第5話 決闘の申し込み
「ん~よく寝た~さて、起きるとするか!」
桜ゆえの一日は5;00から始まる。顔を洗い軽く歯を磨いた後
家の周りをジョギング。そして魔法の鍛練を行う。
そして、それを30分で終わらせた後剣を15分間振るい、
今日の座学の予習を行う。
これが終わった時間に集が起きてくる。
最近はこのパターンが多くなっていた。
「遅い。何故今日は集が起きるのが遅いんだ」
ゆえは居間でイライラしながら待っていた。
何故待っているのかというと集の鍛錬に付き合う為である。
集はまだ、細かい魔法の操作が粗いためそれを
鍛練するのだが今日はいつもよりも来る時間が遅かった。
「仕方がない。起こしに行くか」
ゆえは集の部屋へと足を運んだ。
「起きろ! 集! 時間だぞ!」
ドアを強く開けると部屋から冷気が漏れてきた。
「寒いな。仕方がない」
魔法を扱うものは最も自分にあった魔法が体に
大きく影響を及ぼす。例えば雷を扱う者なら金髪で
年がら年中、静電気が起きてしまい髪を整えるのも一苦労する。
炎を扱う者なら、人よりも体温が高く冬でもそれ程
着こまなくても寒いとは感じない。
そして、氷の集は髪の色が白になりそこにいるだけで
天然のクーラーとなる。
なので部屋に溜まった冷気がドアを開けたことにより
外に漏れ出したという事である。
しかし、全員が全員、髪の色が染まったりする事はない。
案の定、集は気持ち良さそうに涎を垂らしながら熟睡していた。
「やれやれ。起きろ、集!」
「うぉ!」
ゆえは耳元で叫ぶと集はいきなりの騒音に驚き、飛び起きた。
「な、何々!? 爆発!? 地震!?」
「鍛錬の時間だぞ」
ゆえの声が聞こえたほうを向き、シュウは壁に掛けられている時計に目をやると
確かに時間は鍛錬の時間を指し示していた。
「へ? もうそんな時間?」
「ああ、とっくに過ぎている」
「ごめん。すぐに準備するよ」
「ああ」
部屋から準備を終えた集が出てくるとゆえは鍛錬場へと向かった。
「つ、疲れた」
「やはりお前は細かい操作が苦手だな」
学園の鍛錬場でゆえがシュウを見下ろしていた。
ゆえは息一つ乱れていないのだが、床に寝転がっている
シュウは額に汗を滲ませて肩で息をしていた。
ゆえ曰く、まだシュウは魔法を使い際に消費する魔力に無駄があり過ぎるらしい。
「そろそろ行くぞ」
「へ~い」
まだ疲れが溜まっている体に鞭をうち、鍛錬場から出た瞬間。
「うっりゃぁぁぁ!」
「ぐへぇ!」
突然のことになにも反応出来なかったシュウはもろに
腹部に何かをくらって地面に倒れ伏してしまった。
「あれ? ドアを蹴ったと思ったのにシュウ蹴っちゃった」
肝心のライカは笑みを浮かべながら腹を抱えているシュウを見下ろしていた。
そしてその隣にはフォレスもいた。
「ラ、ライカさん。頼むから朝からタックルしないでくれ」
後ろからライカが強烈なタックルをかましてきた。
「これでも本気じゃないわよ?」
それを聞いたシュウはかなり驚いた。
本気でないと言い張る蹴りで痛みにのたうち回るということは本気で蹴られたら
何が起こるのか……想像したくもない。
「学校はどうかしら?」
「まだ、登校して二日目なんだけど」
「良いじゃないのよ~はっはっはっはっは!」
痛みを堪えながらシュウはライカの質問に答えるが彼女は大笑いをして
シュウの背中をバシバシ叩いてきた。
「朝……うるさい……ライカ……迷惑……頭……痛い」
フォレスは朝からハイテンションなライカの甲高い声を耳をふさいで不快感を示していた。
「そう言うあんたはテンション低すぎるのよ!」
「いや、フォレスぐらいがちょうどいいんだが」
「え~」
集の切り返しにライカは不貞腐れたのか幼い子のように頬を膨らませた。
「早く行くぞ。遅刻するぞ」
「「はーい」」
「了解……」
三人はゆえに言われ、教室へと向かった。
「じゃあ、今日の連絡はお終い。授業頑張ってね」
フィーリ先生のSHRが終わり、次は集にとって初めてとなる
授業が始まろうとしていた。
「なあ、ゼロ」
「ん? どうかしたか?」
「授業って何やんだ?」
「授業は、歴史、用法、実践、研究、その他いろいろ。
一時間目はその内の用法だ。ほら、先生が来たぞ」
ゼロが指さす方向を向くと何やら白衣を着た教師が教室に入ってきて
教卓に教材を置いた。
「授業を始める」
教師のその一言から授業が始められた。
―――――キーンコーン、カーンコーン
「む。ここまでか。じゃあ、今日は終わりだ。
宿題はさっき言った通りの箇所だ。くれぐれも忘れるなよ? 特にゼロ!」
「は。はい!」
授業中寝ていたゼロが、先生の怒鳴り声で飛び起きたのを
周りのクラスメイトがくすくすと笑っていた。
「今度忘れたらみっちりしごいてやるからな」
「は、はい」
先生にそう言われ、ゼロは顔を真っ青にして何度も頷いた。
「はぁぁ~。つ、疲れた」
先生が教室から出て行ったのを確認したゼロは大きなため息をつきながら机に突っ伏した。
「全部寝ておいてよく言うな。ゼロ」
「寝るのも疲れるんだぜ? な、後でノート見せてくれ」
