第三十二話 「噂の真実」
「・・・・・・・はぁ~~~~」
おっと、始まり早々のため息、失礼。
途方もない話を聞かされて疲れがドっと出ちまって、ため息の一つもしたくなる気分にさせられた。なにしろ「テルミナスが墜とされた」「世界に影響する存在」なんて言われたんんだ、かんべんしてよってな感じだ。
まだ若いけど、俺は前世で送れなかった老後を楽しみたかったのに。隠居でもいいが、そうなると後先気になって気分が悪いし、こっちにまで飛び火しそう・・・・・また頭痛の種が増えた。
・・・・・・・・・数分前の事。
俺は洞窟に連れられ、突然テルミナスが陥落させられたことを告げられた。
「テルミナスが墜とされた?バカゆうな。銃を量産させ、グレネードも作って火力は十分。城塞都市の壁で防御面も完璧。どんな愚策でも負ける要素が微塵も見当たらないのに、どうして『陥落した』なんて言える?」
テルミナス、今世の俺が生まれ育った街。
バルケット領土の中心で、育ての親で、剣の師匠でもある爺様が統治する街だ。爺様はイディアール軍の将軍で、戦線から離れたとは言えども、まだまだ現役の猛将だぞ。剣だって新兵にも負けずも衰えない実力。その領主が住まう街が負けた?
あの、沢山の勲章を部屋に飾っていた爺様が?銃を、Ⅿ1ガーランドを装備していたのにか?
「外は強くとも、内側は脆いものじゃ・・・・・友人の裏切りで、な」
「はぁ?」
「ドラド、そしてハヤル率いるバナック領軍。そやつらの奇襲で一気に街を占領しおったよ。お前を海に突き落とした盗賊を雇ったのも彼らじゃ」
「なっ!?そこまで解っていたなら、なんで教えないんだよ!」
「教えれば・・・・・・ルナは助からなかった、許してほしい・・・」
そうしてレンヤまで深々と頭を下げて謝った。
もし知ったなら当然俺はテルミナス防衛を最優先にする。そうなれば助ける時間がなくなり、結果的にルナールさんは助からなかったかもしれない。助けた時、結構ギリギリだったみたいだし。
「それに、お前の未来は見えずらいのじゃ。故郷が墜とされる事を知ったのはつい最近の事。もしかしたら運命線を持つ者、「オラクル・ホーマ」かもしれん」
「なんだよそれ?」
「例え一般の〝確実な未来〟を見える者でも、世界に影響する人物が未来を変えたりするのじゃ。例え見えても、そうなるかもしれんし、そうならないかもしれん。見えたのは偶然にも近いものじゃ・・・・」
より大きな〝時間〟に飲み込まれる訳?それに世界に影響する?俺が?
まあ、身に当たる事が無い訳でも無い。
あの白い空間にしろ、死ぬ前の記憶持ちで転生したにしろ、世界的に考えて俺の存在は異常過ぎる。だからラノベ、漫画の主人公になったとは少しは思っていたが・・・・・・。
黙っていれば、この世界に溶け込めると思ったのに・・・・・・。
もしかして最初っから仕組まれたのか?
だとすれば黒幕候補のハルーツは、消える前に言っていた。
世界を「変革しろ」とか。
俺をこの世界に転生させた目的がそれなら、その言葉に一番合う事といえば、今起こっている「戦争」。人を殺すのが当たり前の日常を変える、つまり戦争を止める。とゆう事だと解釈する。
「救う」とかではないから、多分魔王が復活する話ではないとは思う。
けど、それが一番難しい。
勇者系なら魔王を倒せば即終わりだが、戦争はそうはいかない。
マジ勘弁。
「時間はある。思う事があるだろうからゆっくり考えると良い。だが、お前は恐らく世界に多大なる影響をもたらす存在であることは間違いなかろう。その時はこの街全員がお前の力となろう」
「ありがとう・・・・・最後に一つ。どうしてドラドさ・・・バナック領土軍が裏切ったかわかります?」
「・・・いや、知らぬな」
「そう・・・・」
ともだちだったのに、友人だったのに!裏切ったんだ。帝国に組みしたってわけかよ!
復讐したい。
完膚なきまで叩き潰して、当分、いや!もう二度と攻めてこられないように帝国共々、破壊と殺戮で脳に刻み込み!恐怖させてやりたい!
