第二十三話「会議」
数日後。
自作の馬車に乗り、快適に進んでいた。
サスペンションのおかげガタガタ道でも揺れを吸収しているから、全然酔わない。
快適な旅になっている。
オレは馬を操る座席のレンヤの隣に座っている。
後頭部に手をやり、馬車に背中を着け、空を見上げた。
空は晴れていて綺麗な青空が一面に広がっている。
寝すぎたのかもしれない。もう、お日様が頭のてっぺんだ。
適度な揺れで揺りかごに揺られている感じになったのかもな。
進んでいるのは草原の一本道で風が草をなびかせていて、その風もまた心地良過ぎる。
「ああヤベ。二度寝しちまいそう」と、思いながら空を見上げて、あくびが出る・・・。
「レイクード様。これを」
「ファ―・・・これは?」
レンヤから緑の宝石の様な球を手渡された。
なんじゃこりゃ?・・・・・魔石じゃないな。それと模様・・・・?
だが今まで見た事ないな。
錬金術系じゃない。召喚術のコントロール系と似ているがそれでもないな。
(お主がレドかえ?中々の観察力、知識も持っているようじゃな)
「ほへ・・・・・?」
つい変な声出しちまった。
声が頭に直接聞こえてきたのだ。
だがこの感覚に覚えがある。
そうだ。ハルーツとのやり取りに似ているのだ。
色は違うが、ハルーツと何か関係があるのか?
(ん?何じゃそれは?)
空振りだったか。
少し期待したが残念・・・・・あれ?俺今言ってないよな?
(言わなくても解るぞ)
・・・・・・・説明してもらおうか。
(わしはマキビ・アルローガ。そこのレンヤの母親じゃ)
・・・・・どうゆう仕掛けか分からないけど、この緑の球を使って遠い距離にいる人と直接話ができるみたいだ。
――――数分後――――
彼女はマキビ・アルローガさん。
レンヤの故郷の街の統率者でその街がいろいろあって、かなり危険な環境の所にある。
詳しくは後で教えてくれるらしいが、とにかく地上に居場所がなくなって、どこに行くあてもなく地下へと移り住んだらしいのだ。
そこは何層にも渡る地面を通り海水が徹底的にろ過された水があり、植物もあった。誰も来られない地下深くに住居を建てたが、実はそこはマグマポケットのような所だった。周りにはドロドロのマグマで火山活動の影響もあり一定周期で内部はオーブンレンジのようになる。
それを予知することができたが、猶予があまりにも短かった。その為、生け贄を使うシステムにするしかなかった。
街を守るためとは言え、生贄を選抜される家族の悲しみを募らせる中で何時自分になるかと絶望する中のある日。
レンヤのお姉さんルナール・アルローガさんを生贄に選抜することで、それを救い、さらに街を助けた「夢」をはっきりと見た。俺の名前、生まれる場所からいつ生まれるかもなども正確に予知、メイドの募集も予知夢で知った。
だからレンヤにメイドのイロハを叩き込んで、バルケット家に雇ってもらえるようにした。
当然戦闘技術も教えて。
予言通りにメイドの募集を受けて、そして俺が生まれた。
(そうゆうことじゃ)
なら俺がこんな目に合うことも予想していたのか?
(それは見えていなかったんじゃ。お前はもしかしたら「運命」に強く影響して未来が見えづらくなっていたのかも知れぬ)
運命・・・か。
(一定の年齢になったらこのことを打ち明ける予定だったのじゃが、レンヤがこの球を介して連絡を聞いた時はさすがに驚いてしまったわ)
それで、どこにいるのか見てもらって場所を特定したと?
(そうじゃ)
だから丁度あの場所に来れたのはそのおかげって訳だ。移動速度は獣化できるから間に合う。
しかしその予知夢を信じていいのか、疑うのか判断しにくいな。
だが所詮は「夢」なんだし外れるの事が多いのが当たり前だが、正直な話、正夢程度でそこまで信じられるのか?
(失敬じゃな、これでも多くの出来事を的中してきたのだぞ?夢とは言え、街からも多くの者を救った実績があるのじゃ)
へいへい。
だから街の責任者になったんだろうがな。
つうか、何で勝手に俺の意思を読み取るなんてことをするんですか。
精神の自由に反しますよ?
(わし達の事は秘密にしたいのじゃ。本来ならこうした関係も取っておらぬ。まあ、考えたことを読み取る事ぐらいしかできんがの)
フーン。
そこまで秘密厳守なら過去に何か嫌な事でもあたんでしょうかね。
じゃなきゃ、そんなところに住み着く訳ないし。
(そうじゃ。いろいろとな・・・・・・・ところで一つ聞いても良いか?)
