第13話 初めての実戦
集は少女を抱えてアミヤと共に森の中を逃げ回っていた。
「あ~もう! 何でこうなるんだよ!」
「い、一体どこまで逃げればいいの!?」
「分からねえ! ひとまず逃げるんだよ!」
集はチラっと後ろを振り返ると後ろの木々が次々に倒れていくのが見えた。
「確かあの魔物はシュガレオンだっけ!?」
「うん! この近くに湖があったからそこの主なんだと思う!」
後ろから魚の様な巨大な魔物がまるで蛇のように
体を這わせ、木々をなぎ倒しながら二人を追っていた。
(俺の氷なら少しは時間は稼げるんだが生憎、今は見せられないな)
魔物が体を起こして体をのけ反らせた瞬間、
集は本能的に危険だと察知し二人を無理やり地面に押し倒した。
「伏せろ!」
「きゃあ!」
―――――ブシャァァァァ!
間一髪避けれたがその高圧水流は地面に
着弾した後、拡散弾のように分裂し周りの木々を薙ぎ倒していった。
「あんなもん喰らったらまず、体は弾けるな」
「うわぁぁぁぁぁん!」
「集君! 怖がらせるような事言わないでよ!」
少女は集の言ったことにさらにおお泣きをし始めた。
「そんな事より逃げんぞ!」
集は二人を引っ張り再び逃げ出した。
その後を追うように魔物も体を這わせて追いかけていった。
その頃、村に残った3人はフィーリの到着を待っていた。
「大丈夫かな? あの二人」
「何言ってんだよ!? アイリス! 集は貴族に勝ったんだぜ?」
「貴族に勝ったとしても魔物に勝てる訳ではない」
「そ、そうだけどさ」
ゼロは必死に集を信じようとするがロックの論理的なことに
何も言えなくなってしまった。
「俺達が焦っても何も状況は変わらない。ここは先生を待とう」
「ああ」
「うん」
三人はフィーリが来るのをじっと待っていた。
「ぜえ……ぜえ。ここなら少しは時間も稼げるだろ」
集達は逃げる途中に洞窟を見つけたので、そこで
シュガレオンをやり過ごしていた。
「ひっぐ! ママに会いたいよ~」
「大丈夫。絶対にお姉ちゃんとお兄ちゃんが会わせてあげるから」
「でも、お姉ちゃんたちはさっきから逃げてばっかじゃない!」
「そ、それは……」
アミヤは少女が言ったことに何も言い返せなくなってしまった。
確かに自分たちは今まで魔物に何もできずに逃げてばかりだった。
「お前、名前は?」
集は突然、少女に名前を聞いた。
「私はリルカ」
「そうか、リルカ。何で君はこの森に入った?」
「だってゴブリン達が村を襲ってるのが許せなくて」
「そっか。その事に関しては良いと思うけどさ、リルカはゴブリンを倒せるのか?」
「そ、それは」
リルカは何も言えなかった。
ゴブリンといえど魔物の一種。リルカの様な小さな女の子が倒せるものではない。
「リルカ、何かを護ろうとする時に、必要なものは何か知ってるか?」
「ううん」
リルカは集の質問に首を横に振って否定すると集は笑みを浮かべながら
リルカの頭をなでて、答えを言った。
「必要なものはそれを護りたいっていう強い気持ちと強さなんだ」
「強さ?」
「ああ、護りたいっていう気持ちがあったとしても
強くなかったら守れないだろ? それで周りに迷惑がかかってしまうかもしれない」
「あ」
リルカは集の言ったことを正確に理解した。
なにも力を持たない自分が森へ入ったことにより村のみんなに迷惑をかけ、
母親を心配させた。
「気付いたか? 今回はリルカの身勝手な行動でお母さん
や村のみんなに迷惑がかかったよな?」
「うん」
「良い子だ。そろそろ行くか」
集達は洞窟の影になっている部分からシュガレオンがいないかを確認し、
姿が確認できないと判断して洞窟から外へと出た。
「さ、今のうちに」
「しゅ、集君」
アミヤが怯えたような声で集を呼んだ。
「どうかしたのか?」
「あ、あそこ」
アミヤが指をさした方向を見るとそこには
待っていましたと言わんばかりにシュガレオンが洞窟の上にいた。
「ま、まさか、俺たちを待ち伏せしていたのか」
「ギュオォォォォ!」
シュガレオンが雄叫びをあげるとアミヤが腰を抜かしたように
その場にへたり込んでしまった。
「あ、あれ力が入らない」
「アミヤ!」
―――――ビュシャァァァ!
集がアミヤに近づこうとした時、シュガレオンが集達に高圧水流を吐いた。
(この子だけは!!)