俺が「見つけたモノ」を改良し、存分に使えばそれも可能だ。
・・・・・・・・・でも、それでは根本的な解決にはならない。むしろそれが戦争が続く原因である。
「憎悪」を増長させてしまう。
この街の住民を使って、テルミナスを取り戻せば一時の平和は訪れるだろうが、結局戦争自体は終わらず冷戦状態になる。よくアニメネタで、人を殺して、その知人が殺した人を、また殺す。そうした永遠に終わらない負の連鎖が大きくなってさらにひどい戦争に発展する。
一度飛び火した火は簡単に消えない。
戦争は火と同じ。だからこそ「戦〝火〟」と言われている。
火が付いた時点でもうどうしようもない。人自体が無くなっても無理がある。そして「死の商人」は戦争が長引いて、その武器を売って潤う。どうしようにも、どうせ政治界に深く寄生しているから俺なんか簡単に殺されるのがオチ。下手に行動して、大ヤケドを負うだけだ。
ダメだ。感情がゴチャ混ぜで考えられない。
「人を呼んでくれますか?ここの調査で環境を整えておきたいので」
「・・・・・・うむ。レンヤ」
「はい」
「じっくり考えるといい。どんな道でも共に歩もうぞ」
心境を理解してくれた。
人の命を左右する決断なんだ。少し時間を置いて冷静に判断したい。
行動を起こさなければ戦いにはならない。
しかし、それでは「いざ」とゆう時に対応できなくなる。
銃の存在は戦闘で知られた。もう銃の開発者は俺だと知られるのは時間の問題。
戦争している両国にとって、喉から手が出るほど欲しい存在となるわけだ。暗躍、裏切り、脅し、どうあっても戦いになるのは必至だ。
それに今から準備しておけば対応できる。もう既に逃げられないのかもしれない。
運命、「これ(船)」を見つけたのがそれだとしたら、どの道「戦い」しか選択肢がないのかもな。
そう考えている間に、俺は二人に人を呼んでもらっている。
この異世界に召喚された海上自衛隊の艦艇内部を徹底的に調査するためだ。
「それにしても、厄介事を突っつきたくないのに。どうしろっちゅうねん・・・・・・でも決断しなくちゃならないが・・・・はぁ・・・・・」
調査とゆうが、まあ、ただ一人になりたくて適当な理由を付けてただ歩いているだけだけど。目的としては内部に繋がる階段かハシゴを探して、おおすみのCICに向かっているくらい。
向かっている間にも考えているが、なんでこう、次から次に厄介事が絡むんだか。しかも今度は世界規模でよぉ・・・・・・。
二日酔いみたいなのに加えて、また頭痛のタネが増えやがった。
◇
―――――おおすみ・CIC―――――
現在。俺はCICとゆう部屋を見つけた。
【CIC(戦闘指揮所)】―――現在の軍艦における情報の集まる場所。レーダー、ソナー、通信などから艦の状態を確認でき、命令や発令を行う場所でもある。
俺はこの船がどうしてここに来たのかが知りたくてここに来た。ブラックボックスか何か記録がきっと残っている筈だと思ったから。
入ると、まさしくアニメや漫画通りの場所だった。
モニターやレーダーなどの光を見やすくする為、窓もない薄暗い部屋になっている。だが、今は小さな光の一つも無い。完全に全ての電源が消失している真っ暗闇な状態。
俺は閃光魔弾を手の平に停滞させ、周りを照らす。
いくつもの計器類や液晶モニター。海図などが表示される台がある。
多分あのガラス板みたいなのがレーダーとか電子掲示板なんだろうな、スゲー。でも、誰もいなければ計器類も動いていない。どうしてだ?
