第二十二話「旅支度」
俺はペドロ。
中立国イディアールのとある獣人の村に住んでいたが戦争で家を無くし、奴隷としてこの船に乗せられっちまった。
このまま奴隷として死ぬ運命になるのかと思っていた。
だが、嵐の後の静かに船で揺られる中、俺はあいつと出会った。
あいつに出会った時から驚きの連続だ。
いとも簡単に手錠を壊すし、反乱を起こして船を手に入れるわで。さらに囚われの人魚の姫を助けたりと、とにかく会ってからの事は忘れたくても忘れられない出来事ばっかりだ。
その中でもこの船は凄い。
じょうきせん?とゆうモノらしが、火の魔石で動かしているらしい。
仕組みはさっぱり分からんが、帆無しでこれほどの速さで進む船は世界中探してもこいつだけだ。
そして、囚われの人魚の姫を助けるために、一度島に立ち寄ることになった。
だが、その島から不気味なもを感じた。どう表現していいのか分からないが、とにかく嫌な何かを感じた。
だが、兄貴が言うには果物に入ってる「びたみん」っていうものを取らないと病気になってしまうとかで仕方なく入ることになった。
そこで、気味悪いモヤのかかった船を見つけた。それが嫌な感じの正体ではないとは思うが、船なんだと形で分かった。
あの船が何なのかは兄貴にもわからないらしい。
そして、その船から持ち出した武器は恐怖としか思わなかった。
水龍の大群を次々と倒していくのを俺は何も言えずに唖然としていた。
それは、あの人魚のお姫さんや見ていた奴らも同じだ。
俺は悪魔に手を貸してしまったかとも一瞬思ったが、あいつが一人の仲間に掛けた言葉で無意味な考えだと思っちまった。
「君は悪くない。ただ、忘れないで。これにはこれ程の力があるってことを」
「・・・・・・・・」
こいつは、仲間を気使ってくれる奴だ。今までの行動からもそれを伺える。
そうじゃなきゃ俺たち奴隷や人質で捕まった女の子を助けたりはしない。奴隷を助けるやつなんて子供に聞かせるような話だ。実際助けちゃくれない。
だが、あいつは違った。
俺たち一人一人の手かせを外して自由にしてくれた。危険かもしれない相手なのに女の子を救い、奴隷船の船長に勝って見せた。
だから、こいつのことは悪いやつとは思えなかった。
部屋に戻ったあいつに何か言ってやろうと思った。
匂いで何か悩んでいるのだと分かったからだ。
だがその時聞いちまった。
「やっぱり沈めるか、この船」
せかっく造った船を沈めるなんてとも思ったが、レンヤっていう綺麗なねぇちゃんの頼みを受けるから、陸の旅になるって言っていた。
それで船は必要ないんだと直ぐに分かった。
俺たちの故郷になら船がなくても問題はない。
だが、その故郷がなくなっちまった。帰るところなどない。
俺たちが持っているのはもうこの船だけなんだ。
そうなると、俺にはもう何も無くなっちまう。
兄貴が自由だと言ったが、俺には金が全くない。食う為には金が必要だ。
働き口を探そうにも、元奴隷じゃあどこも雇っちゃくれない。
悪けりゃまた逆戻りだ。
帰る場所がないのは俺だけじゃない。この船のほとんどは俺と同じ境遇だ。
それに俺には夢がある。
奴隷になる前の子供の時からギルドを自分で立ち上げるのが目標だった。ギルドを立ち上げて大きくして、村では味わえなかった優雅な生活を送るために。
俺や他の奴らの為にもこの船を沈める訳にはいかない。
そして俺はあいつに聞く事にした。
この船をもらえないかを。
「今の話を聞いたんだが。この船を託してくれねぇか?」
「・・・・・・・・・この船は危ない。下手をすれば人を変えてしまうかもしれないんですよ?」
確かに。
あの武器は簡単に殺しちまう。
それに狂気っちまう奴も出てくる事は理解してるつもりだ。
だが、それでも俺には、もうこの船しかない。
「さっきの武器は確かに怖かったぜ、音もだが、あの威力にもな。だけどよ、あんたが目的地に着いて、この船を壊すなら俺がもらっても構わねぇだろ?」
「何のために?」
「輸送ギルドを立ち上げるためさ」
「輸送ギルドねー・・・・・」
そうして、兄貴に説明した。
俺は輸送ギルドを立ち上げたいと思っている。
戦闘ギルドの方が金はいいが、命の危険が大きい。
輸送ギルドは運ぶだけで金がもらえるから内容次第で、楽に大金が稼げることもできる。
だが、多くの輸送ギルドは移動中の護衛に戦闘ギルドに頼む事になるのだが、売り上げのほとんどを持っていかれちまう。
名の知れたギルドなら、勝てっこないと理解して襲われずに済むが、そうじゃないギルドには賭けになってくる。もしそいつが盗賊より弱かったら当然俺たちの荷物も命も奪われるからだ。
高額な輸送程、より盗賊を引き寄せちまう。だから腕利きを雇うのだが、その護衛に使う金も高額になっちまう。
だからこの船の“きじゅう”なら、と考えた。足も速いし船同士の競争でもこっちが勝つ。
それを聞いて、兄貴は腕を組んで考えた。
やっぱ、無理か?とも思った。
「貴方に、託す。でいいんですね?」
「ああ、託す。だ。あくまで兄貴のモンだ。それに俺たちのギルドを守る以外、あれ(機銃)は使わねーと約束する」
「いいでしょう。好きにしてください」
「流石兄貴!話が分かる」
っしゃあ!
