97、しょんぼりアローゼ子爵
「ってな訳でだ、必要な分のミスリルは確保出来たのじゃ」
アローゼ子爵は思いの外、純度の高いミスリルが手に入った事と欲しい分は確保出来たのとでホクホク顔で俺の前にいる。
あと2日くらい未採掘のミスリルの探索をして、王都に帰るそうだ。
「それでじゃな…」
アローゼ子爵が従者のカニャクさんと目配せしているのが気になるんだけど…
「リコルをわしに譲ってはくれないか」
「へっ?」
俺は貴族相手に突拍子もない声をかけて出してしまった。
いや、これは俺のせいじゃないぞ?
いきなり、リコルをくれとかいうドワーフ子爵が悪いんだ!って思わずドワーフとか言っちゃったけどさ!
「いや、分かっとる!リコルは大事な仲間じゃろ?それは分かっとるのだ!しかし、しかしのう…リコルは本当に優秀なのじゃ。うちの工房にいてくれたら、鉱石の専門家として大いに活躍してくれると思うのじゃ!」
いや…でもリコルって俺と従魔契約してる訳だし
そんな簡単に「はい、そうですか」とは行かないだろーが。
「いや、それは…リコルは大事な家族ですし。大切な従魔ですから…現にリコルがどうしても行きたいと言うなら変わって来ますが」
アローゼ子爵、俺の返事を聞いて
カニャクさんとまたもや目配せ。
この話、カニャクさんの発案かな?
「とりあえず、リコルを呼んで来ますので。リコルにも話を聞いてみましょうよ」
俺はリコルを1階に呼びに行った。
何故かプルもついて来ちゃったんだけど。
「うーん、ありだかたい話だけど…僕の主人は1人だけだから!ごめんね、アローゼ子爵」
その答えを聞いて、なんかホッとしてる俺。
短い期間だけど家族として一緒に過ごして来たから、簡単に「王都に行く!」なんて言われたらショックだもんな。
ホッとしとる俺とは対照的なアローゼ子爵とカニャクさん。
とっても残念そうにしている。
「あ、でも!もし、アローゼ子爵が新しい鉱石の採掘とかで困った時はお手伝いするよ!」
リコルはそう言いながら、手?触手をひょいと挙げた。
それに負けじとプルも挙げてる。
「プルもいるよー!プルだっておてつだいたーくさんできるんだから!」
プルの負けず嫌い発動。
「そうかそうか、ありがとう!それでは困った時はお願いしようかの」
そう言ったアローゼ子爵の顔はちょっと淋しそうだったが、よしよしとリコルとプルを撫でていた。
それから3日後、アローゼ子爵一行は
ミスリルの採掘を終えて王都に帰って行った。
帰り際、名残惜しそうにしょんぼりリコルを見つめるアローゼ子爵。
その横にいるカニャクさんに
「そんなにじっと見ては嫌われます!いいんですか?困った時に助けてもらえなくなりますよ。ほら!さっさと馬車に乗ってください!ほらっ」
とてもじゃないけど、従者に見えないカニャクさん。
おそらく、カニャクさんがいないと子爵家が立ち行かなくなるんだろうな…
だって、アローゼ子爵ってば
毎晩の宴会でプルやリコルにお小遣いだと言って金貨くれちゃうんだもの。
しかも、他の従業員にまであげてたもんな。
ありゃ、破産型だわ。
ただ、アローゼ子爵には出発前に
宿泊費と食事代、そして相当な量を飲んだ酒代をいただいた。
しかも、なんと相場の二倍も!
でもさ、普通なら大喜びなんだけど
うちは経営には困ってないし…
なんなら、金貨の使い道をいつも探してるくらいだし。
っと言う訳で、今回はオーナー権限で
お疲れ様でした!って事で従業員に臨時ボーナスを支給しました!
ユストフさんには、ちょっとだけ小言を言われたけどー
でも、アローゼ子爵が来てる間は宴会が大規模すぎて毎日全員で用意や後片付けしたし。
これくらいは大目に見てよって事で許して貰った。
あと、実はカニャクさんにお願いした事があってさ。
王都で頑張ってるセルトくんに、俺の手料理を持って行ってもらう事にしたんだ。
カニャクさんたちの荷物が異様に少ないから、もしかして?と思って聞いてみたらさ
「アローゼ様が昔洞窟で見つけたマジックバッグがございます」
ビンゴー!!
しかも、時間経過なしー!
超ビンゴー!!
そんで、セルトくんの事を話したら
「王都の学校に?それは大変でございましょう、私が責任を持ってお届けしますよ」
と言ってもらえたからさ。
サンドイッチやらシチューやらカレーやら
食べ物をこれでもかー!って頼んだって訳。
もちろん、アローゼ子爵一行の旅中の食事も作って渡しておいたぞ。