なんです?
(精神の自由とはなんじゃ?)
・・・・・・・忘れろ。
◇
周りが夕焼けに染まり、程なくして夜を迎えた頃。
野原に馬車を止め、野営の支度をした。
俺が火の魔術でたき火を起こし、それぞれが準備を始める前に、役割について話し合うことにした。
こういった話し合いは大切だ。
「は~い、みんな集合してくださ~い」
周りの索敵を終えて戻ってきたチェーニを確認したところで、食事を作っていたレンヤ。一生懸命に魔術の練習をしていたマリーを呼び寄せる。
「それでは、第一回パーティ会議をはじめます」
「・・・・・パーティー会議?」
マリーは首をかしげた。
「これから旅をしていく上で、色々問題起きた時に、意見の食い違いで喧嘩をしないようにするのが目的です。この時は自分の意見を素直に話してくださいね」
「分かりました」
みんなが納得して、たき火の脇で俺たちは腰をつけた。
「では、早速議題に行きたいと思います。まずはそれぞれの役割を決めておくことにしましょう」
「役割?」
自分の立場が明確であれば、サブ要員を決めて全滅を防げる。
レンヤが怪我した場合に食事を他の人に作ってもらうとか、戦いでチェーニが負傷し俺がサポートに回るとかなど。
作戦立案やフォーメーションの相談もしやすくなる。
「例えばどのような?」
「ぼくはこう考えています―――」
チェーニは通常は周りの索敵。戦闘時は前に出て近接戦闘。マリーは魔術の練習で後方待機。レンヤには食事の支度、戦闘時は前衛の援護と考えている。
俺はマリーと魔術の鍛錬で、戦闘時はチェーニとレンヤの動きを見て近距離と遠距離を受け持とう。
そしてサブ要員はそれぞれ時と場合によって会議で決めることにした。
同時に二人も負傷する可能性を考慮しての判断だ。
「以上が僕の考えですが何か意見があれば言ってください」
「私たちが意見し」
「ストォップ!レンヤさん、発言は挙手を願います」
学校の眼鏡をした委員長っぽく、そう言ったみた。
一度言ってみたかったんだよな。
「では、よろしいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
「私たちが意見してもよろしいのですか?」
「もちろん。皆の意見がヒントになって、さらに効率よくなったり、何か良い考えが浮かぶかもしれませんから」
俺だって失敗する。
何かを見落としたりするかもしれないし、俺が考えても限度がある。
何より自分を安心させたい。
相談して、これなら大丈夫。あなたならできますよ。などの言葉が欲しいのだ。
自分に自信過剰な訳では無いのでね。
他に意見が無いみたいだから次に進もう。
「では次に目的地ですが、迷いの森です」
行き先はレンヤと俺以外、二人にはまだ告げていなかった。
ただ陸の旅になると言っていただけだ。
マキビさんの話では一度そこに向かう必要があるらしい。
名前からして怪しい部分があるが、レンヤがいるから少しは安心できる。
場所は大陸の真ん中あたりに砂漠があって、そこから少し西に向かうと迷いの森がある。
だが、かなり遠い。
「レンヤ、どのくらいかかりますか?」
「結構かかります。いつになるかは天候が影響する事も考えると・・・・・半年以上かと」
だろうな・・・。
地図で見たら、前世のユーラシアで考えると、インドの末端から北に向かって横断するような話。
時間も相当掛かる距離だ。馬車ならとんでもない月日になるであろう。
「途中に村や街があるので、そこで食糧などを調達できます」
「では、そこを転々としながら移動しましょう。近い町はどれくらいで着きますか?」
「一週間くらいで到着できます」
それでも一週間か。
その町で2日、3日休んで旅の疲れを取りながら進むことにしよう。
魔物除けの魔法陣が有るとは言え、夜盗に襲われる可能性があるから見張りを立てて置く必要がある。
道中の移動でも疲労が溜まっていくから、行く先々の町で英気を養ってから進むのがいい。
金はオレが何とかするから問題ないので、観光気分で進もうか。
「というのが、大まかな一連の流れです。何か質問はありますか?」
珍しくマリーが挙手。
「どうぞ」
「私は何もしないのですか?」
マリーは通常、魔術の練習で戦闘時も後方待機だ。
確かにチームに貢献しているとは言えない。そこを、良く思わなかったか。
こりゃあちゃんと説明しておかないと。
「マリーはそれでいいんです」
「なぜですか?」
「チームとして何かをしたいのかは理解できるけど、でも無理をする必要はないでしょ?」
