92、ドワーフ子爵
「今頃、セルトは王都に到着した頃じゃろうな」
セルトくん一行がカルニートを出発して、12日が経過した。
途中、何もなければ今日か明日には王都に到着するだろう。
今回、王都滞在中はマルディニールさんが仲良くしている貴族のお屋敷に滞在させてもらう事になっている。
「マルディニールさんの知人の貴族の方はどんな方なんですか?」
俺はこっちの世界の貴族についてあんまり知らないので…って言うか日本にも貴族なんて今はないからな。
「私もあまり詳しくは分かりませんが…何でも元々は裕福な平民だった方だそうです…学校を卒業した後に家業を大きくし貴族位を得たそうです」
「へー!元々平民でも貴族になれるんですか」
「平民から貴族になるには…それ相応の財を成して…貴族位を購入するか、何か国に対し…て功績をあげた者に与えられるかのどちらかになります」
なれほどー、ユストフさん物知りだな。
あれ?そしたら、俺も買いたいって言ったら買えるのか?
「もしかして、僕も買えたりは…」
「お前さん、貴族になりたいのか?」
シルヴェストさんが目を丸くして聞くもんだから、俺も慌てて否定したよ。
「びっくりするじゃろ!まあ、買えん事もないが貴族位を買うには何人もの貴族の推薦が必要になるんじゃよ。その推薦も、はいそうですかと推薦してくれる訳ではないんじゃ」
そうなのか…推薦を貰うには何か特別な力とか見せつけなきゃならないのかな?
俺があれこれ考えてるとシルヴェストさんがぐいっと目の前に手を出して言った。
「これじゃよ、これ」
見ると、親指と人差し指で丸を作ってる。
俺もよく知るそのポーズ。
「もしかして…お金?」
俺の答えにシルヴェストさんもユストフさんもうんうんと頷いてる。
…やっぱどこの世界もお偉いさんはお金なのかねえ。
でも待てよ?それならこの旅館で稼いだら、尚更貴族位買えるんじゃね?
魔石を売ったお金だって使えきれないで貯まる一歩なのに。
「まあ、お前さんが本当に貴族になりたいのならワシの知り合いの貴族に話してやってもいいぞい」
「え!シルヴェストさん、貴族に知り合いいたんですか?」
「失礼なやつじゃな!ワシにだって貴族の知り合いくらいおるわ!ワシと同じドワーフなんじゃが、先代の王様の戦用の鎧一式を打ったやつじゃ」
「へー」
「ああ、あの鎧の…あの方はシルヴェストさんの知り合いだったの…ですか」
え?その人有名なの?
なんか2人で話がちょっと盛り上がってんだけど。
俺もついて行きたいけど…えー淋しいー。
「その方は元々貴族だったんですか?」
置いていかれないように、切り込んでみる俺。
「いや、元々はただのドワーフの鍛治職人じゃ。先代の王様がその鎧のお陰で命拾いをしたのでな。その功績を讃えられて貴族位、つまり爵位を与えられたのじゃ」
「それだけではないのです…」
珍しくユストフさんが話したがるので詳しく聞いたら、その鍛治職人だったドワーフは男爵を賜ったらしいんだ。
でも、一代貴族と言ってその人が死んだら跡を継げないその人の代限りのものらしい。
でも、そのドワーフ男爵(勝手に言ってるけど)
今の代の王様が戦に出る時も剣を打ったらしいんだけど、その剣がそれはそれは凄くて王様ってば大将なのにガンガン敵陣に切り込んだらしくて。
傷一つ付かずに帰還したんだとさ。
んで、剣の素晴らしさを讃えて一代貴族を改めて永久に貴族でいていいぞって事になったらしい。
その時に男爵から子爵に爵位が上がって、今はドワーフ子爵だ。
「へー、そんな事ってあるんですね」
「ドワーフの中ではあいつは1番の出世頭じゃからな!あいつの工房はいつも弟子志願者で溢れておるらしい」
「そのドワーフ子爵…じゃなかった、この方に僕も会ってみたいです」
「そうさのう、王都に行く事があれば会わせてやる」
ドワーフ子爵か…
なんか映画になりそうな面白そうな名前だし。
きっと色んな冒険とか知ってるんだろうな。
いつか会ってみたいな…
なんて思っていたら…
「おー!シルヴェスト!元気にしとったか!」
目の前にドワーフがいる。
そして、この人こそ俺が会いたがっていたドワーフ子爵だった。




