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とある転生者の革命戦記  作者: スピンドル
第四章 少年期 「帰還編」
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第三十四話 「錬魔術師」

第四章    少年期    帰還編

第三十四話  「錬魔術師」


わたしは帝国魔術研究所の所長を務めている。

これは帝国国内で最も高い頭脳の人物でしか務まらない栄誉なこと。新たな魔術を研究する場所である以上、全てを熟知していなければならないからである。

だが、今となっては研究とは名ばかり、戦争の玩具おもちゃ、兵器を作り出す場所でしかなっていない。最悪失敗、不調を起こせば全て責任を押し付けられる立場でもあった。

それでも娘を授かって家族を養える金はもらってるわけで辞められるわけでもない。

胃に効く薬は肌身離さず持ち歩いている。

ただ家庭での心配は何もない。

娘は世界一の天才だと自負している。6歳から文字の読み書きから数の計算を覚え、マクシェガヴォードでも飛び級しつつ首席で卒業。

博士号まで取得した。

魔石を埋め込んで魔術を発動する【魔術剣グリモアルソード】の量産に成功した実績がある。

帝国には遺跡で発掘された古代のつるぎがある。

魔族との戦争時代のものとされているが、研究されていてもその全ては謎に包まれている。

今まで誰も使いこなした者はらず、謁見の間に保管されている。

唯一残った文献にこの剣を持てば大地を割り天空の雲おも切りけるとされている。帝国国旗にも剣が記されているが、これが元になっているとされている。国宝にされ謁見の間、王座の後ろの壁に堂々と掲げられている。

定期的に剣は研究され、誰でも簡単に使いこなせるために造られたのが魔術剣である。刀身に魔法術式を刻み、つばに埋め込んだ各属性の魔石で詠唱無しでも魔術が使用できるものだ。

作成に手間が掛かるため、数を揃えるのに多大な労力が必要とされていた。

だが、娘が開発した魔術剣は容易に生産でき、魔石を2つ取り付ける事で違う属性の魔術を行使も可能だ。

生産方法は魔法陣を施した鉄を熱し、刀身に焼き付ける事で手間なく量産させることに成功した。刀身を書類に印をするようにするのだ。簡単だがそれを実現させた点で大きく評価できる。そして世間はそれを認め、【錬魔術師アルケミア・サーフルス】と言われる者の一員となった。

世界に影響する魔術や武器を作ったものに与えられる由緒ゆいしょある称号だ。

それを目標にする子供も多く、誰もが知る有名人になった。民衆からも憧れの目で見られ、自他ともに認める天才だと思っている。親として誇らしい事。だからこそ、娘はその能力を買われ「猛将の頭脳を掌握した男」と言われるアルゼイダー公爵に認められ新しい魔術などを研究する一部を任された。

それまで一度も失敗もせず、完璧とも思えた。

だが、アルゼイダー公爵家の跡取りが持ち込んだ“これ”で、世界には私の知らない優秀な才能を持った人物が居るのだと実感した。

この「りぼるばー」と言われるものは、一つの目的のために複数の小さな部品を組み合わせて、その部品一つ一つを正確な動きをさせた兵器。

こんなにも小さいのに威力は想像以上らしい。

魔術でもない武器が容易く魔術防御を施したオリハルコンやミスリルの鎧を紙のように貫くと。報告で確認済みだが、実際に見なくては信用できない。

実験にはどうしてもと公爵自ら直々に行うことになった。

少し離れた的に当てる。


バン!

「おお!?」


凄い音だ。

その大きな音に見守っていた研究員が腰を抜かす。私も抜けかけた。

そうして連続で5個の穴が開けられた。


「こ、これは凄い・・・・」


魔術防御の陣を施したのにこうも簡単に貫通させるとは、しかも戦場に持ち込みやすいように、小型化にも成功している。

これ程のモノを作り上げるには何十年と必要だろう。

ドワーフの熟練技師の技だろうか・・・・・?


