第二十六話「守護竜の遺産」
空から落っこちてきたシー〇の名前はフレイア。
この先の町フレイルの守護竜から生まれた守護竜第二世。
数千年前、魔族がはびこっる混沌の時代。当時のフレイルでは魔族の襲来、それに伴う疫病に悩まされていた。流行病で町の防衛に影響して犠牲がおぞましい数ほど出ていた為、成人前の子供が戦場に立つ事にもなってしまった。
そんな時に現れた一匹のエンシェントドラゴン、先代の守護竜であった。
エンシェントドラゴンは地水火風の高ランク四属性魔術を自由に操り、漆黒の鱗を持つ知能も高い竜である。依頼の際の討伐ランクは【SS】級。
その圧倒的な力で魔族を叩きのめし町を守った。疫病も「竜が持つ秘宝」で何とかなったらしい。
それから何千年もの間、そのエンシェントドラゴンは守護竜と呼ばれ、町と共存していた。その間にも幾度となく魔獣、はぐれドラゴン、盗賊などの脅威も退け、町の住民たちからも信頼されていた。
しかし、守護竜はある変化に気付いた。時が経つに連れ、次第に魔力が低下していったのだ。
そう老化だ。
自分の限界を悟った守護竜は、次世代の守護竜、つまりフレイアを産んだ。ドラゴンは無性生殖が可能なため、だから例えオスであっても、経験しなくても卵を産むことが可能なのだ。
〝彼女〟だけど。楽しみが無さそうだな。
だが生まれて間もない間に守護竜は力が尽きてしまった。赤ん坊同然の彼女では町を守るだけの力は無い。それどころか完全な竜の姿になる事さえできなかった。
そこで守護竜はアイテムに自分の知識も生命力も全てアイテムに託し隠した。年を重ねてある程度大人になったら自分で探し出せる様に。
そして住民たちは守護竜の娘だから数十年間、丁重に世話をした。
さすがドラゴン。数十年で間もないなんて、年齢の感覚が違いすぎる。
しかし昨日の夜、その住民たちが手の裏を返すように彼女を襲ったらしい。
信じていたものに裏切られ町から逃げ出し無意識に飛んでいる内に、住民から受けた傷と疲労で空中で意識を失った。それで、あの池に落ち、俺が拾ったのがここまでの経緯か。
よくも都合よく落ちたもんだ。でも、やっぱり理由なく襲った訳では無かったんだ。
でも住民たちがどうしてそんな事を?昨日まで非力な彼女を奉っていたのに彼女を襲うメリットがどこにある?
「なんで襲われたのか心当たりありますか?」
「どうせ金よ!」
「金?」
「最近町の財政がキツイって言っていたわ。お母様は町の貢ぎ物を「宝物庫」に隠していると言っていたから、それをどっからか盗み聞きでもしたんでしょ!」
戦争には、それなりの金は掛かるのは知っている。帝国の税金事情は知らないけど、理解していない部分から金を取られている。金欲しさに欲がくらんだか。まあ、俺には関係ないけどな。
さて、彼女の境遇は理解した。が、問題はこれからどうするかだ。
乗ってきた馬車は黒焦げ、馬も逃げちまった。ここからまだ距離があるから、また金を掛けて馬と馬車を確保するしかないのか。
だが、資材が――――。
「さて、これからどう進みましょうかねぇー・・・・・」
俺が腕を組んで考えた。
「レイクード様。いい方法があります」
お?流石、完璧メイド。何かいい考えでも?
