第9話 ギルドと蘇りし闇の王
「失礼します」
「どうぞ」
シュウの決闘が終わった数時間後、理事長室にフィーリが真剣な表情をして入ってきた。
勿論、外に声が漏れないように防音用の魔法を施して。
「それでどうだった?」
「はい。如月君ですが命に別条はないそうです」
それを聞いた理事長はホッと一安心をつくが、すぐにまた厳しい表情へと変えた。
「そうか。もう片方は」
理事長のその言葉にフィーリは何も言わず、首だけを左右に振った。
「そうか……死因は?」
「医師によると魔力が完全に体から無くなったことによるものだそうです」
「そうか…ありがとう。引き続き頼む」
「分かりました」
「今年は厄介なことになりそうだな」
理事長は苦虫を噛み潰した様な顔をした。
(………ここは?)
集はうっすら目を開けると薬品のニオイが感じられた。
(えっと、確か……ワルロスと戦ってて、それで何かに刺されて)
徐々に頭が冴えていき起き上がろうとするとお腹辺りに重さを感じて起き上がれなかった。
(ん? 何か乗ってる?)
目線をお腹に向けると見慣れた赤い髪が見えた。
そして数秒後、ようやく理解した。
ゆえがお腹を枕にして眠っていた。
「ゆえ?」
「集? ……起きたのか!?」
集が声をかけるとゆえは目を擦りながら起き上り、彼の姿を
視界に映すと同時に驚いた。
「あ、ああ」
「大丈夫か!? どこか痛む所とかは!?」
「お、落ち着けって。別に痛むところもないし」
「そ、そうか良かった」
集の一言にゆえは安心したように胸を撫で下ろした。
「全く、倒したつもりで不意打ちを食らうとは。まだまだ、鍛錬が足りんようだな」
しかし、先ほどまでの柔らかい雰囲気が一変し、いつものピリピリとした
雰囲気に変わってしまった。
「ああ、そうだな。それよりもあの黒いものは何だったんだ?」
「さあ、分からん。今、先生方が調査をしてくれているのだろう」
「ふ~ん」
―――――バコォォォン!
「ん?」
すると医務室のドアが思いっきり蹴破られた。
「大丈夫かしらーー! 集!」
「ライカ……うるさい……病室……響く」
「そうだよ。フォレスの言う通りだよ」
蹴飛ばされたドアからライカ、フォレス、ルーラが病室に入ってきた。
「大丈夫? 集?」
ルーラが集に近づいていき、彼の手を握って心配そうに見つめた。
「ああ、もう大丈夫だよ。心配掛けてごめんね」
「ううん。でも、良かった……私が食べる前に死んでもらっては困るしね……」
何やら不吉なことを言っているように聞こえた集だが、ルーラの姿から
それは聞き間違いだろうと考えて、聞き返さなかった。
「にしても、あんた、よくあんな奴と闘えたわね~」
ライカが不思議そうに質問した。
「うん、まあ、観客席の皆が、危なかったから無我夢中……でな」
「かと言ってそれで命を落としたら元も子もないぞ」
「分かってる。これからもよろしく頼むぜ? ゆえ」
「あ、ああ。任せろ!!」
満面の笑みを浮かべて礼を言ってきた集にゆえは少し顔を赤くして了承した。
とある場所にて10人ほどの人物が集まっていた。
その場所は光は一切なく、すべてが黒一色に統一されている会議室のような部屋だった。
椅子も、机も、建物の壁も床もすべてが黒だった。
「それであの方は?」
「ああ、まだ完全に復活なされるには足らないが
順調に魔力を蓄えておられる」
部屋になかには三人ほどだろうか、若者がいた。
するとドアが開かれ一人の男性が入って来た。
『お帰りなさいませ! マスターハデス!』
部屋に入ってきたものを確認するや否や部屋にいた全員が座っていた椅子から
立ち上がりはですと呼び男に頭を下げた。
ハデスと呼ばれた男は手で全員を座らせ椅子に座った。
「皆、解放してくれた事に感謝する。封印されてから何年たった?」
「三十年でございます!!」
「そうか……あ奴のせいで、魔力をほぼ失い封印された。
だが、お主たちのお陰で再びこの世に復活できた。
まだ、魔力を取り戻すのに時間はかかる。そこでお主たちに、
当分は組織の指揮権を与える。その間は自由にしてくれて構わん」
『はっ! ありがたき幸せ!』
その言葉をハデスが言った瞬間、全員が跪いた。
翌日には医務室の先生から、学校に行っても良いと言われ
集は翌日から学校に行った。
先生によると治りが早く傷が既に塞がったらしい。
それでも、異常だと言われてしまった。
そんな事は気にせずに
教室に入ると、一番にゼロに話しかけられた。
