第2話 目覚めの時 Wake up!!!
「ん~良く寝た。さてと起き」
―――――ドオオォォォン!
ゆえが起きようとした瞬間、大きな家が揺れるほどの大爆発が起きた。
「な、何だ!?」
「大丈夫!? ゆえちゃん!」
ゆえの母が慌ててパジャマのまま、走って来た。
「うん。私は大丈夫だけど何が起こったの?」
「分からないわ、庭の方で何かあったみたいだけど」
「私が行ってくる」
「……気をつけてね」
「うん」
ゆえは敵という可能性も捨てきれないという事で黒いマントをはおり刀を持って庭に出た。
「……切っていいか?」
「だ……め……に……きま……てんだろ」
ゆえは警戒しながら庭を突き進んでいくと中央あたりに
大きな穴が開いていた。
ゆえは刀を抜き、慎重にその穴に近づいていき
覗き込むとそこにはボロボロの集がいた。
「一体何をしたらあんな爆発が起こったんだ?」
ゆえはそう言いながら集に手を貸し、穴から引きあげた。
「いや~実はさ、昨日、書庫の本、全部読み終わったからさ。
俺も魔法をしてみようと思ってさ」
それを聞いた瞬間、ゆえは驚きを隠せないでいた。
あの書庫には数万冊もの本が保管されており、とても一日では読める量ではなかった。
それに加え、シュウはまだこの世界に来てから一週間もたっておらず、この世界の
言葉すら知らない。非常に信じがたい話だった。
「うん、そうなんだけど何故か読めたんだよ。
まあ、本読むの好きだし読む速さも自信あるし。そんで実践したら爆発した」
「まあ、良い。集、一度やってみろ」」
「ああ。いくぜ!」
―――――パアァァァァン!
集が掌をかざすとそこから炎が出たことには出た。
―――――――が音だけがデカイ爆弾みたいな魔法だった。
「うお!」
思わず集は耳を両手でふさいだ。
一方、ゆえはそれを予期していたのか集よりも先に耳をふさいでいた。
「ふむ。炎はダメと、よし次だ!」
「お、おう! 次は水だ!」
もう一度、魔法を発動すると今度は蛇口から出る水みたいに
指から水がチョロチョロと出てきた。
「……次行こうか」
「うん……」
あまりのショボさにゆえは何も言えず、ただただチョロチョロと流れ続ける水を眺めていた。
二人の間には何とも言えない空気が流れる中、魔法は続けられた。
「君はある意味凄いな」
「………」
ゆえの眼下にはところどころ焦げている服を着た集がいた。
彼の周りにはヘナヘナに萎れたツルが倒れており、さらには
どこから出てきたのか分からないがらくたがあった。
「雷を出せば感電し、自然を使えばつるが自らを縛り
無機を使えばがらくたが出て、肉体強化を使えば豚みたいなデブになった」
「仰る通りです」
集は乱れた服をただしながら立ち上がった。
「つまり君は今のところはどの属性の魔法も
使える事は使えるが実践には無理という状態だ」
闇と氷という属性も残ってはいるが闇は魔族しか使えず、氷は
とうの昔に根絶したといい伝えられ、今では机上の空論となっている。
「集」
「何~?」
「学校に行ってみてはどうだ?」
「は? 学校?」
集はゆえの口から出てきた言葉に少し驚いた。
「ああ、そうだ。学校に行けば自分の魔法が分かるかもしれない」
そう言われた集は少し腕を組んで考え始めた。
行くといえば自分の分まで学費がかかるだろう。
借りるとしてもこれからこの世界で金を稼いでいけるかも分からない。
「ちなみに学費の事は気にするな。二人分の学費くらいは出せる……お父様が許してくれればだがな」
とりあえず、魔法を行使するのはこの辺で切り上げて集の服を買いそろえたり、
ゆえの父親が帰ってくれば学費について話したりした。
かなり説得するのに時間がかかったがどうにか、学費を払って貰えることになった。
「ふぁぁぁぁ~」
「おいおい、本当に受験生か?集」
一週間後の朝、集とゆえは受験会場となっている学校へと向かっていた。
「眠いものは眠いの。それで、ここが」
「そうだ。ここが私が通ってるシルバロン魔法高等学校だ!」
集の目の前には大きな校舎が建っていた。
さらに施設も充実しているのか購買や食堂、そして闘技場の様なドーム、
学生たちの宿舎の様なものまでがあった。
すると二人の前に一人の女性が突然現れた。
「うぉ!」
集は突然、女性が現れたことに驚いてしまった。
「はじめまして。貴方が如月集君ね?」
「はい」
「私は今日一日、貴方の試験官を務めるフィーリ・ブリュッセルよ」
「よろしくお願いします」
「ええ、よろしくね。早速会場に行こうか。桜さんも来る?」
「はい!」
集とゆえは試験管のフィーリについていき校舎の中へと入って行った。
二人はフィーリに連れられて試験会場に案内された。
「まずは今日の日程を説明するわね。この編入試験は一日を通して行われるわ。
まずは一次試験の筆記テスト。次に二次試験の身体能力を計る実技テスト。
最後に魔法戦闘を見る実技試験。質問は無いかな?」
「はい」
「よし、なら始めよう」
