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“賢者”の時間!  ―ケンジャ・タイム―  作者: 金厳実直
小年時代 パンツを見たこと、それが僕の誇り
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第五話

 うららかな春の日差しの中、僕は宿屋中庭にあるベンチに腰を掛けてうなだれていた。

さすがに二日続けてみっともなく号泣などしないが、代わりに神への怒りがふつふつと湧いている。



 もしも封印さえなければ、今頃はこの腕のなかに姫様をだいていたかもしれないのに……!



 僕の身体の下で頬を染め、嬌声をあげる姫様の痴態を思い浮かべても、変わらず性欲は湧かない。

湧かないのだがその分、愛から性欲が抜かれた感情――これはなんだろう?純粋な恋心とでもいうのか――とにかく姫様への恋心が強烈に胸を締め付けている。

動悸が止まらない。

頭もクラクラしてきた。



 あぁ、くそっ!

そうだ――魔力を失ったからといって何を悲観的になっていたんだ!

逆にかんがえるんだ……魔法がつかえないからという理由だけで、この姫様への恋心を諦められるか?

―――否!!



 きっと、姫様を無茶苦茶にしたいという性欲が邪魔して、僕は逆に目が曇ってしまっていたんだ。

なにが世界を支配する、なにが神聖タオ様王国だ!

たとえ世界の半分をもらおうとも彼女がいないなら意味などない!

彼女の純潔をそんな邪道で奪ったとして、それで僕は本当に満たされるのか!?



 性欲を封印された今の僕ならわかる……僕は彼女を抱きたいんじゃない。

あ、いや嘘だな、やっぱり抱きたいわ。

超抱きたい。

汗だくになって抱きたい。



 抱きたいんだが……それだけじゃ足りない。

僕はただのパンツが欲しいんじゃない――天使のパンツがほしいんだ!

つまり僕は、彼女を愛し――そして彼女にも愛されたいんだ!



 ならばどうする?

そうさ、姫様に釣り合うような、誰も二人の結婚に異議を唱えられないような、そんな存在にこの僕がなるしかないじゃないか!

たしかに昨日は逆立ちしたってそんなこと無理と決め込んでしまっていた……

だからといって残念だな、で諦めるわけにはいかない!



 幸いにして今の僕はまだ10歳。

しかも20歳程度の頭脳をもつ10歳だ。

周りから見れば天才なのではないか?



 くわえて日本の知識をもっている。

数学、経済、生物、医学、四十八手エトセトラ……僕の頭脳は未だこの世界では知られていない知識の宝庫だ。



 これを利用してなんとか出世できれば――!?

そう、たとえば宮廷で重用されるレベルの学者や王族付きの凄腕医者ならばあるいは――



 いや……無理……だろう、その程度では。

現国王の姪――そんな彼女との結婚が許されるレベルとなると、やはり大貴族や外国の王など、そういったいわば雲の上に住むような存在だろう。

僕がこの国内で彼女と結ばれる為には――タオ・ロードミラーはなんとしてもこの国に縛り付けておかなければいけない――国が満場一致でそうかんがえるような、そんな人物になる必要がある。



 彼女を手に入れるには、やはり力――それも圧倒的な力しかないのか?

ならば国軍に入って、歴史に刻まれるような名将軍になれば……!


 

 剣……剣かぁ……

全く自慢にならないが、僕は体力がないんだよなぁ。

田舎の小さな町でさえ下から数えた方が早いような貧弱少年だ。

しかも平民出身の剣士がいくら成果を挙げたところで将軍なぞなれるのか?

ああいうのは貴族でも上の連中で占められていそうなもんだが……



 いけない、また悲観的になってしまった。

諦めることなどできないとさっき分かったばかりじゃないか!

それしか方法がないというのなら、やってやろうじゃあないか!

平民でも10歳から死ぬ気で剣を振れば、王族と結婚できる――!



 そういって僕が覚悟を改めやっとこさベンチから立ち上がり視界をあげると同時、誰もいなくなっていた前方の共同水場に一人の女性が現れた。

共同水場とは風呂などとは別の、洗顔や洗濯に使う、いってみれば複数の井戸が連なったような場所だ。

しかし女性は驚いたことにその場で着ている上着をゆっくりと脱ぎ始めた。



 まさか、ここで水浴びでもするつもりか?



 いやいや、そんな阿呆な。

田舎からこの街に観光で出てきた僕さえここは服を脱ぐべき場所ではないことを当たり前に知っている。

ならばすべてを承知の上であの女性は服を脱いでいるというのか?