「良いけど、所々端折ってんぞ?」
「良いの、良いの」
そう言いながら集は先ほどの授業の板書を写したノートをゼロに手渡した。
「なら、良いが」
「さっすが集だぜ! トイレ行こうぜ」
「ん。分かった」
「にしても簡単だったな」
トイレを済ました集とゼロは廊下をゆっくりと歩きながら教室へと向かっていた。
「まあ、今は基本事項しかしてないし、俺達一年だし」
「そうだな。ん? あれは?」
ふと、彼らの目の前に多くの生徒が集まっているのが見えた。
「うわ~あれは関わらない方がいいな」
「何で?」
「よく見てみろよ。あの制服の胸の刺繍」
ゼロに言われて、彼が指さす生徒が来ている制服の胸のあたりを見てみると
確かに彼の言うとおり、何やら豪華絢爛なしシュウが施されていた。
光に反射しているあたり、何やら高価な金属で作っているらしい。
「刺繍? あれがどうしたんだ?」
「あれが付いているのは貴族って印なんだよ」
「ふ~ん」
集はゼロの言うことを半分聞き流しながら、貴族である生徒へと視線を向けた。
「お前、この俺にぶつかるとはいい度胸してんじゃないか。平民のくせに」
「す、すいません」
そこでは男子生徒が女子生徒に絡んでいるらしく、先ほどから女子生徒の方は
ペコペコと平謝りをしていた。
「このワルロス家の長男にぶつかっておいてそれだけかよ? ああ!?」
男子生徒が大きな声を上げながら壁を殴りつけると、女子生徒は肩を大きく
震わせておびえた。
「ご、ごめんなさい。で、でも急に貴方が出てきたから避けきれなくて」
「ああ!? この俺がわざとお前などにぶつかったとでもいうのか!?」
男子生徒は女子生徒の言ったことに腹が立ったのか先ほどよりも大きな声をあげて叫んだ。
(な?やばいだろ?)
(ヤバいというか、ワルロスって奴名前にワルってあるから外見も悪そうだな)
集の言うとおり、ワルロスという男性は金髪で高そうな貴金属などを
大量に身に着け、胸が見えるくらいに制服を着崩していた。
(お、お前! くくくくく! わ、笑かすなよ!)
(ぷくくく! だって、見るからに悪そうだろ)}
(くくくく! 我慢だ、我慢だ!)
集の言ったことにゼロは笑いのつぼに入ったらしく、
必死に口を手で押さえて笑い声を我慢していた。
「貴様分かっていないようだな。貴様そこで脱げ」
「え?」
(あ?)
ワルロスという男が言ったことに女性生徒も集も頭に疑問符を浮かべた。
「聞こえなかったか? 脱げと言っている」
「い、嫌です!」
「ほう。平民の癖に貴族の言う事が聞けないのか!」
ワルロスという男子は何の躊躇いもなく女子生徒に手を振り上げた。
「貴様、何の真似だ?」
「こっちが聞きたいね。貴族の男子がか弱き乙女に手を挙げていいの?」
ワルロスが女子生徒を殴ろうとした腕を集が当たる寸前で掴んで止めていた
「ふん。そんな奴生きていても変わらないだろう」
「あ? 何つった」
ワルロスが言ったことに集はいらだちを感じ始めた。
「聞こえなかったか? 貴族でもない奴が生きていても
意味がないと言っているんだ!」
その一言で集の中で何かが切れた。
―――――バキィィィィ!
「ぐうぇ!」
『―――――っっっ!?』
突然、集がワルロスの顎を殴ったことに周りで見ていた生徒たちは各々、驚きに顔を染めた。
「貴族の何が偉いんだ? こら!」
「な、何だと?」
「お前らは何をしたんだ!?
「お前は人に凄いといわれる事をしたのか!?
てめえらはただ単に威張ってるだけだろうが!!」
「き、貴様! 俺を侮辱する気か!?」
「お前がこいつを侮辱したんじゃないのか?」
「貴様! 決闘だ!」
続いてワルロスが言ったことに、さらに周りの生徒たちは驚きに顔を染めた。
「ああ、良いぜ」
「ふん! 後悔するなよ?決闘は明後日の闘技場で行う!
それまでに精々鍛錬でもしてろ! ふはははははははははははは!」
大声で笑いながらワルロスはその場から去って行った。
その後、何も起こらず平和とは言えないものの時間は去って行った。
「集!」
放課後、一人で帰っていると後ろからゆえの声が聞こえ
振り返るとゆえとルーラ、そしてライカがいた
「ん、ゆえか。どうかしたのか?」
「どうかしたのかじゃない! 何であんな事をしたんだ!?」
「あんな事?」
集はゆえが怒鳴っている内容に心当たりが全く思い浮かばなかった。
「今朝の事だよ。集ったら貴族を殴ってさらに決闘まで
受けたんでしょ? 学校中の噂になってるよ?」
ルーラがそう言うと集はようやく、思い出したらしく両手を叩いた。
集の中ではあのことはそんなに重大なことではないらしい。
「いいか!? 今の君の実力は」
「まあまあ、ひとまず落ち着きなってゆえ」
「ライカ……だが」
ライカに落ち着くように言われ、ゆえはひとまずは怒鳴るのをやめたが
それでも何か言いたそうな表情をしていた。
「面白そうじゃない」
「……もういい」
ゆえは大きなため息をつきながら一足先に家路についた。
こんばんわ、ケンです!!!
如何でしたか?
感想もお待ちしております!!
それでは!!