「集! 昨日、お前大丈夫だったか!?」
ゼロの大きな声で全員が心配そうにこちらを見た。
「ああ、大丈夫だ! だから、みんな心配すんな!」
集が大声でそう言うと皆、安心したかのように喋り始めた。
そして、チャイムが鳴り全員が席に着いた。
「は~い、皆おはよう」
『おはようございます!』
教室に入ってきたフィーリが挨拶をすると全生徒が大きな声で元気よく挨拶をした。
「今日の連絡は一つだけよ。もうじき、
学校生徒によるギルド任務が近づいてきてるから
その班分けを6時間目にするわ。誰と組むか
相談しておいてね。それと如月君は昼休みに理事長室に行って頂戴」
「分かりました」
「今日の連絡は終わり。皆、今日も一日頑張ってね」
フィーリが出て行くと同時に教科担当の先生が入って来た。
―――――キーンコーン、カーンコーン
「む。終わりか、まあ良い。この続きはまた次回だ」
そう言い先生は教室から出て行った。
「ゼロ。ギルドって何だ?」
集が隣の席のゼロにそう尋ねるとゼロは大きなため息をついて呆れていた。
「おいおい、世間知らずにも程があるぞ」
「悪い」
そうは言いつつもゼロは集にギルドについて分かりやすく話し始めた。
「ギルドって言うのは簡単にいえば任務を受けるところだ」
「ハァ。任務というと?」
「種類はたくさんあるぜ? 魔物の退治だったり村の困っていることを解決したり。
そして任務にはランクがあって決められたランク以上じゃねえと受けられねえんだ。
ランクは主に依頼の数をこなしていくか、そのランクの中で
最も難しい依頼を成功させたりしたら上がる。
ちなみにそのランクはこういうギルドカードってので確認できる」
ゼロはポケットから一枚のカードを
取り出すとそこには顔写真と、その隣にランクが書かれてあった。
書かれている文字はDだった。
「一緒に組まないか?集」
「ん~まあ、このクラスで一番仲が良いのはゼロだし組もうか」
「決まりだな。後はまあ六時間目で決めようぜ」
「了解」
喋っていると授業開始に時間を知らせるチャイムが鳴り響き、
教室に先生が入ってきた。
とくにそれからは何も起こらず、集は理事長室の前にいた。
「失礼します」
「どうぞ~」
ドアを数回ノックすると中から理事長の声が聞こえたので入っていった。
「やあやあ、集君。昼休み中にごめんね」
「いえ、別に。それで何でしょうか?」
「ふむ。君のギルドカードが出来たからね。それを渡そうとね」
そう言いながら近づいてきた理事長から集は姿勢を低くしてカードを受け取り、質問した。
「それならフィーリ先生から直接貰った方が早いのでは?」
「私が集君にここに来てもらったのはそれだけが理由じゃないんだ」
「え? そうなんですか?」
てっきりこれだけだと思っていた集は理事長の言ったことに驚きを隠せないでいた。
「ああ、その前に」
理事長が指を鳴らすと何か奇妙な感覚がシュウを襲い、また戻った。
「理事長?」
「ああ、すまない。これは防音用の魔法でね。
あまり君以外には聞かれたくないんだ。まあ、座りたまえ」
理事長に言われて集は近くにあった椅子を取り、
机をはさんで理事長の真正面に座った。
「それで言いたい事って?」
「ああ、この前の決闘の時、君が
戦ったものがあったね? その事についてだ」
「――――――ッッ!」
集の体が一瞬、強張った。
その顔色はいささか青白く、彼の額から冷や汗が滴り落ちていた。
「大丈夫だ。落ち着いてくれ」
「は、はい」
理事長はそう言いながら彼の頭をなでて落ち着くようになだめた。
「あれの事だが、もしも、また会ってしまった場合は
すぐさま逃げるんだ。何があっても」
「どうしてですか?」
「すまないが今はまだ、言えない。だが、これだけは言える。
君では絶対に勝てない。そんな相手なんだ」
「……分かりました。出来るだけ逃げるようにします」
理事長の言うことに集は渋々ながらも了承した。
「ああ、そうしてくれ。言いたい事はそれだけだ」
「はい。失礼します」
理事長が魔法を解き集は部屋から出て行った。
「まだ、奴は完全には、復活していない。その間に
私が封印しなければならんな。それが、君の母様から頼まれたことだ」
こんばんわ!!ケンです!!
実はさっきまで今までの話を修正していました!!
どうも、主観的にしか見れないもんですから。
友達にかなり矛盾点を言われて修正しておりました。
如何でしたか?
感想もお待ちしております!!
それでは。