第18話 ヒラミ族とミラ族
「………ここは?」
意識が覚めて、目をあけるとそこは見知らぬ場所だった。
「んにゃ~」
「猫?」
隣から鳴き声が聞こ、え横を見ると一匹の猫がいた。
「ようやく起きたかにゃ~」
「………ね、ね、猫が喋った――――!」
「そんなに叫ぶと傷が開きますよ?」
「うぐ!!」
叫んだ瞬間、巻かれていた白い包帯が徐々に赤色に染まっていった。
「まあ、このくらいなら放っておいても良いでしょう」
女の子が傷が開き、血を流している部分を見ながらそう言うが集は
凄まじい痛みを感じていた。
「いやいや、痛いんですが」
「ご主人さまが言うんだから大丈夫なんだにゃ~」
「また、喋った」
「まあ、驚くのも無理はありませんね」
「ところで、君は誰?」
集は目の前にいる少女に質問した。
「初めまして。私はスーダ・レヴィです。こっちが契約している」
「ミヤだにゃ~」
猫はスーダが紹介しようとすると両手を上にあげて、自ら自己紹介した。
「えっと、君たちは」
「あ、すみません。そこから説明しますね。ここは、ミラ族とヒラミ族が
共生している村です。そして、私達はあなた方で言う精霊と呼ばれるものです」
「ほとんど人間にしか見えない」
「ふふふ、私達ヒラミ族は外見は人間ですからね。
人間との違いはこれです」
スーダが耳にかかっていた髪を退けると垂れ下った耳が出てきた。
「あ、垂れ下ってる」
「はい、精霊の中には姿から違う種族もいますが、我々は
耳がたれ下がってるのが特徴です」
「へ~そうか」
「ところで、なんでお前さんはあんな所で倒れてたのにゃ~?」
「……色々あってな」
重い雰囲気が辺りに漂い始めるとスーダは雰囲気を変えるべくある事を提案した。
「気分転換に村でも見ますか? 案内しますよ」
「お願いするかな」
「はい! ミヤ、行くよ」
「にゃ~」
ミヤはスーダの肩に乗り、スーダは集に肩を貸しながら今いる場所から外へと出た。
その頃、ゆえはというと……
「これなんかどうです? ゆえさん」
「ああ、綺麗だな」
ゆえはマグナに連れられ、ウエディングドレスを見に来ていた。
なんでも、準備は早い方がいいという事でもう準備を始め出したのだ。
とはいっても、先程からゆえはマグナに聞かれても『ああ、そうだな』
としか返答しなかった。
「どうしたんですか? ゆえさん。さっきから片言の様にしか
返事してませんけど、具合でも悪いんですか?」
「いや、大丈夫だ。それよりも、ほかのも見ないか?」
「そうですね、向こうの方にでも行きましょうか」
ゆえとマグナの光景を遠くから見ている者たちがいた。
「本当にこれで良かったのかな?」
ラナは他の皆に疑問をぶつけた。
「仕方がないでしょ。掟だから」
「でも! そうだとしても、ゆえのあんな顔見たくないよ」
ライカは諦めているかのように返事をし、ルーラは目に涙を浮かべて言った。
彼女たちの目の前にいるゆえは笑みを浮かべているがその浮かべているものは
彼女たちからすれば笑みなどではなく、泣き顔にしか見えなかった。
場所は変わり、集はスーダに連れられながら村を散策しながら
ヒラミ族とミラ族に関する話を聞いていた。
なぜ、スーダは猫と契約しているかなどが主な内容だった
「元々、ヒラミ族は魔力が少ない一族なんです。そのせいで
昔は、一番襲われやすい一族だったんです。それに対してミラ族は
魔力は持っているんですが、猫の為に魔法が使えないんです。
そこで、昔の人はヒラミとミラで協定を結んだんです」
「ミラ族はヒラミ族に力を与えるってわけか」
「はい! それで、ミラ族が他の精霊に襲われないように護るのが
私達の使命なんです」
「そっか……使える魔法ってなんなんだ?」
「使えるのは獣人化です」
「獣人化? なんだそれ?」
名前を聞いて大体の内容は想像がついたものの、集は本物が見たいと思い
スーダ達に見せてくれるように頼むと二人は快く了承してくれた。
「ミヤ!」
「あいにゃ!」
ミヤとスーダが光に包まれ、集はあまりの眩しさに手で目を隠していると
輝きが収まっていくのを感じ、目を開けてみるとそこには一つの存在が立っていた。
「これが……」
『はい、これが獣人化です』
そこには、鋭い爪を持ち髪の毛が肩までだったものが
腰に届くぐらいにまで伸びたスーダがいた。
「凄いな」
『獣人化の特徴は速さです。高速で移動して相手を爪で切り裂く。
これが私達の主な戦い方です』
「ふんふん」
すると、急に光に包まれスーダは元に戻ってしまった。