「これは、いったい誰が・・・・・?」

「詳しくはまとめた報告書を読むといい。が、驚くであろう。これは、子供が作ったらしいのだ」

「な、なんと!?」


こ、子供が!?

ありえない。あり得なさ過ぎる。今の我々でもこの“芸術”といえる程のモノを作るには知識が乏しすぎる。

資料によれば製作者はレイクード・バルケット。

数ヶ月前に占領したバルケット領の次期領主。生きていれば現在14才くらい。5歳あたりで同領内のビエノー村にて現在の持ち主にリボルバーを与えて、帰路。そして帝国に占領される前に王都に疎開中盗賊に襲撃されその際に嵐の海に落下。依然にして生死不明になっている。

落下水域は海が粗い上に嵐までとなると死亡している可能性が高いとされている。

年齢をもっと重ねればこれ以上のものを作れるのか、一度娘と合わせればいい刺激にもなったかもしれないのにと期待していたが、実に残念だ。

数日間で調べたが、銃だけでも凄いのに「だんがん」と言われるものも精工に作られている。

構造は「やっきょう」と言われる黄色の金属に付いていた火の魔石と無属性。その無属性魔石を砕いて爆破し内部の火の魔石に点火。薬きょう内で圧力をつくり、先端の金属を弾き飛ばす仕組みであった。

銃についての全ての構造が分かって、いざ作ってみたが、やはり難しい。

銃自体細かい部品を寸分の狂い泣く複製し、組み立てた。弾丸も火の魔石の一定の密度でないと、あれほどの威力は出せなかった。

火力が高いと銃が爆発し、少ないと威力が足りない。

これには「銃の持ち主」の話を聞きに牢屋に会いに行ったこともある。


「ええーと・・・・らいかんにてんかさせて?鉄のたま打ち出すけど、そのばらんす?が難しい、とか?」


だが、持ち主のくせに、全く判っていなかった。この武器は世紀の大発明かもしれんのに。まさにブタに真珠とはまさにこの事だ。

仕方なく弾も分解してありとあらゆる限りの手を尽くすしかなかった。

・・・・・・・数か月の後。

ようやく結果が出せた。

そして、量産のための準備を整えようとしたまさにその時。


「所長!公爵から今度は『形の違った銃を手に入れた。調べてくれ』と」


それは「えむわんガーランド」とゆう名の銃らしい。これは射程や威力を大きく向上した銃で、基本構造は同じだからすぐに結果を出せると思い込んでいた。

だが、意外な所で目論見が外れる事になった。

「弾」だ

どうしても、この銃に使っていた弾が手に入らなかったので、こちらの生成した弾を使ったのだが、途中で詰まってしまう事が多かった。

それから何日も研究室で調べ上げ、今日は報告の為、皇城に来ている。

私と公爵、そして皇帝との密会に近いものとなっている。

兵器は試作段階であり、公爵にとっても他貴族に手柄を先越されたくないとの思惑があってのことだからだ。


「では、これまでの研究結果を報告します。小さい銃は、銃身を短くした分燃焼が速い魔石を使用していましたが、このえむわんガーランドは、魔石をワザと遅い燃焼速度を選び、長い銃身を活かして威力を増大させつつも弾を安定させ正確な射撃を有していることを突き止めました」