「さすが、レンヤ。何かいい考えが?」
「彼女には目的地まで飛んでもらいましょう。そうすれば早いですし、金銭に響くことはありません」
「はぁ?どうしてあたしがそんな事―――――ッ!?」
レンヤが笑みを浮かべて詰め寄った。
「や・り・ま・す・よね?」
「は・・・はい・・・・・」
レンヤさん。顔に濁りが混ざっていますよ・・・・・。
多分、フレイアはレンヤの顔の濁りを見て悟ったんだ。逆らったら今度こそ殺られると。
あんなやばい表情で睨まれれば拒むことはできないよなー。
そういえば、いろんな表情を見せるようになったな。
屋敷にいる間は、ほとんど表情を変えずに黙々とロボットのように仕事をこなすメイドだったのに。俺に故郷の話をした時から、泣いたり行動と表情が豊かになった感じがする。
良いことだ。
「で、でも。あたし、あの姿にしかなれないわ。とても全員運べないわよ」
「それはあなたの親が残した力を宿したアイテムを使えば良いだけです」
「でも・・・・・・」
「あなたに拒否権はありません!!」
言い訳続きで、とうとうキレたよ。
そしてフレイアの手を掴んでズルズルと引きずって行ってしまった。
呆気にとられながら俺たちはそれに付いていく形になった。
「は~な~せ~!」
「ちょっとまってよレンヤ」
「時間が限られています。お早く」
今回の彼女は積極的だ。
少しでも早く自分の街に戻りたいのに、とんだ邪魔が入ったからな。焦っているんだきっと。
そうして、無理矢理フレイアを町に連行していった。
◇
数時間歩いてようやくフレイユに到着だ。歩きだから思ったより距離があった。
その間にも魔物の襲撃はあったが全てレンヤが一撃。結局町まで一人で全部仕留めた。目がマジ(本気)だったので手持ちの剣で横や縦切りで一刀両断。
「ふう、やっと着いた」
「お前ら、ここまで歩いて来たのか?」
門番が話しかけてきた。一番近い町でも馬車で一週間以上かかる。
だから、馬車で来ない俺たちを不思議がっているんだろう。
「いいえ。馬車で来たのですが途中で翼の生えた女の子に襲われたのです」
「なにッ!?・・・・・」
門番二人が顔を見合わせコクリと頷いた。
「その所為で命は助かりましたけど、馬車がまっ黒コゲになってしまいまして」
「それはどこでだ?」
「えーと、この川の近くの森を抜けた辺りです。何だったんですかあれは?」
白々しく質問してみた。ある程度事は知っているが怪しまれないためにワザと聞いてみる。
それに彼女の証言が本当か確かめられるし。
「ああ。何だか知らんが突然この町も襲って来てな、追い払ったが、今度とっ捕まえてやるよ。ところでその袋は?」
「これは馬車の積み荷の一部です。これだけなんとか持ち出すことができました」
本当はフレイアが入っているんだけどね。
レンヤのアイディアで町の住民たちに狙われていると思い念のために隠しておいた。
だけど、袋に入るのを拒んだから、レンヤに一発殴られて伸びてる状態だけど。
やっぱり彼女は狙われているのは間違いなさそうだ。
彼女の事を守護竜としていたなら誰でも彼女を知っている筈。なのに襲って来た、とゆう発言はおかしいのでこっちが嘘をついているな。
もしくはこっちが嘘をついているか、今ではまだ判断できない。
「そうか、大変だったな。宿でゆっくり休みな」
「ありがとうございます」
今の情報では確定はできないが、彼女の言い分が正しいのかどうかは判断できない。町に聞き込みで行動するしかないか。
「お、そうだ。金を稼ぐならギルドの待合所に行ってみな?報酬が高額な依頼をやってるぜ?成功すりゃ馬車を買えるぞ。登録関係なしだからそのダークエルフ(奴隷)にやらせる事もできるぜ?」
「ありがとうございます。今度行ってみます」
適当に会釈をして、お礼を言った。結構愛想の良い兵士じゃないですか。
特に断定する情報は得られなかった。
フレイルの門をくぐると、今まで寄った町と同じような町並みが広がっていた。門から一直線に舗装された道、その横に露店が並ぶ。
その道の少し奥の小奇麗そうな建物の宿に泊まることにした。下手に安いところだとフレイアが文句言いそうだから。
ロビーで手付きをして階段を上がっている時だった。
袋がユサユサと動き始め「んぐ~~~!」と声を出し始めた。
フレイアが目を覚ましたんだ。
俺たちは急いで階段上がり、廊下を通過して部屋に入り、そして袋を開けた。
「ぷはぁぁぁッ!いきなり殴るなんてどうゆうつもりっ!?」
「あなたが入るのを拒んだからです」
「なによ、そんな薄汚い布に入れようとしたからじゃない!それに口から体までこんなロープでぐるぐる巻きにしてるし」
「起きても暴れられたら大変ですから」
「むきぃぃぃ!」
「はいそこまで。これからどうするか話し合うよ」
「かしこまりました」
「話を切り替えた!?」
レンヤとの口喧嘩を止めて会議を始めた。
議題はもちろん馬車も馬も無しの条件で、どうやって目的地に行くかだ。まだまだ距離があるのにフレイアの勘違いで馬車は炭同然。だからレンヤの意見で、乗り物になってもらう事になった。
本人はやる気がないようだけど。
だが、問題は彼女は幼生体で完全なドラゴンに変身できない事。今のままでは俺たち全員を運ぶのは不可能なので、先代の守護竜の遺産を探して変身できるようにするのが目標となる。
エンシェントドラゴンはアイテムなどに、自分の力を移し、子に力を宿すとされている。そして次、また次へと力を後世に伝えていく。それを探して彼女の力とすれば、きっと成竜になることができる。
しかし、残念なことに、そのアイテムは宝物庫にあるが、肝心の場所を彼女自身知らなかった。
「手がかりか何か無いんですか?」
「〈竜の涙が溜まる場所の竜を目覚めさせよ。さすれば道が開かれん〉よ」
「・・・・・・・・その暗号を解けと?」
「そうよ」
めんどくさッ!昔のRPGかよ!
