第4話 初めての登校日
それから、一週間ほどたったある日の朝。
学校の施設の一つである闘技場で二人の人物がいた。
ゆえと集である。
「ふむ。ではやってみろ」
「ああ。行くぜ!」
―――――パキパキパキッ
集が地面に手を置くとその箇所が徐々に凍り始めていき
最終的に巨大な氷の花を咲かせた。
「うむ。前に比べるとムラもなくなって
威力も安定している。それに疲労も少なくなった」
「そうか?」
集はゆえの言う事に何か不満そうな表情を浮かべていた。
「どうかしたのか?」
「あ、いや別に」
ゆえに尋ねられた集はすぐにいつもの表情を浮かべて彼女を見た。
「そうだな。だが、まだ鍛練しないといけないぞ」
「ああ、次やろ……」
―――――ドッシャァァァン!
集が言おうとした途端に訓練場のドアが蹴り破られた。
「おっはよーーー!」
「おはよ」
「……おはよう……」
「おはよう♡」
闘技場に入ってきたのはフォレス、ライカ、ラナの三人の美少女達だった。
「ああ、皆おはよう」
「おはよう」
二人も三人に挨拶を返した。
ゆえは三人の姿を見てハッと何かを思い出したような表情を浮かべた。
「こいつらがいるという事は……もうすぐ、始業の時間か!」
「違う違う。今日は私たちも早めに来ただけよ、ゆえ」
ゆえの言った事にラナが苦笑いしながら否定した。
普段からこの三人が来る時間帯は非常に遅く、遅刻ギリギリの時間帯にいつも来る。
集とゆえもそこで鍛錬を終え、闘技場を出た。
「ここか~理事長室は」
鍛錬を終え、闘技場を出た集はゆえに理事長室へ行けと言われ、渡された地図を見ながら
部屋を探していき、理事長室の大きな扉の前にいた。
「失礼します」
「は~い」
集が入るとそこには小さな子供がいた。
「間違えたか?」
「合っているぞ~私がこの学校の理事長だよ~」
集は少しばかり驚いていた。
理事長といえば厳格なおじさんが座っている者だと思っていたらしい。
「理事長!」
「あ、やばい!」
すると理事長は集の後ろに隠れてしまった。
その後に若い女性が理事長室に入ってきて辺りをキョロキョロしていた。
「あ、あれ? 君、理事長知らない?」
「ええ、知りませんが」
「そう、ありがとう」
女性が集にお礼を言い、理事長室からそそくさと出ていった。
「もう良いですよ」
「ふ~すまないな。君が如月集君だね?」
「はい。え~と本当に理事長?」
集が膝を曲げてしゃがみ込み、小さな少女を見下ろした瞬間だった。
「そりゃ!」
――――ゴチィィィン!
「ぐえ!」
突然、顎に痛烈な頭突きを貰った。
「ふん! 初対面の人にそれは無いのではないか?」
「す、すみません」
集は痛む顎を摩りながら理事長と豪語する少女に謝った。
「まあ、良い。もう慣れたしな。さて、君のクラスなのだが」
「はい」
「ああ、その前に言う事があった」
突然、何かを思い出したのか話を中断し、集の手を見た。
「君の魔法なのだがね」
「はい」
「出来るだけ、使わない方がいい」
「何故ですか?」
集は理事長が言った事に疑問を抱いた。
この世界の住人は魔法が使える。なのに何故、集だけが魔法を使うなと言われるのか。
「君の魔法は氷だったね?」
「ええ、まあ」
「それは今の常識では有り得ない魔法なんだ。
まあ、昔は常識だったみたいだがね。
それに、今は不穏な動きを見せる輩もいるからね」
理事長が言った事に集は少し、頭の中で情報を整理した。
「分かりました。出来るだけこれは使いません。
でも、誰かの命が関わってるときは使いますよ?」
「ああ、そこら辺の判断は君がするといいさ」
「はい、それでクラスは?」
「ああ、すまない。クラスの方は選ばせてあげよう」
「へ?」
集は理事長が言ったことにまたまた、疑問符を頭の上にたくさん浮かべた。
「実はなこの学校の入試・編入試験で優秀な成績を
取った者にクラスを自由に決める権利を与えているんだ。
そこで、君は全教科満点だ」
「まじですか?」
「まじです。何組が良いんだ?
