第12話 任務開始
「んじゃ、入ろうか」
そう言いながら集はドアに手を置こうとしたが、
何故か皆はドアの前にいるだけで中に入ろうとはしなかった。
「何で、入らないんだよ」
「い、いやだって心の準備というものが」
「そ、そうよ。ゼロの言うとおり心の準備がいるのよ」
あれだけ、はしゃいでいたアイリスまで今は静かになっていた。
「あっそ。じゃあ、俺が先に入る」
「ちょ、ちょっと集!」
アイリスが止めるのを気にせずに集はドアを開け、中にはいると
そこは広い空間が広がっていた。
「うわぉ。凄いね」
そこには、受付や今現在ギルドに依頼されている任務が掲示されている掲示板。
そして、任務を受けようとするハンター達がいた。
「ここがギルドか~」
「初めて入ったけど綺麗なところ」
アミヤの言うとおり中はきれいに掃除されており
待合室や資料室などの施設が完備されていた。
「じゃあ、さっそく何受けるか、掲示板見て決めるか」
「うん。確か今日のノルマは3つだったよね?」
集とアミヤはさきさきと進んでいくが後ろの三人は
感激していたのか、周りにばかり目を取られていた。
「置いて行くぞ~」
『は~い』
集の呼びかけでようやく、付いてきた。
(大丈夫か? 今日の任務)
ちょっぴり心配した集だった。
「それで何するんだ?」
「ねえ、こんなのはどう?」
アイリスが指をさしたのは村のごみ掃除を依頼しているものだった。
なんでも村の男どもが全員風邪をひいてしまい、大変なことになっているという。
「え~村のごみ掃除~? もっと違うのしようぜ?」
「じゃあ、これやるか?」
集が指をさした任務は討伐任務だった。
「なになに? 村にゴブリンが群れで襲ってきます。
怪我人も増えてきています。このままでは、
村を移動しなければなりませんが生まれ育った村を移動したくはありません。
どうか、ゴブリンを追い払って下さい、か……よし、これやろうか?」
「そうね、ゴブリンくらいなら私達でも出来そうだしね。
よし、集! 受注してきなさい!」
班長でもないアイリスがなぜか、集に命令を飛ばした。
「へいへい、行ってくるからここで待ってろ」
「あ、私も行くよ」
集は渋々ながらといった感じでアミヤとともに受付に任務の受注に行った。
残りの三人が集とアミヤの帰りをイスに座って待っていた。
「あれ? どうして、こんなとこに8組がいるのかな~?」
声が聞こえた方向へ振り返ってみるとそこには制服の胸のあたりに
刺繍をつけた一組の男性生徒が3人ほどたっていた。
「な、何よ。あたしたちも任務を受注しにきたのよ!」
「おいおい、ここはギルド最強と謳われている
所だぜ? そんなとこに雑魚が来ても難しすぎて出来ないんじゃないのか~?」
「違うぞ、ギルス。こいつらはDランクだから雑魚相手にしかしないぞ」
「あ、そっか~ごめんね~君たちはDランクだったっけ~」
一組の男子どもは口では謝っているがその顔は謝っているような顔ではなかった。
「てめえら!」
ゼロが胸倉をつかもうとしたが誰かに止められてしまった。
「集!」
「止めておけ、ゼロ」
「そうそう、所詮君たちは平民なんだから
貴族の俺たちには勝てないの」
「こいつらを殴ったら、お前までこいつらと同じようなカスになるぞ」
「な、何だとお前!?」
ギルスと呼ばれた者は集の言ったことが気に入らなかったのか
彼に突っかかるが集はそれを無視して全員を連れていった。
「任務は受注し終わった。さっさと行くぞ」
「あ、ああ」
「そ、それはそうと今から行く村ってどこにあるの?」
アイリスが場の空気を読み話題を変えようと今から行く任務の内容を聞いた。
「この近くにあるメリル村って言う所。
そこの村は自然が多くて多くの魔物と共生してる場所だとさ」
魔物の中には人を襲う個体もいるのだが中には人と共生
することを望む個体も存在しており、村の中にはその個体たちと
共生し、毎日を過ごしているという。
「でも、ゴブリンてさ普段は山の奥に住んでるんだろ?