新しい銃を調べてもこちらの造った弾が全く効果を表さないので、その銃に使われた弾を是が非でも手に入れる必要があった。

だが、報告では銃自体は手に入ったが、現領主共々弾を保管した小屋は破壊されてった。

現場指揮官は、何をしていたのかと思う所だが、嘆いても仕方ない。こちらの作った弾を何度も試し撃ちを繰り返した。

結果は散々な有様。

弾が詰まって使えなくなる、威力を高めるために密度を増やし火力を高めてて銃自体が爆発はするなど。使えなくなった銃は数十まで及ぶ。

このままでは鹵獲した銃全て同じ結果になってしまうところだった。

そこに朗報が来た。

なんと数個だけ小屋の周りから発見したのだ。かき集めるだけ、かき集め、無傷なのが送られてきた。

そして、ようやく仕組みを突き止められた。

この弾は飛んでいく金属の部分が多きく鋭くなっていて薬莢も細長くなっていた。これで威力を高めつつ使いやすくしていたのだ。


「――――研究結果は以上です。弾の製造は今後から始める予定で、またリボルバーの構造を取り入れた武器も実験中であります」

「うむ。これの技術には驚いたが、帝国もそれを使いこなすことができるのか。良くやってくれた」

「はい、皇帝陛下。魔術同様に「銃」を戦術を取り入れれば、この戦、負ける要素は微塵もありません」

「・・・・・・一つ、あるだろ」

「え・・・・・・・?」

「これの開発者だ」


・・・・・確かに。

戦争をしているならこれを改良するのは誰でも考える。開発者なら、これ以上のモノを作り上げる可能性がある。

そして、それを作ったのが、敵国では。


「陛下。レイクードの所在は?」

「ギルドに依頼を出し、懸賞金も付けて探しておる。無論情報にも金をちらつかせているが一向に報はない。顔に特徴あるキズがあるからすぐに報が来るのと思ったがな・・・・・」

「本当に生きているのでしょうか・・?」

「“協力者”の意見からは生きている可能性が高いと踏んでいる」

「もし、生きているとして意図的に隠れているのか」

「まさか・・・」


これ以上は何も言えなかった。

子供の身でありながらこんなものを作り出すのだ、そういった知恵があってもおかしくはない。ましては領主の孫でもあるのだから、人心掌握もズバ抜けていそうだ。

それ以前に何としても、帝国の味方になるようにしなければ。


「これからどうする?偽物も多数出現しているんだぞ」

「偽物に関しては、今まで通りにニセの銃を渡し、問題ないと言えばそのまま突っぱねて、問題であれば間違っているところを指摘させ、偽物と見分けが付けばいいものかと」

「そうだな」

「私から一つよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「はい。我が娘も学園の再度在籍させる事を希望します」

「・・・成程。学園にいる〝弟子"から聞く訳か」

「はい。信頼されれば彼の動向も探れるかと。現状ではこれが精一杯の判断かと思われます」


同じような武器を学園で使っていたという話を聞いた。それは開発者の弟子の女の子たち。一度訪れた村で仲良くなり、使い方を教えたそうだ。

その内の一人は姫様の護衛としてこちら側にいるが、残念なことに銃についての知識は全くない。関係がないよりもマシだが、やはり学園にいる知識を持った人物との関係も持たなくては。