こうして、俺はこの船の船長になった。
名はヴェイパー号。死んだ親父の名前だ。
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【レイクード視点】
彼が立ち上げる輸送ギルドの為に、この船をペドロに任せることにした。
輸送ギルドとは五つあるギルドの種類の一つだ。
奴隷ギルド---------奴隷の販売、買い取りを行っている。
戦闘ギルド-----文字道り戦闘に関する職種。馬車の護衛、町村の警備、魔物の討伐などがある。
冒険者ギルド-------世界中に存在する迷宮を探して探索する職種。
生産ギルド---------錬金術で剣や鎧などの武器を生産したり、果物などの栽培、食糧の生産も行っている。
輸送ギルド---------生産したモノ、手紙、食糧などを運ぶ配達屋さん。
仕事=ギルドと考えた方が簡単だ。
ちなみに、この種類の違うギルドの中で一番規模のデカいギルドが五大ギルドと言われ、それぞれの小規模ギルドを手助け、違法な事をしていないかなどを監督をしている。
話を戻して輸送ギルドはあくまで配達なので戦闘能力は求めていない。
戦闘ギルドに道中護衛を頼むのが当たり前だが、かなり金が掛かる。だから戦闘ギルドに頼らず、いざとゆう時にそしてみんなを守るために機銃を使うと言っていた。
あくまで自衛のためにと。
だから、俺はその言葉を信じることにした。
実際、せっかく作ったのに壊すのも、もったいない気持ちも少しあったからな。
翌朝・・・・。
港に到着したのが夜だったので一晩泊めてもらった。
ここでみんなと別れる。
「またどこかで」
「ああ、ありがとうよ。兄貴のおかげで自由になれた」
「ではその恩返しで、彼女たちを無事に送ってくださいね」
港で輸送ギルドの立ち上げの手続きがあるが、同時に依頼を受けるらしい。
その時に人魚の親子を送ってもらうことにした。タダで。
此処からだとかなり距離があるし道中の危険もあるから。
機関銃があれば安心。
「じゃあ、お二人とも気を付けて。今度は捕まっても助かる可能性は低いですからね。特に姫様」
「なんで、私に言うのよ」
「大元は姫様が原因ですから」
「う・・・・・」
「何から何までお世話になりました。この御恩は一生忘れません」
コーラル女王が深く頭を下げてお礼を言った。
「じゃあ。船に関してもそうだけど、気を付けてくださいね」
「ああ、兄貴もな」
「クレールは、ペドロの手伝い。頑張って」
「ありがとうございます」
クレールはこの船で働くらしい。
船にいた奴隷のほとんどが働き口が無かったから二重の意味で良かったな。船を壊さなくて。
そして、桟橋を歩いていると突然、セレーニ姫がこっちに走って来た。
今度は「旅に同行する」なんて言い出すんじゃないだろうな。
「んっ・・・・・・」
「!?」「!!」
・・・・・へ?
予測に反して彼女は俺の頭を両手で押さえ、俺の頬にやわっこい感触がした。
これには、さすがのレンヤも予測してなかったようで驚いた。
「人魚のキスは旅の吉兆なの。陸ではどうだかわからないけど」
つまりお祈りか、お守りみたいな感じね。
「ありがとう。おてんば姫様」
「もう、こんな時まで言うの?」
そして言って、戻って行った。
さて、人魚の姫様にも祝福してもらったし、行きますか。
パーティーはダークエルフのチェーニ、人族のマリー、そしてレンヤと俺の4人。
そうそう、マリーだが2日前に水を出せて、今ではもう簡単な【ファイヤーボール】と【ウォーターボール】が使えるようになった。
子供の場合大体4日で使える様になるのかな?あと本当に詠唱していた人はもう無詠唱は使えないのだろうか?