「がんばれよ! 集」
「ああ、任せろ」
ゆえの激励を受け、集の受験が始まった。
数時間後、ゆえが待っていた教室に疲労の色を
浮かべた顔の集が部屋に入ってきて椅子に座った。
「どうだった?」
「まあまあだったかな。ひとまずは埋めたけど」
集はゆえの母親に作ってもらった弁当を食べ、お昼時間をゆえと共に過ごした。
お昼時間が終わる時間になり、集はイーリがいる場所へ来ると先程とは違う格好をしたイーリがいた。
その服装は教員が着る制服とは違うものらしく、動きやすい恰好だった。
「お疲れ様。これで最後よ」
「はい」
「内容は私と全力勝負よ」
「はい!」
集の威勢のいい挨拶が響いた瞬間、最後のテストが始まった。
別室でゆえが二人の勝負を観戦していた。
しかし、その内容はフィーリが圧倒的に有利な状況だった。
(まずいな。今の集はまだ魔法をキチンと使えていない。
それに自分にあったものも未だに分からない)
ゆえが考えていると後ろから何人かの人物がやって来た。
「お、やってるやってる」
「珍しいな。貴様らが見に来るとは」
後ろを振り向くとそこには5人の少女と1人の少年がいた。
「別に良いでしょ? 私達も見に来たいときもあるわよ」
金髪で露出度がかなりきわどい服を着た少女がゆえに向かって話しかけた。
「いい加減貴様のその破廉恥な服はやめろ。目に毒だ」
「あら。これでもスタイルは抜群よ~」
金髪の少女が言うとおり腰はかなりくびれており
胸もかなり大きく顔も整っており軽く化粧をしていた。
「ゆえ……正解……貴方……凄く……破廉恥」
緑色の髪の毛に身長は少し低めの少女が単語だけを発して会話に入ってきた。
できれいというより可愛いという言葉がぴったりだった。
「彼……噂……人物」
「ああ、そうだ。彼は」
ゆえが言いかけた時、少年が口をはさんだ。
「如月集。生年月日・身長・体重・年齢と共に
不明な少年だ。俺でも名前しかわからなかった」
「へ~この国一の情報通と謳われるあんたでさえ
分からないなんてね。ミステリアスで良いじゃない」
少年は服にかなりのチェーンを巻きつかせ動くたびに
じゃらじゃらいっていた。
「中々かっこいいじゃない」
モニターに映し出されている戦いを見ながら
そう言った少女は青い髪の毛をしていた。
「………」
何も喋らず黒髪で腰ぐらいまでの長さの髪を持つ少女が戦いの様子をじっと見ていた。
「なあ、何であいつ魔法使わねえの?」
「私……不明……回答……要求」
「ああ、集は、そのだな」
「魔法が使えない、いやまだ眠っているのか」
ゆえが返答に困っていると部屋に一人の少年が入ってきた。
その瞬間、場の空気が一気にピリピリしたものに変わった。
「へ~貴方が来るなんてね。今日は大雨の日かしら?」
「悪いが俺は雨男ではない」
部屋に入ってきた少年の髪の色は六色にも分かれていた。
「何故その事を?」
「何となくだ。貴様らも感じているんだろ? 未だ感じたことのない気配を」
「「「「…………」」」」
ゆえの質問の答えを聞いた全員は少年が言ったことを実際に感じているのか
何も言わずに、黙ってモニターに視線を移した。
「はあ、はあ」
「どうして魔法を使わないの?」
「さあね」
集は威勢のいい声を出すが既にボロボロだった。
教員という事もありイーリの繰り出す魔法はどれもギリギリでかわせるくらいの
威力でほとんどを掠りながら避けていた。
「余裕をこいてる訳でもなさそうね。次行くわよ!」
「くそ! うぉ!」
集が避けようとした時に地面が先程の水の魔法で
濡れていたために足を滑らせてしまい転んでしまった。
「隙ありよ!」
フィーリがその隙を逃す筈もなく、大きな炎の
球を作り集にぶつけた。
その光景を彼女たちも見ていた。
「あ~あ。残念、これで彼も終わりかしらね」
「私……同感」
「終わったわね。帰ろうかな」
三人の少女が戦いは終わったと見て、帰ろうとした。
「待て。これからだ」
「「「―――――?」」」
六色の髪色を持つ少年に呼び止められ、不思議そうな表情を浮かべて再びモニターに視線を移した。
「さあ、見せてみろ。お前の魔法を」
(あちゃ~やりすぎちゃったかしら?)
教員は滅多に誰かと戦闘を行わないので
久しぶりの戦闘にイーリは思わず一瞬だけ全力を出してしまった。
(でも、これであの子は……寒!)
突然、イーリと集が戦っていた試験会場の気温が一気に下がったのか
空気が冷たくなり、彼女の吐く息が白くなっているのが肉眼でも見えた。
「一体何がどうなって」
イーリは震える体をこすって温めながら視線を前に移した瞬間、
信じられないような光景が入ってきた。
「こ、氷?」
イーリの目の前には巨大な氷柱があった。
おはようございます! ケンです!
如何でしたか?
今日確認したらアクセス数がまさかの14でした。
確認したとき、まじで?と思いました。
まあ、二次創作とは違って一次創作は
ヒットしにくいですからね~
感想もお待ちしております!
それでは~