その為に姫様が学園に再度在籍する事になったが一向に進展はない。

学園に在籍している連合関係者は多く、レドを探す動きを見せている。

帝国に取り入れる確率を上げる意味でもこちらも、在籍させた方が引き込む可能性は生まれる。

本人たっての希望もあるが。


「よかろう手筈は整える。下手へたな事はするな。もし怒り狂って、これ以上のモノを量産されれば帝国も危うくなるかもしれん」

「言い聞かせます」

「では陛下。もう少し懸賞金の額を上げつつ、それで様子を見ましょう。所長も今後の研究を怠りなく」

「はい」


これで、今回の会合は終了。私はその足で研究所に向かった。


「所長、どうでした?」

「今回の報を聞き皇帝陛下は大層喜んでおられた。きょうからも研究に励む様にとのお達しだ。娘のラナロアを呼んでくれ、所長室で待っているとな」

「わかりました」


報告した書類を金庫に厳重に保管する。

呼ぶまで時間が掛かろうと思い、机の上に山積みした紙を片つ˝ける事にした。たまに整理せんと娘に怒られてしまう。


トントン「失礼します」


数分後。所長室に誰か入ってくる。

娘だ。

ん?少し髪が伸びたか?茶色い短髪でパーマが少し長くなっているような・・・。

それもそうか、ずっと部屋で銃を研究していたのだからな。

着ている白い白衣にも汚れが目立っている。


「来たか」

「ど、どうでしたか・・・・・・?」

「ああ、許可してくれた。向こうの準備が整うまで時間が必要だが-----」

「やったあぁー!!これでお姉さまに会える」

「おねえさま?」

「シャーリアお姉さまの事」


ああ「弟子」の一人か。


「容姿端麗で成績から戦闘まで何でもこなし、弱い者を助け、男子も顔負けな女の子のあこがれの人・・・・ああ、私もついに同じ部屋で学べるのね・・・・」


ああ、そうかい。

全く。いつこのような娘になってしまったのだ。姫さまとの関係を持つために貴族との仲を強めてからこうなってしまいおって。


「お~い、話はまだ終わっとらんぞ~~・・・」

「はっ!?」


全くこの娘は。

頭は良いのだが、どうしてこうも歪んだ方向に行きやすいのやら。徹底して言い聞かせんとな。


「それに関してなのだが、彼女に近づいて情報を聞き出すが、下手に刺激する彼女への言動は避けるのだ。これは皇帝陛下が懸念されていた。もしそうなれば――――」

「わかってます、お父さん。必ず成功させます」


一抹いちまつの不安が残るが頼りにするしかない、か。


「そういえば聞きました?学園は新たに送迎用の船を雇ったとか。何でも〝帆を使用しなくても足の速い船〟との話で」

「それは初耳だな・・・・・・・・もしや」

「ええ、多分。あの発明の神様が関係しているかと」


神様ねぇ。

確かに神の偉業とも取れる程のモノを既に二つも作り上げている。そう呼んでも仕方ない。だからこそ、娘に与えた任は大きい。

何としても、例え娘を差し出そうともレドを帝国に引き入れねば。

連合より先に――――。


▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


帝都がある大陸グランフィーニの最西端の港街。

この街に学園が雇った、ヴェイパー号が停泊する予定である。

帝国各領土から学園に戻る息子娘を見送る貴族や平民の他に、学園所有の珍しい船を物珍ものめずらしい感覚で見ようと、港は今までにない程の人の多さだった。


「お、来たんじゃないか?」


一人の男が水平線の向こうにある何かを見つけ指差す。

姿がはっきりして、それは船だと判った。

船の一番高い見張り台の上に学園の旗を掲げていた。両脇の風車のような装置を回し筒から白い煙を出しながら、こっちに向かって来る。

船は港の近くになり速度を落とし、方向を変え、接舷する形を取った。

港の人たちはその工程を見て驚いていた。

船が自ら方向を変えて接舷するのは初めてのことだったからだ。

帆船でも小舟で係留用のロープを取りに行くのが普通のことだった。

船は水車みたいな部分が当たらないよう、ゆっくり、ゆっくりと進み、ロープが投げられる。それを港のギルドに引っ張られ船は付けされた。

そして跳ね橋が降ろされ、船から女性が降りてくる。


「お待たせ致しました、ヴェイパー号です。食糧などの積み込み、明日あすの出航になります。学園関係者は遅れないようにしてください。何かありましたら私クレールにお申し付けください。」


そして、船から次々と荷が降ろされていく。戦時下とは言えギルドが他の支部への物資を運ぶように依頼される事がある。

その物資は見張り台のマストに付いたクレーンで次々と下ろされる。滑車をキリキリと言わせて数人でロープを引っ張り荷を降ろしている。甲板にはタールを塗っている者もいる。

