第63話 呪い
集を取り返してから一週間後、集達は普通に授業を受けていた。
しかし、この日を最後にこの平和な日常が終わった。
『人間界に住む諸君、聞きたまえ』
「え?何何?」
そんな声が聞こえてきて生徒達はおろか教師までも空に映った何者かの放送を聞いていた。
『我は悪魔の主、ハデス。今、我は封印を解かれ力を取り戻しつつある。
あの忌々しい戦争で我を封印した奴らを殺すべく我ら悪魔軍は貴様らに宣戦布告をする!
この世界は悪魔によって統治されるのだ!!既に我らは膨大な戦力を有している。
これは戦争だ。女子供関係なく我には向かう者は全員抹殺するのみ!!!!!』
それから全土に号外の新聞がばら撒かれた。
30年前の戦争が再び発生するともなれば致し方がないのだが
国家はすぐに緊急に招集をかけて会議を始めた。
シルバロンも例外ではなくすべての授業は中止になり国家が
作る軍に志願する者は残れという風に上から命令が出された。
1組などの貴族組は皆、親から帰ってくるように言われ全員がいなくなり
兵のほとんどは一組以下の生徒から選ばれそしてランカー達は
否応なしに有力な戦力として招集された。
「さて、よく集まってくれたね」
集達は理事長から召集を受けて理事長室に集合していた。
「皆も知ってると思うが戦争が起きる」
「いつ頃に悪魔軍は到着するのですか?」
ライカの質問に隣にいたルイカが話し始めた。
「悪魔軍はすでに隣国のアリストを侵攻し始めたと報告が上がったわ。
天候なんかで左右されると思うけど恐らく来るのは2週間後。その間に
君達は己がやるべき事をして頂戴。貴方達はまだ若いんだから」
ルイカのその言葉に一同は心にやることを決め部屋を出ていった。
「集君は残ってくれるかな」
「あ、はい。ゆえ、先に行っておいて」
「うん、分かった」
集はゆえに先に行ってもらい理事長室に一人残った。
「ひと先ず集君……脱いでもらおうか」
「は、はいぃ!?」
いきなり脱げと言われ集は顔を真っ赤にしたがルイカの『上だけよ』と
いう捕捉にホッとして上の服を脱いだ。
「ふふ、良いからだね」
「っ!?」
「ルイカ君、今はよしてくれ……やはり…呪いか」
集の腹部にはまだ小さいが黒い斑点があった。
「これって何なんですか?あいつは呪いとしか言ってなかったから」
「これは数ある呪いの中でも死亡率はほぼ100%の最悪の呪いだ。
ある属性の魔力にこの呪いをかけると発動しようとするだけで体中に激痛が走る」
「そんでそのたびにその斑点みたいなのが蛇の絵になっていって完全に
蛇に絵が腹部を一周して尻尾と頭がくっついたら…エンドだよ」
「ただの属性ならば他の魔法を使えば死ぬことはないが…君は特殊だ。
実質君が使えるのは獣人化とこの氷だけ…そしてこの呪いは魔力にさえ反応する。
君は氷以外の魔力はほぼ皆無だ。わずかにあるとしてもその9割近くが
氷の魔力だ。だから君は使わなくても……徐々に呪いが回っていく」
理事長とルイカの説明に集は冷や汗をかきながら聞いていると突然、
理事長室のドアが開いてゆえとライカ、アミヤ、ルーラが入ってきた。
「しゅ、集。それほんとなの?」
「集君死んじゃうの?」
「……大丈夫さ!!氷の魔法さえ使わなければ僕は死なないよ!」
「そんな笑顔で云わないでよ!!」
ライカが泣きながら大声を張り上げた。
「例え氷を使いさえしなければ死なないって言ってもその呪いは
魔力に反応するのよね!?生きてるだけで呪いが回っちゃうんでしょ!?
なんであたしたちに嘘をつくのよ!!!!!」
「…………」
集はライカの言う事に何も言い返せなかった。
理事長とルイカも何も言い返せずにただ立っているだけだった。
「……集」
「ゆえ」
パチィン!!
ゆえに呼ばれた瞬間、集は頬を叩かれた。
ゆえも皆と同じように泣いていた。
「………私の言いたい事が分かるか?」
「………ああ」
ゆえは静かにそう言うとそのまま皆を連れて部屋から出ていった。
「……この後の事をどうするかは君が決めなさい。私たちも
その呪いの解く方法を探しておこう」
「……はい」
集はそう言うと部屋から出ていった。
「……ルイカ君、私たちはなんて弱いんだろうな。生徒の一人すら救えない」
「……はい」
ルイカは涙を流し声を震わして返答するもさらに涙があふれてきた。
理事長もその小さな手で目を隠しているがしずくがツーっと落ちていた。
こんばんわ!!如何でしたか?