第三十七話「賢者の石[後編]」
賢者の石。
もしこれが世の中に出回ればどうなるだろう。
石には人間の「体内の純粋なマナ」生体エネルギーが結晶化したのではないかと言われている。
いわば「命」だ。
そして、それが犠牲問わず当たり前に使えば、どれだけの犠牲が出るか。人魚の一件でもそうだが、不老不死になりたいって連中は多い。そうでなくても、今の状況なら戦争で使われる可能性がある。
造るだけでも人が死ぬのに、使っても人が死んでいては、その内人も、獣人すらもこの世界から消える事になりかねない。
製造法は値が付き、世界を駆け巡るだろう。今は、そのミリアリアさんの復活で研究に没頭して屋敷から出てこないから世に出回っていないのが救い。
だから製造法が世に出回る前に俺たちが押さえるのだ。
それを、螺旋階段を降りながら説明した。それ以外、こんな雨水が「ピチョンピチョン」と滴り落ちている不気味な石畳の階段を降りるわけない。
「その作り方を奪ってどうするの?」
「大事に持ってるよ」
「捨てた方がいいんじゃないの?」
「まあ、それが普通の考え方だよね。でもそれだとより危険性の高い人物が完成させてしまうかもしれないんだ―――」
処分しても一時的な処置にしかならない。
どこの誰かがその製造法に辿り着き、世に出回る危険性があるからだ。
石の製造法を持っていて守るのが警戒がちとめんどくさいが、製造法が世に出回るより遥かにマシ。
他の理由は「対策」の研究ができる。
そういった禁忌と言われた研究で使用される魔法陣が発動された時、それを探知する機械か術式を発案するのだ。そして、そういった研究を実施しようとする連中を見つけたら合法的に逮捕する段取りが組める。時間をかければ法律化できる訳だし。
人間何するかわかったもんじゃない。予想し、それらへの対策ができるようならばリスクがあっても実際に動いた方が利口とゆうもの。
「―――だから燃やしても持っているのと捨てるのでもそんな変わりないわけ。わかった?」
「・・・・・なるほど?」
「疑問形でも頭に入れておけばいいさ」
「ふん。でも、ここホコリっぽくてイヤねー」
「主様に引っ付いて言うセリフじゃないと思うけど?」
「む!いつも金魚のフンみたいにくっ付いてるダークエルフには言われたくないわよ!それとも肌だけじゃなくて中身も黒いのかしら」
(ピキッ!)
「いっぺん、本気で死合る?」
「その腹黒な本性を現したわね。あんたなんかに負けるとでも」
それ以上セリフを吐く前に二人は「はっ!」と気付いた。
レンヤが笑ってはいる。背中にドス黒くて禍々しいオーラを感じさせた状態で。
「これ以上、困らせれば」とゆう感じで、笑顔で訴えかける。
「はは、やっぱりやめましょう~」
「そうですね。仲良く敵に挑みましょうね~」
二人はワザとらしく笑って、肩を組んで降りる。そんなコントを余所に俺は銃を構えて注意して下がっていく。
アクセサリとして付いている銃口と同軸のライトを階段と壁に、そして天井に照らして警戒しながらゆっくりと。
そろそろ、侵入者用の迎撃装置くらいあってもおかしくはないが・・・。
監視して、罠にはめて獲物を捕らえる魂胆か?そして一気に捕まえるとか。
そう考えていると、階段が終わり、大きく広い部屋に出る。
地下であり、石で創られた壁や天井で周りが真っ暗なはずだが、床に水が張った溝があってそこから光が放っていた。その淡く青い光で周りを確認できる。薄暗い不気味さがあるのは、石の天井を支える柱もあるで、いかにもゲームのイベントボス戦の場とゆう感じの場所だ。
魔術や錬金術の研究施設は大体こんな感じ。危険度によって、地下深くに造ることが多く、実験が暴走しても被害を最小限に抑えられる為である。
「ようこそ我が館へ。残念だが君たちを招待した覚えがないのだが?」
少し上にここらを一望できる展望台みたいな所に、男が立っていた。
「こんな辛気臭い場所でもダンスパーティが行えそうな場所ですからね。どうせなら場を盛り上げる者も必要かと思いまして。でも少し掃除をしたほうがいいんじゃないですか?ホコリっぽい」
「フ。少年の割に肝が据わっている。名は?」
「レイクードと申します」
「・・・・・知らんな」
そうだろよ。引きこもっていたお前には世界情勢なんて興味ないだろうから。
「ルドルフもう止めて!」
「?貴様、なぜその名を知っている。知っているのは一人しかいない筈だ」
「あ・・・・・・」
ルドルフ・・・あいつのアザ名か?