そんな中、女の子とその執事らしき男性が近寄って、荷下ろし作業中クレールに話しかける。


「お初にお目にかかります。私はラナロア・アーリム、こちらは執事のセバス。単刀直入に申し上げましょう、あれを見せてもらえませんか?いや、是非見せて下さい」


少女が指を差す。それは船の前甲板に布にくるまれているモノを示した。彼女にはすぐに解った。あれが凄いものだと。


「申し訳ありませんが、関係者以外触れる事ができません」

「お金はいくらでも、この目で見せて頂くだけでもお願いします。アーリム家としても覚えておきましょう」

「しかし、作業に支障を来たす恐れもあります。甲板のタール塗りを明日までに終えなければなりません。そんなことをする時間はありませんよ」


即答に答えるも、凄い勢いで迫る。

見た目は幼い子供のように見える彼女でも、これ程の貫録で迫られて慣れなかった。理由を並べるがそれでも構わず、押し寄せる彼女に少し下がり気味になってしまう。

名のある貴族に手でも出したら自分達の首を絞めかねないと、考えていることもあってどう対処するのか判断がつかない心境だった。


「あんまり乗務員を困らせないで頂けないですかね」

「あなたは・・・この船の船長とお見受け致します。お願いします。あの布の下には武器を隠しているのでしょう?それを見せてほしいのです」

「良い勘してるが、お断りだ。あんたは学園の生徒、それに帝国とイディアールの関係を理解していない筈ないだろ?開戦しておいて勝手に休戦。領土は返さないでおいてさ。あまつさえ身勝手に帝国貴族を多く復学させて、そんな相手に俺の船を勝手にさせたくないのでご了承を」

