第27話 マジックフラワー
二人が戦っていた広い広場は既に原形を留めておらず、各所に大きい穴が開いており
さらには、大きな氷山の様な物までいくつもあった。
その数は現在進行形で増えている。
「ふん!」
マグナが魔力を流し込み強化した足で集に蹴りを入れようとするが集は
それをかわし刀で切っていく。先ほどまで傷が少なかったギルスの体には
切り傷が次第に刻まれていった。
「くそ!」
ギルスは一旦、空高く上がり距離をとるが集は獣人化にさらにバーストを
足している為、距離など無いに等しいものだった。
「今の俺に距離など関係ない」
「い、いつの間に」
「はぁぁぁ!」
集が刀を振るうと氷の斬撃がマグナに直撃し地面に叩きつけた。
「まだだ!」
先程の斬撃を細かく撃ちだしまるで、氷柱が雨の様に降り注いでいるように見えた。
「舐めるなぁぁぁぁぁぁぁ!」
マグナは氷柱を一つ一つ衝撃波をぶつけ粉砕していくと氷の結晶がキラキラと舞った。
「こんなもの痛くも痒くもない!」
「氷は痒くはない」
集はマグナに向けて開いた状態の手のひらを向けて、握ると
先程のマグナに付着していた結晶がその部分から
氷の花を次々と咲かせていった。
「くそ!」
マグナはその氷を砕き割り侵食をとめた。
「終わり?」
「まだに決まって、げほぉ!」
「――――っっ!?」
マグナが集に向かおうとした瞬間、突然マグナの顔に斑点がいくつも
浮かび上がって来て吐血し始めた。
「な、なんだこれは!?」
その斑点はものすごい速度で体中に増えていった。
「マジックフラワーの副作用か何かだろう」
「こんな副作用は聞いた事は無い!」
マグナはポケットから非常用に常備していた小瓶に入った
液体を飲み干すとその斑点は徐々に納まっていき魔力が増大していった。
「はははは! 最高だ! この感覚は! だが、こんな物じゃ足りない!」
マグナはさらに複数の小瓶を取り出し飲み始めた。
それに伴い魔力は増大していった。
「止めておけ。死ぬつもりか?」
「俺は死なない! この世界は腐っている!日々、夢の効能を持つ製品や花などが
次々と規制を受け、しまいには絶滅させようとまでしている!
何故、貴様らはこんなにも素晴らしい物を排除しようとするんだ!」
「当たり前だ。力を無理やりに上げる物など
この世にあってはならない。力は自分で上げるものだ」
「それは貴様らが勝者だからだ! メリットがあればデメリットが
あるように勝者がいれば敗者もいる! 敗者はより強き力を求める!
魔力も同じだ! 貴族とて平民より上でも貴族の中では屑と蔑まれるような
量しか持たない者もいる! この俺の様にな!」
「なら、一つ聞くがお前は努力をしたのか?」
「何!?」
マグナは集の発言に大声を張り上げてどなり散らした。
「例え魔力が少なくても戦い様によっては強者を倒すこともできる。
お前はその努力をしたのか?」
「努力など無駄だ! この花の様に何もせずに力を上げるものこそ
今必要なものだ! 努力など時間の無駄だ!」
―――――バキィィ!
集はその言葉を聞きマグナを殴りつけた。
「ぐぅ!」
「努力が無駄だと? ふざけるな! お前に何が分かる!?
確かに、努力しても得られるものは全て嬉しいものではないのかもしれない。
だったら、見方を変えればいい! 努力の仕方が悪かったのかもしれない!
本当は自分には向いていない事だったのかもしれない! それを探すのが努力ってもんだろ!
努力もしていない奴が努力をしている奴を否定する権利はない!」
「努力など俺は認めん! 力さえあればいいのだ! 力さえあれば、
他者を圧倒できる力さえあればそれで構わん!」
マグナは強化した脚力で地面を強く蹴ると、その衝撃で
高く跳びあがりある場所へと向かった。
「待て! 逃がすか!」
集は翼を生成しマグナを追いかけていった。
「ここだ」
マグナは花々がたくさん咲いている庭園の様な場所に降り立った。
「何をする気だ!?」
「そこで、見ていろ! これが力だ!」
マグナは突然、草花を引きちぎりそのまま食べ始めた。
「な!」
その光景に集は言葉を失った。
マグナは狂ったように花々を引きちぎっては食べ、また引きちぎっては食べていた。
ふと、辺りに甘ったるい香りが漂い始めた。
「ん? ……この匂いは、まさか、マジックフラワー!?」
辺りを見渡すとマジックフラワーの特徴である茎にとげの様なものが
無数に生えているのが見えた。
その庭園はギルス家が密かに裏のルートで売るために
栽培していた場所だったのだ。
「させるかよ!」
集は食べさせるのを止めさせる為に高速で近づくがマグナが
辺りに衝撃波を飛ばし吹き飛ばされた。
「ぐぁ! おい、止めろ! それ以上、食えば精神をなくすぞ!」
マジックフラワーの摂取方法は花びらを収集しそれを2日程、
冷凍し凍らした物を粉末状になるまで
すり潰し、お湯で5000倍に希釈するのが一般的と言われているが
稀に欲望が暴走し花のまま食べると魔力は格段に増大するが
依存度が遥かに上がり人間ではなくなると言われている。
それをマグナがしているという事はすでに彼には人間の感覚は無い。
「くそ!」
集が地面に手を置くと巨大な魔法陣が現れ庭園を
大きく超えるほど広がっていった。
「精神世界で教えてもらった氷魔法、今使わせてもらうぜ!」
魔法陣が輝きだし、陣内にあった集を除くすべての物質が氷結した。
氷の魔法を使う集は陣内を自由に動ける為、氷結した後に脱出し
マグナと全てのマジックフラワーを凍結した。
「これで」
集が安心したのもつかの間、氷にひびが入ったかと思うと
一気に氷が粉砕し出てきたのは
既に人間の心を失い目に映るもの全てを破壊しようとする獣がいた。
口からはだらしなく涎を垂らし目は白目をむいていた。
「如月集……コロス!」
「くそ!」
マグナが集に殴りかかってきたがそれを刀で防いだ。
(な、なんて力だよ! 押し返される!)
あまりの力に防いだ瞬間、彼の手に衝撃が走って少し痺れてしまった。
「ぐあぁぁぁ!」
―――――ブッシャァァ!
「ぐぁ!」
マグナが叫び声を上げると衝撃波が集を襲い血しぶきを上げさせた。
「グゥ!」
「うぐ!」
マグナは集の首を掴みそのまま握りつぶそうとした。
「げは!」
集は吐血しながらも刀でマグナを切り刻んでいくがどれだけ、深い傷を与えようとも
一向に離そうとせず寧ろ、力を強めていった。
「グルゥゥゥゥ!」
「ゆ……るせよ!」
集は刀でマグナの腕を切断しようとしたが筋肉で刀が止められた。
(どんだけ筋肉が厚くなってんだ!)
「集!」
後ろから、声が聞こえ振り向くとそこにはゆえがいた。
「ゆ……え」
「シ……ネ」
ゆえが集に近づこうとした瞬間に至近距離から、フルパワーの衝撃砲が集を襲い
大量に血が吹きでた。
「が……は!」
「集ー!」
ゆえの悲痛な叫び声が庭園に響いた。
こんばんわ、ケンです。
如何でしたか?相変わらず文章表現が下手です。
それに面白いのかさえ不明。でも、この作品をお気に入り登録
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それでは、さようなら。