番外編「学園での生活Ⅴol.2」
学園敷地内の寄宿舎。
ここは家が遠く通うのが困難な生徒が日常生活を送るための施設である。
4階建ての雰囲気を漂わせる洋風の建物。内部構造は1階には食堂や自由にくつろげる場所があり、2階から4階まで学園に在籍する生徒の部屋がある。
それが5棟並んで建っている。
部屋は二種類。
まず二人部屋。両サイドにベットを備えるが、それを二段ベットにすることで最大で四人生活できるほどの広さがある。プライバシーのために部屋を別ける為にカーテンを使ってしきりにすることができる。部屋のドアの近くには制服を収納するクローゼットも完備され、私物を入れるにも使われる。窓側には学園で学んだことを予習復習するためのテーブルに、ペン立てやランプなど基本的な家具が揃っている内装。
もう一つは一人部屋。
此処は生徒会の生徒が使う部屋で、生徒会は行事を企画するなどの仕事をしているため時間内に戻る事が難しい。自室でも書類整理ができるように一般より広い机と、部屋を使う。
内装は一般より大きく、魔道書、資料などが置いてある本棚と私物を入れるクローゼット、暖炉まで完備されている。
その机に座る青い髪の女の子、シャーリアは手紙を読んでいる。
<母さんへ。
心配掛けましたが、ぼくは生きています。
今はレンヤの故郷で生活しているので安心してください。
旅で余裕がなくて今まで手紙を書くのが遅くなりました。ごめんなさい。
居心地が良いので少し戻るのが遅くなるでしょうが、絶対に母さんの下に帰ります。期限は特に決めてはいませんが、遅くても15歳の誕生日前にレルムッドに戻る予定です。
手紙なんてあまり書いたことがないのでちゃんと書けているか心配です。
追伸、父さんが居なくなってその時、凄く悲しんだことは知っています。
僕がこんな事になって自分の所為と思わないでください。
だから身体に気を付ていてください。
レイクード・バルケットより>
それは彼女を救い、戦い方を教えた人物からの手紙だった。
彼女は特別枠で学園に入学し、生活している。特別枠は学費が出ない代わりに成績上位に位置しなければならないが、彼女は筆記、戦闘、共に優れていた。
授業の後の復習などにも行い、陰で頑張っているからだ。
心に決めている彼は貴族。
学園生活でも身に染みて思った、貴族は自分自身が優れていると過信する。当然国のトップになりたいと思う者は少なくない。彼と一緒に過ごすにはどうしても貴族同士のトラブルから逃げることができないと理解していた。
平民以下の孤児院出身の自分が居ては、貴族が漬け込む要因になってしまう。
そうならないように名門の学園で優秀な成績を収めなくてはならないと考えている。
トントン。
「はい。」
「シャーリア、そろそろ行かない?ゼミルも待ってるよ?」
ドアを叩いて入って来たのは、紅い髪をした青と黄色のオッドアイの猫の獣人、ミーナ。彼女もビエノー村出身で、一歳年下のゼミルと共に学園生活を送っている。
彼女二人も特別枠の生徒である。
「あ、ごめんね。今行くから」
シャーリアは学園から支給されたバックに手紙を入れ部屋を出た。
「また、師匠からの手紙読んでたの?」
「ええ、明日返す予定だから」
彼女たち三人は週に一度エレナ・イニス・バルケットに会いに屋敷に通っている。
レドはレルムッドに向かう途中に盗賊の襲撃に遭い、海に突き落とされ生死不明になった。
そのことで「自分がしっかりしていれば」と気に病んでいたエレナに、見兼ねたメイドたちが丁度レルムッドに到着した彼女達三人に話し相手になってもらう事を提案。時間が空く週末を利用して会いに行っているのである。
三人はレドと歳が近く、知り合いであった為、エレナは気軽に話をすることができ次第に明るさを取り戻した。
そして数日後にエレナが息子を探すために送ったメイド、レンヤと合流し、彼女に託した手紙を読んだレドが、生きていることを示す手紙を送ったのである。
