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番外編2  過去

「オギャー! オギャー!」

今この世界に一つの新たな命が産み落とされ大きな産声を上げた。

ここはある村はずれにある小さな診療所。分娩室のような部屋の中には助産師さんが数人と

その赤ん坊の母親が一人いた。母親は疲れているのか額に汗を流しているが

顔色もよくいたって健康の様だ。

「生まれましたよ! 元気な男の子です!」

一人の助産師がその子の母親に男の子を抱かせた。

「ふふ、元気な男の子。さっきから服をぎゅって掴んでる」

母親も嬉しそうに顔をほころばせていた。

赤ん坊は母親に抱かれると分かっているのかさっきまで泣いていたのに

今はピタッと泣きやみ母親の胸の服をぎゅっと掴み、すやすやと眠っていた。

「あら本当。力強い少年ね」

「名前はもう決めたの?」

一人の助産師が母親となった女性に質問すると母親は満面の笑みで答えた。

「ええ、この子が私のお腹の中にいるときから決めていたの。この子の名前は」




「ん?」

集はあまりにも暑苦しくて目を覚ましてしまった。まだ、空は暗い時だった。

「夢か……なんていうか懐かしい気分だったような。……なんだっけ?」

集は汗を吸収し湿っている服を脱ぎタンスから新しい服を出してまた、横になった。

「ここに来てからいつも懐かしい気分になる夢を見るな~」

集はこの世界に来てからというもの毎晩懐かしい気分になる夢を見るのだが

思い出そうとするといつも内容を覚えていないのだ。

唯、懐かしいという気分がそこにあるだけだった。

「ま、いいや。寝よう」

集は再び夢の世界へと落ちていった。




翌日、集は生徒会の仕事の一環で図書室にゆえと一緒にいた。

新たな本を数冊買いたいという事で予算の話をしているところであったが

集には全く分からない為、話が終わるまでぶらぶらと歩いていた。

この学校の図書室はとても広く本の冊数も多いため大きな施設の一つになっていた。

置いてある本のジャンルは多種多様で魔法史から魔法の扱い方、原理についてなど

色々な種類の本があった。

「それにしてもここはデカイな~本は多いし」

集は歩きながら本を見ていると気になる本を見つけ手に取った。

(魔法革命か……確かこの時代は今まで戦闘にしか使われなかった魔法を

日常に持ちこみ急激に成長した時代だっけ。確か魔法の種類も

この時代に確立されたはずだな。後原理もか)

パラパラとめくってみると難しく書かれていた。

すると最後の章に失われた魔法について書かれていた。

「失われた魔法……それは発展の途中で使用者がいなくなったもしくは不必要と

認定され強制的に廃絶に追い込まれた魔法の事。色々あるがその中で

最も凶悪とされたのが……氷だと!?」

集はその分を見たとき思わず声を荒げてしまった。

「どうしたんだ? 集」

話し合いを終えたゆえと図書担当の教師がいた。

「あ、ああ悪い。なあ、氷の魔法って何で消えたんだ?」

その質問に教師が答えた。

「氷の魔法は今から大体30年くらい前に起きた魔族と人間の戦争で

魔王を封印したって言われている魔法なの」

「じゃ、じゃあなんでその魔法が」

「その直後に魔法革命が起きて人々は魔王おも倒してしまうその魔法を

恐れてその使用者を消したのよ」

「その人は死んだのですか?」

ゆえが教師に質問を割り込ませた。

「分からないわ。それを調べていた文献もその時代に抹消されてるし

真実は闇の中に葬られたのよね~」




それから図書室を出て生徒会室で二人でまったりとしているとゆえが

先程の話について聞いてきた。

「集」

「なに、ゆえ」

「私は氷の魔法が凶悪だとは思わない。少なくとも集が

使うのであれば私は貴様を信じる」

「ああ。ありがとう」

「うむ、では仕事の続きをしよう」

「うん」

集は仕事をこなしながらも頭の中ではある事を考えていた。

それは精神世界であった女性の事だった。

彼女は初代の氷魔法の使用者だと言ったが魔法革命時代で氷の使用者は

既に途絶えているとされている。つまり、彼女がその人物ではないかと。

(あの人に抱きしめられた時、感じたのは向こうで母さんに抱きしめられた時と

どことなく感じが似ている気がした。……違う! 母さんは、俺の知っている

母さんは一人だけだ!)




その頃とある場所にて……

「失礼します。マスターハデス」

「どうかしたか」

部屋にはマスターハデスと女性が一人いた。

女性は美しい腰に届きそうなくらいの長さの黒髪をしていた。

「実は近々、シルバロン高等学校が森で大規模な戦闘を行うようです」

「ほう、それで」

「少し動いてもよろしいでしょうか」

「構わん。今の私は何も出来ぬ。好きにするがよい」

「ありがとうございます」

女性は一礼した後、部屋から出ていった。





「コルソ」

「何でしょうか」

女性の後ろに突然、大きな鎌を持った男性が現れた。

「今から3日後に私が指定する森に行きなさい」

「そこで何をすれば」

「好きに暴れなさい。恐らくそこに氷の魔法を

使うものが現れる筈よ」

「現れた場合どうするれば」

「捕えなさい。生きていればいいから」

「かしこまりました。必ずや貴方の期待にこたえて見せましょう」

男性は再び突然消えた。

「ふふふ、楽しくなるわね」

女性は笑いながら歩いていった。

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