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抱きしめた、蒼-episode 霧谷 歩-

作者: ymsktkshi.jp
掲載日:2026/10/29


ねぇ、みんなにはいる?

親友、盟友、戦友、それに旧友って呼べる人……。


僕は学校で、転校生くんって呼ばれることが多かったんだ。

えっなぜかって? それは父さんの仕事の都合。


今まで何回転校したのかって?いちいち数えてない。


そんな暮らしに疲れた母さんは、父さんと離婚した。


そして、僕を育てるため心臓が弱いくせに、無理を重ねてきた。そのせいで母さんは、僕が中三のとき天国へ旅立ってった。


母さんはいつも、僕に友達がいないことを気にしてた……。


隣の席になった人と、アニメの話で毎日たのしく盛り上がった。この人が親友かも?

「昨日のあのシーン、すごかったね」

「見た!見た!あのシーンってさ、主人公がさ……」

だけど、一か月後の席替えを境に、僕たちは話さなくなった。


宿題を忘れていったとき、後ろの席の人が答えを貸してくれた。この人が盟友かも。

「やばい、宿題やってくるの忘れた……」

「あれ、転校生くん、やってないの? これ貸してあげるから、写しなよ」

だけど、三か月後、僕はまた転校しそれっきりだった。


体育祭の騎馬戦で三人の仲間ができた。本気で相手の帽子を取りに行って、返り討ちにあい、みんなで笑いあった。この三人が戦友かも。

「いくぞー!!」

「俺たちで全部、帽子を取り上げろー!!」

「オォー!!」

だけど、一年後には、その輪の中に僕はいなかった。


こんなんだから、旧友なんているわけがない。



母さんに連れられて、祖父母の家に落ち着いた頃には、中学生になっていた。



そこで見つけた、不思議な人。

先生の言うことなんて聞く気もなく、いつも窓際の席から、ボーっと空を眺めながらイヤホンで音楽を聴いているような人。

クラスメイトに注意されれば暴れ出し、やりたい放題。

教室から出ていったかと思えば、給食の時間になると戻ってくる。


そんな不思議な人だった。


僕はもう、この先もきっと、親友も盟友も戦友も…旧友も作れないと思っていた。


だから、いつの間にか一人でいることを選んでいた。



そんな僕が、あの文化祭で不思議な人が歌った歌に自分を重ね、泣いたことは誰にもまだ言っていない。



いつしか、不思議な人は未來という人になって、僕たちは仲良くなっていった。


もしかして未來がずっと探していた友なのかもしれない。


そう思ったら、未來に無性に聞いてみたくなったんだ。



『ね、未來はさ』

『なに? なに? また急に』

『親友とか盟友とか戦友とか、うーん、旧友とか、そう呼べる人っている?』

『なに? なに? それ?』

『だから……』



そう聞きたくなったけど、やめた。



きっと未來ならこう言って終わるだけだから



『そういうの、どーでもいい』



ってさ。



『あははは、そうだねッ』



僕もきっと、そう答えるだろう。



……どーでもいいように。




完



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