とんだ痴女もいたものだ。

僕は立ち上がったままその場で呆気にとられていた。




「春とは言え、浴びるにはまだ水が少しつめたいな……」




 などといったやけに色っぽい声が微かに届く。

身体を動かしていたのだろうか――上気した肌と息切れ艶めかしい。


 歳のころは18ほどだろうか?

ボブカットの艶めく赤い髪は汗に濡れたのだろう――陽光に煌めいており、シャツとスカートから覗く手足はほどよく柔らかさを残して鍛えられている。

おっぱいは並より少し上。

ウエストはキュッとくびれている。

お尻もあれは並より上だな・・・

身長は170㎝ほどか、この国の女性にしては高い方だろう。



 痴女(仮)は持っていた手ぬぐいを水桶に浸すと、周りをキョロキョロと見回す。

……あ、目があった。

痴女は僕に気づくと警戒したようだが、すぐに子供だとわかると柳眉を緩めた。



 ふむ。

ふむふむふむ。



 この世の美の粋を集めたような幼いエンジェル姫様とはまた違っているが、綺麗なお姉さんという言葉がピタリと当てはまるかなりの美人さんだ。

ベンチの前に立つ子供――僕だ――しかいないことを確認したからだろう。

彼女は麻で編まれた薄めの半そでカッターシャツの前ボタンをプチプチと外し、上半身をはだけていく。



 ――やはり痴女だったか。

このタイミングで目の前に痴女が現れるなんて、ひょっとして魔力と性欲をうしなった可哀そうな僕への神からの贈り物か?

神様など死んでしまえと呪ったばかりだが、なかなかいいところもあるではないか。

ぐへへへへ、いい身体しちょる。

性欲は湧かんが、美しいものを愛でる心は健在だ。

ありがたやありがたや。



 痴女(真)改め天からの贈り物は、濡れた手ぬぐいをギュッと絞ると上二つのボタンを残して露わになった上半身を丁寧に拭きはじめる。

なるほど、汗をかいて気持ち悪かったとかそんなとこだろうか?


 

 僕が食い入るような視線を向けてムラムラしているのにも気づかず、引き締まったお腹を拭いている。

あぁ・・・ソレを拭くだなんてとんでもない!

ひとこと言ってくれれば僕が喜んで舐めとってあげるのに――





―――ん?いま何か違和感があったような?





 お姉さんの手は続いて上に伸び、シャツに隠れている部分を拭こうとしているようだ。

うんうん。

お姉さんのお胸はそんなに大きいようには見えないが、おっぱいは谷間に汗疹ができるなどというし、しっかりと拭いた方がいいと僕もおもいますしですしおすし……



し……



し……






「下乳だとおおぉぉっっっっっ!!!??」






 シャツの隙間から覗く綺麗な南半球に、僕は我を忘れて大声をだしガッツポーズをしていた。

なんとういうか、フルオープンよりもクルものがあるなっ!

ただの無害そうな子供が急に叫んだのに驚き、お姉さんは何事かという顔をしてこちらを振り返る。




「あ……ありがとうございますっ!

ありがとうございますっっ!!



……いやはやブラボー……ブラボーな南半球でございます……!

天からの贈り物……確かにうけとりました……!」




 いや~~~、すばらしい!

健康的に日に焼けた肌をもつ綺麗なお痴女お姉さんからのサプライズプレゼントに、僕は完全に興奮していた。

うんともすんとも言わなかったマイサンも、今やすっかりスタンディングオベーションで痛いぐらいだ!






んんん?あれれ?痛いくらいだ……?






「た……



勃っとる……



クララが……




クララが勃っとるぅぅぅぅぅ!?」






 下に目をやれば、わずか10歳にして完全に未来を閉ざされたと思われていた愚息はいまやはちきれんばかりに(あくまで10歳児レベルだが――つーかこれが限界)存在を主張している。



 まさに人体の不思議……

あぁ……ありがとう……

本当にありがとう痴女さん……!

あなたは僕を封印から解き放つために現れた、超弩級の痴女だったのですね――




「やった……やったぞっ……!



 これで勝つる……!



 封印なんてなかったんや……!!



 僕はいま……猛烈にムラムラしている!!!」




 

 

 次の瞬間、中庭には漆黒の魔力嵐がふきあれていた―――!

天使とか姫様とかばっかりでヒロインのフルネームがいつまでたっても出てこないのですが、ヒロインはシエルイスカ・アン・ル・ウォッケンといいます。

姫様だけど騎士じゃありません。

だから「んほおおおおおぉぉぉ」とか絶対言いません。

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