表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
“賢者”の時間!  ―ケンジャ・タイム―  作者: 金厳実直
小年時代 パンツを見たこと、それが僕の誇り
1/14

第一話


初めにパンツがあった。



 パンツは僕とともにあり、



 パンツは僕であった。





==================================


当時10歳の僕こと、タオ・ロードミラーは辺鄙な田舎村に父母妹と4人で暮らすどこにでもいるような子供だった。



 父も母も平凡な身分の平凡な顔・体形であり、ごく普通の二人は、ごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしましたとさ。

それを継いだ僕もまた黒髪黒目の平々凡々な子であった。

強いて特徴をあげるとするならば同年代よりもちょっとだけ頭がよく、すご~くのんびり屋で……スケベだった。



 精通はまだだったが、女の子とみればとりあえず口説いて、スカートがあればとりあえずめくる。

大柄な体形にそばかすだらけの顔、浅黒くたくましい肌を持った――男子ども特有の純粋さゆえにつけられたあだ名は「肥溜めよりの物体X」――町の女子リーダー的存在でも構わず口説いたことから、「新たな性の開拓者」「常時逆ケンジャタイム」「大人になってやらかす前にさっさとぶち込むべきだ」などと呼ばれ、女子からは侮蔑の、男子からは尊敬の眼差しで見られていた。



 Xから逆告白されもちろん断ったときに「なんでよおぉぉ!口説いてきたのはアンタでしょおぉぉ!」と思いっきり殴られ、押し倒されて馬乗りになられた時のことは思い出したくない。

町の大人からは何べんも怒られたが、その都反省することなく度口八丁手八丁で事なきをえた。

そんなどこから見ても平凡な子どもだった。

 


 この大陸では随分と前から大陸東に位置するウォッケン王国が徐々にその国力を高め、終いには一強状態となって各国を次々と併呑していったらしい。

王国は治安維持や風紀を守ることに定評があり、併合された他国も「前よりも暮らしやすくなった」などと概ねその統治を歓迎していた――僕としては迷惑千万だが。

もはやこの大陸=ウォッケン王国というのが大陸に住む殆どの人間にとって自明の理であったが、僕の住むこの町を含む南部諸地域はいまだ王国に完全に属しきってはおらず、所々、五十歩百歩の極々小領地を支配する自称国王が乱立して好き勝手していた。



 もちろん大陸支配にリーチがかかっているそんな状態のままウォッケン王が放っている筈もなく、調教の最後の仕上げをするかのごとく王国は南への征服を開始した。

征服とはいっても、王国が北部統一に時間をかけたが故に今まで単に相手にされていなかっただけの南部諸国が抵抗できるはずもなし――力の差は、有名奴隷調教師と媚薬で蕩かされた囚われエルフ姫騎士だ――各国王はウォッケン王国軍の寒風に翻る軍旗を見ると、「やっぱり大国には勝てなかったよ……」とばかりに戦など起こすべくもなく素直にその支配権を明け渡したらしい。



 南部諸国はウォッケン王国支配下の少し大きめの都市として改められ、王国直属の貴族代官が統治者として着任するくらいで、僕たち家族の生活は全くと言っていいほど変わらず。

こうして王国歴1100年、呆気ないほど静かにウォッケン王国による大陸全統一という偉業は成し遂げられ大陸は名実ともにウォッケン王国となった。



 王国からすれば「最後の仕上げも無事終わってよかったよかった万々歳」であり、南の人々からすれば「知ってた。正直さっさと王国民になりたかった」というなんとも平和な幕切れであった。



 偉業をやったのなら、次はそれに相応しい祝福が必要だ。

ウォッケン国王はまず首都でそれは盛大な宴やパレードを連日開催すると、次いで各地域の大都市でも順々にパレードを行った。

これは併呑が早かった北から順に行われることになり、時間はかかるが、謂わば国民への顔見世という大事である、疎かにすることはできない。

祝統一パレードは順調にその日程を消化していった。

田舎者の僕の家族でも「見たいいいぃぃぃ、パレード見たいのおおおぉぉぉ!」となり、南で一番の大都市まで久方ぶりの奮発をしての物見遊山とあいなったのである。



 いよいよ南部地方パレード当日。

そこで大観衆と大歓声の中、「ジャンヌやアンジェリカのような姫騎士でもいないだろうか」と父に肩車されやっとのことで遠目に見たものは普通ではなかった。

否、普通とは正反対のもの――すなわち一糸乱れぬ隊列で進む王国兵隊たちと、絢爛豪華な馬車の上で豪華な装いに身を包んだ王族貴族や軍のお偉いさま方である。

あまり強そうな格好をするなよ――弱く見えるぞ。



 僕もその華やかさにしばらく目を奪われていたが、まぁしかし子供というものは10分もみれば真新しいものでも飽きてしまうもので、特にパレードには女性の参加者が少ないのだ、だんだんと退屈してきた。父をして「お前は時々カメみたいにぼーっとしてるね。いつもそうだったら平和なんだが」と言わせる僕は、次はわたし~とせがむ妹に早々と父の肩を譲ると、性欲がダメなら食欲だ、出店で空腹を満たそう、と母にせがんだ。