エレナはその少ない文章の手紙でも彼が生きていることを確認できた事を何より喜んだ。
その知らせを三人にも教えるために、手紙を次の週まで借りることを許され、部屋で読んでいた。
「生きてるんだから、絶対会いに来るよ」
「そうね・・・・・ん?」
三人が話していると、石だたみの廊下をド、ド、ド、と音を立てて迫って来る集団があった。
「おはようございます、お姉さま方。お出かけですか?」
女子生徒、数十名が両側の壁に立ち、その中のブロンド髪の女生徒が挨拶した。
「もう、こんな事はいいと言っているのに」
「そうはいきません。このミューリア、お姉さまに救ってもらった身。これぐらいは当然です」
彼女はミューリア・モレンス。親衛隊などとつくり隊長務めている女子生徒。
そして、モレンス家の長女、つまり貴族だ。
なぜ、貴族の身でありながら何の地位も無い親衛隊などと隊を作り隊長を務めているのか。
それは彼女がレルムッド郊外の空き地で他の女子生徒たちと一緒に魔術の練習をしていた時だ。
ならず者のような男たちに絡まれた。
彼らは冒険者で迷宮調査の帰りに近くに寄ったのだ。
彼女たちは嫌がるが、抵抗はできない。実力差もそうだが学校郊外での魔術の使用は厳禁。許可を得ていなければ悪くて退学の処分が下されるのだ。
以前にシャーリアの部屋に侵入した生徒がいて、その時に用があった女子生徒を怪我をさせたことがあった。生徒は逃げるが、偶然に寮の管理をしている人に出くわし、捕まり、発覚した。
怪我をした女子生徒は頭を強く打つ重症で一週間。さらに教師たちすらも気にしているシャーリアの部屋に侵入したと広まり、周りから悪い印象で見られた。生徒に重症を負わせ、さらに他生徒の部屋に侵入した事への罪は重く、教師たちと家族の話し合いで生徒は退学処分となった。
このようにルールを守らない生徒は何かしらの重いリスクを背負うことを恐れた、彼女たちはためらっていた。
ミューリアの腕を強引に引っ張られたその時。
シャーリアたち三人が出てくる。
ちょうど、町外れの辺りに用があり、偶然に出くわしたのだ。
その時は教師の随伴はなかったが、こうゆう場合の彼女たちは慣れっこで、シャーリアが的確な指示を出す。
男たちはまずゼミルの催眠魔術でフラフラし始め、ミーナの風の魔術で近くの川まで吹っ飛ばされた。
それから助けてもらったシャーリアたちの雄姿に感激し、以後彼女は敬服するようになった。
そのおかげで学園生活でシャーリアに対する貴族との風当たりが和らぐが、彼女にはその敬服とは間違った方向を感じさせるものがあった。
シャーリアたちの住む部屋の近くに部屋を借りていた女子生徒の部屋を無理やり移動させ自分が住んだり、日常でも特に話すこともなくつきまとうなど、執念に近いものがあった。
三人は最初は嫌々だったが、いつぐらいか日が過ぎた頃には気にならなくなってしまっていた。
「私たちは不要な虫が付かないようにすることしか出来ない身です。ああ、それに生徒会の仕事も終わった事を報告しに来ました」
「(そっちが先だと思うんだけど)」
「そう。じゃあ明日、私が確認します。今日は理事長から依頼を頼まれているので出かけてくるから」
「はい。行ってらっしゃいませ」
そう言って、一糸乱れなく集団はその場を後にした。
今のシャーリアは生徒会長を務めている。
勉学、戦闘に優れ、レドの言いつけを守っている内に生徒からも人気を取り、学年投票では、大差を付けたぶっちぎりの一位。それ以来、学園のアイドル的立場になった彼女に、男子生徒の一部ではファンクラブ的なものが作られる程にもなった。
その男子学生とミューリアの新鋭隊が合流し 更に彼女の考えに賛同する生徒たちも居て、彼らの活動のおかげで貴族が行っていたいじめや差別が激減したのだった。
「扱いが面倒ですね~」