彼女は真剣に聞いている。
「君はレンヤの料理を作る姿を見たり、チェーニに魔術の特訓をしてもらったりと、とにかくみんなのやることを見たりして自分でもできるように努力すれば良いんじゃない?」
「・・・・・・・・・」
「そうして学べば、自分のできることが見つかるはずだから。自分の役割がわかるから、ね?」
彼女には自分ができる事、やりたいことを自分で決めてもらう。
自分ができる事やできないことを理解して、ヘタな行動を起こさない為にだ。「自分も何かできる」と勝手な行動を起こして冷や冷やさせるイベントは映画やアニメ、漫画ではよくある展開だ。
だが、映画では真っ先にそいつは死んで、漫画でも成功できたのは必要なキャラだけで、ここではそんなラッキーが起きる可能性は低い。
ま、無理にやらせても成長しないとゆうのも理由の一つだが。
「ある程度できるようになったら頼むから、今は自分が何をできて何ができないかを考えてみて、ね?」
「わかりました」
理解できて何よりだ。
「他に何かありますか?」
みんな無言で顔を見合わせた。
無いようだ。とりあえずこんなところだろう。
進むに連れて問題も出てくるだろうが、その都度話し合えばいい。
「明日から頑張りましょう」
こうして俺たちの旅が始まった。
・・・・・・・・4日後。
俺たちはここまで魔獣にも盗賊にも襲われる事なく町に到着した。
下手な戦闘も無いので安心した。
「止まれ!」
・・・・でもないな。
町に到着し、門をくぐろうと近付くと、いきなりレザーアーマーを着た兵士に呼び止められた。
兵士は二人。スピアーを持ちながら一人だけこっちに近付いて来る。
「お前ダーク・エルフを連れているな」
「そうですが?」
俺が馬車を操っていたのだが、横に座っているチェーニは困惑していた。
そんなチェーニに、門番はスピアーの刃を向け威嚇する。
「エルフやダークエルフの奴隷は【魔術封じの首輪】を付けなければ町には入ることが出来ないんだぞ」
そうなんだ、決まりなら仕方ないよな。
彼らの仕事なんだし、こんな所(敵国)でモメ事は起こしたくない。
ここは合わせるしかないか。
「すみません。こいつは途中で拾ったんですが、首輪も付けていなかったので、ここで購入しようと思っていました」
「・・・・・・・そうか。まあ、ダークエルフだしな、そんな事はよくある事だ。いいだろう、通っていいぞ」
兵士が納得して一歩下がった。
よくある事なのか。こちらとしては入れてくれるのはありがたいけど。
まさかハッタリが通用するとは。
「この町にギルド所属の道具屋とかありますか?」
「この道を進んだ大きな建物がそうだ。ギルドマークがあるから間違えないだろ、一足先に買っておけよ」
「わかりました。ありがとうございます」
俺は適当に会釈をしつつ、馬車は門を通り過ぎた。
リメーンと同じくらいの町並みが広がっていた。町の構成は大体同じのようだ。
露店が有り、入り口には商人の旅人の集会場や馬車を止めておく大きな広場がある。
そこに馬車を止めて一度宿屋に向かう。
「道具屋に向かわなくて良いのですか?」
「いいんだ。錬成した方が無料だし、魔術封じではこちらとしても困りますからね。さっき聞いたのはハッタリを信じさせるために言っただけ」
練成するのは形だけの首輪だ。
魔術封じの首輪なんか付けていたら、不意に襲って来た敵に対処できなくなる。
魔法陣は効果を発動しないで適当におしゃれ感覚の模様で刻んで十分だ。
憲兵などにバレなければそれでいい。
そして適当な宿屋に部屋を取り、マジックバック中の鎧に使用されている皮から首輪を錬成した。
「ほい、完成」
「どうして、そんなに優しくしてくれるのですか?」
チェーニが聞いてきた。何かデジャブを感じるが、まあいい。
授業で習ったが、名前や肌の色で良く思われていない。
その為、奴隷にされることが多い事は知っている。
俺は特に何もしていないんだが。奴隷で酷い扱いを受けていた時との差で、それが優しいと感じたのか。
「チェーニは僕をどうにかしようとしているの?」
「い、いいえ!主を手に掛けるなど!」
「じゃあ、それでいいじゃない?」
「え?」
能力も肌の色も特に気にしていないし、そう思っているなら十分だ。
今は戦闘要員が必要な時だから、彼女は十分にそれをこなしてくれる。
このご時世じゃあ、下手な相手は信用できない。
それを彼女に説明した。
「ありがとう、ございます・・・・・無礼ついでに着けては頂けませんか?」