でも、今のあんたじゃいくら言っても信じちゃくれないだろうよ。身体が違っているのに。
俺だって未だ疑心暗鬼の状態なんだから。
「すみませんが、どちら様?」
「そうだなこちらも名乗っておこう。私はルドノア・ベルドラ。最高名の錬金術師だ。本望だと思え、君たちはわたしの実験の礎になるのだからな」
そうして「ぱちっ!」指を鳴らす。
両側の壁が開いて、大量のゾンビが入れられた鉄格子が現れた。
おそらくこれは無関係の旅人や町の住人。中には奴隷らしき人や獣人もいる。生体エネルギーを抜かれてそのまま放置されゾンビになったのだろう。
よし、こうゆう時こそ落ち着け。
ここで怒りに任せたら足元をすくわれる。対人戦は慎重にいかなくては。相手だって死にたくないだろうし、なんたって相手は錬金術師。
錬金術師の大半はこのご時世の防衛手段として魔術を学んでいる。その両方を学んでる分、知識で、例えば地形を変えたりすることをやるから戦術の幅が広い。奇策で一変されかねないのだ。
相手はこうゾンビを見せてきたからには、こいつらで襲わせと「脅して捕らえる」。それを拒んだら「実行」するのの二択だな。
ご丁寧に出口もすでに封鎖しているし。
「殺してでも、なお蔑にするとは、最悪の錬金術師ですね」
「何とでも言え。わたしはミリーが蘇れば全てなのだ」
やっぱり、恋人の復活フラグだった。ミリーはニュアンス的にミリアリアさんのことだろう。
古典的だな。
こっちは名を出しちまった以上本気を出すか。
目撃者もろとも殲滅する気でここにいる、石の製造法を外部に出回らせない為にな。
「それに新しい研究には犠牲は付き物だ。名を残す研究に加われたことで世界に知れ渡る事になる。誇らしいことではないか」
「それはあんた自身の価値観だ。犠牲を出すことを前提に考えるのは研究が進んでいない証拠。犠牲を出さずに成功させる人こそ周りの支持を得られる。それに小さくとも綻びが生じる可能性があるものはいつか大きな綻びとなる。誰もが知る法則ですよ」
「くだらんな。だれがそんな戯言を」
「いずれ身にしみて理解します。さて、これ以上は無駄話でしょう。全員、戦闘開始!この自己中マッドサイエンティストに見せつけてやれ!アサルトライフル、魔術で一掃だ」
「かしこまりました。」
まず、このゾンビどもの動きを止める。
檻の鉄を溶かして壁と一体化させれば開くことはないからだ。
「!!二人とも危ないっ!!」
「遅いなっ!!」
「チェーニ!逃げてーー!!」
言う間も無く、いきなり魔法陣が現れ、そこから部屋ギリギリサイズの大型ゴーレムが出現した。咄嗟の事だったので空中に回避したチェーニは空中に停滞している時、そのゴーレムの拳をモロに食らう。
クソが!