「仕方ないよ。彼女を助けたのは師匠との約束だったから。でも“依頼”の時は付いて来れないから気が楽だよね」
依頼とは全学園生徒に定期的に行う試験のようなもので、ギルドの依頼をこなすことがある。
内容は低級の魔物の討伐から探し物など自由に選べる。たまにではあるが特別枠の生徒は理事長から直接、特別な依頼を受けさせる事がある。
普通の学生なら嫌な顔をする者もいるが、シャーリアたちは違っていた。
自分の力になり、いつか会える師匠に恥ずかしくないようにと日々力を付けようと頑張っていた。
それと、その特別の依頼に関して他生徒の干渉を一切禁止している。その為、この依頼を受ける時だけ、親衛隊の圧迫感から解放される唯一の時だった。
四六時中にも付きまとう彼女たちは休日の商店街に繰り出すと注目の的になっていた。普段からイザコザが絶えないミーナにとってはあまり好ましいことではなかった。
そのため、学園長は彼女達とは依頼を別にするように心がけていた。
そして三人は「特別な依頼」をこなすために校門へと向かった。
「失礼します。理事長から話は聞いてるはずだけど?」
「お、来たか。馬はそこに用意してあるぜ」
校門には甲冑を着た兵士が立っていて、その兵士がちょいと指を差す。
そこには門の柵に三頭の馬がつながれていた。
「では、行ってまいります」
「魔物退治だってな。頑張れよ。―――――――――あいつら三人いれば魔物に同情しちまいそうだよ」
「賭けるか?何体仕留めると思うよ。俺は」
馬にまたがり、依頼の場所に馬を駆け出した。
場所はレルムッド北西に位置する森。
依頼とは、移動を入れた二日間でその森に住み着いた魔物を退治する事。
本来、特別枠にしろ普通の生徒が受ける依頼は街の福祉活動、教師の同行の下で町から街への馬車の護衛と魔物の討伐がある。
学生たちでも新人ギルドでも倒せる簡単なレベルの依頼が選ばれる。軍の士官としてもだが、最低でもギルドに入れる力を身に着けさせるためだ。それはこの学園を建てた国王が学園に送った言葉「多くを経験させ、それぞれが道しるべにならんことを」を実感し理解してもらう為でもある。
そして今回彼女たちに課せられたのは、討伐依頼の内容と差ほど変わりないもの。
ただ魔物のレベルが違っていた。
普段は【D】~【C+】クラスが選ばれるが、今回は【B】クラス。
しかも教師の随伴も無しだ。
魔物退治は安全が第一なので、必ず教師の同行が義務付けられている。
この依頼は異例中の異例だった。
軍で頼りそうな危険な魔物を実際に倒すのだから危険この上ない事。
だが、それはあくまで建前で実際には隠れて様子を見ながら危険だと判断すれば手助けする手筈でいた。
「確認するけど、私達が倒すのってペリュトン。だっけ?」
「そう。足が速くて魔術で倒す前に森に逃げられたから、私たちに依頼が回ったらしいの」
「・・・・・・・面倒事を押し付けられた感じ」
「そう言わないの」
ペリュトンとは、鹿のような頭と足をして鳥の翼をつけた魔物。空だけでなく地上でも速さに優れ、人間の使う通常の武器は通じないとされている。新米ギルドでも挑むのは危険な相手。
この魔物を倒す事が彼女たちに課せられた依頼である。
村人総出で頑張れば倒せるレベルだが、身体に付いている鳥の翼を使い高速で移動し攻撃してくる事から、攻撃魔術を当てることは難しい。その素早さから、剣や槍などの人間の武器は効果が薄いとゆう認識になっている。さらに簡単だが風の魔術を使用できるので犠牲覚悟で立ち向かわなければならない。
ペリュトンは群れで行動し、季節に連れエサ場を変える習性があるため、その場所はランダムに選ばれる。悪ければ小さな町や村の人を襲う事があるから性格が悪い。
近くに数匹のペリュトンが目撃されたため、軍を動かす数でもなく、またギルドもレベルが高くて、安い依頼を受けたがらない為、三人に白羽の矢が立ったのだ。