「じゃあ、その暗号を解くのが最優先かな」
「異論はありません」
「同じく、ありません」
会議の結果、フレイアの母親である守護竜の遺産を探すことになった。その遺産を探さなくてはならないがフレイアが言う暗号を解かなくてはならないようだ。
考えてみよう。
まず竜の涙が集まる場所、多分これは涙池の事だろうか?でも竜を目覚めさせよ?・・・・オブジェかなんかあったけ?霧があったから分からなかったけど・・・・とにかく情報が少なくて解読不能だ。とにかく考えが思いつかないから町を歩いてみるか。
寝るにはまだ日が高いし、ヒントがあるかもしれない。それに向こうからトラブルが舞い込んで来きて進展があるかも。
だが、慎重に行動しよう。フレイアは狙われてるみたいだし。
「ちょっと町の住民から情報を聞いてくるよ。レンヤは見張りを頼みますね」
「はい。お気を付ていってらっしゃいませ」
「私は行かないから」
当然。
でも、何かあるかもしれないからな、レンヤが護衛に就けば大丈夫だろう。
でもフレイアは少し距離を取ってるな彼女が苦手になったか?あんな(殺されそうになった)事になったからな。仕方ないか。
下手な行動で、町からつまみ出される可能性があるから、宿に残ってもらわないと。
「レド様。どこに行くんですか?」
「ん~~~・・・・・広場にでも行ってみる?」
とくに行くあても無いので、まずは広場に行ってみる事にする。
泊まる宿から大通りに出て、少し歩いて大きな広場に出た。
広場の中心には噴水があって、その中心にドラゴンを象った石像が立っている。周りには店があるなど賑わいを見せていた。
あれは守護竜を称える像かな。でもまさかここじゃないだろ。
確かに暗号に合いそうな像はあるけど、ただの噴水だし涙が集まった場所じゃない。
さて、あとはギルドと・・・・・あ、思い出した。
「試しにギルド支店に行ってみるか」
門番が言っていた〈ギルドの待合所に行ってみな〉と。
とりあえずこれがイベントの一端だろうと思い、試しに寄ろうと考えた。
ギルドの支店。待合所。
屈強な人たちが集まっていた。ギルドの地方支店だろうけど、こんな狭い場所によくもまあ、詰めしこんだこと。暑苦しいったらありゃしない。
筋肉と訳の分からんイレズミを見せ付け、大剣を抱えた半裸の大男。魔術に自信がありそうなローブを着た女。中には四本の腕を持った奴や、肌が青い小柄の人までいる。以外に獣人の姿もちらほら見受けられる。
とりあえず、依頼の内容を確認するか。
入り口を入ると目の前にカウンター。その左右に下に下がる階段があって、右にレストラン、左が武器、防具屋になっている。道具もちらほら見受けられるので、道具屋としてもやっているようだ。
依頼を確認する為にカウンターに進もうとすると、マリーが怖くなったのか、俺が着ているローブにしがみついて来た。
「マリー。チェーニもいるんだから大丈夫だよ」
「はい・・・・・」
無理もない。
この中の空気がピリピリというべきか、とにかく異常な感じをさせている。
その空気でちょっと怖くなったのだ。
俺はマリーを励まして、受付に話しかけた。
「すいません。ギルドの登録無しで高額報酬の依頼があると聞きたいのですが」
「はい。・・・・・貴方が受けるのですか?」
「いいえ、こっちのダークエルフの力量を測るために受けるんですけど、どうせなら高額の方が良いと思いました」
「そうですか。でしたら、こちらの依頼書を確認ください」
適当な理由を言って受付から、紙をもらい読んでみた。
〈依頼者 町長。
依頼内容 〔竜の涙が溜まる場所の竜を目覚めさせよ。さすれば道が開かれん〕の謎を解け。
報酬額 10、000、000ナール。
経過報告 町長に逐一報告する。
備考 解いた者はその情報を他言無用〉
・・・・・・・・・黒幕は町長か?内容が怪しすぎる。
アイテムが隠してあるところの暗号まであるじゃないか。しかも他言無用って、解いた後他人に知れ渡らない様に、殺すって事が大いにあり得る感じ。
こりゃ、会うしかなさそうだ。容疑者一名指定。
「この依頼を受けます」
「では、こちらの書類にサインをお願いします。文字は読めますか?」
「大丈夫です」
一瞬バカにするなと思うが、奴隷からギルドに入る場合もある為、文字自体が読めない奴もいる。
名前は・・・・・下手に家のなまえは出せないか。
なら偽名で・・・・何が良いかな?まあいいや〈レド〉っと。
サインをして紙を渡した。すると今度はノートぐらいの鉄の板を渡された。
「これは?」
「これに、指で触ると依頼した内容や状況を確認できます。完遂したなら依頼完了と表示されます」
へー便利なもんだ。