状況的にエルドリッジと同じなんだろうけど、あっちは電源が動いていたのに、この船は静かだ。来る途中もなんもなかったし・・・・・。
「お?これはビデオカメラか・・・・?」
俺はコンピューターの画面らしい机にビデオカメラが在るのを見つけた。
ソ〇ー製か。
電源ボタンを長押ししてみた。
頼むから。動いてくれよ・・・・・・。
「良ッし、やった!」
良かった、まだ動かせそうだ。最後の録画記録は~と。
これか?ほい(←再生)っと。
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20ⅩV年、7月、ハワイ、オワフ島近海。
空は晴れた今日この日、アメリカ海軍ニミッツ級原子力空母「ロナルド・レーガン」を旗艦とした、リムパックが行われた。
演習の主目的は、参加国間の共同作戦能力の向上である。
アメリカ海軍主催で、初めて行われたのは1971年の事。日本が初めて参加したのは1980年からで、当時は憲法9条に違反するとして多くのバッシングを受けたが、時間がそれは薄れさせていった。
今回、自衛隊が参加したのはこんごう型護衛艦一番艦「こんごう」。あきづき型汎用護衛艦「あきづき」。たかなみ型護衛艦「さざなみ」「おおなみ」。
そして、おおすみ型輸送艦「おおすみ」の5隻である。
自衛隊が初めて輸送艦であるおおすみを演習に参加させたのには理由がある。
それは陸上自衛隊とアメリカ軍合同で離島奪還の訓練がリムパックと合わせて行われる予定だからだ。
おおすみの英語呼称と艦種記号ではLST(戦車揚陸艦)とされているが、本来はLPD(ドック型輸送揚陸艦)で、小さな空母のような艦体。その後部のウェルドックに2隻の輸送用ホバークラフトを搭載して陸地に戦車や戦闘車両を輸送する洋上の基地として機能する。
災害派遣にもこの機能は生かされ、空母のような広い甲板を活かして、海外からの補給物資を積んだヘリの基地として大きく貢献した。
この演習では、もし領土内の一部の島を他国が占拠した場合にどう戦えばいいのかを学ぶ為である。武器を備えた揚陸艦として、守るために、そして時代に合わせ、その「いざ」とゆう時に備えるために。
「まさか本艦が演習に参加するとはな」
「そうですね」
おおすみの艦橋は艦の中心から右側に位置する。
その艦橋に、唯一存在する椅子に座る人は船で一番偉い艦長である。
「今日はいい天気だ、演習を終えたらCICの連中も日干ししてやらんとな」
「どうせなら甲板マラソンしますか?」
「はは、そうだな。さて、私もそろそろCICに移動するか」
「はっ!」
そして演習は始まる――――。
内容は、アメリカ軍は不審船を発見し警告。再三の警告を無視した不審船は敵と判断されミサイルにより撃沈。
その際、何名かの兵士がボートで島に上陸したと仮定して、アメリカ海軍のアーレイバーク級ミサイル駆逐艦「ホッパー」と強襲揚陸艦「ワスプ」を護衛するために「おおすみ」を含めた「こんごう」以下の自衛隊艦隊と共に、敵排除の為島に向かう、とゆうモノだ。
おおすみはワスプと演習で連れてきた陸上自衛隊を、離島の近くまで護送するのが任務となる。
艦隊は演習予定の島に向かう為、本隊を離れ、目標海域に到着寸前の所。
『ブリッジよりCIC、天候が徐々に悪化する模様』
「了解ブリッジ。今日は晴れの筈だがスコールか?」
おおすみのCICでは士官がレーダーやソナー目をやっているまさにその時。
ズン、と下の方から艦が何かに衝突したような揺れが起きる。
「うおお!?な、なんだ!?」
隊員が驚く中、艦長は冷静に指示を出す。
「落ち着け、被害を調べて報告しろ!」
おおすみの全長は178メートル基準排水量は8千トン以上の大型船。そんな大きな船がこんなにも大きく揺れるのは岩礁に当たったぐらいしか、と誰もが思う。
だが、CICはレーダーの他にも水中の物体を探知するソナーが搭載されている。レーダーでは艦の位置は島からある程度離れている。そして、ソナーは岩礁攻撃されたような痕跡すら見当たらない。
「ブリッジ!なんださっきの揺れは!!こちらでは状況が確認できない!」
『分かりません!いきなり、気味の悪い触手が出てきて』
「なに!?船外映像を出せ!」
おおすみ艦長は、船外に設置されたカメラを起動するように命じた。
