第一章3 『いずれの陣営に集うか』
「おい、あんた。友よ、道中を共にした仲だ、見殺しにはしないぞ」
カールはエリカを抱え起こし、歩くのを手伝いながら一軒の家に向かった。その家の中には、虜囚であるティティス将軍や他の囚人たちがいた。
「将軍、泥の魔術師の伝説は本当だったのですね」
「伝説とは、本来実在しないものなのだがな」
革命軍の男たち、そしてエリカが避難していた家に、泥人たちが雪崩れ込んできた。武器を持たない男たちは拳を振るって戦った。奴らを倒すこと自体は容易かった。泥人は戦う分には脆い化け物だったが、問題は何度でも蘇ることだ。完全に殺し切ることは困難だった。長引けば人間の体力は尽き、いずれこの化け物どもに殺されてしまうだろう。
「一刻も早く村から脱出し、革命軍の拠点に合流しなければ」
「はい……将軍。……友よ、俺たちの仲間に加われ」
その言葉は間違いなく私に向けられたものだった。だが、彼らに加わるべきなのだろうか? そもそも、なぜ彼らはそこまで憎まれているのか?
「砲撃が収まったぞ。外に出よう」
エリカを含め、全員が家から出た。彼は今や不本意ながらも、この革命軍の者たちと運命を共にしつつあった。
「くそっ、砲撃で城壁が崩されている。逃げ場がないぞ!」
「将軍、あの塔へ向かいましょう」
皆で半壊した塔へと向かう。その間にも、泥人たちはナタンギア領の衛兵と交戦し、あるいは無抵抗の哀れな民衆を嬉々として虐殺していた。まさに大殺戮だった。一行はついに塔の中へ逃げ込んだ。
「上へ行くぞ」
全員で階段を駆け上がる。背後からは泥人の群れが迫っていた。
「将軍、ここは我々が食い止めます」
「同志たちよ、また会えることを願っている」
「カール、私は転移魔法を使える。あの者を我らの同志となるよう説得してくれ」
「了解しました、ティティス将軍」
ティティスの目隠しが外されていた。あれは彼の転移魔法を封じるためのものだったのだ。彼の両目から紫色の煙が立ち昇り、塔の石床へと向かうと、象形文字の描かれた魔法陣を形成した。そしてティティスはその中へ足を踏み入れ、姿を消した。
「さあ、友よ。あそこにある二つの塔が見えるか……あそこへ向かうぞ」
カールは、まだ無傷で残っている二つの塔をエリカに指差した。
「行け、友よ! あの家へ飛び移れ!」
エリカは生存本能に従って跳躍した。着地した際、受け身に失敗し、机の脚に頭を強打した。
「痛っ、痛たた……!」
彼は立ち上がり、爆発石によって開いた穴から下へと降りた。そして家の外へ出る。外に出るとカールの姿はなく、代わりにあの鉄の鎧の女が、化け物ども相手に勇敢に戦っていた。
「そこのお前、囚人だな。私について来い」
エリカは今度は別の陣営に巻き込まれることになった。
「私が突破口を開く、その後は全力で走れ。『エルド(炎)』!」
女の両手から激しい炎が噴き出し、泥人たちを焼き尽くした。
「すぐに火が消えるぞ、行くぞ!」
女とエリカはついに二つの塔に辿り着いた。だが、そこにはカールもいた。
「友よ、そいつらはお前を殺そうとした奴らだ。我々の革命軍に入れ」
「呪われし糞カルクス主義者め……お前たちは自分たちの思想を拒んだ罪なき人々を、すでに大勢虐殺しているだろうが」
「それは嘘っぱちだ」
リンゴ・エリカは選択を迫られていた。革命軍か、ナタンギア領か。一方は自分に親切にしてくれたが、もう一方は自分を殺そうとした。だが、女の「罪なき人々を虐殺した」という言葉を聞いて、エリカは彼らの親切が自分を仲間に引き入れるための罠だったのではないかと考えた。その時、再びかつての「リンゴ・エリカ」の曖昧な記憶が蘇った。今度は、ある言葉が頭に響いた。『俺は共産主義者が大嫌いだ』
知らず知らずのうちに、リンゴ・エリカはこの世界のカルクス主義者=共産主義者であること、そして「自分」が何よりも共産主義者を憎んでいたことを理解した。ならば、彼らに加わるのは理にかなっていない。すぐ隣にチョコレートがあるのに、わざわざ野菜を食べる子供はいない。もちろん、誰かに無理やり野菜を食えと命令されれば別だが。
「鎧の女の方につく」
「この裏切り者め!」
「賢明な判断だ」
リンゴ・エリカは鉄の女の側に立った。二人は左側の塔へと入る。入り口で、女は木の棒を使って扉を封鎖した。
「これで泥人どもは入ってこれないだろう……私は『鉄のクララ』。お前は……」
『俺は誰だ?』
「私は……リンゴ……リンゴ・エリカだ」
「エリカの方が短くていいな……よし、あとは軍の兵舎を抜けてこの塔から脱出するだけだ……それからジュールの館へ向かう。泥人どもが襲撃してきたということは、何か異常事態が起きているはずだ。隣の部屋へ行こう」
二人は蔦に覆われた石造りの狭い通路を歩いた。辿り着いた隣の部屋は、武器庫だった。
「鎧を選べ」
三つの選択肢があった。クララと同じ鉄の鎧か、軽そうだが防御力のある銅の鎧か、そして最後はただの平民の服だ。エリカは銅の鎧を選び、それを身につけた。
「いいだろう……だが武器がないな。ここには残っていないようだ」
クララは部屋を漁ったが、武器は一つも見つからなかった。
「魔法は使えるか?」
「いや」
「『エルド』と唱えてみろ」
「エルド」
何も起きなかった。
「炎の魔法には適性がないのかもな。次は『ヴァトン』だ」
「ヴァトン」
何も起きなかった。
「水の魔法も駄目か……うーん、じゃあ『ヴィンドル』を試せ」
「ヴィンドル」
小さな竜巻が発生し、机の上にあった杯を吹き飛ばした。
「風の魔法に適性があるようだな。珍しい」
突然、足音が聞こえてきた。
「しっ、隠れて」
「よし、カールは逃げ切ったぞ……奴らが追えないようにしろ」
クランクを回す音が響き、鉄の格子門が降りてきた。
「おや、武器庫だ」
「エリカ、私が斬り込む。お前も魔法を使って戦うんだ」
クララは立ち上がり、二人の革命軍兵士の前に姿を現して剣を抜いた。エリカもそれに倣って構える。戦闘が始まった。
「ヴィンドル!」
エリカの手から放たれた突風が二人の革命兵を吹き飛ばして転倒させ、すかさずクララが彼らの心臓を刺し貫いた。一瞬の戦いだった。
「うわっ、お前の風は強烈だな……まあいい、あの扉が見えるか? 出口だ」
「行こう、クララ」
二人はついに、大殺戮の舞台となった砦から脱出した。外へ出ると、エリカの視界に巨大な雪山が入り、その頂には白い塔が聳え立っていた。そして頭上を見上げると、ドラゴンの群れが飛んでいた。
「くそっ……見ろ、奴らドラゴンまで持ち出してきたぞ」
泥人たちは姿を消し、後には炎に包まれた砦だけが残されていた。
「急いでムソローネ王にこの事態を知らせなければ」
「ムソローネ?」
「ああ、イアタロス王朝のドゥーチェ・ムソローネだ」
「ナタンギア領の王か」
「その通りだ」




