表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/84

最終話  繋がる想い、ルーラ編

深夜、皆が寝静まり、虫の鳴き声がよく聞こえるくらいに静かな夜―――、一組の男女がいた。

一人は夜の景色に素晴らしいほどにまで同化しており、美しい黒髪をしていた。

そして、もう一人は今の夜の景観とは真逆の髪色をもった少年。

2人は暗い中、お互いを見つめていた。

「…シュウ」

「……ルーラ、僕は……君が好きだ」

「っ!うん…」

ルーラは双眸から一粒の涙を流し、嬉しそうに顔を笑顔で染め上げ少年に抱きついた。

シュウの顔一つ分小さい彼女はしたから彼の顔を見上げるような形になっていた。

「大好き」

「僕もだよ」

2人は暗い中――――――お互いの唇の位置も分からないほどの暗さで

あるにもかかわらず唇を重ねあった。




こうしてお互いの思いが通じ合った2人――――――だが、

世界は――――――人間は異端を排除しようとする。

2人も例外ではなかった。



「シュウ!おはよ!」

「ああ、おはよ」

お互いの想いを確かめ合った2人は朝から仲好く、学校に行こうとしていた。

とはいうもののシュウは今現在、学校の宿直室で寝泊りしており実質、

ルーラからしたら学校には既に到着し、教室の友達に会いに

行くような感覚だった…が、やはり友人と恋人は違う。

「にゃ~」

「あ~ん♪!なんで、リッタはこんなにも可愛いのー!」

「にゃ、にゃ~」

ルーラは布団から出てきたリッタにすぐメロメロになりシュウを

ほったらかしてリッタに抱きついた。

(やれやれ、ルーラが無類の猫好きなのは知ってるけど……やっぱり妬くな~)

シュウは動物相手に嫉妬するのもどうかと考え、すぐに学校へ行く準備をし始めた。

長い、休耕期間を終えたシルバロン高等学校はカリキュラムを大幅に修正し、

3年生の卒業時期を大きくずらした。




(……なんだ、この感じ)