ゾンビは足の魔法陣に気取らせないためだったか。
「なんてことだ・・・・失態だ・・・」
「フハハハっ!これで一人潰れたな」
「こんなところで秘匿兵器を使うなんて・・・・」
「なに?」
(グ、グ、グ)
「申し訳ありません。主様。魔甲機を展開してしまいました」
【魔導装甲機】―――――頭部のセンサー類を含めて全長3.5メートル。足裏に格納型アイゼンと飛行用のスラスターを搭載した脚部装甲、飛行制御の背部ユニットから伸びた大岩でも簡単に持ち上げる力を持つマニピュレーターを搭載した人型機動兵装。
魔導装甲機は長いので「魔甲機または機体」と呼称する。
俺は対ドラゴン戦闘用に浮遊機能を持った鎧の研究をしていた。その時に前世のネットで、開発コンセプトに打って付けの動画を見た事があるのを思い出した。
搭乗型外骨格、また動作拡大型スーツ。「スケルトニクス」。
スケルトニクスは人の動きをフィードバックして四肢の動きを拡大し通常の人体では不可能な動きを実現してくれるスーツだ。モーターやエンジンなどの動力アクチュエータはなく人力で動かす。
開発した機体はこの世界で作成した魔導式のモーター、ピストン、風を噴射するスラスターなどの動力を搭載している。重力魔石で無重力状態を作り出しスラスターで上昇、下降、回避、そしてマニピュレーターにはやってほしい動きをさせることができる。
このようにゴーレムの大きな拳でも簡単に受け止められるのだ。
チェーニも無事。
「こういう場合は仕方ない。マシンガン使用許可!!敵全てを吹っ飛ばせ!!」
「はっ!」
ドダダダダダ――――――!!
機体専用のマシンガンは、形が独特のアサルトライフル、FA-MAS。
その、銃身を短くしたオリジナル武装。口径は30ミリと強力。そして銃の、ストックと言われる肩に当てて発射時の反動を安定させる部分も使ったマガジンは装弾数70発もの弾丸を発射し、連射する性能がある武装だ。
普通なら短くしたら弾がバラけた方向に飛んでいくが、見た目からも普通のアサルトライフルの形とは違う特徴のブルパップ方式を使っている。ブルパップ方式とは機関部(ボルトや撃鉄など)が引き金より後方にある構造で、銃身を短くしても射程と命中精度が犠牲にならない。
オリジナルFA-MASは細長く飛び出しているような銃身なので、戦闘中にひん曲がったりしないように短くした。それに近距離での射撃を可能にするためでもあり、取り回しも楽で携行もしやすい。
唯一のデメリットである位置的に機関部が耳のそばに在り、発砲音で聴覚に悪影響をおよぼすとゆうのがあるが、機体専用だからパイロットより上に位置しているので問題はない。
その連射性が高いマシンガンの実体弾はゴーレムの身体を簡単に貫いて、魔法陣を破壊する。
「マリーも機体を装着!両側のゾンビを全て潰せ!!」
「はい!」
さらにマリーも機体を装着して援護し、両側の檻をゾンビもろとも撃ち抜く。
ゾンビの急所は頭、正確には脳からの情報を伝える脊髄。そこを攻撃しないと這い寄ってでも襲いかかる。だが、マシンガンの連射と威力でゾンビの手足もろとも引き裂くかのように次々と倒れていく。
やがてマガジンの弾が無くなり、攻撃が一時中断される。
・・・・・・いやぁー。さすが文字通りの一網打尽だ。
俺は、重力魔術でひとつ上の段に跳んだ。彼女たちも続く新しいマガジンを装填して続く。
降り立つと、さっきの出来事に腰を抜かして倒れている。
(チャカ!)
「で?どうします?」
「これも、火を吹くのか・・・?」
あ、こいつら、銃を額に当てる意味が分かっていないか。
いや、状況的に少しは理解するだろう。首筋にナイフを当ててるくらいの状況と同じだということに。
だが、顔が歪むとかしないでそのまま無言になる。諦めたか?
恐怖で何も言えないのか・・・まあいい。
・・・・・・・さて。このまま殺していいのか?
用心深さを考えると、何かしらの仕掛けが差動作するかも。製造方が書いてある紙が燃えるとか・・・・いや、まさか。
「動くな!!」
それ俺のセリフ。じゃなくて。なんだ、まだ人がいたのか。
ルナを人質に。・・・・・首に刃を当ててるから下手に動くのは危険だな。
・・・・まて、さっきのこいつの無言はこれだったのか?