「貴方は理解していますか?これは偉大な発明かもしれないのです。価値の知らない者が持っても意味がなく――――」

「そこまでになさい。ラナロア」

「邪魔を・・・ひ、姫様!?」

「姫様?」


後ろから静止され、振り向くとローブを羽織った女の子。横には鎧を着た赤髪の女性、そして、荷物を持った獣人が立っていた。

ラナロアはその人物達を見ると、貫禄は消え後ろに下がった。


「ごめんなさいね。珍しい船ですから、研究員として興奮してしまって。実は私も、乗るのが少し楽しみなんですよ」

「いえいえ、こっちは無事に運ぶのが仕事だ。それを邪魔しなければ何も」

「ありがとう。ところで少し話を聞いても良いでしょうか?」

「・・・・・それでは、船長室にどうぞ」


呆気にとられたラナロアを尻目に船内へと入っていく。

場所を変えて船長室。


「いやあ、参ったよ。ああいった相手は何度も見てきましたが食いつきが凄すぎてクレールもたじろいだほど・・・ですから」

「研究熱心な人ですから、それと気軽に話してください。その方がいいでしょう?」

「じゃあ、お言葉に甘えて。実は敬語で話すことにまだ慣れなくてね。で?話ってのは?」

「この護衛のヘーレンについて聞いたことは?」

「まあ、帝国で獣人が護衛につくのは異例のことぐらいしか」

「実はこのヘーレンは幼少の時、レイクードと師弟関係らしいのです」

「あの年で弟子とか居たのか!?すげえな兄貴・・・」

「ヘーレン〝あれ"を・・・・。初めて彼女と会う時には、すでにこれを作り上げていたそうです」


目の前の低い机にリボルバーが置かれた。

船長のペドロもクレールもレド本人に会っているから知っていた。だからこれも、凄いものだとすぐに理解した。


「触ってもいいか?」

「どうぞ。弾丸は入っていませんから」


手に取って上下左右、銃口、そして、カチっ!と引き金を引いたりと真剣な顔で見る。


「いやあ、驚いた。まさか、子供の内にこんなモノを作るとはな」

「ええ、ヘーレンも幼のころから何度も使って、かなりの実力を持っています。獣人の能力も護衛として私の役に立っていますよ」

「なるほどな」

「・・・・・・・その銃を託すほど信じられています。どうかその製作者がどこに向かったのか教えてもらえませんか?」

「・・・・・・・」

「いずれ知られてしまいます。もし、悪意の持った人がこんな兵器を手にしたら――――」

「俺が知ってるのはレンヤってメイドの故郷に行くとしか聞かなかった。それ以上知らないな。行き先の噂も聞かねえよ」

「そうですか・・・・・ありがとうございました」

「話はもういいのか?」

「そうですね。歩きながら話しましたが、ラナロアはとてもプライドが高い方です。ご注意を」

「分かった。・・・・・クレール、街に行って魔石を大量購入させろ」


そうして、姫様一行は、出発の日になるまでの滞在する宿に向かった。


▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


とある宿。


「ムカつく、むかつくっ!むかつくっ!!はらわた煮えくり返るくらい腹立つわっ!!」


獣人ごときが私にあんな物言いをするなってっ!!


「こうなったら意地でも見てやる!」


皇帝が気にしていたのは「レドの弟子」だけ。

なら、それ以外だったら問題ない。

使わせざる負えない状況に持ち込めば使うところを見ることができるはず。海賊にワザと船の情報を流して襲わせれば、あの布を取り下にある物を見ることができる。

こうゆう時はセバスが適任だわ。


「セバス、あなたに動いてもらうわ」

「はい」


セバスは有能な執事。どんな手を使うかはセバス自身が判断して行動できる。家事も戦闘も完璧な自慢の従者。船を沈めず、生徒にも危害が及ばない海賊を選ぶ判断も。

あの布に隠れた物がどんなに凄いのか。一般人でもわからないだろうが私は違う。そう感じる。銃を研究してたから勘が外れることはない。

どうやって船が動いているのかも突き止めなくちゃならないけど、そっちは自分でなんとかなる。

帆の代わりにあの水車みたいなもので推進力を得ていることは分かる。だがどうやって動いているのか、見る機会は十分にある。

船が出るのは明日。それまでにセバスが手はずを整えてくれる。


              ◇


翌日、甲板のタールを塗り乾いた後に出航して数時間。

船は何事もなく進む。甲板は学園生徒で賑わっている。もの珍しさにはしゃいでいるのだろう。凡人は好きにさせておけばいい。

が、わたしはちがう。これから船を動かす場所を探しに向かう。

探すといっても中央の風車のところで、生徒が立ち入っては行けない場所を進めばいずれは、いずれ見つかると考えている。

すると、隅にまで鉄を使って頑丈に作られた区画にたどり着いた。

やっぱりこの先のようね。

そうして、狭い通路の扉が二つ。

この扉のどっちかにこの船を動かしている部屋だとすぐにわかった。


「さあ、正面の鉄の扉か、この横の木の扉のどちらが・・・・」


・・・・・・正面の扉から声がする。


「――――を―――になるんだぞ!さっさと魔石を―――来い!」

「は、はい」


まずい!誰か来る!

こっちの木製の扉があった。

無我夢中で廊下を戻って木製の扉の中に入った。


「まったく。機関長オヤジさん、あんなに怒鳴らなくてもいいのに。魔石は確かクレールさんに―――・・・・・」

「行ったわね。・・・・・・・・ふ、やっぱり元奴隷ね。扉を開けっ放しにするなんて」


さて、どんな世界が広がっているのか。

ゆっくり気づかれないようにそ~と入る。


「・・・・・・・・・・・・」


あまりの世界の違いに言葉を失った。

周りは鉄でガッチリと補強された部屋に、細長い水か海水を貯めるような鉄が四つ。二つは縦に船の両脇に立ってその中心に横に寝かされた二つの筒。その筒は繋がっていて端から棒状の鉄が出ていて歯車を回している。

多分あの筒で何かを入れて動かしているんだろうけど、周りから出ている白い煙は・・・・水蒸気?

研究所にも負けないくらいの設備ね。移動できる船にこれほどのものを詰めることができるなんて・・・。


ドン!


まずい!!