なのに何で山から降りてきてんだよ?」
「さあ? でも、困ってんだからそれを助けに行く。
ほら、見えたぞ。あそこだ」
集達の目の前に、自然に囲まれた村が見えてきた。
「綺麗なところね~」
皆が自然に目を奪われていると向こうから
一人の老人がやって来た。
「貴方達が依頼を受けてくれた方々ですね?」
「ええ、そうですが貴方は?」
「私はこの村の村長です」
村長と名乗る老人は集たちに頭を下げると集たちも慌てて頭を下げた。
「あ、村長ですか。この班の班長の如月集です」
それぞれ自己紹介した後、村の小屋に案内された。
「どうぞ、入ってください。ここは私の家です」
「お邪魔します。それで、詳しい内容をお聞きしたいのですが」
集達は用意された椅子に座り、詳しい状況を聞いた。
「ええ、あれは1か月程前の事です。
いつも通り畑を肥やしていると突然、叫び声が聞こえて
見に行ったらゴブリンが家を荒らしてたんです」
「はあ」
「その時は2,3匹だったので、追い払えましたが今度は数で攻めてきて
我々ではどうにもできなくなって頼んだんです」
「そうですか……大体何時くらいにいつも来るんですか?」
アミヤが気になった事を質問した。
「もうすぐ来るころなんです」
『え!?』
すると、村の方から叫び声が聞こえてきた。
「村長! 大変です! また、奴らが!」
「皆さん、お願いできますか?」
「分かりました。行こうか」
それぞれの武器を持ってゴブリンが来ているという場所に行った。
「こっちです!」
そこにはかなりの数のゴブリンが来ており、村の田んぼなどを
持っている金棒のようなものでグチャグチャにしていた。
「行くぞ!」
それぞれの武器を出しゴブリンに向かって行った。
(そういえば皆の魔法と武器を見るのは初めてだな)
「行くよ!」
アミヤはポケットから銃を取り出し、魔力を込めて
引き金を引くと炎の弾丸が発射された。
「ぐぇぇぇぇ!」
被弾したゴブリンに弾丸の炎が燃え移り
ゴブリンを燃やし始めた。
「やるじゃない! アミヤ! 次はあたしよ!」
アイリスはブーメランを取り出し、魔力を通して投げると
刃の部分からバチバチという音が聞こえ、ゴブリンを真っ二つに
斬り裂くとアイリスの手元に返ってきた。
「俺も行くぜ!」
ゼロは刀を抜いて、水の魔法を流し込み刀を振るうと水の斬撃が飛び
ゴブリンを真っ二つにするだけでなく地面にまで斬った跡が入っていた。
(高圧水流をぶつけてるのか)
「次は俺だな」
ロックは地面に手を置き、魔力を流し込むと
地面からツルが生えてゴブリンを締めあげた。
「集、後は頼んだ」
「あぁ!」
集は刀を抜くと魔力を流し込まずに
そのままの状態で次々にゴブリンを切っていった。
「こんなもんかな?」
集が最後の一匹を仕留めてようやく討伐は終わった。
「それにしても多すぎやしないか?」
地面に倒れているゴブリンの数は軽く二十は超えていた。
「ゼロの言う通りだな。こんなにもゴブリンが一斉に
降りてくるものなのか?」
「こんなもんじゃないのか?」
「いや、ロック君の言う通りだよ集君。
ゴブリンは本来は少数で群れを作ってそれを
いくつも作るんだけど、こんなにも多い群れは初めて見るよ」
アミヤ曰く、ゴブリンという魔物は二~五体ほどで小さな群れを作り、
行動しているらしく、十や二十で行動するものではないらしい。
「ねえ、確かゴブリンてさ自分よりも強い生き物が現れたら
そこから離れる習性があったわよね?」
「それがどうかしたのか?」
「これは仮定の話だけどゴブリンの巣に
何か強大な魔物が現れてこの村に降りて来たとか」
アイリスの意見を聞いたロックは少し、考えるとこの後の決定を集に尋ねた。
「……有り得るな。どうする?集」
「一旦、この事を先生に連絡しておこうか」
「うん。そうだね」
アミヤがポケットから水晶を出しフィーリに
通信を繋げようとした時、村の人々が騒ぎ始めた。
「ん? なにかあったのか?」
「あ、あの!」
「落ち着いて下さい。何があったんですか?