いや、そんなはずはない。降りた時には居なかったし、第一こうゆう奴は部下を見殺しにするようなタイプだ。他人を平気で手をかける奴なんだから、信頼の欠片もない。
「フフ、形勢逆転だな。こいつらは盗賊団だ。野獣と同じでカネをチラつかせたらよく働いてくれたよ」
「(小物的発想~。)」
「貴様ぁーー!!」
「レンヤ、ステイ」
「は!?いや、しかし!」
「こんな陰険なところにいる奴だよ?根性だってネクラになってるに決まってる。自分が死んだらここが崩れる仕掛けがしてあるかもしれない」
「ははは、冷静だな。その通り、私が死ねば螺旋階段の支柱が崩れて生き埋めになる。ここは地下奥深い、掘り終わるまで魔力など持たんさ。あえて生き残って後悔と恐怖で絶望するだろう」
そうだろうさ。
実際のところ、あの盗賊で空いた時間に少し考えたら浮かんだことなんだけど。
だが、盗賊団て言ってなかった?コイツ一人しかいないようだが。
「盗賊団って言っても一人じゃないですか」
「盗賊本来の仕事をしているさ。ま、そのうち戻る。残りのカネを受け取るためにな」
とゆうことは、俺らが入ったのは絶妙なタイミングだったのか。
「ふ~む・・・・・・その鎧、お前が造ったのか?」
「ええ、けっこう自信作の方で」
「・・・・・・・よし付いて来い。特別に、同じ学者として偉大な場面を間近に見せてやろう。人類が死の恐怖から解放される歴史的瞬間だ。・・・武器を仕舞え」
同じじゃねぇ低ぇー脳ぅ。
絵に書いたような小物の考え方だな。ここは少し様子見が正解かな。
状況が好転するまで大人しくしていよう。
成功しようが、失敗しようが、その時絶対油断が生まれる筈だ。
「二人共、機体を解除して」
「はい・・・」
「よし、ついて来い」
機体を解除させて、俺たちは奥に鉄の扉の向こうに案内された。
その奥は研究室のようだ。
いかにもって感じの部屋で。壁にある本棚は天井にまで達するほど高く、本がびっちり。机の上には紙とフラスコ。その中には妙な液体。そして意味ありげな機材が置いてあった。
床には前の部屋と同じく水が張った溝がある。溝はその一番奥の装置の下に繋がっていた。装置には大きなカプセルのような容器があり、その中に女性が入って、手をクロスして眠ったように目をつむっている。
「彼女が私の愛しき人、ミリアリアだ。周りがどんなに言おうとも私の実験に協力してくれた唯一の理解者だ。私の所為でこんな姿にしてしまったが、肉体を修復して、他の人間の皮膚も使って、この綺麗な身体に直したのだ」
「ふーん。でもそれだけでは復活しないのでは?」
「心配は無用だ魂を定着させる術式はすでに発案し組んである。あとは賢者の石とその術式組んだ錬成陣を作動させればミリアリアは復活する」
そうして、カプセルを優しく抱き、なで始めた。
「光栄と思いたまえ、君たちは素晴らしい実験を間近で見れるのだからな」
さあ、どうなることやら。
「はじめるぞ、少し下がれ」
俺たちが離れると、ルドノアは服から真っ赤な石を出した。
そうして、儀式が始まる。
ルドノアが呪文を唱え始める。
すると持っていた紅い石が彼女の中に入り、周りの溝がの光が明るさを増して、カプセルの周りに錬成陣の光りが現れ始めた。光はカプセルの周りを照らしながら今度は少し離れた床に錬成陣を映し出す。
ちょうどルドノアの立っているところだ。
そして、床の錬成陣に手をやり呪文を唱える。
しかし、ほどなくして錬成陣が力を失ったかのように消えてしまった。
「なっ何故だ!」
失敗?