銃の威力に加えて三人の連携が特に優れているからと、学園側から彼女たちへの実力調査が目的だった。
普通の生徒なら泣いてでも、学園を辞めてでも断るような依頼だが、三人は恐怖どころか余裕を示していた。
「作戦はゼミルの召喚した人に似たゴーレムで陽動させて、私のガーランドで仕留める。失敗したらミーナ、けん制お願い」
「まっかせて!」
「了解です~」
強敵を前にして冷静でいられるのは、彼女達が実戦を経験しているからだ。
ビエノー村が帝国軍に蹂躙され、逃げられたのは彼女たち三人だけ。命かながら魔物がはびこる山や森を抜けテルミナス、レドが住んでいる街を目指した。ようやく、テルミナスに到着するも、領主ローガン・G・バルケットからレドはレルムッドに向っている事を告げられた。
落胆するが、レドに会うためにここまで来た三人はレルムッドに向かう事を決意する。その決意を認め、数日滞在した後、ローガンから資金と武器をもらい、テルミナスからさらに長距離の旅路を進んだ。
そして、無事にレルムッドに到着したのが彼女たちの経緯である。
その間に何度も魔物とも戦っていた。
少女の身でビエノー村から脱出し、魔物と戦う事ができたのは、レドがビエノー村を発つ際に、もらったモノのおかげだった。
シャーリアにスプリングフィールド(ハンドガン)。ミーナには火と風のタリスマンのピアス。ゼミルにはタリスマンロッド。その他にシャーリアはM1ガーランドをローガンから譲り受けていた。
このライフルはレドがテルミナス防衛の為に作った銃で、彼女がテルミナスに寄った際、道中の危険性と機密保持の理由からローガンから一丁だけ譲ってもらっていた。
その一丁だけでも威力はあり、ミーナの索敵で発見次第、相手が知る前に倒していくので戦いになる前に安全確保ができた。不意な状況も何度か体験した。
だから、実戦経験がある上に力がある彼女たちにこの依頼が回ったのだ。
そして、ぺリュトンが目撃された森に到着し、馬から降りて武器を持ち森の中に入って行った。
◇
森に入って数時間、ミーナを先頭にゼミル、シャーリアとゆう順番で狭い獣道を歩いている。
しかし、森に入って数分で三人は何かを感じていた。
ミーナは猫の獣人。
犬やウサギの獣人には負けるものの、人間より高い索敵能力が有り、それで彼女たちの後ろに居る不審な気配を察知していた。
しかし、察知したのは魔物の気配では無く、人の気配だったため、小さな声で話し合った結果、目的が何なのかをはっきりさせるために少し歩いて様子を伺った。
しかし、付いて来るだけで襲ってくる様子がない。罠の可能性を考えたシャーリアはミーナに小さく頷き、合図して、ライフルを構えた。
「誰っ!そこに隠れているの!!」
後ろの茂みに銃口を向ける。
「まッ、待ってください、お姉さま!」
「ミューリア!?何でここにいるの!」
「「私たちも居ます・・・・・」」
茂みからミューリアを含めた三人の女子生徒が出てきた。
「陰から応援しようと思ったのです・・・・・・」
「もういい加減にしてッ!!私たちは危険な場所に居るのよ?いつも通りに待っていればいいのに」
さすがのシャーリアも堪忍袋の限界だった。
学園中は毎度のようにつきまとわれ、依頼の時以外は、自由な時間ですら付いてくる程だったので余計に怒りが込み上げて来ていた。
だが、本当は他の依頼中にも実はコッソリ付いて来ていたのだった。
「まあ、まあ。仕方ないよ付いてきちゃったんだし」
「ミーナ!?」
なだめさせたのが意外にもミーナだった。
「一緒に帰らないと不安だし、ここまできちゃったんだから帰ろうと思えない。私たちは依頼があるんだから一緒に行くしかないんじゃない?」
「~~~~っ!!(←声にならない叫び)」
結局はミーナの言う通りだった。
彼女たちを帰らせても、またコッソリ付いて来るのは解っている。
それに、この辺りにも魔物は出る。