ロックが女性を落ち着かせると、女性は泣きながらこういった。
「娘がいないんです!」
「まさか、森に入ったのか?」
「もし、そうだとしたら今の森は危険すぎるよ!
危険な魔物もいるかもしれないのに!」
「くそ!」
集は突然、叫んだかと思うと森の方へ走って行った。
「集君!」
アミヤもそれに続いて行ってしまった。
「ちょ、ちょっと集! アミヤ!」
「お前達はこの事を先生に連絡しておいてくれ!」
そのまま二人は森の中に入ってしまった。
「ひとまず、この事を先生に伝えるぞ!」
「今してる!」
ロックが水晶を出しフィーリにつないでいた。
『あら、もう終わったの?』
「違うんです! 実は」
ロックはすぐに今までの事をフィーリに話し始めた。
『分かったわ。すぐにそっちに私が行くから何もしないでおいて』
「い、いえ実は」
『……まさかと思うけど、如月君は一緒にいるわよね?』
ロックの言いかけたことに一拍、間をあけて水晶から少し怒ったような
声音のフィーリの声が聞こえてきた。
「……いません」
『あ~もう! 貴方達は待っていなさい!』
それを最後に通信は切れた。
「多分、集は説教くらうだろうな」
『同感』
ロックの言ったことにゼロとアイリスは同時に共感の意を示した。
「何でアミヤまで来たんだ!」
「集君だけじゃ不安なんだもん!」
集とアミヤは森の中を走りながら言いあっていた。
「でも、何で森なんかに」
「それは多分、ゴブリンを倒しに行ったんじゃないのか?」
「え?」
アミヤが集が言ったことに少し、驚いたような声をだした。
「村を荒らされて許せなかったんだろう。だから、入った」
「そっか……でも、何となく分かるかな」
「どうして?」
集はアミヤの言ったことを聞いて思わず立ち止まってしまった。
「私もね村出身なんだけど、魔物に襲われてこっちに来たから」
そういう彼女の顔は少し、悲しそうな表情をしていた。
「そうか……悪いな」
「ううん、良いよ別に。それよりも探そう」
「ああ」
二人はさらに森の奥に入っていくと目の前に少女が見えた。
「見つけた!」
「あの子だね」
その少女は手に鍬を持って鬼の形相を浮かべて何かを探していた。
「お~い。そこの君!」
「お姉ちゃんたちは誰?」
「私達はね君のお母さんに頼まれて探しにきたんだよ」
「私はあいつらをやっつけるまで帰らない!」
「あのな~……危ない!」
「きゃあ!」
集が言いかけた時、何かに気付き二人を引き寄せた。
―――――グッシャァァン!
すると、二人がいた場所に何かが放たれ地面に大きな穴があいて
辺りに砂埃が立ち込めた。
「うわぁぁぁぁん!」
少女は目の前のいきなりの破壊に恐怖を抱き、泣き始めてしまった。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんたちがいるから!」
「やばいな」
アミヤが必死に少女を宥めている中、集達の目の前に巨大な魚の様で鋭い牙を持った魔物が現れた。
こんばんわ!!ケンです!!
如何でしたか?
アクセスは多いのにユニークが中々伸びない。
やはり、面白くないんでしょうか?
まあ、そんな事は気にせずに更新していきます。
それでは!!