試しにタッチしてみる。
すると、板にうっすらと光り依頼の内容が出てきた。
すっげぇー!こりゃちょっとしたタブレット端末じゃんか。ネットに繋げればだけど。
どんな構造をしているんだ?・・・・・・・魔石はついていないけど・・・・・きっとオリハルコンかヒヒイロカネが入っていて所有者の魔力に反応しているんだ。
それで、文字が浮かび上がる魔法陣か何かを刻んでいれば--------
「そろそろ行きませんか?」
「はッ・・・・・!」
いかんいかん。考え込んでしまった。
ともあれ、初めて依頼を受けた。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
------町長の自室--------
町の事情が集まる場所に一人の男が机に座り書類に目を通している。
彼がこの町の取り仕切っている町長だ。
守護竜が死に、フレイアを奉った挙句、住民たちと結託し彼女を襲った張本人。
だが、彼は悩んでいた。
襲ったはいいが、宝物庫の場所が一向に解っていなかったのだ。
そこで、ギルドに依頼し、他の奴にも解かせようとしていた。
依頼料は暗号を解いたら、そこにある金で払う考えだ。
だが、それでも進展はない。
そればかりか一向に進展していない状況から、抜ける者が続出。唯一残った者は悩んだ挙句そのストレスから、周りに喧嘩をふっかけ、暴力沙汰を起こす始末だった。
路頭に迷っていたが彼はフレイユの町長。
やらなければならない事があり、彼は自室で悩ながら仕事をするしかなかった。
するとドアをノックし使用人が入って来る。
「町長に依頼について話を聞きたい者が来ています」
「そうか。通せ」
この来訪者に対してあまり期待はしていなかった。
今までも依頼内容を詳しく聞く者は大勢いた。しかし、どれも進展は無く有益な情報すら上げられないでいるからだ。
今回もその一部なのだと諦めている。そしてすぐにドアが開かれた。
一番最初に入って来たのが、少年だ。金色の短髪で少し高そうな服を着ている。
まだ、幼い。しかし年齢に反して堂々とした顔つきだ。
その少年にくっついている少女。
少年より少し背が低い、怖いのか、恥ずかしいのか、少年のローブを掴んでいた。メイド服を着ていたので使用人か奴隷であることは容易に想像がついた。
最後に入って来たのはダークエルフ。
こんな薄気味悪そうな種族を連れているなんて変わった趣味をしている、と思った。だが、魔術の扱いには長けている。護衛として連れて来たのだと町長は理解していた。
警戒はしていたが部屋の外に傭兵は待機させているし、ちゃんと首に魔術封じの首輪が装着されていたので安心していた。
「初めまして。僕はレド、こっちはマリー、そしてダークエルフのチェーニです」
そう言うと、女の子二人はペコ、と頭を下げた。
一通り自己紹介を行って少年に聞きたいことは何なのか聞いた。
「それで、何かありましたか?」
「実は依頼を受けたのですが試したいことがありまして」
レドと名乗る少年はポケットから緑の球を取り出した。
「これは?」
「この球は未来を見通せる力を秘めているみたいなので、これで探してみようと思いまして」
子供の遊びかと町長は思っていたが、それでも試してみようと思っていた。
見た目に反して知識や年齢が高い種類もいると聞いたことがあり、この少年もそうなんだと町長は思っていた。
例えガセでも、この際マシだと思うほどの心境だったのだ。
少年からその緑の球を手に取った。
「それを、依頼した内容などをイメージして念じて下さい」
「うむ・・・・・・・・・・・・・・・」
町長は念じ、辺りが沈黙した。
「・・・・・・・・・なにも起きんな」
「はぁ。また、騙されましたか。仕方ないですね。地道に探していく事にします」
そうして、足ばやと部屋を後にした。
やはり子供の遊びかなんかだと思った。正式な依頼を受けてここに来たんだろうが、こいつも進展しないだろうと完全に諦め始めた。
「はぁぁー」
大きなため息をはいた。
やはり、襲った時に宝物庫の場所を聞いて置けば良かったと後悔している。
そうすればギルドに頼る必要がなく、彼女をさがす手間も無いからだった。
だが、もう遅い。
フレイアは行方知れず。ギルドにもこれ以上の進展が有りそうな気配も無い。このままでは町は終わる。どうすればいいのかと悩んでいた。
再びため息を吐く。
それは、この部屋いっぱいになる程の回数と、そして一番深かった。
やっとできました。
最近忙しくてなかなか時間が取れないので、ゆっくりやっていきたいと思います。
ご指摘などがありましたらよろしくお願いします。