母性としての本能か、または別のものかはわからないがまるでわが子のように
アミヤはリルカを護るように抱きしめた。
「……しょうがない」
そして、高圧水流が3人に直撃し炸裂した。
(あ、あれ? 何も来ない?)
アミヤは襲ってくる痛みを覚悟していたが全く来ない事に
気づき、目を開けてみるとそこには氷壁で高圧水流を防いだ集がいた。
「しゅ、集君? それは」
「アミヤ」
「は、はい!」
「今から起こる事は誰にも言わないでくれるか?」
「う、うん」
「そっか……ありがと」
集の笑顔を見た瞬間、アミヤの心臓が大きくはねた。
(あ、あれ?何で私、こんなにもドキドキしてるんだろ?)
アミヤは自分でも分かるくらいに火照った顔を何度もぺたぺたと触っていた。
「行ってくる」
集はリルカをアミヤに任せシュガレオンに向かっていった。
「集君……」
「待たせたなシュガレオン。始めるか」
「ギュガァァァ!」
シュガレオンは雄叫びをあげて集をその巨体で
踏みつぶそうとしたが集はそれを避けて距離を取った。
「さ~て、初めての実戦だ」
集は刀を抜き魔力を流し込むと全てが真っ白に変わった。
「行くぜ? うらぁぁ!」
「ギャァァ!」
――――――バキィィィィン!
集は刀を振るい氷の斬撃を出すがシュガレオンはそれを撃ち落とそうとでも
思ったのか口から先ほどの高圧水流を放った。
しかし、口から放った高圧水流が氷の斬撃に接触した瞬間、一瞬にして
高圧水流が凍ってしまった。
「ギャオォォォォォ!」
シュガレオンはその長い尻尾を振りまわし
集を吹き飛ばそうとするが、集は咄嗟に屈んで
それを避けた。
「邪魔だ。その尻尾貰うぜ?」
――――――ザシュッ!
自らの頭の上の通過した瞬間、刀をふるいその尻尾を切断した。
「ギャァァァァァン!」
尻尾を切断されたシュガレオンは血しぶきをあげながら、痛みに苦しみもがいた。
「悪いな、お前にうらみは無いがここで狩らせてもらう。はぁぁ!」
集はシュガレオンに向けて刀を振るい氷の魔法を斬撃にして撃ちだした。
「ぐぎゃぁ……ぁ……ぁ……」
斬撃を受けた個所から徐々に全身が凍結し始め
すぐにシュガレオンは凍りづけにされた。
「永遠にその中で眠ってろ」
集が指を鳴らすと氷に亀裂が入り、シュガレオンごと氷が砕け散った。
「す、凄い」
「大丈夫!? 二人とも」
シュガレオンが砕け散った瞬間、二人の近くへフィーリが降り立った。
「ええ、大丈夫ですよ。先生」
「集君、貴方まさか使ったの?」
フィーリは辺りに氷塊がゴロゴロと落ちていることに気づき
いぶかしげな表情を浮かべて彼に尋ねた。
「ええ。使わないといけない状況でしたから」
「……そう。分かったわ。村に戻りましょう」
「ええ。アミヤ帰」
集がアミヤの方を向くと安心したのかアミヤは気を失っていた。
(……私、誰かに運ばれてる?)
アミヤがうっすらと意識が回復したとき
誰かにおんぶされて運ばれている感じがした。
(この髪の色……集君……かな?)
うっすらと目をあけると近くに白い何かが視界に写った。
(まだ、ドキドキしてる……これって恋なのかな?)
彼女の心臓は気絶する前と同じ速度、同じ強さで鼓動を打っていた。
アミヤの脳裏には集の笑顔が何度も再生されていた。
(そっか~初めての恋だね)
「失礼致します。マスターハデス」
「入れ」
決して人間が入ることのできない、場所に二組の魔族の者がいた。
ハデスの部屋に一人の長い黒髪の女性が入ってきた。
「何かあったのか?」
「マスターハデス……氷魔法を発見しました」
「何だと!? それは本当か!?」
ハデスと呼ばれている男は女性が言ったことに驚きを隠せないでいた。
自らにとってその魔法はその昔、自らの
肉体に大きな傷を与え封印した忌々しいものだった。
「はい。証拠もこちらに」
女性はポケットから凍りづけにされた
シュガレオンの一部を取り出しハデスに見せた。
「自然界でこのような事はあり得ません」
「ふはははは! そうか、氷魔法の使用者が現れたか!」
二人がいる部屋にはずっと、笑い声が響いていた。
こんばんわ!!ケンです!!
如何でしたか?
やはり、一次創作は難しいですね!!
今日確認したらお気に入り登録数が1件減っちゃっていました。
ユニークも伸び悩んでます。
ま、こんなものなんでしょうね。
それでは!!!