ある程度魔術が使えるとは言え、危険な魔物が出る森に実戦を経験していないミューリアたちだけでは心配だと考えた。
「はぁ、もう仕方ないか」
「お姉さま、ありがとうございます!このミューリア全力で参戦致します!」
「邪魔になるから隠れた方が賢明なんですけどね」
そして、彼女たちが歩き出した直後だった。
「ッ!!・・・・・・・・・来るっ!」
ミーナが叫んだ。
「・・・・・・・どこから?」
「速い・・・・・真っ正面。多分ペリュトンだと思うけど」
「迎え撃ちます!!」
当初の作戦では、足が速いペリュトンは少しの時間だけ動きを遅くする場合がある。
それは相手を倒したかの見極める時だ。
だからシャーリアの作戦ではゼミルに囮を使って攻撃させてから、動きを封じ、ライフルとミーナの強力な魔術で一気に畳みかけるのが一番安全で効果的だった。
だが、それも相手に気付かれていない事を前提にしての話。今回は完全に不意を突かれた状態になっている。
「ゼミルは大型ゴーレムを召喚して!三人が入れられるぐらいの」
「速く動けないけど?」
「大丈夫。相手をゴーレムに引き寄せればいいから。その代りミューリアたちをいれるから耐え抜いて」
「わかった」
ゼミルは目をつむり、手をかざすと【召喚操主手袋】が光り、大きな魔法陣が現れる。そこから人型の巨大な石像が魔法陣の中心から浮かび上がった。
石像は森の木々より大きく、完全に魔法陣から現れると、ゼミルとミューリア他二人を手に乗せ胸の穴へと入れた。
「よし!」
「で?次は?」
「ゴーレムに引き寄せて、私がライフルで仕留める。ミーナは援護して、数は?」
「2体かな。空に移動したみたい。ゴーレムに狙いを定めたんじゃないかな?」
そう聞くと、一番高い木に登って銃で狙える位置に移動した。
ペリュトン2体は鹿の角を利用したスピードのある体当たりでゴーレムに攻撃をしていた。羽を曲げて角を突き立て、周りに竜巻のような風を身にまとい攻撃している。
石でできた体にはちょっとの力では壊せないが、何度も攻撃されればもたない。
そうはさせまいと、ゴーレムもペリュトンの攻撃に耐えている姿勢を取った。
「・・・・・(速過ぎて狙いがつけられない)」
「ミーナ。一体だけ攻撃して、こっちに狙いをつけさせて!」
「分かった!」
ミーナは【ファイアーランサー】で一体だけ攻撃した。
炎の槍はまっすぐ目標に向かって飛んでいく。それを察知したぺリュトンはとっさに体勢を変え、回避する。
回避に成功したぺリュトンは攻撃をしたミーナ達に狙いを変更した。
こっちに向かって来ることを確認すると、シャーリアはライフルを構え集中した。
「(集中して・・・・・狙いは)・・・・・・頭ッ!!」
ライフルの引き金を引いた。
炸裂音を発した後、銃口から少量の煙が出る。
初速840毎秒で放たれた弾丸は、目で見るより速く進み、ペリュトンの額に命中する。回避しきれなかったペリュトンは次第に高度を下げて、木々にぶつかりながら地面へと落下していった。
「やった!!」
そして、もう一体を狙う。
見るとペリュトンはゴーレムに角を突き刺して動けなくなっていた。
何度も突進して、ヒビの入ったゴーレムの身体にトドメの一発を繰り出そうとしたが意外にも固くて、そのヒビに突き刺してしまい身動きが散れなくなったのだ。
ゴーレムは腰に手をやり、「さあ来い」とゆう感じでペリュトンが刺さった胸を張る。
刺さった角を抜こうと必死にもがいている。
シャーリアは好機を逃さず、もう一度引き金を引く。ペリュトンは力を失ったように動かなくなった。
ミーナが確認した敵は全て倒した。
「他には?」
「・・・・・・・・居ない。と、思う」
「油断しないで、増援が来るかも」
聞き耳を立てて確認しているが、今の所は増援の気配は無かった。
だが、警戒はしていた。
実戦を経験した成果であろう、一度このような状況になった事がある。
森の中を移動中に魔物に襲われ倒したが、それは陽動で多数の主力が近づき攻撃されそうになった。
