表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界旅館松や  作者: ぎゆり
第1章
90/104

90、前日の激励会


俺たち3人が食べ終わる頃、広場の向こうから知った顔がこちらに歩いて来るのが見えた。


「オーナー、お疲れ様です」


ソウガさんだ。


「あ、ソウガさんお疲れ様!」


ソウガさんの視線の先を見るとナディアさん。


あ…そう言えば…

この2人いい雰囲気なんだった。


って、あ!違うよ?違う!

これデートじゃねーし!セルトくんいるし!

まさか誤解しないよな?


そんな事を思っていたらセルトくんが急に立ち上がって俺の手をガシッと掴んだ。


「オーナー!俺、オーナーが作ったフライドポッツェが食べたい!」


「え?フライドポッツェ?」


「うん!だから、急いで帰ろう!!じゃあ、ソウガお兄ちゃん!お姉ちゃんの事頼むね!僕とオーナーは急いでるから!じゃあねー」


「お、おい!セルトくん?え?…(そうか、退散しようって事か…)あ!うん!そうだな!帰ってプルとリコルと一緒に食べよう!では!俺たち急ぎますので!2人はゆっくりして来てー」


おれとセルトくんは広場を急いで抜けると、ささっと柱の影に隠れてソウガさんとナディアさんを見る。

すると、ちょっと恥ずかしそうにしながらゆっくり並んで広場の反対へ歩いていた。

ナディアさんは嬉しそうに微笑んでいる。


「僕、お姉ちゃんがあんな風に笑うの見た事なかったんです」


「そうか」


「だから、僕は絶対に試験に合格して勝ちます」


「そうだな」


俺たちは2人が広場から出で行くのを見送った後、旅館に戻った。

帰り道のセルトくんは無言だったけど、俺はセルトくんから強い決意みたいのを感じたので

あえて話しかけなかった。


この日、俺とセルトくんはオーナーと従業員という間柄ではなく、男同士の絆が出来たような気がする。





時間はあっという間に過ぎて

明日、いよいよセルトくんが王都に向かう。


「いよいよ明日だな、本当にあっという間だった」


セルトくん激励会と称して

旅館の2階には沢山の人が集まっていた。


その中には、マルディニールさんやトールソンさん、それからセルトくんの病気を治療してくれた診療所のダイロン先生もいる。


「セルトくん、いよいよですな。準備は出来ていますか?」


「はい!先生!」


「ははははは、先生と呼ばれるのも今日が最後だと思うと感慨深いですな」


セルトくんにとってマルディニールさんは勉強や学校でのしきたりなど、王都の生活で必要な事を一から教えてくれた人だ。

マルディニールさんも先生と呼ばれて満更でもなかったようだしね。


「おい、セルト。あっちに行ったら貴族様のお屋敷に滞在すんだろ?大丈夫なのか?」


「はい!マナーやしきたりは先生から教わりましたし、滞在中に必要な物はオーナーが用意してくれました!」


「そうか!よかったな。マルディニールさんとカズには勉強頑張って恩返ししないとな」


「もちろんです!学校では常に1位を目指して頑張るつもりです」


「そうかそうか!ナディア!お前の弟は立派だな!」


「ええ、あたいとは似ても似つかないですよ。でも…」


ナディアさんの表情が急にしんみりしている。


「でも、本当にみなさんにこんなに助けていただいて…セルトもあたいも本当にこの国来て良かったです。そして、皆さんに会えて本当に良かったです」


そこまで言うとナディアさんは涙をボロボロ流して泣いていた。


「おいおい!今日はセルトの激励会だろ?お前が泣いてどうすんだよ!本当に!」


セルトくんも困ったな…って顔をしながらナディアさんの背中を撫でている。


これじゃ、どっちが姉か弟か…って言われちゃうな。


「僕は絶対に試験に合格しますので、お姉ちゃんの事よろしくお願いします!」


今回、王都までナディアさんも一緒について行く。

セルトくんが試験に合格したらセルトくんは学校の寮に入る。

もしも、不合格だった場合はカルニートまで一緒に帰って来るという手筈だ。


今回、洋服屋以外で俺が用意した物は

王都までの馬車と御者、護衛に“疾風の刃”、王都までの食糧と飲み物など。

ちなみに食糧の中身は、俺特製の異世界のメニューも結構入ってるんだ。

カレーとかシチューは作った物を入れ物ごと氷魔法でカチコチに凍らせてクラスティアさんから借りたマジックバッグに入れてある。

食べたい時に先に出して解凍しておけば、温めるだけで食べられるって訳。

サンドイッチとかソーセージとかセルトくんからのリクエストの物は全部作ってあげた。


それから、これはどうしてもプレゼントしてあげたかった物なんだけど…何かと言うと筆記用具だ。

実はうちの従業員のみんながさ、自分達も贈りたい!ってお金を少しずつ出し合って俺のところに持って来たんだ。

もちろん、プルとリコルもだ。

2人は自分の名前が付いてる店も持ってるからな、結構金持ちなんだよ。

最初プルは「ぼくたちのフライドポッツェをやまほどあげたい!」って言ってたんだけど

それは旅には向かないから、前の日のパーティに出してあげて?とお願いしといた。

なんで、今日の激励会ではフライドポッツェが山盛りだ。


でもさ、みんなでお金出し合ってプレゼントなんてさ…なんかジーンと来ちゃってさ。

うちのみんなはいい従業員ばっかだなー!

本当すげー幸せだなー!

って思ったよ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