俯いて赤面した顔を隠して、俺が錬成した首輪を差し出した。
俺はそれを手に取りると、彼女が着けやすいようにしゃがんだ。
「(これで、あなたのモノに・・・・・)」
「ん?何か言った?」
「!?いッいえ!なんでもありません!」
フッ、堕ちたな。これで彼女もハーレム要因だ。
真面目過ぎるキャラ。ど定番なキャラ確保。
何はともあれ首輪も偽装したし、これで町に入る時も問題ナッシング。
後は各自で自由に行動してもらうかな。
俺はレンヤの故郷や装置の事について詳しく聞く事にしよう。
◇
マリーとチェーニは町を見てくると出て行き、俺は緑の球の話を聞いていた。
そこでは衝撃的な事実を知らされた。
彼らは【妖狐族】。
かつて、自然の力を人間でも操れる技術を提唱した種族。
エルフだけの独占だと思われていた事が、それ以外の種族にも可能になったことは世界中で反響を呼んだ。当時は人間との関係はギクシャクしていたが、戦争にはなっていなかった時代。
“これ”の所為で開戦のきっかけになったとも言えた。
人間たちはその技術を「魔術」として世に出回らせた。それ以外にも、マジックバックや「錬金術」「召喚魔術」の基礎理論は元々彼らの発案したモノらしい。
その結果、身体能力が強みだった獣人たちは劣勢に陥ることになる。その所為で「お前たちの所為でこうなった」「同胞たちの命を奪った張本人」とレッテルを貼られ、国から追い出された。
それに目をつけた帝国は〝保護″とゆう名目で彼らを引き取った。
だが、所詮は名目。上辺だけの優しさだった。
保護された時には既に獣人との戦いが激化していた頃。無論獣人たちの扱いの酷さは過激を増す。
それは彼らも例外はなかった。過酷な労働、働けなくなったら奴隷にされ売られ、殴る蹴るなどの仲間を殺されたうっぷんを晴らす標的とされた。
それを拒んだ一部の妖狐は新天地を求めた。
だが、連合にも帝国にも戻れないと考え地下に逃げのぶ道を選んだ。
そして、その先で問題が起きた。
レンヤの故郷の街、レへスティールは地下のマントルを突き抜けた先にある場所にあるらしい。
その為、周りの温度がとてつもなく高温で、人間の限界温度は60℃と言われているがそこは100℃以上にもなるとゆう。
そこは数十年間隔では地上と同じ温度だが、それ以外は高温になり地獄と化すらしい。
「って、センター・〇ブ・ジ・アースじゃん。さすがは異世界・・・・・」
「なんです?それは」
「ちょとね」
幸いなのはマキビさんの予知夢でそれを知ることができ、犠牲が出る前に対処ができた事だ。
だが、あまりにも時間が無く、街を守る装置の開発に十分な時間を確保できず、今の生贄を使うシステムになってしまった。
妖狐族の研究者や技術者が総出で研究をしているものの、今でも一向にそのシステムを変えることができないでいる。街を守る防壁の制御が難しく、さらに強大な力を必要とするから、生贄も強力な魔力を持った者が選ばれる。
「オーブンの蒸し焼きにされそうになる前に、生け贄を使うしか手段がなくなった、と。波乱万丈な過去ですね。(他人事のように思えないのがなんともキツイ)」
(そうなんじゃ・・・・・・・)
もう踏んだり蹴ったりですね。
俺は普通に手に持ったビー玉とおしゃべりしていた。
人から見れば頭おかしくなったんじゃないかとも思える光景だ。
それにしても、どうしようもないくらいひどい話だな。
いろんな種族に裏切られた挙句に移転先でも地獄か、こりゃあやらない訳にはいかないな。
受けちまったし、やったるしかないか。
(よろしく頼む)
「勝手に人の頭を覗かないでください」
ハルーツと同じで頭に直接語り掛けてくる。
副作用的なものらしいが考えていることまで知られてしまうなんて、あまり良く思わないな。
ハルーツの時はそんな事無かったのだが・・・・・やはり全く別物なんだ。
ただ、触れなければ知られることが無いから、滅多なこと以外はレンヤに預かってもらうことにしよう。
四六時中頭ん中を覗かれたくない。
「それでどの道、迷いの森に向かわなければ行けない訳ですか」
(他にも道も在るには在るが遠回りになるし危険じゃからお勧めはできんぞ?)
迷いの森に地上と繋ぐモノがあるからそこを経由しなければ辿り着けないらしい。他に道があるが、危険らしいので却下。
しかし、色々な情報を頭に入り込んでちょっと頭痛がしてきた。
少し、外の風に当たるか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。




