのは礼節に反する行為として受けておりますのでのぅ」
「ナラバ敵意ヲ収メナサイ!我ガゴ主人様二対シ無礼二当リマス!」
「主、だと、人間が!?」
「ふーむ・・・・・」
なんだ?今度は物思いにふけり始めたぞ。
「数百年生きたワシでも他の種族を信用しなかった妖狐族。その彼らが、人間であるあなたが主となっている。さぞ偉業をなされた方とお見受けいたしますじゃ」
「ええ、まあ」
「どうか村にお越し下さい。そして我らの頼みを引き受けてはもらえんでしょうかのぅ?」
「・・・・・・・・・」
「無論、必要とならば我らも力を貸す所存ですじゃ」
「・・・・・・・一部の人の考えで行動しても、その考えに反する人が頼みを妨害する可能性があります。自分たちは目的地に向かいたいだけなので、このまま皆殺ししてもも、良心は痛みません」
「・・・・・・やはり只者ではなさそうですな~」
「ふん、まあ、今は夜も深い。一度その村に行く提案には賛成しましょう」
あれ?俺、びっくりするくらい蚊帳の外じゃね?
怪我で投稿が遅れました申し訳ないです・・・。
あと、文字も少し多いかもしれませんが最後まで読んでくれると幸いです。
次話もよろしくお願いします。




