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和平の魔王――ピリオス。
第八世代目の魔王。
もし歴史の教科書に載るなら、
おそらくこう記されるだろう。
臆病者の魔王。
魔王と聞けば、
破壊、虐殺、蹂躙。
そういうものを想像するのが普通だ。
だが、個人的な意見を言わせてもらえば、
それをする理由が分からなかった。
相手を殺そうとすれば、当然、抵抗される。
戦争とは、基本的に損しかしない行為だ。
敵を倒し切ったとして、
こちらの損害はどうなる。
兵は? 食料は?
勝った後の統治は?
その先まで考えるなら、
戦争はしない方がいい。
だから俺は、和平の道を選んだ。
先代の魔王については、書物でしか知らない。
だが、どの魔王も和平という選択はしなかったらしい。
魔王らしい魔王の道を辿り、
そして、勇者に殺されている。
勇者の作戦は、実に見事だった。
和平交渉のために、俺を自国へ招く。
書類にサインする、その瞬間。
外から、最大火力の一撃を叩き込んできた。
国は半壊しただろう。
民も、多く死んだはずだ。
だが結果として、
魔王は殺せた。
さらに、自国の人口は減り、
食料問題も解決できる。
簡単に言えば――間引きだ。
いやはや。
恐れ入った作戦だった。
俺の願いは、ただ一つだけだった。
平和に朝のコーヒーを飲み、
昼寝をして、
うまい飯を食うこと。
だから、和平を選んだ。
その方が、コストパフォーマンスが良かったからだ。
勇者に対して、恨みはない。
あちらの選択が、
俺の選択を上回っただけの話だ。
ただ――今回は違う。
殺し切ることが、最終目標なのであれば。
和平という選択肢が存在しないのであれば。
俺は、
全身全霊をもって、殺す。