「でも、これって未熟なうちは短い間でしかなれないんですよね~」
「ふにゃ~」
足もとには疲れ切ったミヤが寝転がっていた。
「私みたいに未熟者は、短い間しかなれないのとミラ族の
体力を極端に消費しちゃうんです」
寝転がっていたミヤをスーダは持ち上げ頭に乗せた。
「こんなものです」
「ありがと。お礼に俺のも見せてあげるよ」
「本当ですか!?」
突然、スーダは目を輝かせながら叫んだ。
「お、おう」
思わず、集は後ずさってしまった。
「私、外の魔法を見るのって初めてなんですよね~
確か、外は炎、水、雷、自然、無機、闇があるんですよね!?」
「まあ、そうだけど俺は少し違うんだ」
「え?」
「俺のは氷だ」
集は近くにあった小枝を拾い、軽く握るとパキパキと音を立てながら
凍って行き、わずか数秒で凍らした。
「……」
ミヤとスーダは集が凍らしたものをまじまじと見て、お互いに目を合わしたりしていた。
「どうかしたのか?」
集が不審に思い聞いてみるとミヤが話し始めた。
「たしか、集とか言ったかにゃ?」
「あ、ああそうだけど」
「少し、ついて来て欲しいにゃ。会わせたい人がいるんだにゃ」
「うん、良いけど」
不思議に思いながらも集は二人についていった。
集がスーダに連れられてきたのは、大きな小屋だった。
「ここは村長の家なんだにゃ」
「この村の?」
「はい。村長は何百年も生きてて、昔の事を知っています。
恐らく、氷の魔法の事も」
「―――――――ッッッ!」
集は二人が言っている内容に驚きながらも村長の小屋に入った。
「失礼します、村長」
「その声はスーダかな?」
中に入るとすぐに、おばあちゃんが発するような声が集の耳に入ってきた。
「はい」
「今日はどうしたのかな?」
声のする方向へいくとそこには、顔にいくつもの皺が折りたたまれ、木で出来た
杖を持ち、対面する者に安心感を与えているようなオーラを出す
おばあちゃんがいた。
「村長に聞きたい事があります」
「ふむ、何かな?」
「氷の魔法についてです」
「ふむ、今日はそこに来たか。懐かしいの~」
村長は目を細めながら懐かしんでいた。
「そう言えば後ろにいる少年は誰かな? この村の者ではないみたいだが」
村長は目をつむっているにも拘らず、なぜか集がいるということに気づいた。
そのことに集は驚きながらも、そこは我慢して自己紹介をした。
「あ、初めまして。如月集です」
「ふむ、集君か。それで、何の用だい?」
「村長」
スーダが後ろから口をはさんだ。
「氷の魔法はその昔、存在していましたが
今は完全に消え去ったんですよね?」
「ふむ、昔は氷の魔法はあったんじゃがな~今は消えとる」
「もし、その氷の魔法が現代に蘇ったらどうしますか?」
「ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ! スーダ、冗談でもそんな事言っちゃいけないよ?」
村長は笑いながらスーダに注意をした。
「では、実物を見て頂いた方がいいですね。集さん、これを凍らしてくれますか?」
スーダは村長が飲んでいただろうカップを渡した。
その中には、先程入れた為かまだ、少し湯気が立っていた。
「うん、分かった」
集は指を一本その中にいれ、先程まで湯気が出るほど熱かった液体が
徐々に凍りだし、最終的に氷になった。
それを、スーダは村長に渡し液体を触るように言った。
「――――――ッッッ!
村長が凍った液体に触れた瞬間、顔が驚愕に染まった。
「まさか、これを集君がしたのかい?」
「はい」
「集君や。君の顔を近くで見せてくれないか?」
「分かりました」
集は言われたとおり村長の顔の近くによると
村長は手で集の顔を触りだし、今まで瞑っていた目を開けた。
「おお、似ている」
「え?」
村長は集の顔をその目で見た瞬間そう、呟いた。
「そっくりだ。あの時の戦いであやつを凍りづけにし
封印した彼女にそっくりだ」
村長は目に涙を浮かばせながら懐かしんでいた。
「え、えっと~」
集は勝手に触られた揚句、似ている、似ていると言われても混乱するだけだった。
「君に伝えたい事があるんだが聞いてくれるかい?」
「あ、あの俺、急がないと」
「大丈夫。君が止めようとする結婚式はまだ、始まらないよ」
「な、なんでそれを!?」
集は思っていた事を言われ驚いた。
「わしゃは昔から人の事が分かるのさ。今日は泊まっていきなさい」
「はい」
集は不思議なものを村長に感じ、言う事を聞いた。
こんばんわ!!ケンです!!
如何でしたか?
それでは、御休みなさい!!




