エタ
「結局ファンタジーは止めたのか」
「ああ。俺はSF一本で書いていくよ。これ、見てみろ」
「ご感想じゃないか。どれどれ……『設定がくどくて読みにくいです』。お前、ファンタジーにしたんだよな?」
「SFの癖が抜けきらねーんだよ」
「それがお前のオリジナリティだからな。止めようと思って止めれるもんじゃなかった。それだけだろ。流行りだから、人気があるとかで書き出したところで続かないし、エタるに決まってる」
「そう言うなよ。手を出すまでは何とかなると思ったんだよ」
「思った、じゃなくて、もっとちゃんとしたビジョンが必要なんだよ。せめてエンディングと、それに必要なフラグぐらいは書き出したんだろうな?」
「……」
「おい!」
「書き出せば何とかなると思ったんだよ! それに、漠然としてたけどイメージはあったんだ!」
「じゃあなんでエタった!?」
「……書いてても、「こうじゃない」「こうしたい」って思ってたら、いつものように書いていたんだよ」
「やりたかったことを忘れると、筆が止まる事ってあるんだよ。他にも些細な理由で書くのを止めるけど、戻ってくるのは厳しいぞ? ブランクがあると話の続きを思い出せなくなるし」
「そうなんだよな。どんなキャラを書いていたのか、どんな話にするか。それどころか、どうすれば読んでもらえるか分からなくなってるよ」
「で、エタると。でもさぁ、お前が続きを書くの、待ってるやつがいるんだぞ?」
「分かっちゃいるんだよ。はぁ、とりあえず町中の仕事でもしてくる」
「おう。リハビリしてこい」