82、ユウトとタクマ
「いらしゃませー!おいしーふらいどぽっつぇですよー」
プルとリコルが店主のフライドポッツェ屋の前は、連日大行列の賑わいだ。
今日もズラッと並ぶ人、人、人。
「はい、フライドポッツェとワサビマヨです!ありがとうございましたー」
愛嬌満点のプルがフライドポッツェを揚げながら、可愛い呼び込みをして
しっかり者のリコルがレジの窓口担当。
セルトくんの提案で、レジはもちろん調理担当のプルもガラス張りで見えるようにした。
結果から言って大成功!
スライムのプルとリコルの姿がとてつもなく可愛いと評判になり、大人気のお店になった。
プルはフライドポッツェを美味しく作る為に
俺とコリーナさんから特訓を受けて
今では一人前のフライドポッツェ職人に。
俺から開店祝いに、お揃いの三角巾をプレゼントしたんだけど…
似合いすぎて悶絶だった。
でも、俺以上に悶絶してたのが可愛い物好きのモリアさんだ。
分かる!分かるよ!その気持ち!
スライムが2人でフライドポッツェ売ってんだもん。
可愛いにも程がある。
プルとリコルのフライドポッツェ屋の営業は、昼の時間帯だけなのでお客さんのほとんどが若い女性か子供だ。
その若い女性からたまに黄色い声が上がるのは、ポッツェを補充に来るソウガさんが原因。
ソウガさん、力仕事する時は何故か上半身裸だからな…
まあ、それは置いといて
ここはフライドポッツェとマヨネーズの発祥の店って事で、カルニートでは超有名店になった。
「マヨネーズ大作戦上手く行くといいな…」
なんて思ってお店を一ヶ月くらい続けていたある日の事。
旅館に2人の旅人がやって来た。
その2人は、プルとリコルのフライドポッツェを堪能した後旅館に入って来てこう言ったそうだ。
「あのマヨネーズを考案した人に会いたい!」
と。
俺は厨房で仕込み中だったんだけど、慌てたナディアさんが俺を呼びに来てくれた。
俺はいよいよ待ちに待った転移者か!と後はコリーナさんに任せて大急ぎで旅館のフロントに駆けつけた。
「あの…私に何かご用でしょうか?」
フロントに居たのは、ボロボロの外套を着た男性2人だった。
きっと遠くから旅をして来たんだろう、靴も服も何もかもがボロボロだった。
「あ、貴方がフライドポッツェとマヨネーズの考案者ですか?」
外套から出した顔は、紛れもなく日本人の顔。
年は20代後半くらいだろうか。
そして、もうは1人の顔もやはり日本人の顔で、年はさっきの男性よりちょっと年上くらいだった。
「あのマヨネーズは!誰かから聞いたのですか?それとも!貴方が?貴方が?」
興奮気味でどんどん俺に詰め寄ってくる。
いや、そんな詰めよられたら答えられないし。
なんて困っていたら、年上に見える男性が肩をつかんで落ち着かせてる。
「すみません、こいつ興奮しすぎちゃって」
何とか落ち着きを取り戻したのを見て
俺はエントランスのカフェスペースへ案内した。
顔は日本人だったけど、まだ転移者と決まったわけではないしな…
とりあえずここは鎌をかけてみるか。
「どうぞこちらに、今温かいお茶淹れますね」
俺が2人に出したのは緑茶だ。
しかも、日本の湯呑み茶碗だ。
それを見た2人はお互い顔を見合わせて
意を決したように俺に言った。
「あ、あの…僕はユウトと言います。長澤優斗です。そしてこっちが友達のタクマです」
「矢上琢磨です」
よっしゃー!転移者だ!
マヨネーズ大作戦、すげーじゃん!大成功じゃん!
「僕は、カズです。岩井和と言います」
俺の名前を聞いて2人の顔は安堵に包まれたようだった。
タクマに至っては涙ぐんでいる。
「やっぱりだ!カズさんも転移者ですか?」
「いえ、僕は転移者ではないんですよ…今は詳しくは言えないんですが。でも、僕は日本の生まれですよ」
日本生まれと聞いた2人は、今度は大声で泣き始めた。
さっきはタクマが涙ぐんでいたが、今回はユウトも泣いている。
「よ、よかったー!よかったよー!日本人に会えたー!」
おいおいと泣いている2人。
少し待っていると落ち着いて来たので2人に聞いてみた。
「お腹すいてないですか?今日の賄いは、カレーなんですよ」
「カ、カ、カレー…」
それを聞いてまた泣き出す2人。
まだ泣き止みそうにないので、俺は厨房に戻りカレーを2人分持って来た。
もちろん大盛りで。
「とりあえず、これ食べてください。詳しい話はそれから聞きますから」
目の前に置かれたカレーをしばし見つめた2人は、「いただきます!」という言葉と共に大盛りのカレーを食べ始めた。