「シュウ?聞いてる?」

「ちょっと~。恋人の話をスルーするなんて大丈夫かしら~?」

ライカは少し、嫌味を混ぜてシュウに言うがシュウは周りの感じが気になって仕方がなかった。

以前も似たような視線はいつも感じていた、だが、今感じている視線はどこか以前の物とは違う。

言い表すならば、異端者を見るような眼をしていた。

「あ、ああ。もう、始まるから行くな」

「うん!バイバイ!」

シュウはルーラの頭を一回撫で、教室から出ると人気のない場所でリッタを呼んだ。

「リッタ」

「にゃ~」

開いている窓からリッタが建物内に入りシュウの足元に来た。

「少し」

「分かってるにゃ~。調べてほしいんでしょ?」

シュウの言葉をさえぎってリッタが言った言葉が自分が思っていたことと

寸分狂わず合っている事にシュウは驚いた。

「何そんな驚いたような顔をしてるのよ。私達は契約をした、

契約者の思っていることくらい分かるにゃ~」

「じゃあ、頼めるか?」

「にゃ~」

リッタは一度、鳴くと窓から外へと出た。




「ふふ♪」

授業が終わり、お昼休みとなりルーラはシュウの教室へ行こうとしていた。

その手には2人分のお弁当が大事そうに抱えられていた。

「楽しみ♪、あ!」

廊下を歩いていると目の前にクラスメイトと廊下で話しているシュウが見えた。

「シュ、きゃぁ!」

走って彼に近づこうとしたルーラだが、突然、死角から手が

伸びてきて口を何かでふさがれて引き込まれた。




そして、放課後――――――

「ん?」

「どうかしたのか?シュウ」

「……いや、気のせいかな」

ロックと廊下で談笑していたシュウだが、一瞬、誰かが自分を呼ぶ声が聞こえ

後ろを振り向くが誰もいなかった。

「まあ、いい。それでさ」

その時だった。

「シュウ!」

「ん?ゼロ?」

突然、どこからともなく声が聞こえたかと思うと前からゼロが走ってきた。

「どうしたんだ?ゼロ」

「た、た、大変なんだ!ひと先ず、こっちに来てくれ!」

シュウはゼロに手を引かれて外に出ると、グラウンドの中心に人だかりができていた。

「な、なんだこっ!」

シュウは囲まれている景色を見た瞬間、声が出せなかった。




「さあ、皆の者よ!見よ!こいつが魔族だ!」

磔にされたルーラがそこにはいた。

「殺せ!魔族なんかこの世に必要ない!」

「殺せ!」

一人がその単語を発するとどんどん、感染していき遂には集まっている

全員が殺せと叫び始めた。

「てめえらー!何をしてんだ―――!」

シュウは叫びながら怒りに身を任せ、氷の魔法を発動させて威嚇に

辺り一面を凍りづけにした。

「う、うわあぁぁぁ!」

凍りづけになった途端におじけついた者達が道を開けるとシュウはダッシュで

そこを突っ切ってルーラの所に辿り着いた。

「シュウ!」

「ルーラ!良かった!」

シュウはルーラを縛っていた縄をほどくと彼女が体を震わしながらシュウに抱きついた。

「……ふ、二人とも。かなりやばい状況になったぞ」

ゼロの震える声を聞いて2人は周りを見渡してみるとそこにあったのは

異端者を排除せんとする狩人達の眼をした生徒達がいた。

「こ、氷だ!氷の噂は本当だったんだ!」

「殺せ!魔族も!氷の使用者も殺せ!」

狩人達が一気に二人に飛びかかった瞬間!

ピカッ!ドオオォォォォォォォォォ!

「うわあぁぁぁぁぁぁ!」

突然、何本もの落雷が2人を護るように、かつ狩人達を傷つけないように落ちてきた。

「今のうちだ!ゼロ!ルーラ!行くぞ!」

シュウは2人の手を取ってその場から立ち去った。




「非常にまずいことになった」

今、理事長に呼ばれ、ランカー全員とシュウが

信頼できるクラスメイト数人が理事長室にいた。

「何が起こってるんですか?先程から、生徒の様子がおかしいのですが」

フィーリが理事長にそう尋ねると理事長は難しそうな顔を一瞬だけして

話し始めようとした瞬間、別の声が聞こえてきた。

「魔女狩りだよ」

皆が後ろを向くと、口からツーっと血を流しているルイカがいた。

「さっき、ちょこっと吸血して情報を貰っちゃった」

「…咎めたいが今は、状況が状況だ。教えてくれ」

理事長の問いにいつもはおちゃらけているルイカが顔をこわばらせて話し始めた。

「先程も言ったとおりこれは魔女狩りです。魔族を完全に根絶やしに、

そして、氷の魔法の使用者をこの世から消せ―――そんな狩りですよ」

「じゃ、じゃあ母さんは!」

「やっほ~。ママはここで~す」

急に窓が開いたかと思うとそこから、リッタとともにイーリが

理事長室に入ってきた。

「リッタちゃんに服を引っ張られたから来たけど…正解だったみたいね」

「良かった……だが、ここも直に見つかる」

理事長室も、生徒からしたら隠れやすい場所として認知されている。

「………これはもう、私とおなじ様にするしかないわね」

イーリが呟いたことに全員の視線がイーリに向けられた。

「…申し訳ありません、イーリさん。私がいながら」

「別にチビちゃんの所為じゃないわ。これは仕方がないことなのよ」

誰も――――――イーリに何をするかは問わなかった……問わずとも分かったのだ。

シュウ、ルーラ、イーリの3人は皆の前から消える。

「シュウ、ルーラちゃん……良いわね?」

「「はい」」

2人は力強く頷いた。





そして、それから数年が経った。

あれから2人はすぐにゆえ達の前から消え、イーリが隠居していた村へと出発した。

寂しかった――――――だが、定期的に来る手紙がその感情を和らげた。

あれから魔女狩りは収まりを見せることはなく、遂には2人に賞金がかかってしまった。

勿論、シュウと関係のあった者たちにはどっかの国から来たお偉いさん達の尋問があったが

全員が全員、居場所を知らないと告げた。

「ゆえちゃーん!手紙来てるわよー!」

「はーい!」

母から呼ばれ、女性として美しく成長したゆえは下に降りていき

その手紙を受け取り開けると、そこには一枚の記録写真が入ってあった。

「そうか……元気で良かった」

「本当ね~。大きくなっちゃって」

その写真には白い髪の少年と、美しい黒髪の少女――――――そして、その少女に

抱きかかえられた新たな命が、そしておばあちゃんとなった者が映っていた。

本当に幸せそうな表情をして。

こんばんわ!いや~ようやくこの作品も完結しましたよ!

初めての一次創作が完結するとあって少しさみしいです。

それでは!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