ま、どっちにしろ俺の教方の良さかな。
そんなことを考えながら、今俺たちはギルド所属の道具屋に向かった。
ギルドの所属なら不良品を出さないから、安心だとサリサの授業で習った。
だから、そこで旅に必要な食料とか毒を食らった時の薬を買いに行くのだ。魔術でどうにかしようとも思うが、実際何が起きるか分からない。念のために買っておくんだ。
そして、木製の板に道具袋の絵が書いてある看板を見つけた。
恐らくここだ。店もデカイし、必要なモノが全て揃いそうだ。
「そう言えば馬はどうすんの?」
「その前に魔物除けのテントと毒消しなどの薬を買いましょう」
了解っと。
薬の購入もRPGでも基本。
まずはテントか。
それらしい布が並べられている棚に向かい、その棚の横にはテントの骨組みだろうか、木製の棒が沢山あった。
だが、値段を見て見るが疑問が浮かんだ。
ここにあるのが500ナルク、すぐ隣のモノは5,000ナルク。その上の棚は多人数用の大型のテントで、値段が8,000ナルクでその横のが80,000ナルクだ。
何で同じ棚にあるのに、この二つで値段が倍もするんだ?
テントには魔物除けの魔法陣が施されているって聞いていたんだけど、それが無いかの違いなのかな?
寝ている時の安全を守ってくれる道具だから高くても仕方ないけど。
「レンヤ。何でこの二つはこんなにも値段が違うの?」
「それは、一回限りの使い捨てだからです。1日、2日の場合に使う時にあまり持続性があるともったいないので簡単なつくりになっています」
成程、理に適っている。
ならこの高いのは何日も使用するためのモノか。
説明表示ぐらいしろってんだ全く。まあいいや、じゃあこれか。
俺は大型のテントを手に取った。
だが、もうちょっと他にも何かないかと周りを見て見る。
すると、結構大きな皮の布を手に取る。
「それは、馬車用ですね」
「ふーん・・・・ならこっちを買いましょう」
いちいちテントを張って、一夜したら取り外すなんて面倒なことやってられない。だったら、馬車で寝泊まりした方が効率的だ。
値段は・・・・・100,000ナルク!?布だけでこんなに値が張るの!?
だが、何日も移動するんだ。こっちの方がいい。
資金はまだ大丈夫だし、俺が魔石を錬成して売れば直ぐに金は作れる。
テントはOK、次は薬か。
俺たちは薬の棚に移動した。
毒消しの瓶や麻痺などの薬を買い込んだ。
すると、ゲームのポーションみたいに青い色をしたドリンク剤みたいな大きさの瓶に目が入った。
「レンヤ、これ体力回復するヤツ?結構高めだけど」
「それは精力剤です」
あ。戻しっと。
今は金に余裕は無い。値段も高めだし、こんなの買ってる余裕は無い。
大人になったら使うかもな。
さて、買ったものをのカウンターに出して、店員に馬の事を聞くか。
こんな大きな店なんだからあるだろう。多分。
「馬も見たいのですがよろしいでしょうか?」
「分かりました。では裏へどうぞ」
やっぱあった。
定員にアイテムと馬の分を清算した。
買ったモノをマジックバックに仕舞い、店の裏に移動し馬が沢山繋がれている建物に案内された。
「馬は私が選びましょう」
「頼みます」
レンヤは前回カミングアウトしたが、獣人だ。
その為、馬の健康状態を認識できるらしい。だから元気が良くて、病気の無い馬を選んでもらう。大手ギルド所属だからそれは無いとは思うが念のためだ。
でも、今は人間モードになっている。
彼女は珍しい種族のさらに珍しい複数の尻尾を持った妖狐なのであまり人前で本当の姿にはなりたくないらしい。「獣人だ!」って、騒がれても問題が有りそうな場所だしそうしてもらえると実際有難い。
数分かけて見て回って二頭の馬を選んだ。
「荷台もお付けいたしますか?」
「それは結構です」
荷台は俺が錬成した方が金が掛からないから無しにしてもらう。
町外れで錬成しようかな。あんまり見られたくないし。
そして、別の店で食糧などを買い準備を終えた。
「よう、ねえちゃんたち。ちょっと遊ばねえか?」
店を出て直ぐに4人組の男たちの1人が話しかけてきた。
何だ?この世紀末装備の野郎ども、俺の使用人に手を出す気か?