カプセルの中の人は全く動かず、目も開けてない。呪文も途中そうだ。
そりゃ簡単に言ったら歴史的大発見とかの苦労もせんがな。
多分だけど魂と肉体を繋ぐ白い線があると何かで聞いたことがある。「命の糸」的なもの。それは死んでも少しは繋がっているらしいけど、彼女は何十年以上も経っている。繋がっているはずがない。
それを理解してるようにも思えないし、しかも今現在、ルナに魂が憑依してるんだから錬成陣も正しく機能するはずがない。他の人をつなぎ合わせた時点で完全に本人とは違ったものになっている状態でもある。
考えればいろいろ出てくる、多くの問題点。
「魂が繋がらないんでしょうな。死んで数時間ならまだしも、何年も経っている。血を使っているわけでもなさそうだから、どの魂を定着させるかわからず障害を起こしたとか、ですかね・・・?」
「じゃどうするんだ」
「どうするって・・・。これは全く他人の体。他の人の肉体をツギハギにしたのでミリアリアさんではなく単なる肉の塊でしかない」
「そんな・・・」
「・・・・!!みんな!構えて!!」
「え?」
突如彼女が目を開けた。とっさに構える。
カプセルは「バリン!」と音を立ててガラスが割れる。中に入っていた液体が流れ出し、彼女・・・いや。何か別のものが出てきた。
目は完全に人の感じをしていない。体は綺麗でもヨタヨタと歩き、こっちに向かってくる。
ゾンビのようだ。
「どうして・・・・・・・」
「魂が入っていない器に、エネルギーが入った事で、感情とゆう制御を持たない人形か魔物のようになっているんでしょうよ。そう、さっきけしかけたゾンビと同じですよ」
「バカな・・・・・」
バカはあんただ。
・・・・・・・?ルナを人質に取ってるやつを見てる。
構えた!ヤッバっ!!
「クソ!!」
「へっ――?」
そのすぐだった。
男は殴られ凄い力で壁に激突。
衝撃で肉体がもたずに形を残さず破裂した。
俺はとっさに先に身体強化魔術で、加速して、ルナを確保した。
「っぶね~。なんて速さと力だよ」
「・・バカな・・・優しかった彼女が・・・私の理論は完璧だったのに・・」
これ以上なく落ち込んでいますね。
無理もない、今まで生き甲斐同然の事が、念願叶うところで失敗に終わったんだから。挫折を経験していてもこれはキツイ。俺だって何度か失敗して成功させたんだからその気持ちは理解できないこともない。
共感できるのはそこだけだけど。
「マリー!チェーニ!機体で押さえて!柱を壊されたら洒落になんない」
「は!」「はい」
機体でなら、身動きも取れまい。数tもの岩を持ち上げることも可能に設計されているマニピュレターだ。人の力以上を発揮する彼女でも振り払うのは無理に決まってる。
機体は背丈が高いから、昔で見た宇宙人を捕獲した写真みたいになっている。
「さて、どうするかな。まあ、一つだけ考えがあるけど。やったことないし確率も低いんだよな・・・」
「なに!?私はどうなっても構わない。私の中の賢者の石を使ってもいい。頼む!彼女を助けてくれ!復活するならどんなことでもする!」
「・・・・・・どんな事でも?」
「ああ、私の全てを差し出す」
「なら“契約”しましょう。その命ある限り〝二人共〟このレイクード・バルケットに全を捧げると」
「理解った!」
即答か。ならこれ以上の何も言うまい。
契約は、魔法陣で魔術効果のある書類にサインするだけ。だが、この世界の契約は前世と比べ物にならないくらい意識が高い。
儀式に近いようなもので、内容は契約者がただ自分の名前を書くだけ。
これで一種のワラ人形と同じ効果を持つ。
向こうでは迷信だが、ワラ人形に相手の髪を埋め込んでクギを打つと、その箇所が現実に痛くなるのと同じ。
この世界では実際に書類の記載されている事が実際に起こる。これ自体に命をどうこうするほどの強制力はないのだが、血を使うと話が変わってくる。血を使うことで、魔術的効果が強くなるのだ。
