第46話 永遠の闇の空間
「ここは?」
ルーラは気づくと奇妙な空間にいた。当たりは何もなく明かり等も当然ない。
すると奥の方からツイヤが現れた。
「ようこそ、永遠の闇へ。闇の人なら知ってるわよね?」
「ここは永遠の闇の空間。使用者は発動する際
何かを軸として発動し、それが消滅すると消える永遠の闇」
「そ、大正解。よく知ってるわね」
「これでもランカーだから」
しかし、動いているのはツイヤとルーラの二人だけであり
集とアークは全く動けないでいた。
「それよりも貴方が軸とした物はなんなの?」
すると突然、ツイヤが笑い始めた。
「ふははははははは! 何言ってんの!?
そんな物決まってるじゃない! 私の命よ」
それを聞いたとたんルーラは叫びだした。
「それを軸として発動したら殺すしかこれを解く方法はないじゃない!」
「ええ。それが良いのよ」
「え?」
それを話すツイヤの目は先程と比べ若干、濁っているようにも見えた。
「私が死ぬかもしれないこのスリル! たまらないわ!」
ルーラは目の前のツイヤの姿に嫌悪感どころか
吐き気すら感じてくるほど異常で狂っていた。
「結構! 狂っていようがいまいが関係ないわ!
誰かを殺すことができればそれで良いのよ!」
ツイヤは闇で刀を形作るとルーラに切りかかるがルーラも
同じく剣を形作りそれを防いだ。
「やるじゃない。これならどう!?」
ツイヤがそう言うと地面から何か手の様なものが
ルーラの足首をつかんだ。
「な、何これ!」
ルーラは驚きながらも剣でその腕のようなものを
切断するが大量に地面から何かが湧き出してきた。
「闇の兵士。この空間では私は
無限に作りだす事が出来る。貴方は私に近づけるかしら~?」
ルーラは斬っていくが斬っても斬っても地面から
這い上がって来てキリがなかった。さらに奥の方からも
無限に生み出されていった。その一体がルーラの腕を掴むと
剣を弾き飛ばしもう片方の手も兵士に掴まれてしまい
動けなくなってしまった。
「しまっ!」
「さようなら~」
大量の兵士の剣がルーラめがけて落とされていった。
その光景をルーラは何も出来ずただただ見ている事しか出来なかった。
{嫌だ、死にたくない}
ルーラの頭の中には恐怖という感情で支配されていった。
ルーラはもう無理だと思い目をつむった瞬間に誰かに
後ろから抱き締められた感覚がした。すると、兵士たちの動きが止まり
奥からはツイヤの驚きの声が聞こえてきた。
「な、なんなのよ!? これは!」
よく見てみるとツイヤの右腕が完全に凍結しており
それにより魔力が一気に削がれて兵士たちを動かすのが
止まってしまった。
「遅いよ、バカ」
「ごめんごめん」
ルーラを後ろから抱き締めていたのは集だった。
既に獣人化は解けておりいつもの髪の長さをしていた。
「き、貴様! なぜ動ける!」
「あまり言いたくないけど……俺は氷の魔法を使うんだよね~」
「――――――っ!」
ツイヤの顔が驚愕の色に染まった。ツイヤは事前にランカー達の
魔法を調べておりどの人物がどの魔法を使うかを完璧に記憶し
対策を講じていたのだが、一人だけ魔法が分からない生徒がいた。
それが集だった。どんな方法を使っても集だけは魔法に関する
情報を得られず見つけたとしても単なる噂でしかない為
確証が得られず対策は集だけ講じていなかった。
その事が今回、仇となったのだ。
「でも、なんで最初の時動けなかったの?」
ルーラは不思議に思い集に聞くと
集は笑顔でこう言い返した。
「あの時は獣人化をしていたからだと思う。この中で動けるのは
闇の魔法を使う者、そして失われた魔法を使う者のみ。だから俺は
獣人化を解いて動けるようになったんだ」
「そ、そうなんだ」
「ん? どうかしたの?」
いつものようにはきはきとは喋らず歯切れの悪い喋り方に
疑問に思った集が顔を見てみるとルーラは顔を真っ赤にしていた。
「そ、そろそろ離してくれないかな?」
「あ、ああごめん」
集は離れるとルーラは体を抱きこむようにして
隠すと集にこういった。
「エッチ」
「な、なんで!?」
「よくも! 良くも私の腕を! 殺してやる!」
「そう言う訳にはいかない」
集が刀を振るうと巨大な氷の斬撃がツイヤに向けて放たれた。
ツイヤは避けようとするが腕が凍っている為動けず、闇の兵士を
大量に生み出し壁がわりにしたがそんなものでは集の斬撃を
止められるはずもなく兵士を凍らしながら
ツイヤに向かっていった。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
斬撃が直撃し辺り一帯が氷結するとともに
闇の空間が解け、中に光が差し込んできた。
「やったね! 集!」
「あいつ斬撃が当たる前に空間を解除してどこかに逃げたんだよ」
「でも、良いんじゃない。一件落着!」
「ああ、そうだな!」
二人は笑顔で言い放った。
「はあ、はあ」
その頃、命からがら逃げのびたツイヤは徐々に
体が氷結していく苦しみに襲われながらもある人物がいる地点にまで来ていた。
それは、二人をここにまで連れてきた幹部だった。すると目の前に
その目当ての幹部が現れた。
「ああ! フィリス様! 分かりました! 氷の魔法を使う者が!」
「そう、それでその人物の名は?」
「そ、その前にこの氷をなんとかしてください! そうしないと凍りついてしまいます!」
その言葉を聞いたフィリスは一瞬、顔をゆがめるもののすぐに笑顔になった。
それにつられツイヤも安堵から笑顔になった。
「よく頑張ったわね」
「フィリス様」
「このまま眠りなさい」
「え?」
フィリスはそのままツイヤを助けず背を向けた。
「な、何故ですか!? なぜ助けてくれないんですか!」
「負け犬に用はないわ。貴方の代わりなんかいくらでもいる。
さようなら、氷の中で永遠に眠ってなさい」
「そ、そんなフィリス様! フィリs」
フィリスの名をもう一度叫ぼうとした瞬間にツイヤは完全に凍りついた。
「悪いけど貴方達には監視用の寄生虫を寄生させているから
その時の映像はすでに見てるわ。貴方達は所詮、捨て駒なのよ」
フィリスは冷たい笑みを浮かべながら暗闇へと消えていった。
こんばんわ~。今日は眠いのでここまでにします。
御休みなさ~い。