そして、CICのモニターに映像が映し出される。
「何だ、これは・・・・・!?」
モニターにはさっきまで晴れていた空は一変して暗く曇り、海は荒れていた。その荒れ狂う海から、青く透明で内部は薄気味悪い光を放つウネウネとした巨大な「触手のようななにか」が映し出されていた。
しかも一本二本の話ではない。
数十本の「触手のようなもの」が船と船の間の海中から出ている。
「クソっ!!パニック映画の最初の犠牲になるのはゴメンだぞ!」
映像からは、「こんごう」やミサイル駆逐艦「ホッパー」がその物体に砲撃を加えている。だが、砲弾はスリ抜けるだけでダメージを与えられないでいた。甲板に出ている自衛官はそれを固唾を呑んで見守る。
さながら、映画のワンシーンを見ているかのようだった。
そしてその「触手のようなもの」は動きを見せる。
艦隊を囲む様に各方に散らばる。
そのうちの一本が護衛艦「さざなみ」に向かっている。
丁度真横だった。
「かッ回避ぃぃーー!!」
「間に合いません!!」
「衝突警報!何かに掴まれぇーー!!」
触手はCICのレーダーには映らなかった。
しかもその動きは予想以上に速く、回避は間に合わず「さざなみ」と接触する。
竜骨は折れ、船体がくの字に曲がってしまった。このままでは沈むと考えた自衛官たちは、次々と海に飛び込む。
そして、「さざなみ」は引きずられ、少し先で遂に真っ二つになってしまった。
「国民の血税なんだぞぉーー!!」
海に飛び込んだ隊員が、叫ぶ。
自分の置かれた状況より、そっちを先に考えてしまうのだった。何より護衛艦一隻を大破させたのは自衛隊史上、前代未聞の事態だった。
それをモニターしていたおおすみ艦長は近くにあった艦内マイクに声を入れ、即座に命令を下す。
「これより本艦は、さざなみ乗員の救助にあたる。後進いっぱーい!艦後部をさざなみに向けよ!作業艇も準備させよ!これは演習ではない!繰り返す、これは演習ではない!!」
「おおすみ」は後ろ向きで海に飛び込んだ自衛官たちに向かった。
艦内のエアクッション艇を使えば効果的だが、訓練の為、今は戦闘用の特殊な新型の水陸両用装甲車やエアクッション艇も装甲車他装備でいっぱいだった。
そこで艦長は、海水を取り込んで船体を沈ませエアクッション艇の発着を可能にした「おおすみ」のウェルドックなら、ある程度の人員を回収できると考えた。
だが、それでも危険である。
高速で回転するスクリュウに巻き込めれる危険もあった。そこで艦長は考え、その考えを伝えるために艦の外部スピーカーで呼びかける。
「さざなみ船員へ、本艦はこれより貴官らの救助を開始する。ケガを負った者はこちらの作業艇で回収する。動ける者はおおすみまで泳げ。繰り返す―――」
救助が開始された。
おおすみの後部のドックは口を開いて、海に落ちた隊員を受け入れた。
「ホッパー」や「こんごう」は触手の動きを警戒し、それ以外の「ワスプ」や護衛艦は救助に向かおうと艦の方向を向ける。
その作業中、また触手が妙な動きを見せる。
全ての触手が一定の距離に位置すると動きは止まった。それは丸く円を描くように寸分狂いがないくらいに並び、今度はピーン、と柱の様に真っ直ぐになった。
空の雲から何かキラキラと輝くモノが雪の様に降り注ぐ。
そして、まず異常が出たのは艦の計器類だった。
「艦長!各計器に異常です、制御できません!!」
「なに!?他の艦はどうなっている!」
「各艦も同じ状態のようです。艦内マイクにも、うわ、ノイズがっ!」
羅針盤、速度、燃料メーターから艦内時計までもグルグルと回り出した。モニターまでも次々とテレビの砂嵐状態になる。
各艦が混乱していても、そんな事おかまいなしに〝触手〟の先端が光を放ち光の線が現れた。その線は各触手の線と繋がり、空に模様を描いた。
模様は魔法陣。
そして、その魔法陣は物凄い光を放ち、艦隊を包み込む――――。
――――空母「ロナルド・レーガン」。
演習の状況を伺っていた空母のブリッジは慌ただしくなっていた。
「『ロスト』した艦隊はまだ見つからんのか?」
「はっ!現在索敵機に確認させています・・・・・・・今映像が来ました」
「・・・・・・・・」
映像を見るがそこは小さな点以外、何もなかった。