内容によっては「呪詛」がかかる。「もし裏切れば命を奪う」と言うことも実行されてしまう。
だから、この世界は「契約」とゆうものを重く受け止めている。
こいつの知識は今後役に立つかもしれない。
だが、この状況とやってきたことを考えれば契約の内容をキツメにしておかないとならない何をやるかわからない。首輪をかけておけないと。
こいつは信用はできないけど、知識、発想は使える。
「契約」なら裏切ることもないだろうし、ある意味「隷従の陣」よりキツイからな。
「さて、契約完了っと」
「まずはどうするんだ?」
「う~ん、と」
血肉とかは肉体の関係上使えないので、彼の術式と漫画で見た「魂を鎧に定着させる」ってのを合わせて試す。
錬成陣の位置は・・・首筋かな。血管やら神経がとか集中してるし。そこに身体に魂を定着させる錬成陣を描く。雨や湿気で陣が消えないように入れ墨で描かないと。
今さならだが術式の説明をしよう。
術式は魔法陣や錬成陣に使われる象形文字。威力や距離、錬成物などの「情報」を魔法陣に読ませるものだ。
例えば火を使いたい場合。
まず火の「火力」「温度」「持続」などの「情報」を象形文字で描く、そしてそれを発動させるのに必要なマナを集める円を描く、これで術式となる。それから後は自身の魔力で発動させる。
錬成陣の場合はも基本的には同じで、錬成する「形」や「大きさ」を含める必要がある。
そうすれば術式が反応し「実行」される。コンピュータープログラムみたいなもんだ。
世間では難しくされているが、俺は金属の加工に加工プログラムを使った機械を使ったことがあって、その時にプログラミングを習た事がある。
簡単に言えばそれぞれどの文字がそれぞれの意味を持ち、それを正しく正確に入力する。物分りのいい子供に、やって欲しいことをキメ細かく説明させてやるようなこと。
歩けと命令した場合。
一歩の足の距離は?歩数は?どのくらいの速さで?力加減で?などの数値を正しく入力するのだ。
面倒だが機械にとっては大事なこと。プログラム言語も覚える必要もあるが、俺にとってはその場で新しい術式を組み上げるなんざ造作もない。
算数の暗算なみに簡単だ。
「二人共、彼女を床にうつ伏せで寝かせて。動きは封じたまま」
「かしこまりました。」
・・・・・・・・。
「・・・これで良し。ルナ~」
「は、はい」
「そこの円に立って。ミリアリアさんは合図と同時に始めますよ」
「はい。(←ミリアリア)」
「なに!?ミリーだと!?・・・・・ではさっきのは」
「まあ。説明がめんどくさいから後にしようか」
説明はいろいろ後にして。
まず、床に大小二つの魔法陣の円を書いて。次は「円の小さい方の魂を大きい陣の魂に置き換える」とゆう術式とそれと肉体の入れ墨の錬成陣にドアの考えた「魂の定着術式」、そして「二つの円の同調術式」を、と・・・・。
ま、こんなところかな。これが俺にできる精一杯で唯一の望み。
あとは簡単で、ルナの内にあるミリアリアさんの魂をこの器に定着させればいいはずだ。
魂を賢者の石に定着させるには、床の錬成陣に「どの魂を定着させる」とかを「大きい円の中心の器に、小さい円の中にいる器の魂」で、肉体に「この魂を定着させる」とすれば、ミリアリアさんの魂が、この肉体に定着する筈だ。
一応成功の確率は半分以上はある。
さっき、「優しかったミリーが」と言っていた。
男を粉々にした一撃はルナを助ける行動に思える。他のゾンビと同じ衝動的で動いているのだとすれば、一番近いルドノアを狙うはず。なのに一番遠いルナを人質に取っているやつを狙った。
ルナを助けたと考えるなら、肉体の記憶、身体が覚えているのか。それか、ただの偶然かは分からない。
だが、何らかの繋がりがあるはずだ。それに賭けるしかない。
「さあ、祈ってくださいよー(パン!)」(←錬成)
って、この仕草自体が神に祈ってる感じか。
・・・・・・・・・・さて、手応えを感じたような、そうでもないような?
