第14話 魔法の呪文
意識が冴え始めたアミヤはうっすらと目を開けると天井が見えた。
「ここは………」
「ここは学校の保健室だよ」
「集君」
隣から声が聞こえ、聞こえてきた方向を向くとそこに椅子に座った集がいた。
「そ、そうなんだ。リルカちゃんはどうだったの?」
「あいつも無事だよ」
「そっか。良かった……私ってどのくらい寝てた?」
アミヤはリルカが無事という報告を聞き、ほっと胸を撫で下ろした。
「大体……」
―――――ドゴォォ!
集が言いかけた時、大きな音を伴って保健室のドアが開けられた。
「アミヤ!」
「アイリスちゃん!」
入って来たのはアイリス、ゼロ、ロックの三人だった。
「良かった~無事だったのね」
アイリスはアミヤに抱き着きながらほっとしていた。
「だ~か~らお前は心配しすぎだっつ~の」
「なによ! 友達を心配して悪いの!?」
「い、いや悪くないけどさ」
ゼロはアミヤの気迫に若干、押され気味だった。
「まあ、なんにしても二人とも無事でよかった」
ロックが安心したように言った。
「あ、そういえば集」
「何? ゼロ」
「フィーリ先生が職員室に来いだって」
「げ!まじかよ」
集はゼロに言われたことに憂鬱オーラを醸し出しながら職員室に向かった。
「あ~入りたくないな~……逃げるか」
「ダメに決まってるでしょうが!」
「ぐぇ!」
集は職員室の前のドアに立ち、じっと考えること数秒逃げようとした時、
後ろからフィーリに思いっきり頭を叩かれた。
「ひとまず説教は教室でするから。良いわね?」
「……」
「良・い・わ・ね?」
「……はい」
少しは反抗しようと思った集だが
フィーリの見えない重みに反抗できずそのまま八組へと連行された。
「何であの時、私が着くのを待たずに森の中に入ったのかしら?」
八組に入るとすぐにドアがすべてか鍵まで絞められ、教室の中央で
フィーリに睨まれながら説教が始まった。
「村の女の子が森に入ったって聞いて、いてもたってもいられなくなって」
「そうだとしても、貴方も危険な事に変わりはなかった。
そのせいで着いてきたユーリさんまで危ない目にあわせた。違うかしら?」
「………」
集はフィーリの言ったことに何も反論できなかった。
確かに、自分が森へ入ったことによりアミヤまでもが危険にさらされてしまった。
結果的には無事だったものの、とても褒められるような行動ではない。
「は~。別に貴方の行動は間違っているとは言わない」
「じゃあ、」
「でも、貴方を心配する人だっているのよ? 私みたいに」
「え?」
そう言うとフィーリは集を優しく抱き締めた。
「先生?」
「貴方は私の教え子であって大切な息子、娘みたいなものよ。
だから、お願い。今日みたいに突っ走らないで。
それで、怪我をしたら私悲しいわ」
「………分かりました」
結局、集の班はトラブルのため依頼は一つでいいと言われ
そのままそれぞれの自宅に帰った。
「ただいま帰りました~」
「あら、お帰りなさい。もう終わったの?」
家に帰ると居間でゆえの母が迎えてくれた。
予定とは違う時間に返ってきたので少し驚いたような表情だった。
「ええ、まあトラブルが起こったので」
「そう。じゃあ、少しお話でもしましょう」
「は、はぁ」
集はゆえの母に言われて近くにあった椅子に座った。
「じゃあ、ゆえちゃんのお話でもしようかな」
「ゆえのですか?」
「うん。集君がこの家に来る前の話なんだけどね。
前のゆえちゃんは今よりも性格が厳しかったの」
「ゆえがですか?」
正直、信じられない話だった。
今でさえ、厳しい性格だと考えているのに以前よりもあれで丸くなったという。
「ええ。学校でも毎日、嫌味を言われるくらいにきつかったわね」
想像ができなかった。
集の鍛錬に嫌な顔一つせず、付き合ってくれ、笑っているゆえしか知らなかった。
「ゆえちゃんはあまり他人には関わらない子だったの。
人に何かを教えてと頼まれても他の奴に聞けって言ったらしいわよ」
「あの、ゆえが……」
「でも、集君が来てからゆえちゃん、本当に楽しそうに
集君に魔法を教えてるでしょ? だからね、集君。
これからもゆえちゃんと一緒にいてくれないかな?」
「……出来る限りは一緒にいたいです」
「そう。ありがとうね」
そう言い残しゆえの母は晩御飯の支度に戻った。
「一緒にいてくれか……そんなの無理に決まってるじゃないか」
集は部屋へと向かう廊下で一人、呟いていた。
集の両親はしきりにずっと一緒だと言っていたのに死んだ。
「俺はどうすれば……」
集はベッドに横たわりそのまま眠ってしまった。
一方その頃ゆえは最後の依頼をこなそうとしていた。
そのランクはBランク。
1年で出来る者は1組でも上位の実力を持つ者たちがするランクだった。
真っ黒な体毛に鋭い尻尾を持つガザリスを相手にしていた。
「そっち行ったわよ! アイサ!」
「任せなさい!」
アイサと呼ばれた少女は2丁の銃を持っており
それに魔力を流し込んで撃つとその弾丸は
雷の魔法を纏っており雷と同じ速さで動く弾丸だった。
――――――ドシュッ! ドシュッ!