ちなみに上から優秀な輩が集まっているぞ」
理事長はポケットから丸められた紙を取り出し、近くに置かれている
机の上に広げるとそれはクラス表だった。
広げられているクラス表には全部で10クラスが書いてあった。
「………だったら僕は8組で」
「ふむ。何故だい? 君の実力ならば余裕で1組に入れるんだがな」
「何となくです。それに僕って上ら辺のクラスって嫌いなんですよね」
集は苦笑いを浮かべながら理事長にそう言った。
「ふん。分かった。では、君は8組の29番だ」
「分かりました。それで、担任の先生は?」
「ああ、担任は」
「私ですよ。集君」
後ろから声をかけられ、振り向くとそこにいたのは編入試験で戦ったフィーリだった。
「フィーリ先生!」
「おはよう。じゃあ、行きましょうか?」
「はい!」
こうして集は8組に在籍する事になった。
「じゃあ、私が言ったら入って来て頂戴」
「分かりました」
先にフィーリが入っていくと先程まで騒がしかった
教室が静かになり号令が響いた。
「おはよう、皆」
『おはようございます!』
「はい。じゃあ、SHRを始めるわね。まずは皆
長期休暇はどうだったかしら?
今日から心機一転してやっていきましょうね」
「先生は男、出来ましたか?」
「……成績を10段階ほど落としておこうかしらね」
「す、すみませんでした!」
いきなり、フィーリの声が低くなりペンで何かを書く音が聞こえてきて、教室から笑い声が響いた。
「それよりも今日はビッグニュースがあるわよ」
「もしかして先生が30代に入ったとか?」
「……来年は留年かしらね」
「す、すみませんでした」
先程と同じ生徒に質問されたのかフィーリは
怒りながらも悲壮感を漂わせた声音でそう言った。
「そうじゃなくて今日は転校生よ!」
フィーリがそういった瞬間、教室の中から歓声が聞こえてきた。
「じゃあ、入って来て頂戴」
そう言われ集はドアを開けて入っていった。
「「「「………」」」」」
「え~如月集です。分からないことだらけですが、よろしくお願いします」
特に問題は起こらず、フィーリに言われた座席に座ると、いきなり隣の男子が話しかけてきた。
「よっ、俺はゼロ。よろしく」
「あぁ、よろしく」
その後、ゼロを通してクラスのみんなと会話をいくつか交わした。
そして、始業式も終わり授業は明日からという事で今日は午前中には帰宅となった。
「ん~眠」
「おお、いたいた」
「ん? ゆえか」
「私達もいるわよ~」
集が欠伸をしながら歩いていると後ろから声が聞こえて振り向くとゆえが立っており、
さらにゆえの後ろからひょこっとライカとルーラ、そしてフォレスが現れた。
「ねえ~集って何組なの?」
「僕は8組だよ」
集の答えにルーラは不思議そうな表情を浮かべた。
「ふ~ん。集なら1組に来ると思ったのに」
「ま、そういうこともあるさ。帰るぞ」
ゆえの一言で会話が締めくくられ、集は彼女たちと喋りながら家路についた。
「おい、見たか今の奴」
「ああ、見た」
「あいつ一組じゃないよな?」
「ああ、カスクラスの癖に我らの姫たちと対等に話している」
「これは報告だな」
集が1組で、姫と呼ばれている女子達と一緒に帰っている光景を
恨めしそうに見ていた事に気付かずに笑いながら集は帰っていった。
こんにちわ!!ケンです!!
如何でしたか?
一時創作は難しいですね。
こんな作品をお気に入り登録してくださった
方には感謝です!!
感想もお待ちしておりますので。
それでは!!