「・・・ルナ、どう?」
「・・・・・・・何も聞こえません。たぶん戻ったと思います・・・」
「なら完了か?」
暴れる様子もなく、目をつむり眠ったように見える。
呼吸は・・・・・ある。安定してるな。
ふう、ルナの魂が入っちまうんじゃないかとヒヤヒヤしたけど、ルナ自身の魂と肉体を繋ぐ「白い線」のおかげかもな。肉体の優先度が違うか。
「どうして、目を覚まさないんだ?」
「魂の定着が安定するまで時間がかかるのかもね、なにしろ初めてなんだから何とも言えない。とは言え呼吸は安定しているから、おおむね成功かな」
「ありがとう・・・ありがとう・・・」
「さて、こっちも時間が勿体無いから彼女を車に運んで移動するよ。あ、暴れられても面倒だから念のため拘束しといて」
「かしこまりました。」
「丁寧に扱え」
「貴様の指示など知るか!」
「こらこら喧嘩しない」
心配はあるが、思わぬ人材ゲット。
そうだこの後、証拠隠滅の意味でこの屋敷を焼いておくか。
◇
・・・・・さて“こいつら”どうする?
階段を上がろうとしたら上から集団が降りてくる音がしたので待ち構えた。
そして、思い出した。
そう、ルドノアは盗賊“団”と言っていた、つまり一人二人の話じゃない。もっと大勢の人数がいる可能性があったのだ。
それを思い出して、念のため、罠を張って一気に全員拘束したかったが・・・。
「こいつらいかがします?」
そう、問題はそこなんだ。
忍者みたいな奴がいて、罠をくぐり抜けやがった。
そいつに銃を使ったから、やっぱり証拠を残さないために全員殺すしかない。銃の存在を見られたからには口封じはしなくてはならないからな。
今はお尋ね者なんだし、大人数での移動は足も遅くなる。それに、生かしておけば、俺たちの名が広まっちまう。奴隷にしようとも、町の住人に事情を話すわけにもいかない。
ここで殺しておいたほうが後の安心になる。
「殺す、しかないね」
「ま、待ってくれ!頼む奴隷にでもなんでもなるから助けてくれ!」
「残念だけど、例え奴隷にしてもこの数をまかなう食費はない。理由もいろいろあるし。ただでさえ成長期の子供がいるからな」
「・・・・・なんであたしを見るのよ」
「いや別に。それにね、あなたたちはそういった声に耳を傾けようとしなかった。これだけでも十分な理由になるでしょう。・・・レンヤ」
「は!では【フレイムバースト】!」
せめて痛みなく全力で彼らを屋敷もろとも弔わせてもらった。一定範囲最大火力の一瞬で終わらせた。
それから手を合わせてそして、十字を切った。
「さて、上がるよ」
「化けて出てこないでしょうね」
「さあね、もしかして怖い?」
「だ、だれが!ただこんな屋敷だったから一回ぐらい出るのかと思っただけよ!」
「?出たじゃん」
「へ?」
「だってルナに憑り付いたミリアリアさんって、つまるとこ幽霊でしょ?町の住人も白い影を見たって言ってたじゃない」
「え?・・・へ?」
その後、階段を上がっていく時ずっとフレイアが俺から離れることはなかった。
地上に出て屋敷から少し離れたところで俺はルドルフのデコに拳銃を突きつけて、一発の銃弾を打ち込んだ。そうすれば地下にある魔法陣を作動させて証拠隠滅する手間が省けるからだ。彼自身、賢者の石で死なない体になっているんだから問題ない。
すると、地面が揺れ始めた。
その崩れる振動で地盤が崩れ、屋敷も同時に倒壊し始める。そして残骸は地下の空いた空間に落ちて屋敷は完全に地面に吸い込まれた。
すべての証拠を隠すように。
俺たちは地響きを聞きつけて町の連中が来ない内にさっさと出発した。
その後、数日経ってミリアリアさんの意識は回復し、意識はしっかりしていて俺たちとともに旅生活を送っている。
そして聞いた噂によると、屋敷が完全に地面に埋まって住民たちはそこに墓を建てたらしい。
町の道には人が通い、みんなが普通の生活を徐々に取り戻していったと聞いた。
感想が良い点で来て結構嬉しかったです。最初は誤字脱字が多かったので。
内容もイマイチでしたが、今のところ自分的にマシになったと思います。現在いろりろと忙しいですが時間をつくって投稿していきたいと思います。
ありがとうございました。