「あれ?」

「おい、どうした早くしろ!温度が下がったら圧力も下がっちまうぞ!!」

「は、はい。・・・・・?」


ドワーフが入ってきた。気づかれていないようね。

前が見えないほどの木箱を二つ抱えて入ってきたので私の姿が見えなかったのね。このままの姿勢のまま適当なところを・・・・あの樽の影がいい。

話から察するに動かすのに必要な大切なものを持ってきたような感じだけど。

・・・・・・・・・あれは、魔石?火属性ね。

それを燃えているところに・・・・え?そのまま入れるの!?

木箱から出された火の魔石を砕くことも詠唱や魔法陣をしないでそのまま火にくべるなんて。

・・・・・いや、確か寒いニックス地方では燃焼した釜にそのまま魔石を入れて炎の勢いを長持ちさせていると聞いたことがある。多分それと同じなんだ。

それにしても此処は暑いわね・・・・・。

・・・・・。

・・・・・・・・・・。


「はあぁぁー暑かった」


あれから、数人のドワーフたちを残して休憩に入ったので簡単にあの部屋から出られた。それからなんの進展がなさそうだったし、暑かったから自分の部屋に戻った。

結局見ただけでは何も解らなかった。

ただ、あの煙、水蒸気がもの凄い圧力でなっているのは分かる。でも、水を加熱して鉄を動かすなんてそんなことが可能なのかしら・・・。

やっぱり研究してみないことにはどうしても理解できない。

私はいつもの二倍の金額を出し、無理やり個室を使わせてもらっている。

個室でベットと食事、クローゼットも付いて2万ナルクは安い。テントを買うより安く済む。


「お嬢様、冷たいお飲みのをお持ちいたしました」

「ありがとう。セバス、手筈は整えている筈ね?」

「は。海賊がたむろう酒場で航路をほのめかす言動を行いました」

「よろしい」


そうなれば、海賊はこの船を襲撃してくるはず。

時間と海図で確認するけど、だとすれば・・・・・・この海域。

ここら辺はエヴェン諸島と同じようなごつごつした岩が飛び出ている海域。海賊が出没しやすい海域ところで危険な為ほとんどの船は迂回する。

でも、この船一隻。

ギルドの護衛もなしにこんな海域を通るのは自殺行為にも等しい。

しかしそれは仕方ないこと。この船の速度では護衛を付けようにも他の船の足が遅いから置いていかれるのが関の山だもの。

色々な荷物積みの不手違いで出発が遅れたからそれを取り返そうとこの海域に入る。

それもセバスの仕込んだこと。それにギルドの一部でも海賊に奪わせて船を奪おうとしている話も聞く。

海賊にとっても、帝国の貴族が多く乗船しているこの船は一種の「宝船」海賊ならこんなおいしい獲物、見逃すはずはない。

・・・出発して3日。

まだひと月半くらいかかると言っていた。それでも普通の船なら同じ航路でも2.3ヶ月以上はかかっていたから相当速い。

そろそろ、襲撃してきそうな海域だけど?待ち伏せだから速さは関係ないわね。

ふふ、まさか海賊が来るのが楽しみになるなんて。

それから数時間経って、船員がマストにタールを塗っている時のことだった。


「ん?・・・・・・ッ!?剣とロブスターの旗っ、海賊船だ!」

「なに!?警報ベル鳴らせ!」


警報の鐘が鳴り響いて甲板に生徒たちが集まってきた。

剣とロブスターの旗なら、ロブスブレード。

バブルクラブを操って船を襲わせてから金品を略奪する手口。そのやり方を旗にして自称しているのが、【剣を持った蟹、ロブスブレード】。

名前は単純だけど、実力はある。

兵力は少なくても大量の魔物を使役して操れるから、戦力は無限に近い。

まあ、魔術師を倒されなければの話だけど。

あら、早速カニが来るわね。


「バブルクラブだ!!凄い数だぞ!!」

「もっと早く走ってよ!この船速いんでしょ!?」

「生徒の皆さん、落ち着いてください。この海域では岩礁が多く危険ですからあまり速く走れません。しかし、ご安心ください、今から対処致します」


だからこそ向こうもそれを承知で襲ってきている。

さあ、見せてちょうだい、船(武器)の力を。


「ハーピィ全員集まりました」


・・・・・・ん・・・?何故ハーピィが出てくるの?


