第67話 悲しき呪いの進行
シュウは獣人化をして高速で移動しながらゆえを探し回っていた。
『リッタ、ゆえの匂いは?』
『駄目ね、この雨で途切れてるわ』
今日は夜から大雨が降るとは言っていたが予想外なまでの降水量だった。
『……あっちの方面に行こう』
シュウは悴む体をどうにかして動かしてゆえを探しに行った。
「…私は一人か…」
ゆえは失意の中一人雨に打たれながら人気の少ない路地を歩いていた。
何人かゆえを誘うヤンキーがいたがその全員をゆえは一蹴し歩いていた。
「………」
ゆえは何も言わずに空を見あげていた。
上からは土砂降りの雨が痛みが出るくらいに彼女の顔を打ちつけていた。
ピシャッ。
その時雨音ではない音がゆえの後ろから発せられ彼女の耳に入ってきた。
「ハァ、ハァ…やっと見つけた」
「シュウ…か」
「帰ろう。ユイさんも心配してる」
シュウは彼女の冷たくなった手を取り家まで連れて帰ろうとするが
「離せ」
ゆえはシュウの手を敵意むき出しで弾いた。
「ゆえ…」
「何が心配してるだ…いいな、シュウは。親と感動の対面を果たしたんだからな」
「…ゆえ」
「私も親と対面したいよ」
若干彼女の目が濁っていた。
「いるじゃないか。ユイさん」
ヒュッ!
「っ!」
シュウは反射的に体制を後ろにそらすと顔があった位置に刀が通り空を斬った。
「あぁ、あのエセ両親か」
その言葉を聞いた瞬間シュウの中で何かが切れた。
キィィンン!!
「今の言葉取り消せよ」
「断固拒否しよう。エセ両親にそう言って何が悪い」
「ゆえ!」
シュウは刀を彼女に振るうがゆえはそれを身をよじらせて避けると
刀の切っ先をシュウに向けそこから円を描くように刀を動かすと
そこから円柱状に炎が伸びシュウの顔を掠って壁に激突し大穴をあけた。
「アハハ!もう私は一人だ!アハハハハハハハハ!!!」
ゆえは刀を振り回して火球を無差別な方向にひたすら放ち始めた。
『ちっ!』
シュウは獣人化を素早く済ませると襲ってくるいくつもの火球を
高速移動でかわしていく。
「ゆえ!確かにユイさんは君の本当のお母さんかもしれないけど
お母さんと何ら変わりない愛情を注いでくれたはずだ!」
「黙れ!そんな愛情など偽物に過ぎん!」
ボォォォオオオォォ!
ゆえは炎で翼を生成しシュウに猛スピードで近づいてきた。
キィィン!
炎を纏った刀身とただの刀がぶつかり合い辺りに火花が散った。
「偽物なんかじゃない!ユイさんは…ユイさんはゆえの事を娘だと思ってる!」
「黙れ!」
ゆえは刀を振る速度をさらに速めていく。
「あの人はどうせ心の中で私の事をどうでもいいと思ってるんだ!」
「違う!もしそう思っていたらあの時君を叩いたりなんかしない!」
「っ!」
一瞬ゆえの刀が停まった。
その隙をついてシュウは刀を振るいゆえの刀を弾き飛ばした。
「………」
「ハァ、ハァ、ハァ。ユイさんは君の事を本当に、ぐぅ!」
突然シュウはうめき声をあげて両膝を地面に着いた。
「シュ、シュウ?」
「うぐぅ!うぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「シュウ!!」
シュウは叫び声を上げながら意識を失い地面に倒れ伏した。
「……呪いがもう…臍のあたりからわき腹まで来てた」
ルーラは重い空気の中シュウの呪いを診断した感想を率直に言った。
「このままのペースで行けば…確実に戦争中に死ぬ」
『っ!』
全員の顔に驚愕の色で染まった。
「だ、だがルーラ君。シュウ君は普通に生活しているだけなら
後何十年も生きられるんじゃなかったのか?」
理事長に問いにルーラは首を左右に振って否定を示した。
「あの呪いは魔力を喰らって成長するもの。
確かに理事長の言うとおりにしていれば何十年かが
生きれるけど…ハデスがそんなに待ってくれるはずがない」
魔族が人間界へと攻め込んでくるまで残り僅かになった本日、
エリート部隊である守護隊が先遣隊として魔族が進行してくるで
あろうルートで警備に当たっている。
魔界と人間界を繋ぐ入口は一か所しかない。
「で、でもこの前見たときはまだ点だったじゃない!」
ライカは声を荒げるがそこにゆえの弱弱しい声が割り込んできた。
「わ、私の所為だ。私が昨日シュウと闘ったから」
「ゆえ!」
ライカは声を大きく荒げゆえの胸倉を掴んだ。
「なんで戦ったのよ!シュウが呪いを受けてるってこと知ってるでしょ!
なんでよ!ねえ!答えなさいよ!ゆえ!!」
「止めなよライカ!」
ライカはルーラやアーク達に止められてようやくゆえの胸倉を離した。
「何喧嘩してるのさ」
その時廊下にシュウの声が響き渡った。
「シュ、シュウ!?」
シュウは母であるイーリの肩を借りて皆の前に姿を現した。
「大丈夫だよ、僕は。戦争が終わっても必ず生き延びてみせる」
ライカやルーラはシュウに反論しようとするがシュウの笑顔を見ると
その感情は瞬く間に消滅した。
うわぁぁ~ん!とうとうなろうで感想の返信を書くことがなくなったよー!