第23話 最高戦闘術、バースト
集はあれから、ライカと共に一度学校に戻り、バーストについて聞いていた。
ちなみに、何故かライカの服は科学者などがよく着る白衣である。
「まず、バーストというのは私達の最高戦術よ。昔、戦いが頻発していて
そこで戦いを終わらせる為に魔力が多い者、すなわち今の貴族の先祖に当たる
奴らが開発したものよ。教師のほとんどはバーストを習得しているわ」
「じゃあ、フィーリ先生も?」
「恐らくね。まだ見たこと無いけど」
ライカによると教師のバーストはまだ見たことが無いらしく大抵は普通に魔法で倒すらしい。
「それで、その習得方法は?」
「さあ?」
「は?」
ライカの返答に思わず集はみっともない声を出してしまった。
「正確に言えば人それぞれなのよね~ま、頑張んなさい」
「え? どこ行くんだよ」
ライカが自然と帰ろうとしていたのを集は慌てて声をかけて止めた。
「帰るのよ。いくら私でもバーストは教えられないしね」
そう言い残しライカは白衣を脱ぎ棄ててどこかに行ってしまった。
「どうすりゃいいんだか」
「悩んでいるようだな、集君」
「り、理事長!」
突然、後ろから声が聞こえたかと思うと後ろに理事長が聞こえた。
その容姿は若干大きめの服を着てズボンの裾が地面についてるんじゃないのかと
思うくらいダボダボしていた。
「い、いつからここに」
「君たちがここに来る前からだが」
(小さくて見えなかった)
そう思っていた集は足の脛を思いっきり蹴られた。
「んぎゃぁぁ!」
集はあまりの痛みに床に転げ落ちてのたうち回っていた。
「小さくて悪かったのう」
「勝手に心の中を読まないで下さい」
「……まあ、ともかくだ。事情を詳しく聞かせたまえ」
集はそう言われてゆえの結婚の事を詳しく理事長に説明した。
「そうか……ちょうどいい機会だ。教えておいてやろうギルス家はある罪を犯している」
「罪を?」
集の返答に理事長は首を縦に振って肯定の意を示した。
「ああ。奴の父はこの国では栽培禁止の植物を栽培している」
「植物ですか?」
「ああ、マジックフラワーという物を知ってるかい?」
「聞いたことがあります。確かその花は魔力の潜在値を高める効果があるんですよね?」
マジックフラワーはそのままでは意味を成さないが、花びらを収穫し
氷結させた後にすり潰し水に薄めて飲むと魔力の潜在量を無理やり高める効果があるいわば
麻薬の様なものだが同様に強い依存性があり一回飲めば、一生、依存症になる危険なものである。
これの花は繁殖力が強く、またどの国、地域でも咲く為これを巡り争いが広がっている。
「それを奴は栽培し裏ルートで莫大な利益を得ている。マグナが強いのもその影響だろう」
「分かっているなら手を打てば」
「そうだが、奴は貴族の中でもかなり上位層にいる為に国も手が出せんのだ」
「そんな……」
集は理事長の問いに絶望しかかっていた。
理事長といえどただの理事長である。
上級貴族に真正面から文句を言っても何もならないのである。
「だが、君が奴を倒せばこちらは彼を治療としてこちらに
閉じ込める事が出来る。そこで、証拠を提示すればこっちのものだ。頼める」
理事長が最後まで言うのを待たずに集は机にかかと落としを決めた。
「さっきから、聞いていればゴチャゴチャとうっせえな。
俺はあんたがして欲しい理由で奴を倒すんじゃない。
ゆえを取り戻す為に戦うんだ!」
集の言ったことに理事長はふっと乾いた笑みを浮かべて集を見上げた。
「ふふふ、そうだったな。すまない、この話は忘れてくれ。
続きを話そう。バーストの習得方法はある」
「ないんじゃないんですか?」
「ある事にはある。だがこの方法でバーストを
習得した者はいない。それでも、やるのか?」
「上等だ! やってやる」
集は理事長の質問にすぐに答えた。
「良いだろう。ついてきなさい」
集は理事長についていき教室から出て行った。
理事長に連れられ集が着た場所はとある部屋だった。
「この部屋は?」
「普段は使用禁止の部屋で、あるべき時にのみ使用が解禁される」
「あるべき時って」
「さあな? そう言われているだけだ。ドアを開け部屋に入れれば
それがある時だ。さ、開けてみろ」
集は理事長に言われるがままにドアノブに手を置き
ノブを回すとドアが開き集は中に吸い込まれるように消え去った。