「主はこちらの方なので自分からは何も申し上げられません」
「こいつが?」
俺の前に立った。
いい度胸だ。ちょっと試しに実験台になってもらおうか。
背の高い日焼けした、ダークエルフに負けないくらいの黒い大男だ。
筋肉ガチガチで気持ち悪やつ!こいつが親玉だな。
しかも、オレより背が高いからってえばってやがる。
子供に対して大人げなぞ~~。
「へへ、ここらじゃ親分は名のあるやつなんだぜ?痛い目を見たくなかったら大人しく女を渡しな」
子分三人が聞いていないのに話し出した。
確かにバカ力はありそうだ。
「・・・・・・・・・」
「で?どうなんだ?痛い思いはしたくないんだろ?」
「そうそうイタイ、イタイなんだぞ?」
(イライラ・・・・・・)
頼むからその腰の光ってるモノを出さないでくれよ。チェーニ・・・・・。
もう対処したから。
しっかし、絵に描いたようなチンピラだな。
何故かこいつら見てると安心するんだけど・・・・・漫画の影響か。
さっさと行くか、もう何もできないからな。
「自分たちは急ぎの用があるので失礼しますよ」
「お?俺たちに逆らう気ですぜ、親分」
「・・・・・・・・・・・」
そうだ。そのまま立ち尽くしていろ。
そして次は俺たちを見送るように手を振るんだ。
「では、失礼しますね」
「・・・・(ヒラヒラ)・・・・・」
「親分!?」
親分と言われる大男が手を振って別れを演出するような仕草を見せた。
子分たちは全員驚いていた。
180°態度が一変したから驚いているのだろう。
所詮、親分が頼みの漫画の様な奴らだ。対処法は簡単。
頭を潰せば後は力のないチンピラだけになる。
後は手を出さないはずだ。例え手を出しても速攻で何とかできる。
立ち尽くす親分を見ている子分を尻目に、俺たちは馬を連れて町を後にした。
・・・・。
・・・・・・・・。
俺たちは港町近くの林に到着した。
そして林に入ってから、馬に引かせる馬車を錬成する。
その前に、ちっと休憩するか。
「先ほどは、申し訳ありませんでした」
「いや、レンヤが謝る必要はないよ」
向こうが一方的に悪いんだし。
「素早い催眠魔術、お見事でした」
「え?催眠魔術を掛けていたんですか?」
「そうです」
「「ええ!?」」
流石にレンヤは気付いてたか。何も知らない二人は驚いてるけど。
当然だな。
本来の催眠魔術は詠唱を必要とされていが、さっきはそんなそぶりを見せるどころか、直ぐに効果が表れていた事にも驚いているんだろう。
ただ完全に操った訳では無くて、速攻で眠らせて身体を操っただけなんだけど。
母さんから、催眠魔術を教えてもらって、さらに他も勉強して無詠唱で何度か練習していたから俺にとっては造作もない。
だが、精神を完全には操れない。
それなりの儀式が必要になるらしいが、もしも俺のハーレム要員には手を出すなら死よりも恐ろしい目に会わせてやる。
薄い本は別に構わないけど、ここでは徹底的に無くしてやる。
それにさっきの場合、チンピラの為にもなる。
そうでなければ、チェーニが後ろで腰の短刀に手をつけていたし、危なかった。
あの状況じゃあ、双方手加減しなかっただろうから死闘になって街に被害、憲兵が出てきて御用になってた。
ちょっとしたトラブルでも魔術で事無く収められる。
そうゆう意味でも、研究しておこう。
「さて、休みはここまで。馬車を錬成してしまいましょうかね」
「お手伝いする事はございますか?」
「じゃあ、木材を持ってきて?そこらへんの木で十分だから」
「かしこまりました」
馬車には車軸と荷台の間にサスペンションを付ける予定だ。
子供の時にビエノー村への遠征で最悪な思いをしたからなその教訓を活かす。
材料はそこいらの木を使うとして、サスペンションに使う鉄はバックに仕舞ったのを使う。レンヤたちが木材を取って来る間に錬成しとく。
想像は簡単に車体を作り上げ、座席に皮のクッション。道具屋から買った魔除けの布を馬車にかぶせるシンプルなつくりだ。前の馬を操る所にも雨対策に屋根も付けよう。
銃よりずっと簡単だったので、時間はさほど掛からない。
・・・・・・数時間後。
「・・・・・・ふう、こんなもんか」
数分掛けて完成した。魔物除けの布を被せると西武映画で出てきそうな馬車になった。
各接続部分には鉄を使っているのでかなりの強度も確保できてる。
完璧な仕上がりだ。
「ではレンヤ、道案内を頼みますね。僕は馬車でひと眠りするから」
「かしこまりました」
そうして、俺は馬車に入りベット代わりにもなる仕込み式のクッションに寝転がった。
「(ふふ~ん、快適、快適~)」
「では出発いたします」
馬車が動き出し、俺たちは旅路に出た。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回はもしかしたら時間通りにいかなくなると思いますが、引き続きよろしくお願いします。