「潜水艦の確認急げ、日本のアニメみたいに消える訳なかろう」
「アイ、サー!」
演習の状況を全て監視していた「ロナルド・レーガン」は突如として「ホッパー」や自衛隊の艦隊を消失した。
ロナルド・レーガンには地球の高々度に在る衛星から情報をもらい監視する事ができるが、その艦隊位置に突如雲が現れ、僚艦からの通信、レーダーまで途絶した。
不審に思った演習の司令官は偵察機を飛ばすよう命じる。航空機が艦隊の海域に到着するが、艦隊の姿は無かった。
雲が晴れ、衛星の情報からも数十キロ圏内に艦影を確認することができなかった。
だが、小型のボートが漂っている事が確認された。人が乗っている。
「ロナルド・レーガン」は「おおすみ」や英語で「ホッパー」と書かれた小型のボートとそれに乗った自衛官を保護し、話を聞いこうと試みた。
しかし皆、「ボー」とした表情で放心状態だった。
唯一聞けた自衛官は一連の事は全く覚えておらず、その後、米海軍の潜水艦が「さざなみ」の後部船体を確認した。
この発見を受けて、両首脳は一時は両国の関与を疑ったものの双方の利益にならないと判断され、日米同盟の影響から行方不明になったと発表した。そして頃合いを見て演習中の事故としてマスコミに流すことを決定した。
ここで起きた出来事は誰も認知される事なく、事故として処理された。
一時は全世界がテレビで放映されるほどの話題となり、ネット上の「噂」で「異世界に召喚された」と、信じる人と信じない人との掲示板で議論される。書き込みに対して大炎上が起こり、一部でサーバーの機能が一次停止するなどが起きた。
だが、時間が過ぎると、関心は薄れまた向くことは無くなった。
この事件の真相はだれも理解することなく、「歴史」からも消えた。
◇
暗い部屋で明るいライトが照らす中、うつ伏せの状態で倒れていた艦長が目を覚ます。
「う・・・・・・はっ!どうなった!?」
艦長は飛び起きて周りを確認する。CICにいるのは自分一人だった。
「誰か、誰か居ないのか!!」
返事は無い。
そこで、艦内の監視カメラを起動させる。
どこかが故障しているのか画面は荒いが映像は見れた。
しかし、そこに映し出されたのは“地獄”だった。
自衛隊員たちが殺し合いをしていたのだ。
明確な殺意を持っての行動ではない。
隊員たちの一人一人の目は正気を失って、工具や銃をこん棒の様に殴るなど酷い映像しか映し出さなかった。身体が酷く損傷してもゾンビのようになって、それが艦内全域で起きている。
しかも、数分すると黒い粒子となって消えていく。
「なん、なんだ・・・・・・・」
これではもう、艦の航行すら不可能となった。
艦長は望みを託して救難信号を放つ――――。
・・・・・・・・数日後。
「おおすみ」のCICに10名ほどの自衛官たちが敷き詰められている。
そして、モニターのテーブルにカメラを置き、艦長は口を開く。
『これは、最後の記録になる。我々上下四方、岩に囲まれた地底の海のような場所にいる。あの現象からここに跳ばされたのだと推測するが、船の移動しようにも人数が少ない。我らは完全に孤立した。僚艦の「あきづき」の生き残っていた隊員たちも艦を移動し「おおすみ」に移乗している』
「おおすみ」の隊員たちのほとんどが消えて、数時間後。
艦長は一連の出来事が収束し、不穏なくらいの静けさの船内の状況確認を行う。
艦は水の上には浮いていることを確認した。
その事は、艦長にとっては一番うれしい事実だった。しかし、周りは大きな岸壁に阻まれていて、その岸壁は天井すら覆ていて脱出は不可能だった。
もとより、自分だけでは艦を動かすこともままならない。
艦長はダメもとで救難信号を送り、僚艦「あきづき」から応答があった。
状況を聞くが、「おおすみ」とほとんど同じ。
隊員たちは狂い、消えていった。
もし、指揮が困難となった場合、最上位の指揮官に委ねられる。
この場合「おおすみ」の艦長である。
彼の指示で皆一か所に集められ、10名程度の士官たちは多くの隊員たちの犠牲を悲しむことしかできない。
しかし、そんな彼らを更なる悲劇が襲う。
時間が経つに連れ、気温が信じられない程上昇し、今でも上がり続けていた。既に外は生身の人間には生きていけない環境になっている。
そして、悟った。
