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BROOM STORYS 〜始まりの箒〜

作者: 牧村尋哉

児童文学調の文章で子供のために書いた物語です。

短編ですが、いずれ続編を作っていきたいと思います。

(内容としては時系列で全ての物語をリンクさせていく予定です。大変な作業ですが…)

  1 小さな魔女の箒


 昔々、あるところに、魔法使いのお父さんと、お母さんと、その子供が住んでいました。

 子供は女の子で名前をつぶらといいました。

 つぶらは外で遊ぶのが大好きで、とくにお父さんと一緒に箒で空を飛ぶのがとても気に入っていました。

 ある朝、10歳になったつぶらはお父さんのお部屋に呼ばれました。

「つぶらは今日でもう10歳になったから、これからは自分で空を飛んでごらんなさい」

 そう言ってお父さんは一本の箒をつぶらにくれました。

 つぶらは嬉しくなって、さっそく外に出て箒にまたがってみました。

「さあ、飛びなさい!」

 元気良くかけ声をかけましたが、箒はぜんぜん浮かび上がってくれません。

 お父さんの箒は風に揺られる羽みたいにフワリと浮かび上がったのに、つぶらの箒はうんともすんともいいません。

「お父さんのイジワル! この箒壊れてるよ!」

 つぶらは怒って箒を地面に投げ捨てました。

 するとお父さんが

「つぶらは一緒に空を飛ぶ箒と仲良くなってあげないのかい?」

といってつぶらが投げ捨てた箒に手のひらを向けました。

「おいで」

 お父さんがやさしく声をかけると、箒はフワリと浮かび上がり、お父さんの手の中におさまりました。

 それを見ていたつぶらはびっくりしてしまいました。

「どうして私がやっても浮かないのにお父さんがやると動くの?」

 お父さんはニッコリと笑っていいました。

「お父さんは箒と仲良しになろうとしているからだよ。箒は一緒に空を飛んでくれる大切な友達だからね」

 つぶらはそれを聞いてまたびっくりしました。

「お父さんは箒と友達なの? 箒は私達とは違うし何も言わないでしょう?」

 するとお父さんは箒をつぶらの手に持たせながら、また言いました。

「そうだね、お父さんやつぶらと箒は違うね。でも、つぶらは自分と違うものとは仲良くなれないかい? お父さん達が空を飛べるのは箒がいてくれるからで、仲良くなろうと思えばきっとつぶらにも箒の気持ちがわかるはずだよ」

「箒の気持ち?」

 つぶらは渡された箒を眺めながらお父さんに聞き返しました。

 するとお父さんは笑顔でつぶらの頭をなでてから、

「目を閉じてごらん」

と言いました。

 つぶらはお父さんに言われたとおり、箒を持ったまま目を閉じました。

「何が聞こえるかな?」

 目を閉じたままつぶらは答えました。

「お父さんの声」

 お父さんはそうだねといってから、

「他には?」

とまた聞きました。

 つぶらは耳を澄ましてみました。

「遠くで鳥の声がする」

 お父さんはまた、そうだねといって

「風の音は?」

と聞いてきました。

 またつぶらは耳を澄ましてみました。

 すると、

「聞こえる! 木がサワサワ言ってる!」

と答えました。

 お父さんはまた続けます。

「お日さまはどうかな?」

 今度はつぶらの頭を軽くなでながら聞いてきました。

「暖かいよ!」

 つぶらが答えると、お父さんは

「そうだね、良いお天気だからね」

といってまたつぶらの頭をなでてくれました。

「では、つぶらの手の中はどうかな?」

 お父さんに言われると、つぶらは手の中で何かがフワフワと動いているのに気がつきました。

「お父さん! 動いてるよ! フワフワ動いてる!」

 つぶらは嬉しくて、びっくりして、お父さんに大きな声で答えました。

「そうだね。その箒はつぶらと一緒に飛びたがっているんだ。仲良しになればきっとどこまででも飛んでくれるはずだよ」

 お父さんの言葉に、つぶらは嬉しくなりました。

「本当に?」

と聞くと、お父さんは

「手を放して、目を開けてごらん」

と言いました。

 すると、つぶらの前で箒が宙に浮いたまま軽く上下しました。

「おじぎをしているよ」

とお父さんに言われ、つぶらも箒におじぎをしました。

「私と一緒に飛んでくれる?」

 つぶらが言うと、箒はゆっくりと腰の高さまで下がって宙に止まりました。

「どうぞって言っているみたいだね」

 お父さんが笑顔で教えてくれました。

「ありがとう」

 つぶらはお礼を言って、箒にまたがりました。

「いっておいで」

 お父さんが手を振っているのがだんだん下に見えてきます。

 お日さまが少し近くなりました。

 つぶらは空に高く上がったところで箒に

「行こう!」

と声をかけました。

 すると箒はまるで風のように空を飛び、遠くの白い雪をかぶった山や、たくさんの美味しいリンゴがなっている森や、キレイな魚がいっぱいいる川にひとっとびで連れて行ってくれました。

 つぶらは1人では空を飛べないけれど、仲良しの箒がいればどんなことろにでも飛んでいけるようになりました。

 家に帰ったつぶらに、お父さんがつぶらの箒の名前を教えてくれました。

 リバティ(自由の)・ウインド(風)。

 今でもつぶらとリバティ・ウインドは大の仲良しです。

 きっとどこかの空で小さな魔女を見かけることがあるかもしれませんね。

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