しかし、そうなる前にミーナが察知してゼミルの催眠魔術で混乱させシャーリアのM1ガーランドで仕留めた。
それと同じで警戒しながらゼミルたちと合流する。
「お見事です、お姉さま」
「ありがとう。そろそろ夕焼けになってきそうだし、もう少ししたら開けた場所を探してテントを張りましょう」
木に登って空を確認した時にはもうオレンジ色の空になっていて夜が近くなっていた。数分後には夜になり、その前に建てたテントの近くで食事を取った。
◇
夜。ホウホウと夜行性の鳥が鳴いている。
「ぎゃああーーーっ!!」
「「!?」」
テントで寝ていた少女達がその奇声でテントで寝ていた全員起き出した。
「ニャに!?、ニャに?にゃんナノ!?」
「ミーナ、動揺し過ぎ」
テントから飛び出したミーナを落ち着かせる。
「落ち着いて。聞こえた方角は?」
「ええ、と・・・・・・向こうから聞こえたと思う」
現在は夜。
周りは森で、真っ暗闇から聞こえてくるのは小動物かの鳴き声だけの筈。
テントにはミーナとゼミル。ミューリアと他2人。見張りをしていたシャーリアが居る。
それ以外にも誰かいるのだ。
「行ってみましょうか。こんな森の中で叫び声なんて、気になって寝付けないし。ゼミル、ゴーレム兵を増員させて警戒しながら行きますよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・グゥ・・・」
「こらこら、寝ないで。依頼が終ったら好きにしていいから、もうちょっと頑張って」
ゼミルが嫌々ながら寝袋から這い出て、召喚術を発動させた。
彼女は最大で4~5体まで人のサイズのゴーレムを召喚し、操ることが出来る。テントの周りに立たせていた石の兵士と同じように数を増やした。
そして、警戒しながら声のする方向に向かう。
獣道のような場所で戦闘中だった。
そっと覗くと、そこでは大人たちがペリュトンに囲まれていた。
昼より数が多い。
「これがペリュトンの本隊ね。でも・・・あれ、ジーニス先生・・・だよね?」
「私たちと同じように尾行して来たのでしょうか?」
「あなたたちとは絶対、同じ考えじゃないと思うけど・・・」
「いいから!助けるよ」
ライフルを構えてシャーリアが発砲。
命中したペリュトンは倒れた。
ペリュトンの群はどこから攻撃されたのか解らないままで、左右に首を振っていた。そして、また次に仲間が殺られると慌てふためいく。
ミーナが茂みから飛び出し、得意の魔術と身のこなしで、さらにペリュトンをかく乱する。
それを見たきちんとした服装の男性、ジーニス先生と言われる人は一瞬で起きたことを理解して、結界を張る。逃げられないようにするためだ。
シャーリアが遠距離から敵をガーランドで狙撃をして前線のミーナは結界を張るジーニス先生を守りながらぺリュトンを撃破する。
そして、5分もしない内に全滅させた。
「先生、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。しかし、ホントに教師泣かせの実力ですね」
彼女たちは学園で一位~三位を独占しており、たまに学園外からの挑戦者の相手をすることがある。
だが、それによって窮屈な思いをしていることに変わりはない。
「まさか、助けようとしたのに逆に助けられるようでは複雑な気持ちがありますが・・・・」
「じゃあ先生達が見張りをしたら?」
「え・・・・?」
「どうしてさっきみたいになったのかは知らないけど、戦術の先生もいるのに寝込みを襲われちゃったら、ねぇ」
「・・・・返す言葉がない・・・・」
「じゃおねがいしますね~」
「はぁ、仕方ありませんね・・・・」
そして、シャーリアはきらめく星空を眺め思った。
「早くレドに会いたい」と。
それはミーナもゼミル同じ思いだった。
整理してたら投稿忘れがありました。