しかしとうの母はといえば、



「キャ~~~~~~!!国王様~~~~~~~~!!!こくおっ、こくおうさ、イヤああ~~~~~!王子さま~~~~~~~!!!うおおおおおおお!!」



などと化生じみた高音で声を発してパレードに夢中になっており、全く相手にされず不貞腐れた僕はすごすごと考えなしに一人宿泊中の宿へと向かった。



 無理もない。

当時大陸を統一した王はなんとも驚くことに僅か30歳ほどの若さであり、また王族特有の高貴さ、男盛りのスラリと引き締まった長い体に端正な甘いマスクは各都市でも絶大なご婦人方への人気を博していたからだ。

王妃様は体調不良のため不参加である――なんてこったい。

大陸統一の殆どは先代の功績と謗るものもあったが、成し遂げたのは当代だ。

やはり只者ではないのだろう。



 早くも国民の支持は盤石であろう盛況ぶりであった。

王族はみな押しなべて高い外見レベル―――はっきり言えば美男美女だ、を備えていた。

まぁ当然だな。

不細工な王族なんて少なくとも僕は聞いたことがない。



 「あれがカリスマってやつか」「キャーはわかるけどうおおって歓声としてどうよ?」などと些末な考えをしながら僕が歩いていると、ふと今度は野太い野郎どもの声で正しく「うおおおお!!」が聞こえてきた。



 目線をあげると分厚い壁と化した群衆と舞い散る紙ふぶきの向こうには美男美女が手を振っているのが僅かに見える。

やっと見つけた美女に興味をそそられた私は、小さい身体を最大限に活かしてその分厚い壁を押しつ押されつ何とか前進していき、最前列へと身を捩るようにして躍り出た。



 そこから見えたのは周囲の声を聞く限り、どうやら国王の弟であり、血は争えぬというのか、彼は目を瞠るような、ともすれば国王以上のイケメンであった。

しかし別に南部の男どもは男が好きだから歓声をあげた、ということでは断じてなかった。

この国王弟の妻がまた美しかったのだ。



 白い華美なドレスに身を包まれた彼女はまさにBON!CU!BON!であり顔は彫刻のように整っている。

長い髪は綺麗に結われており、その溢れ出る私高貴な生まれですオーラも相まって、女神が地上に戯れに降りてきた、と言われれば信じてしまいそうな程の美貌で国民にそのたおやかな手を振っていた。

なんというか、国民を人質にとられて好き放題されるのが似合いそうな美女である。



 案の定周りからは「女神だ―!女神様が降臨なされたー!!」「すごいわねぇ、同じ人間と言われても信じられないわぁ……」「あれが……GODDESS!」などと聞こえてくる。

女神様コールでも始まりそうだ。。



 僕もその美しさに心奪われてホケーッとした顔で見上げているといやしかし、女神の陰に隠れて小さな女の子もいるではないか。

女神と同じ色味のドレスを着てその腰にしがみついていることから「ははぁ、おそらくあの方が国王弟夫妻の娘であろうな、あの夫妻の間に生まれた子だ、さぞや美しい姫となるに違いないウフフフフ」などとと僕が妄想をしていると、その顔がこちらにちらりと一瞬だけ見えた。




その瞬間、僕は雷に打たれたような思いだった。




 なんということだ。

女神のお子さんは天使や……天使やったんや!



 年のころは僕と同じくらいだろうか?

10歳ほどだろう彼女の短く切りそろえられたブロンドは、この世の穢れとは無縁かのように光り輝いてサラサラと揺れており、きっとあの髪はさぞかしいい香りがするのであろうことは幼い僕にも容易に想像がついた。

大きな目や形のいい眉、鼻、唇etc……顔のパーツはどれも一流専門店のオートクチュールのように整っており、かつそれらがここだ!ここしかない!!とでも言わんばかりの絶妙なポジションで輪郭内に配置されている。

これこそ後に発見される黄金比である。



 すごい、こんな体験はじめて!!と僕が顔を真っ赤にして熱い視線を彼女へ送っていると、王弟殿が天使をヒョイっと抱きかかえた。

娘を抱っこして国民に手を振らせるともりだろう。

まだ表舞台には慣れていないのか、天使は緊張しながらも小さく美しい手を振っている。



 それを見た皆も僕と同様の雷に打たれたのだろう。

やがてパレードは落雷被害者をその場に、先へゆっくりと進んでいき、国王弟一家はフェードアウトしていった。



 「やー、おったまげた、奥さんも別嬪とおもったが、娘さんもとんでもねぇべ」「あれは成長したらゴッデスを超えるかもしれねぇなぁ・・・いやたまげた」

「ばかやろぉ! てめぇ、成長したら台無しだろうが! いまあれがあの方の完成なんだよ!!」



 周りの人々もそれぞれに度肝を抜かれている。

しかし、その声が僕の耳に届くことはなかった。





なぜなら僕はその時、白目を剥いて気を失っていたからだ。

 




 なぜ気絶しているのか?

王弟殿が娘を抱き上げたとき、奇跡が起こったのだ。

まさしくミラクル。



 あの時、あの瞬間、あの場所、見上げる角度、僕の身長、王弟の身長、天使のドレスの裾の長さ厚み、天気、風向き、温度湿度……

その全てが、偶然にも薄い、薄い確率でつながりあい、奇跡を編み上げた。





すなわち、あの時!この全宇宙世界広しといえども僕だけにあの時!!





天使のパンツが見えたのである、純白に光り輝く……   





主人公の姓ロードミラーは、そのチ◯コだけで女帝 孝謙天皇を虜にしたという伝説を持つ道鏡先生からとっています。


……まんまですね。


引用―――アンサイクロペディア 道鏡

http://ja.uncyclopedia.info/wiki/%E9%81%93%E9%8F%A1

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