雷の魔法を纏った弾丸がガザリスの皮膚を貫き、鮮血が舞った。
「グギャァァァ!」
ガザリスはそれを避けようとしたが速過ぎるため
避けれずに直撃してしまいその場に蹲ってしまった。
「やった! こいつそうとう弱ってるよ! ゆえさん!」
「任せろ」
ゆえは背中に炎の翼を生やしており空から様子を窺っていた。
「はぁぁぁぁ!」
ゆえが刀を振るうと炎の斬撃が飛び
ガザリスに直撃するとものすごい速度で燃やしていった。
「終わったね。アイサ」
「うん。イリスもゆえさんもお疲れ様」
「ああ、お疲れ様」
3人の後ろには倒れ伏しているガザリスの姿があった。
「この尻尾を持っていけば任務完了だね」
アイサは片手に長い黒い尻尾を持っていた。
「ああ、もう帰ろうか」
「「了解」」
ゆえが皆に言うと二人はゆえについて行き帰っていった。
「ただいま~」
「あ、お帰りなさい、ゆえちゃん。シャワーかご飯、どっちにする?」
「ん~先にシャワーを浴びるよ」
「分かったわ」
ゆえはタオルと服を持って浴室に行った。
(集は大丈夫だろうか)
ゆえは洗面所のカーテンで仕切られている区画で服を脱ぎながら集の事を考えていた。
(まあ、集も強くなってきているから大丈夫だろう)
そういう結論に至り、体にバスタオルを巻いた状態で浴室のドアを開けると目の前に集がいた。
「「…………」」
二人の間に何とも言えない空気が流れた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ま、待てゆえ! 落ち着け!」
「見、見るなぁぁぁぁぁぁ!」
―――――――ボオォォォォォ!
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
集は必死にゆえを宥めようとするが、ゆえは腕に炎を集め集に殴りかかった。
「母さん! 何で言ってくれなかったの!?」
「ごめん、ごめん。集君が入ってるの忘れてたわ」
ゆえの隣には髪の毛が少し焦げた集がいた。
「ゆえも落ち着けよ」
さっきは瞬時に氷壁を作って防いでいた。
しかし、その氷壁はもうすぐで貫通される所まで
溶かされていた。
「は、裸を見られて落ち着けるものか!」
「別に俺は興味無いんだから。それにタオルまいてたじゃん」
「――――――ッッッ!」
「あちゃ~」
ゆえの母は集が言った言葉を聞いたゆえの反応を見て、その場から静かに離れた。
「ほ、ほ~う。私の体はそんなに女の子っぽくないか……」
「何を言ってんだよ。そんな事は言って」
その先の言葉を言おうとした時、ゆえの低い声で止められた。
「後で私と模擬戦をしよう。もちろん全力でだ」
「い、いや今日は疲れたから寝たいな~って」
「あ!?」
「は、はい! 喜んでします!」
集は断ろうとするが、ゆえのすさまじいプレッシャーに押し負け、つい了承してしまった。
その後、模擬戦をした集はゆえに完膚なきまでに叩きのめされた。
お久しぶりです!!
2週間近くほっとくとこの作品のユニークが減りました!!
ま、元々が少ないのでそこまで精神的には来ませんでしたが…
そんな事より、如何でしたか?
こんな面白くもない作品をお気に入り登録してくださっている
皆さまには本当に感謝感激です!!
これからもよろしくお願いいたします!!
感想もお待ちしております!!
それでは!!