「……これで二人目か。私に続き、一回でドアを開けた者は」
理事長はそう呟き、理事長室へと戻っていった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
目の前が突然、白く光ったかと思うと集はまっ逆さに落ちていた。
そこは何も見えずあるのは闇、ただそれだけだった。
「どうすれば!」
『落ち着きなさい』
「――――――ッッッ!」
突然、集の頭の中に女性らしき高い声が響いてきた。
『何もしなければ辿り着くわ』
言われたとおり集は落ち着くと徐々に落下スピードが
落ちていき最終的に地面に降り立った。
「ここは……」
周りを見渡すがそこには何もなく真っ暗だった。
『ここは、貴方の精神世界』
声が響くと突然、景色が変わり草地に変わった。
『久しぶりね』
声が聞こえてきた方向を向くとそこには集と同じ白い髪を腰まで伸ばし、上下とも
白い服を着た女性がいた。
『ここに来たという事は貴方、バーストを習得に来たのね?』
「ああ。それよりもここはなんなんだ?」
『そこから説明するわ。貴方が通ったドアはあるべき時にしか入る事が出来ない
部屋の入口よ。そして、貴方のあるべき時が今っていう訳』
「そうなのか……さっさと始めようぜ」
『落ち着きなさいよ。言い忘れてたけどこの空間は外界とは
切り離された空間。それゆえに時間の流れる速さが違う。
ここでの1日は外界では1分にも満たないわ』
つまりこの世界でいられるのは単純計算しても九千日以上は
滞在することができるという計算になる。
『じゃ、始めましょうか』
「ま、待ってくれ! まだ、やり方を聞いてないぞ!」
『やり方は簡単よ。私を倒すこと』
「確かに簡単だな。リッタ!」
リッタを呼んだつもりだがいつまで経っても出てこなかった。
『無駄よ。この空間に入れるのは貴方のみ。リッタとかいう猫は今頃、外界で寝てるわよ』
女性の言うとおりリッタは理事長室でぐっすりと寝ていた。
『始めるわよ』
「ああ!」
集は刀を抜き女性に斬りかかった。
『遅すぎるわよ』
女性はそう呟くと二本の指で挟んで刀を止めた。
「な!」
『こんな物いらないわよ』
女性はその刀を掴むと集から取り上げどこかへ飛ばしてしまった。
「くそ!」
集は一度、距離を取り彼女を観察した。
(刀を指で止めるとか人外すぎるだろ)
『なに? こんな物なの? 貴方の力は』
「そんな訳ない!」
集は翼を生成し向かって行った。
その頃、ゆえはマグナの家で暮らしていた。
どの道結婚してこの家に住むんだから、もう住んだ方がいいと
マグナに言われ半強制的にこっちにこさされた。
ゆえには部屋が一つ与えられそこで暮らしていた。
「後、五日か」
「そうですね~ゆえさん」
部屋には自分だけがいると思っていたが後ろから賛同する声が聞こえてきて
そちらを振り向くとマグナが立っていた。
「入る時はノックをしろ。マグナ・ギルス」
「ですから、マグナって呼んでくださいよ~」
「結婚したらな」
「約束ですよ~?」
マグナはゆえとの会話で子供みたいに笑った。
「楽しみですね~結婚式。やっとゆえさんと出来ますよ~」
「何故、私と結婚などする」
ゆえは以前から疑問に思ってた事をマグナに聞いた。
「そんなの簡単じゃないですか~
……我がギルス家のさらなる発展の為だ」
先程の笑顔は消え失せマグナの顔は怖いものになっていた。
「やはりか」
「別に誰とでも良かったが貴様の父親は政府とも強いパイプがある。
それを使いギルス家をさらに、発展させる」
「そうか……」
「今日は早く寝て下さいね~風邪をひかれても困るので。じゃ、御休みなさい」
マグナは部屋の鍵を外からかけた。
「この部屋は婚約者を住まわせるというより
逃げないように閉じ込める牢屋だな」
ゆえの言うとおり、窓はあるが開けられないようになっており、鍵も先程の様に
内側から閉めるものではなく、外側から閉めるものだった。
さらに、食事は毎回、部屋にまで届けられそこで食べていた。
「……集にはもう会えないのだろうか」
ゆえは集の事を思わなかった日は無かった。
「会えないだろうな……私がこの手で殺したのだから」
制限時間まで残り五日。
こんばんわ!ケンです!!
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