パターン青、元同級生です!
…しかし、見れば見る程『スーパー』と評していいものか悩ましい場所である。
生鮮食品売り場を左手に、カー用品売り場を右手に備えるという、配置も確実に色々とおかしいと言わざるを得ないこの空間。お菓子売り場のすぐ隣がお酒売り場、おつまみ売り場の横に医療品、惣菜売り場の横が掃除用品売り場…よくまぁクレームが入らないもんだと感心しかしない。
とは言え、この配置になったのはまだ8年程前から。初代店主のじじいの遺伝子を引き継ぎ、普通じゃつまらない精神でこんな大改変…大改悪をしやがったのは、初代店主の孫にあたる人物なのである。
「…それじゃ龍壱、私はそろそろ病院に戻るとするよ」
「あぁ、もうすぐ昼休憩も終わりだもんな」
両手一杯に駄菓子やら飴やら飲み物やらを抱えたふた姉が、じゃあねと一言残した後、若干フラフラした足取りでレジへと向かっていく。
…ありゃあ運動させて筋肉つけさせないとダメかなぁ?無駄な肉は一切ついてないけど、それと比例して必要な筋肉も無いような気がする…。
…まぁいいか。ランニングも数分でバテる人だし。
それはさておき、俺もそろそろ買うもの買って帰らないと腹が減ってかなわん。朝飯もヨーグルトしか食ってないし、完全に燃料タンクは空っぽだなコレ…
「クックック…黒マテr」
「おいやめろ」
腹が轟音を奏でようと活動を開始し始めた瞬間、俺の真後ろからそんな事をのたまう人影が現れた。
[どうする?]
→たたかう
ひっぱたく
うでをきめる
おいはらう
「紗神家直伝、超高速スナッピングしっぺを食らえ!」
説明しよう!
紗神家直伝『超高速スナッピングしっぺ』とは、通常の三倍の速度でスナップを利かせる事によって、狭い空間でも思い切り振り上げるレベルのしっぺを放つ事が出来る、直伝と言いながら俺が編み出した技なのである!
ちなみに当たればそれなりに痛いが、少し掠った場合だと例外なく切り傷を発生させるレベルの速度という、しっかり食らった方がマシな技でもあるのだ!
同系列の技として、『厚紙を破るデコピン』というものも存在する。コレは実際に学生時代にちょっとした問題になったので封印されている危険な技である。
「ひゃあっ!?」
とは言え、さすがに異性にそんなアホみたいな技を当てるつもりはない。こう見えても俺は紳士なのだ。決して紳士という名の変態ではない。きっちり寸止めして、目を瞑っている相手の顔の前で、すぐ拍手が鳴らせる状態で待機しておく。
ククク…我が奥義は隙を生じぬ二段構えである。
「…あ、あれ?当たってな(パァン!)わひゃあっ!?」
某るろうにが使う奥義の如く、避けても次があるというのは有効だな。…今の俺に何の役に立つのか一切分からんけども。
「…俺買い物して帰りたいんだけど。卵と醤油と砂糖はどこだよ?先月あった場所にロードバイクとか小型船舶用のエンジンとかあったんだけど?」
…牛乳とか肉とかは売り場変わってないくせに、ピンポイントでそこだけ変わってて探せないんだよ。しかも売り場勝手に変えるくせに売り場案内は一切変わってねぇでやんの。
ホンットに、この店は客からのクレームがあっても、平然と握りつぶしてるんじゃないのか…?
「ふっふっふ…! どうよウチのスーパー迷宮! 欲しいモノが買いたいなら、私とお茶でも飲みながらブッシュドノエルをつまんでお話をするのだぁ!」
「人と話したいからって売り場改悪すんじゃねぇよ咲良。あとケーキには紅茶だろjk」
声の主こそ、スーパーの品揃えの定義をブチ壊した初代店主の孫、スーパーの内装をブチ壊すスーパーたか屋三代目、藤山咲良である。