第10話 しっくり来る刀
「これはどうだ?集」
「ん~」
集は今、ゆえと共に武器屋にいた。
何故、そんなとこにいるかというとそれは朝にまで時間を遡る。
「ふぁぁ~おはよ、ゆえ」
「ああ、おはよ」
結局、鍛錬は曜日毎に行う事になり今日は、学校が休み+鍛錬も無い為、
集はゆっくり寝ようかとも、思ったが
自然といつもの起きる時間に起きてしまった。
居間に行くとゆえもいつも通りに起きていたらしく
集よりも一足先に朝食を食べていた。
「集、今日は出かけないか?」
「ふぇ? 今日?」
集はゆえの提案にみっともない声をだして驚いていた。
まさか、彼女から出かけようと誘われるとは思っていなかったのである。
「もちろんだ。ここら辺をまだ案内していなかったからな」
「ん~いいや。今日は一日ダラダラ」
―――――ガシィッ!
集が二度寝をする為に部屋に戻ろうとすると
肩を女の子の握力とは思えないような握力で掴まれた。
「い、痛い! 痛いから、ゆえ!」
「行くよな? 集」
「……はい」
ゆえの凄まじいオーラに怖気つき、なくなく従う事にした。
「ふむ。よろしい。ならば、さっそく準備だ!」
「お、おう」
集は二度寝を諦め外出の準備をした。
という事で二人は初めて会った時に、立ち寄った市場にいた。
休日ともあってか大勢の買い物客で賑わっていた。
「相変わらずここは、賑やかだな」
「そうだな。前も言ったと思うがここは
コラリスで最も規模が大きいと言われてる市場なんだ」
「それで、どこに行くんだ?」
「ああ、もうじきギルド任務があるだろう?
集はあまり、人前で魔法は使えないからその為だ」
「ああ、成程」
その後、雑談をしながら何分か歩き、武器屋が集まってる地域に着き
ゆえと集はその内の一軒のお店に入った。
「いらっしゃい。おや? これはこれは、ゆえさんじゃないですか」
「お久しぶりです。店長」
初老の男性が店に入ってきた二人をもてなした。
この店はゆえが、今使っている刀を購入した店でお勧めらしい。
「今回はどのような用事で?」
「ああ、彼の武器を買おうかと
思ってるんですが見て回っても良いですか?」
「ええ、どうぞ。ごゆっくり」
集とゆえは店内を見て行った。
「これなんか、どうだ? 集」
ゆえが勧めてきた物は長めの剣だった。
「これは?」
「これは、魔法の伝達率が最高クラスなんだ」
「魔法の伝達率って?」
「伝達率というのは、その武器にどのくらい魔法を
伝えやすいかという指標だ」
集の頭の中にゆえがいつも刀に炎を纏わしている姿が思い浮かんだ。
「つまり、魔法を纏わせるという事?」
「まあ、そんな感じだ。武器だけで戦っても相手に傷は付けられるが
それだけでは勝てないからな」
「ふ~ん」
「どうだ? 集」
集はゆえから刀を受け取り一旦、持ってみたがすぐにゆえに返してしまった。
「ん~何かしっくりこないんだよね~」
「そうか……なら他を探してみるか」
「ん~これもしっくりこないな~」
「またか? もうこれで、この店の物は全部見て回ったぞ?」
あれから十分ほど、店に置いてある刀をすべて見まわったが集がしっくりくる刀が
見つからなかったらしい。
「おやおや、どうやらしっくり来る物が無かったようですね」
すると、後ろから店長が杖をつきながらこちらにやって来た。
よく見ると右足が義足だった。
「では、店の裏にある倉庫を、見ては如何ですか?」
「良いんですか? 店長」
「ええ、武器は一番しっくり来るものでないといけませんからね」
店長に案内され、集とゆえは店の裏にある倉庫に入った。
「もしお気に召したものがあれば言って下さい」
「はい、ありがとうございます」
そう言い残して店長は杖をつきながら店内に戻って行った。
集はお言葉に甘えてと言わんばかりに床などに散乱している刀に
触れていくがしっくりくるものが見つからないらしく、どんどん奥の方に入って行った。
「ん~中々無いね~しっくり来る物が」
集は武器の山を漁ってると気になったものが見えた。
「ん? これは」
集は何かに惹かれるように武器の山に埋もれた刀を探していった。
「どうした? 集」
「うん、ちょっと気になったものがあってな。抜けねえな」
「手伝おう」
ゆえも手伝いながら武器の山を、退かしていくと一本の刀が出てきた。
「これか? 集の探していたものは?」
「ああ。それだ」
鞘には長い間放置されてきたのか埃がかなり被っていた。
「しっくり来る物がありましたかな?」
「店長。この刀は?」
集が店長に持っている刀を見せると店長はメガネをかけて刀を見た。
「あ~これは確か何十年も前に売られてきた物ですよ」
「ぜ、全部覚えてるんですか?」
集は驚いたように聞き返した。
「ええ。店の武器の事は全部覚えていますから。
それにしても、よくこんな古い刀を見つけてきましたね」
「ええ、まあ」
集は試しに刀をぬいてみるとやはり鞘と同様、かなり錆びつていた。
「おお~何だかわからないけどしっくり来る!!