動こすことができない船、岩に囲まれ逃げられない。そして、どんどん上がり続ける温度はもう既に艦内を自由を歩くことすらできなくなるくらいになった。自分たちがいるこの場所さえ危うい。
『艦周辺の温度は100℃を超え、艦内の冷房の限界を超えるまでになった。燃料は艦内の冷却に使用していたが、もはや限界である。・・・・今まで正気を保ってきたが、一人、また一人と消え、もはや私を入れ12名となった。どうかこれを聞いている人へ、この映像を見ているなら是非、届けてほしい』
そして、これが最後の言葉。
『最後の手段として、艦だけは残れるようにしてある。この船を好きに使っても構わない。艦が無事ならこのカメラもきっと誰かが見つけてくれると信じて。だが、願わくば守るために使って欲しい。そして、どうか、この映像を家族の元に―――――』
映像は途切れる。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
・・・・・・・・・・最後まで見た。このビデオに記録された映像。
ここと向こうで起きた出来事を。
あのウネウネはわからんが、マナでできたものの一種だと思う。だがあんな「意思」を持った動きをするのか?魔法陣まで使えるし。
そして、自衛官たちが狂った原因は、多分【マナ依存症】(←俺命名)が原因だろう。
この世界の人は腹の中にいる時点で世界中を満たすマナに触れている。だから、この世界の人は大丈夫でも向こうの世界の人間が狂ったんだろう。
そして、自分の許容量、この場合「器」としよう。
その「器」を超える量のエネルギーを体内で処理ができず、マナが麻薬のような作用したのが原因だろう。この世界で死んだ場合にゾンビになるのは、命が失われた時に処理する機能が失われているからだと思う。
元の世界はマナなんて無いだろうし。もしあったら俺も魔術が使えた筈だからな。
できれば、このカメラを届けてやりたい。けど俺にはできない。まさか異世界に来ていたなんて向こうも思っていないだろうし、世界を飛び越えなければならないから。
影響があった。俺がこの世界に来たのが原因なのか。
いや。俺が来る前に彼らはここに来た。
たぶん無関係だと思うが完全にそうは思えない。俺の前にこうして現れたのだから。この世界に誰かの「何かしらの意思」があって、ここに連れてこられた。
少しだが、似ている状況がうかがえる。
もし、もう一度あのハルーツ(バカ)に会ったらぶん殴ってでも話を聞き出してやらないと。
そして、これを見て俺の心は決まった。
このままでは「世界に影響する何らかなの意思」で両世界が大変なことになるかも、とゆう可能性。その意思、あるいは「誰か」なのか分からないが、止めないと。
「こんな薄暗い場所にいたのか・・・・・・・その顔。決まった様じゃな」
ちょうど来た。
「ええ。世界を変えますよ」
「戦いになるじゃろうな。とても辛い苦しみのある戦いが」
「変えるんです。戦いが目的ではありません」
「それを良く思わない者とは?どうするのじゃ?」
無論理解している。そんなの、俺の世界でもよくあった話だ。
「話し合います。もし受け入れず戦うことになれば・・・・・」
「なれば?・・・・・・」
「戦います。完膚無きまで徹底的に」
「・・・・・・そうか。ならば我らを救ってくれた恩、それで代えさせてもらおう」
「ありがとう」
ここに来たにしろ、この艦隊が巻き込まれたにしろ、何らかの「意思」が働いているのは確かだ。もしそれが、なんらかの行動を取る事と言えば、確実〝やばい事″だ。
いいだろう。
オレをこの世界に引き込む程まで変えたいなら変えてやる。
自衛官たちが、関係の無い人が大勢巻き込まれた。
はらわた煮えくり返るほど腹が立つ。
「変えてやろうじゃねぇか!革命の、戦い。革命戦記だってんだ!」
戦争を好むこの世界の「誰か」が「俺の平和」に歯向かうのであれば、それが誰かは知らんが老後の礎になってもらおう。平和へと変える為のな。
神でも悪魔や魔王でもなんでも来てみろ!徹底的に叩き潰ぅすっ!!
そのためにも。準備は必要だ。まずは此処の防護壁の展開が最優先だな・・・。
あれ?そういえば頭痛が消えてた。
いろいろありましたが、時間が空き次第書いていく予定です。
次回もよろしくお願い致します。