「よし!バターを溶かすよう調理場に言っておけ、今夜はカニがディナーだとな」

「ガー・ルードさん。あなた自身は海上でカニの動きを抑えてください!ハーピィたちはこのタルを向こうの船に落としてきて」

「まかせろ!」

「船があの岩肌を抜ければ増速して逃げます。ハーピィたちはタルを落としたらすぐに戻ってきてね。戻ったらおいしいお菓子を用意しておくから」

「は~~い♪」


ハーピィたちがタルを持って飛んでいった。

あの馬鹿なハーピィを使うとは驚いた。まあ、いくら馬鹿でも簡単なことくらいはできるか。

それにしても、あのタル何か仕掛けが?

落とすのだから、あれで攻撃する・・・ならば、魔石が入ってる?

単純だけど、当てられるのかしらね。

あれだけいるんだから数で当たるでしょうけど・・・・・。

え?カニを狙わないの?

あ、そうか魔術師を狙うのね。上空からは無防備だし、敵船は一隻しかないからそれに乗っていると思うのが普通よね。


「・・・」(ヒュュ~~~)

「・・・・・」(~~~~~・・・・)

ドッボワッ!!


へぇ~火の魔石と、油か何か入れていたのかしら。一瞬にして火だるまじゃない。あれでは中の人も黒焦げでしょうね・・・・・。

て、ええ!?これで終わり!?

ちょっと、まだ布すら開けていないじゃない!


(グラ!)

「と、とと」

「お、おい!そこ危ないぞ!」


・・・へ?

              ◇


・・・・・・・何なのよもう!!

船が波で揺れてマストに塗っていたタールが落ちるなんて、最悪!しかも、あれから違う方向から何隻か海賊が来たけど結局タル落とされて終わりなんて、あり得ない。

・・・・・・仕方ないか。

船に知略に長けた人がいたのかも。それが失敗の原因ね。この船の船員の事を調べておくんだった。

海賊に船を襲わせたけど、近づく前にハーピィたちのタル落としでほとんど倒されて終わってしまった。

わたしは船の風呂場で真っ黒いベタベタしたタールを洗い流している。

船に風呂場なんて普通は無い。

水は貴重だから普通は飲む以外の事はしない。だから、この船は想像以上にすごいのかもしれない。それにこの「しゃわー」とゆうのも興味がある。

この短い棒を少し回すと暖かい水が雨のように出てくる。きもちいいくらいに。

多分これも「神様」の作ったものに違いない。

それにしても、あの布の下を見れなかったのが残念ね。

見る前に敵が倒されちゃったんだもの。戦いは先手必勝・・・・・・・・ならばこれを戦術に活かせないかしら?

飛竜にタルをつけて落とす。竜なら多く持てるし、動かない要塞や拠点なら効果があるかも・・・・。魔術の迎撃も効かない高さからの攻撃。被害も少なくて済むし確実。

あれ見れなかったけど、これはこれで収穫はあったわ。

ふふ・・・見れなくても何かしらの案が浮かぶなんてね。

「弟子」に会えばきっとまた何かを得られるかもしれない。

楽しみね。

発明の神様「レイクード・バルケット」。

ますます、会いたくなってきたわ。

何処にいるのかわからないけど。ここまで人のことを思うようになるなんてね。あなたの事をいつまでも思っていますわ・・・・・・・。


いろいろと時間がなかなか取れない現状で書き終えました。

次回もよろしくお願いします。

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