ゆえ! 俺はこれを買うぞ!!」
「べ、別に良いがいいのか本当に?」
ゆえが心配するのも無理はなかった。
なんせ、その刀は錆だらけで真っ黒だったのだ。
とても実戦で使える刀には見えなかった。
「俺はこれがいい!」
まるで幼い子供がプレゼントを貰ったかのように集は大はしゃぎしていた。
「ああ分かった。店長、おいくらですか?」
「いえ、お金はいりませんよ」
「え? でも」
ゆえはポケットからお金が入っている袋を出そうとするが店長に止められてしまった。
「良いんですよ。もうすぐ、あの倉庫の武器は廃棄処分
するつもりでしたから。それに、刀も喜んでいます」
「そうですか……分かりました」
そのまま、二人は武器屋を後にして再び市場に出かけた。
「……貴方の言うとおりあの刀の所有者は見つかりましたよ」
店長は二人を見ながら懐かしそうに呟いたがその声は
誰にも聞こえない。
あれから、市場の散策を終えた二人は一旦
家に帰った後、昼ごはんを食べ、学園の地下鍛錬場にいた。
「では、集。これから剣の鍛錬をするが良いか?」
「いいよ。今日は別にやることもないしね」
「分かった。まずは魔力を刀にのせてみろ。こういう風に」
ゆえは刀を抜き、魔力を流し込むと
炎が伝わり、まるで刀が燃えているように見えた。
「魔力を刀に流し込むんだ。やってみろ」
「分かった」
集も刀を抜きゆえの様にしようとしたがまったく魔力が流れなかった。
「あり?」
「どうした? 早くしないか」
「い、いやしてんだけど。むむ、この!」
魔力を流してみたが何も変化は見られず、集がありったけの魔力を
乗せた途端、錆びだらけの刀身が光り始めた。
「何をしている!? 集!」
「わ、分かんねえよ!」
二人が騒いでいるうちに錆が一気に吹き飛んだ。
「こ、これは」
「白い刀?」
錆だらけだった刀は先程とは変わり全てが白色に変わった。
刀身は勿論のこと、持ち手の部分までもが純白に変わった。
「きれいだな」
「だが、そんなに白い刀は初めて見る」
集は試しに刀を振った。すると……
――――――パキパキパキィィ!
「うぉ!」
刀から氷の魔法の斬撃が出て一気に辺りを凍らせた。
「な、なんて威力だ」
「ゆえ。模擬戦しようか」
「集?」
突然の提案にゆえは疑問を抱いた。
普段の彼ならばいきなり模擬戦など提案することはなかった。
「闘ってみたいんだ。この刀と共に」
「……分かった」
ゆえは集の真剣な顔を見て刀を抜いた。
「「行くぞ!」」
同時に動き出し、炎と氷がぶつかった。
「つ、疲れた」
「ああ、私もだ」
結局、あの模擬戦は引き分けとなりその後に、刀の扱い方をゆえに教えてもらい
今日はそれまでにして家に帰宅し、今は夕食も食べ終わり、寝る時間だった。
「なあ、ゆえ」
「何だ?」
「明後日だったよな? ギルド任務って」
「ああ、そうだな」
「そっか……楽しみだな。御休み、ゆえ」
「ああ、御休み」
鍛錬で疲れていたのか二人はそう時間もかからずに眠りに落ちた。
こんばんわ!!ケンです!!
如何でしたか?
やはり、自分は文章で表現するのが下手ですね。
こんな作品をお気に入り登録、してくれた方には
感謝です!!
感想もお待ちしておりますのでよろしければ、
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それでは